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ビジョン・コントローラー  作者: ☆夢愛
第1章 コントローラー拾ったぜい
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第5話 レインのトラウマ2

 いや、 正直な所勝てる気全くしねーけどね。

 それに俺戦闘初心者でございますしね。

 ……だけど俺がやらなきゃ、 今アイツを倒さなきゃ、 外に居て俺らの帰りを待つユーニも、 下で準ボスを倒して大怪我を負ってるシルフォも、 自分のトラウマを乗り越えようとウォーブと必死に戦ったレインも……皆が消えちまうんだ。

 消させるかよ……そう簡単に。

 こいつらは俺の仲間だ!!


「さしるべぶれーど!! 」


 俺はもう刃が出てるのを忘れて叫んで内心恥ずかしかったが、 猛スピードでウォーブに突っ込んで行く。

 ウォーブは俺に気づき左手のひらを向けて来た。


『無駄なことをしてないでさっさと消え去れ』


 その直後俺は床に着地していた。


「あれ? 」


 俺は即座に奴の持つ《スォイフ・クロッグ》の針を見た。

 やはり巻き戻されたようだ、 しかも一瞬で。

 これはさっきまでより断然厄介だぞ……。


「おりゃあああああ!! ……ああぁぁ……」


 戻される度にテンションが下がっていくが、 今はそんな事考えてる暇はない。

 そう思いながらしつこく何度も何度も奴に突っ込んで行く。

 だが、 ウォーブも呆れてきたのか腹が立ったのかは分からないが、 俺を睨みつけて来た。


『お前目障りだな』


 ウォーブは自分にギリギリのとこまでで俺を止め、 渾身の蹴りを顔に放って来た。


「ぶふぁっ!! 」


 俺の身体は地面に減り込み、 鼻血が出た。

 あ、 鼻折れたかも。

 俺はフラつきながらも立ち上がり、 怒りを込めた一言を叫んだ。


「こるぁ!! 鼻折れたら慰謝料と医者料払えよな!! 」


 自分でも何言ってんだと思ったが、 背後から冷めた目で見て来るシルフォに対して『はい、 ありがとう』と心でお礼をした。


『バカに構ってる暇はない。 それと周りを見てみろよアウドラ君よ。 もう時間が無いぞ? 』


 もう壁の半分くらいが粒子に変わってる。

 これは本当にヤバい、 どうにかしなきゃ……!!

 ……ん? ちょっと待てよ?

 俺は腕の部分に一体化しているビジョン・コントローラーを見た。

 ボタンは全部で5つ……試したボタンは変身、 武器、 ストップの3つ。

 あと2つはどうなる……?

 俺は最後の願いと共に1番上のボタンを押した。

 ────────────────────

 ーー シャドウ・ビジョン ニンショウシマシタ ーー


 音声と共に俺の身体から右側に向かって出るドス黒いオーラの様な物は、 少しずつ人らしき形に変わっていく。

『シャドウ・ビジョン』 影と幻影? 影の幻影? まあどっちだっていいか。

 ウォーブを含めた全員が俺の身体から出る気体を不思議そうに見つめている。


『お前……何をしてる? 』


「あわっかりっません」


 俺がふざけて答えると、 ウォーブはこちらに手を向けて来た。

 へっ、 もう分かってんだよ! 時間をコントロールするだけじゃ人に怪我はさせられねーだろ。


能力(アビリティ)スイッチを押したのか……? 」


 あー、 このボタン『 能力(アビリティ)スイッチ 』って言うのか、 て事はビジョン(幻影)が発動するんじゃねーのか? 楽しみだな。

 黒いモノは徐々に形を整えてから床に消え、 そして床から少しずつ形として出て来た。


「……あ? 」


 出て来たのはもう1人の俺だった。

 いや幻じゃなくね? え? 何か思ってたのと違ぇ。

 それと同時に俺は自分の異変に気付いた。


「……影が……ない」


 俺の影は全くもって無くなっていた。

 俺の下にも、 服の皺とかにも……俺だけから『影』は消えていた。


「おい……どういう事だ!? 俺死んだ!? ……いやそんな訳ねーけどこんなもんどう使えばいいんだ!? 」


 俺は自分の影が消えたという事実に怯え、 とにかくレインに話しかけた。


「……」


「え? おい、 レイン……? 」


 レインは俺が話しかけても反応もしてくれないどころか別の場所を向いている。

 俺はその方向を見ると、 また恐ろしくなった。


「全員、 もう1人の俺を見てんのか……? 」


 レインは俺の身体を貫通してもう1人の俺の方へ歩いて行った。

 すり抜けた……俺の身体を……見えてない……!?


