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ビジョン・コントローラー  作者: ☆夢愛
第1章 コントローラー拾ったぜい
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第5話 レインのトラウマ

『私は……奴等がトラウマなんだ』


 レインがそう言うと、 この部屋の空気は暗く重いものに変化した。

 レインが……トラウマをもってた……。

 あの怪物並に強いレインを……倒した事のある奴等に対しての……。


「私は奴の言う通り、 ビワに来る前奴等と戦い、 敗北した。 それがトラウマで、 奴等の『マーク』を見ると上手く戦えなくなるんだ」


 マーク……そうか、 あの椅子を見た時にレインが取り乱し始めたのは、 椅子に奴等『アシュレイド』と言う意味の、 『ARマーク』が有ったからか。

 レインの身体は小刻みに震え始めた。

 恐らく、 負けた時の事を思い出してしまったんだろうが……トラウマになる程って、 何が有ったんだ?


「お前がボスに負けてから数時間後、 お前の世界は滅びた。 ……だがお前は今ここに存在してる。 どうやって生き延びた? 」


 ウォーブは威圧する様にレインを睨みつけながら聞くが、 レインは全く動じていない。

 剣を床に刺したレインは、 悲しそうな表情で語り出した。


「私の国は『アシュレイド』によって滅ぼされた……私は別の国に逃げたけど、 奴等は次々と私の居る国はを滅ぼして行き、 遂には世界までもを消し去った」


「世界を……消した!? 」


 それって、 時空さえも消したって事だよな!? どうなってんだよ、 頭がついてけねーよ……。

 もう、 現実が現実じゃないみたいだ……頭がおかしくなりそうだ。


「その世界が終焉を迎える間際、 私は1人の男性に出会った」


「男性? 」


 ウォーブが反応しレインに問いかけると、 彼女は何故か怒ってる様に眉を曲げた。


「アノムス」


「!? 」


 アノムスがレインを終末から救った!? ……て事はレインはアノムスの手によってビワに来たって事か。

 俺が納得すると、 レインは拳を強く握り締めて続けた。


「でも、 彼は私を助けた訳じゃなかった」


 え? 助けた訳じゃない!? もう何がなんだか……とにかく分かりやすく教えてくんねーかな。

 何で人ってこんな回りくどい説明の仕方すんのかな。


「彼に他の人も助けるように頼んだけど、 彼は無視した」


 あの人が良さそうなキツネ目が!? リスクがデカいとか? ……な訳ねーよな、 人が多い方が戦いに有利だし……。

 ──────────────────

 じゃあ、 一体何でレインだけを助けた──?

 俺が疑問に思っていると、 黙っているレインにウォーブが知っていたかの様に聞いた。


「弱者は要らない……そう言う訳だな? 」


 レインは小さく頷き、 悔しそうな表情をする。

 身体は震え、 呼吸は荒くなり、 今にでも泣き出しそうな感じだった。


「あの世界には……私の友達が居た。 家族が居た! それをとても自然にあの人は……見殺しにしたんだ……!! 」


 情緒不安定な状態になってきたレインを見て俺は……何も言う事は出来なかったが、 アノムスが完全に『いい奴』ではない事がよく分かった。

 でも、 もしレインがこの先恨みでアノムスを殺したとしたら……その時ビワはどうなってしまうんだろう……。

 俺はとても不快な事を考えてしまっていた。


「でも、 ビワに居る他の人達は皆良い人ばかり。 だからそこに私は居るだけ、 生きているだけ」


 その言葉を聞いていくつか安心出来た。

 良かった、 これからレインが恨み憎しみに染まっていく事は無いみたいだ。

 レインは先程の言葉に、 強い意志を込めて続け叫んだ。


「私は2つ目の故郷を、 ビワを壊させやしない!! 」


 それの直後に、 レインの手首に装着されたコントローラーが輝きを放った。

 そしてレインは3つの縦に並ぶボタンの内1番下のボタンを押した。


「シャイニング・ソード! 」


 ーー『please shining sword 』ーー


 その外人が喋った様な音声と共に、 レインの手が金色に光始めた。

 そして光は弾ける様に消え、 レインの手には柄から剣先までが途切れる事なく繋がった金に煌めく細長い(つるぎ)が装備されていた。


「すんげぇ綺麗……」


 その刃は俺でさえも見惚れる程美しく輝いている。

 レインは剣先をウォーブに向け、 トラウマを斬り裂くかの様に強く振り下ろした。


「お前達にはもう負けない……!! 」


 レインは光速でウォーブの元へ駆けていくと、 途中で跳び上がりウォーブの頭上へと舞う。

 金のドレス、 金の剣から出る軌跡は同じく輝く星の様に美しく、 まるで金色の天の河の様だ。


「バカが。 俺には《スォイフ・クロッグ》がある事を忘れるな」


 ウォーブは上から光速で振り下ろされた剣を躱した。

 ─────────────────────

 《スォイフ・クロッグ》の針が止まった時、 俺はまた『ダメか』と思ったが、 レインは止まる事無く、 振り下ろした剣をそのままウォーブの方に振り上げる。


「!? 何故止まらない!? どうなってる!! 」


 その後もレインは止まる事無く剣を光速で降り続け、 遂にウォーブの腹部に刃を当てた。

 ウォーブの腹からは大量に青い血が飛び散る。


「お前……! なぜ効かない!? 」


 レインは背筋をしっかり伸ばして立ち、 剣を斜め下向きに構えた。


「光が時間を凌駕した。 それだけ」


 格好良く決めたがそれ無理じゃねーの? 誰か専門の方教えて下さい、 光って時間が止まっても動けますか?

