失われた業
魔法――その現象を魔法使いたちは、剣、槍、弓矢、刃、鎖、球という型で行使する。
それは魔力量(継戦能力)、維持力、数、大きさ、威力などで魔法士としてのランクが決まる。
しかし、それに疑問に思ってしまい、その思考の末に『僕が考えた最強の魔法』という沼にハマったのがレインだ。
何故、彼がそのような思考に至ったのか。
彼は思ってしまったのだ。超一流の魔法師が束になっても敵わない敵を既存の魔法でどう斃せというのか。彼らが束になっても斃すことができないから、救世の勇者や聖女が必要で、彼らと旅をするだけの実力のある仲間たちが存在するのではないか。では、そのような存在が身に纏い、担う武器とはどういったい業物なのか、と。
武具をイメージするが故にレインは思ってしまったのだ。それらを魔法として具現化出来れば最強の魔法師になれるのでは、と。
だからこそ、それは叶わぬ理想となった。
平和ボケし、種族差別、迫害が常と化し、魔法使いは、魔法が使える者と、そうで無い者を分け、特権階級と威張り散らし、技術衰退した現在、神剣、聖剣、聖槍、聖弓·聖矢、聖杖など失われてしまい、教会総本山や皇城の宝物庫にすら保管などされていない。
なにせ、それらを授けた本人たちが持ち去り、授けるべき存在が表の世から立ち去ったのだから当然である。
もちろん、それらの武具があったところで何者でもない魔力があるだけの使用人風情が見せて欲しい、と言ったところで、簡単に許可が出るような代物ではないのだ。
――こればかりは仕方がないわね。
解決策はあるのだ。あるが、果たしてお父様たちが立場ある者として、民を守るべき主として容認できるかというのは別の問題だ。




