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ビジョン・コントローラー  作者: ☆夢愛
第3章(最終章)最後の戦い
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第7話 2つのビジョン・コントローラー

 ──ビジョコンだ。


 いや美女コンテストではなくて、俺と同じビジョン・コントローラーだ。

 シルフォは、ポケットからビジョン・コントローラーを取り出したんだ。


「………………いや待って? 何でビジョコン二つもあんの? え? 大体こういうのって一つずつだよな? 何でこの種類だけ二つなのどういうこと? え?」


「落ち着けバカ」


 困惑していたら、シルフォに嘆息された。誰がバカだ。落ち着いていられるかこんなもん。

 シルフォの手にあるのは、間違いなくビジョン・コントローラーだ。見た目が丸っきり同じだし。

 俺が目で説明を求めていたら、シルフォは再び息を吐いた。


「私はビジョン・コントローラーのマスターだった。それは覚えているな?」


「ああ。んで、そのビジョコンを俺が拾って俺がマスターになっちまったから、変身出来なくなったわけだろ」


「貴様が手にしたのはビジョコン・コントローラーのリェイブ版だ。今私が手にしている物が、正真正銘普通のビジョン・コントローラーになる」


 ……久々に聞いた気がするぞそれ。初めて来た時は、ユーニに変な奴って疑われたな。

 あの時の口振りからすると、そのリェイブ版ってのは変な物ってことに感じるが……?


「リェイブ版は、ビジョン・コントローラーにのみ存在する。……いや、もしかしたら他にもあるかも知れんが、確認されたのはそれだけだ」


「だからそのリェイブ版ってのは何なんだよ! 何処がどう違くて、どうして存在するんだよ!」


「知っての通り、リェイブ版はマスターを変えることは不可能だ。貴様と出会ったあの日、私は先の戦いで故障したビジョコン・コントローラーの代わりとして()()()()リェイブ版を持ち、アシュレイドとの戦いに挑んだ。しかし、不注意で落としてしまったんだ」


「……落とすなよマジでさ」


 返さなかった俺も俺だけどさ。

 それと、コントローラー故障し過ぎだろ。特にビジョコン。


「リェイブ版と通常の物の違いは、ユーニから説明を受けてくれ。以上だ」


「雑っ!! 結構大雑把な説明で終わったんだが!?」


「今はアノムスがいるのだから、喋っている余裕など本来はない。奴も興味を持ったから大人しく聞いていただけだろう」


「お前も呑気なもんだなアノムス!」


「いやぁ、無事直ったんだねぇ。よかったよかった」


「呑気にも程があんだろ! お前自分がラスボスだって自覚あんのか!?」


 全力でツッコミを入れたら、明らかにアノムスの雰囲気が変わった。負ける気なんて一切ないような、強者の笑みを向けられる。

 ……チッ、この糸目。いくら呑気でも切り替えは早いんだな。


「勿論さアウドラ。僕はアシュレイドの後唐突に現れた、ラスボスたる者だよ。仲間であり、何年も共に生き抜いて来た君達と戦い、葬る決意もある」


「……そうかよ。だったら俺だって、心置きなく戦える。さっきから別に気にしてねーけど」


「私達も貴様が凶悪な敵であることを認識出来ている。たとえかつての仲間だろうが、挽き肉にする覚悟というのはとうにある」


「お前はもうちょい表現を抑えるってことが出来ねーのか」


 俺達が話している間に、レインがストップを振り切った。その場に降り、コキコキと首を鳴らす。

 俺とレインが至近距離、少し離れてココア。端の方にシルフォがいる配置となっているため、アノムスが何かをしても誰かしらは反応出来るだろう。


「とにかく、お前もまだコントローラー有りで戦えるってことでいいんだな? シルフォ」


「ああ」


 シルフォは真のビジョン・コントローラーを握り締め、じっと見つめる。それからアノムスに刺すような視線を向け、声高に叫んだ。


「ビジョン・クローズ……オン!!」


 シルフォの衣服が、俺と同じビジョン・コントローラーのクロスへと変化していく。初めて露出が少ない状態を見た気がするぞアイツ。

 シルフォは、変身完了と同時にサシルベ・ブレードを展開し、低く構えて突進体勢に入る。

 突っ込んで来るなら、アシストしねぇとな。


「シャドウ・ビジョン! 影! アノムスにうぜぇくらいまとわりつくぞ!」


「おう!」


 俺と影で、アノムスの視界を遮るために猛攻する。何気に壁が近いからな、アノムスも躱し難い筈だ。

 ……普通に避けられてるが。


「戦闘慣れはしたみたいだけど、刃を振り回すだけっていう頭の悪い戦い方は、変わらなかったみたいだね」


「うるせぇボケ! このコントローラーで他に何しろっちゅーんじゃ!!」


「──おっと」


「うほっ!?」


 俺とアノムスの間に、大量の弾丸が放たれた。危ねぇなココアテメェ。


「はっ……!!」


「……危ない危ない」


 アノムスの隙を狙ったシルフォの攻撃も、低い体勢で素早く躱されてしまう。まだだ! 猛攻を止める気はねーぞ!