 あと、 コレって俺が主役なんだよな? レインじゃないよな? レインはヒロインのはずだよな? 俺全く目立ってないよ、 蚊帳の外だよ。

 メインヒロインの筈だった奴は既に何ページも出てねーし。

 いい加減俺にスポットを当ててくれないかな。


「ふん、 ならば俺も本気を出そう。 かかって来い! 」


 ウォーブがそう言うとレインは一瞬で彼の背後に行き、 一瞬で斬りつける。

 そしてまた別の位置へ移動し斬りける。

 これを繰り返していく内にウォーブの肉体はズタボロになり、 気持ち悪い大量の青血が噴き出す。


「くっ……!! まだまだ! 」


 いや、 まだまだって言ってもですね、 外野の俺からしたらもうお前に勝ち目ねーよ。

 避けられてねーじゃん。

 レインは右手を前に伸ばし、 奴の顔辺りに剣を突きつける。


「次で終わらせる。 覚悟はいい? 」


 人を殺すのを全く厭わないレインのその冷たい瞳は、 ウォーブの動きを完全に捉え、 逃す事はない。

 だが、 先程まで焦りを見せていたウォーブの目つきは穏やかなものとなり、 満面笑み……いや、 悪魔の笑みを見せた。


「やはり俺が負ける事はないな。 残念だったな、 今すぐ殺していりゃ勝てたのによ。 もう終わりだ! 」


「「 !!! 」」


 服と一体化したクロノス・コントローラーを押さえ、 跳び上がり宙に浮くウォーブは、 その整った顔立ちに合わないような奇妙な高笑いをし、 全てのボタンを同時に押した。


「ボタンを全部!? どうなんだ!? 変身、 武器、 能力……ふぁ??」


 考えたらダメだな。

 ─────────────────────

 紫色に揺らめく邪悪な光がウォーブを包んでいく。

 最早ウォーブの姿は見えなく、 異質な輝きのみがそこには有った。


「なあ、 レイン分かるか? あれ、 どうなるか」


「分かる訳ないでしょ。 全部のスイッチを同時に押すなんて異例だもん」


 俺もレインもウォーブの現状を見て冷や汗が垂れる。

 何やら、 とてつもない物が出来上がっていく気がしたんだ。


「アレは何だ!? 」


 下からシルフォが上がって来た。

 あの男は倒せたんだな、 でもあの身体でここに居ちゃマズイな……。

 俺はシルフォの方を向き、 大きな声で叫んだ。


「隠れてろ! 何が起こるか分かんねーぞ! 」


 シルフォは自分の身体を見た後、 舌打ちをしてから部屋の入り口に身を潜めた。

 地鳴りの様な恐ろしく響き渡る音に、 俺達はかなり怯えている様だった。


「だ、 大丈夫か? レイン」


「アウドラこそ……大丈夫……? 」


 少しずつ消えていく光の中、 何重にもなった様なウォーブの不気味な笑い声が聞こえて来る。


『クククククク……俺は今、 時間を支配している。 敵うものなんて居ない!! 』


 光が消え去るとそこには白目と黒目が逆になり、 髪は黒から濃い水色に変わり、 服はボロボロに刻まれているかの様になった、 禍々しい雰囲気を放つ変異したウォーブの姿が有った。

 その恐ろしい見た目や雰囲気に、 俺達3人はあろう事か気圧されてしまった。


『さあどうしたかかって来い。 俺は3人同時でも一向に構わないぞ』


 そう言うとウォーブは右手の人差し指で上を指差す様に手を動かした。

 すると壁は紫色の大粒の粒子へと変わって行く。


「どうなってやがる……! 」


「この世界を消す気か!? 」


 シルフォが発した言葉により、 レインの身体はまた震え始めた。

 これはヤバい、 ヤバすぎる。

 シルフォは大怪我をしててレインは座り込んでしまった……これは、 俺が何とかしなきゃ何ねー様だ。


「ふぅ……」


 俺は数秒かけて深呼吸をすると、 ウォーブに問いかけた。


「これって、 お前を倒せば止まんのか? どうだ? 」


 俺が頭を掻きながら発言するとウォーブは眼を丸くして俺の事を見て来た。


『お前、 この状況でまだ勝つ気があるのか……? 』

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