「アウドラ、 何か身体に変化はある? 」


 レイン、 それは俺じゃない、 俺から出た俺だ──意味わかんねーな、 どっちにしろ俺じゃねーかそれ。


「いや、 特に変わった感じはしねーから、 やっぱ役に立たねーなこのコントローラー」


 もう1人の俺は、 まるで本物の俺かの様に振る舞い始めた……本当に何が何だか……。

 ───────────────────

「おいコントローラー、 今の状況……説明しやがれ」


 ーー ジブンデカンガエロー ヘイヘイ ーー


 うぜーなおい、 何なんだこのコントローラーは。

 とにかく何が何だか分からない今、 迂闊には動けない……ウォーブにも俺が見えてなさそうだからチャンスなんだけどな……。


「 『見えてない』!? もしかして……」


 俺が可能性のある事を想像すると、 それを正解だとでも言う様に脳に声が聞こえて来た──俺の声だった。


『いいか俺。 俺はお前の「影」だ。 俺が出ている間はお前は見えなくなる。 それがこの能力だ』


 もう1人の俺は口を開かずに俺に極自然に説明してくれたが、 どっちにしろどう使えばいいんだかよく分からねー。


『俺は俺の意のままに動く。 想像しろ、 ビジョン・コントローラーの能力(ちから)を見せてやれ! 』


 いやコントローラーお前の様なもんだろ、 見せてやれって言われても俺殆ど操作知らねーからな!?

 ……そう言えばあと1つボタン押してねーな。


「折角だし押すか」


 俺は残り1つ押していなかったボタンを押した。

 ……ん? 何か変わったか?


「あ? アレは……」


 ウォーブの身体は紫色の揺らめく光に包まれていた。

 俺も、 レインも怯えながらそれを見ている。

 え? 過去に戻って来た? しかもちょっと前に……。

 えーと、 この後確か建物が粒子に……やべー!


「やるしかねぇ!! 」


 俺は光の中に居るウォーブを蹴り飛ばした。

 その瞬間、 まあ分かりきってた事だが、 全員が目を見開き驚愕している。


「何だ!? 」


「何が起こったの……!? 」


 見えない物が敵を急に吹っ飛ばしたんだもん、 そりゃそうなるわな、 ごめんな。

 ウォーブは俺に気付いたのか、 邪魔された為元の姿のままで俺の方を睨んできた。


「さあてと、 ここでお前を倒せりゃいいが……よし、 行くぞ! 」


 俺は全脚力を込め、 ウォーブに突っ込んで行く。


「お前は何だ!? 」


 ビックリしてるのでは無く、 完全に威圧をして来るウォーブに気圧される事無く俺は《サシルベ・ブレード》を振り回す。

 当たるまで何度も何度も振るが、 全て避けられる。


「ちっくしょう……!! 俺がレイン並に強けりゃ……!! 」

 ──────────────────

 俺はそれでも尚ウォーブを倒す為に全力で鮮赤の刃を振り続ける。

 ──しかし、 その猛攻は暫くして止まってしまった。


「んぐっ!! テメェ……」


 ウォーブは《スォイフ・クロッグ》を持ち、 見下す様に見て来ている。

 秒針が止まっている事から、 動きをストップされた事が分かる。


「所詮お前1人はこの程度……勝てやしねーよ」


 俺の手を動かし、 俺自身に刃を向けさせるウォーブは、 何かに気付き手を放した。


「どおおおおおりゃあああああ!!! 」


 後ろから雄叫びを上げながら突っ込んで来るのは数分前の俺だった。

 いやここ突っ込んで来んなよ危ねーな。


「何で急に吹っ飛んだかは知んねーけど、 このチャンスを逃す手はねぇ!! 」


 過去の俺が振る刃は当たらなかったが背後に回ったレインにより、 ウォーブの身体は宙に浮いた。


「だけど……偶然じゃないのは確か。 そこに誰か居るなら、 お礼を言うよ」


 お前ら……いや片方俺本人だけども。

 てかこれ過去変えてるよな、 大丈夫なんかな? ……とりあえず変身は防げたし帰るか。

 これ以上ややこしくしたくないし。


「現実へ」


 俺が再度ボタンを押すと、 元の時間に帰って来た。

 ウォーブは変身していない状態で、 建物も粒子化していなかった。


「あれ……? 私達さっき……」


 まあ、 違和感はあるんだろうな……過去捻じ曲げたし。

 その後どうなったか知りてーけどまあいいや。


「ほらレイン、 やろうぜ。 アイツを倒すんだ」


 俺はそう言うとレインに手を差し伸べた。

 レインはちょっとだけ躊躇いながらも、 俺の手を掴み立ち上がった。

 もう震えは止まっている様だ──いや、 そんな事も無かった事になったのだろうか。


「私もやるぞ」


 左腕を押さえながら歩いてくるシルフォを見て、 俺は溜息を吐いた。


「壁にでも寄りかかってろよ」


「そんな訳にはいかない。 お前達がやるのに黙ってられるか」


 どんだけ負けず嫌いなんだか分かりゃしねーがくたばっても知らねーぞ本当よぉ。

 ま、 ここで負けたらアノムスに言った『きっと持ってくる』てのが嘘になっちまうからな。

 俺は先頭に立ち、 ウォーブを睨みつける。


「始めんぞ、 ラストスパートだ……!! 」

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