「おらぁあああああ!」


 端の方へ追い詰めるつもりで、アノムスに刃を振るい続ける。流石と言うべきか、円を描くように避けられ追い込めない。

 シルフォと俺が至近距離で攻撃し、アノムスが躱したタイミングでココアが銃をぶっ放す。クロノスのストップは全てココアの弾に使用され、俺達にはバイブレの能力だけで対抗して来る。

 中々当たりやしねぇけど、この調子でやり続ければ、いつかは倒せる気がする。


「──ん」


 視界が、目が潰れるんじゃないかってくらいの閃光に覆われた。


「目がぁあ! 目がぁあああ!!」


「下がれアウドラ!」


「目がぁあああああああああっ!!」


 人がゴミのようだ、なんて言っていないのに。バルス発動されたわけじゃないのに、目が痛てぇ。

 一応シルフォに投げ捨てられ、アノムスとの距離は取れた。けど何でお前は平気なんだよ。


「おおぁクッソ涙出て来た……」


 今の光は絶対レインだよな。俺達の攻撃の間、アノムスに出来たコンマの隙を狙って、攻撃したんだ。

 にしても、いくら全力でやらなきゃ勝てない戦いだからって、これはねーよ。レイン後で朝チュンコースな。

 ……俺の方が先にへばりそうだな。


「アウドラ、痛がりながらニヤけるな理解不能だ。目は無事か?」


「……おお、何とかな。あと俺ニヤけてた?」


「ああ、キモかったぞ」


「男だからってことで許せ」


「……何を考えていたんだ不潔な」


「うるせーよ集中しろ」


「貴様に言われたくないわ」


 仕方ないじゃない、男の子だもの。まだ18歳の健全な男だもの。

 自分の彼女見てそりゃ邪な想像くらいするべさ。


「……不意を突かれてしまったね、流石レインだ」


 壁に減り込んでいたアノムスは、不敵に笑いながら脱出する。この要塞めちゃめちゃ硬いけど、アイツ頑丈だな。

 レインは俺やシルフォと違って無駄に言葉を発さず、ただアノムスに目を向けるだけ。強者の風格みたいなのがあるな、本当に。


「君はいつでも隙がない。だから僕はあの時見殺しにしたつもりだったんだけど、アシュレイドが無駄に計画を始めたせいで、苦労することになってしまった」


「……下らない話は要らない」


「やれやれ、せっかちだ。君との夜が待ち遠しいアウドラと同じだね」


「バッ……!!」


 一斉に目を向けられた。見んな皆見んな見んな。

 何で見透かされてんの俺。そんなに顔に出てた!?


「テメェ何誤解されるようなこと言いやがる! ふざけんな! マジでふざけんな! 別に夜が待ち遠しいわけじゃねーし! レイン帰って来て嬉しいだけだし!」


「動揺し過ぎだろう」


「別に動揺してねーし! あの枝野郎が変なこと言うから焦っただけだし!」


「動揺してるんじゃねーか」


「ししtねーし!」


 ヤバい、何で今が一番焦っているんだ俺。アノムスだってまだピンピンしているのに、一気に寿命が縮まった気分だ。


「そうだね、レインが戻って来たのは喜ばしいことだ。恋人であるアウドラなんて、一度は逃した初夜を迎えられるかも知れないという、興奮もあるだろう」


「お前いい加減にしろやコラァアアアア!!」


 マジやめて! もうそういう精神攻撃するのやめて! 女共に凄ぇ目で見られて胃が痛いからやめてお願い!


「レイン、アウドラはやる気満々だけど、ちゃんとリードしてあげるんだよ。女の子に不慣れな男は、気持ちだけで失敗しがちだからね」


「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!」


 この場から逃げ出したくなった。シルフォとココアに顔を背けられて、血を吐きそうだ。

 今まで、「女に興味ありませんよ」アピールをして来たのに、嫌な方で意味を知られてしまった。最悪だ。

 布団に潜り込んで来るレインを受け入れておけばよかった。


「……アウドラとのことは、帰ってから考える。まずはお前の首を刎ねなきゃ、のんびり〇〇〇〇(自主規制)も出来ない」


「「「レイン!?」」」


 あの娘とんでもない発言してくれちゃいましたよ今! 皆聞いた!? 早くこの戦い終わらせようぜ!

 特典映像つけるから!


「──皆、油断が多いね」


 飛び跳ねそうな俺を他所に、アノムスの冷めきった声が聞こえた。地面が、また大きく揺れる。

 既にボロボロでバキバキな床は、コケたら痛いので、何とか耐えきらなくてはならない。が、それでアノムスの攻撃も警戒しなきゃいけない。


「全員纏めて、天国に送ってあげるよ。男女の営みなどはその後するといい」


 嫌だそれ結局味を知らないままじゃん。

 ──棍棒が叩きつけられた床が浮き上がり、破裂するように吹き飛ぶ。俺達も同時に宙に打ち上げられ、最早身動きが取れない。


 せめてガード出来るようにアノムスの方を見たら、振動をものともせず、レインが飛びかかっていた。


「私は微塵も油断していないけど」


「おやおや、参ったな。コレは直撃だ」


 レインの振るシャイニング・ソードが、アノムスの首を狙う。こう表現してはいるが、あのコントローラーは光速なため、既に動作を終えている。

 結果は、ギリギリ躱されて胸部が裂かれた。


「やっぱ、シャイン・コントローラーは別格に感じるな。クロスの耐久力、殆ど無視じゃねーかアレ」


 と言っても、深くは斬れていなそうな辺り、クロスにダメージを削られているものと思われる。生身の人間が食らったら真っ二つになりそうだな。


「なぁシルフォ、レインばかりに任してられねーから、俺とお前で……」


 ふと隣を見たら、シルフォが二人着地した。

 ──二人。


「うおおおお!? しる、シルフォが二人!?」


「いや、貴様も二人いるだろうが。シャドウ・ビジョンも使えるからな」


「ああそっかお前今ビジョコンだった使ってんの……」


「その『ビジョコン』という略称は何なんだ」


 なるほど、ビジョン・コントローラー同士なら消えてる自分も視えるのか。アシュレイドに取られなくてよかったなマジで。


 胸に横一文字で傷を負ったアノムスは、タラタラと血を流し、それでも膝をつくことすらせずに口の端を上げる。痛がりもしねーのは、かなり不気味だ。


「斬られるのは……いつ以来かな。六年前に、アシュレイドの一体と戦った時以来かも知れない」


「知らない」


「おっと」


 思い出を振り返っていたであろうアノムスに、堂々と斬りかかるレイン。躊躇いはないみたいだ。

 ……まぁ、アイツ最初からアノムスを嫌っていたらしいからな。自分以外を見捨てたアイツを、ずっと許せないって言ってたもんな。

 俺も許せねぇよ。救った振りをして、自分と戦える相手を増やしていたとか……遊び感覚でやってやがったことに、憤りを覚える。


 「アウドラ、二人分のストップなら何とかなると思わないか?」


 シルフォが、最早隠す気もない大声で言う。確かに、アノムスには消えてる俺らも意味ないから別にいいけどよ。

 てか皆見えてるけどよ。何故か。


 「俺的には無理だと思うが?」


 「試しもせずに言うなクズ」


 「その馬のしっぽ掴んで振り回すぞ」


 「普段の数倍の力で殴るぞ」


 「ごめんなさい」


 いつもの数倍って。ただでさえ三回転はするってのに、死んじまうよ怪力ゴリラ。

 俺達はレインとココアが攻めている間、何か有効な戦術はないかと話し合ってみることにした。極力、注意はしつつ。


 「正直な話、この中で攻撃力が高いのはレインとココアだ。私達は、どちらかと言えばサポートタイプのコントローラーだからな」


 「だと思ったぜ。能力も時間稼ぎみたいなのばかりだしな。役に立たないってわけではねーけど」


 「だから我々でアノムスの注意を引き、先程のようにレインに一撃で大ダメージを与えてもらう。それが最も、有効である手段だろう」


 「了解。んじゃあま、影を出して撹乱戦と行きますかね」


 シャドウ・ビジョン、ラージバージョンを使いたいところだが、それでレイン達の視界まで悪くするのはよくない。俺とシルフォそれぞれが二人ずつで突っ込み、可能な限り攻め立てよう。


 「終わらせるぞ、我々の戦いを……!」


 「ああ、勝ってハッピーエンドと行こうぜ」

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