表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ビジョン・コントローラー  作者: ☆夢愛
第3章(最終章)最後の戦い
50/53

第6話 死んだなんて言ってない

 めちゃくちゃ太いバットのような棍棒が、シルフォを目掛けて振り下ろされる。あんな勢いで殴られたら、いくら怪力ゴリラであろうとただけでは済まないだろう。

 シノビ・コントローラーのクロスは、薄着過ぎて脆そうだし。


 今直ぐにでも助けたい。だが、俺は振動でバランスが取れない。

 そもそも、もう間に合わない。

 あの一撃でシルフォがくたばるわけではないと、そう分かっているが、とんでもなく焦ってしまう。


 ──シルフォに触れる寸前で、強い光にアノムスごと棍棒が弾き返された。


「え……?」


「くっ……あ……?」


 吹っ飛ぶアノムスを見て、思わず間抜けな声を出す。丁度振動も収まった。

 シルフォも落下して、不思議そうな顔になっている。

 今、この場には俺達二人しか味方はいない筈だ。なら今のは一体……?


「えっ……!? それ……!?」


 床に、細長い物が降って来た。恐らく、アレがアノムスを弾いたものなのだろう。

 俺は一目で、()()が何かを悟った。直ぐに駆け寄って、震える手で慎重に持ち上げた。

 シルフォも、次いで近寄って来る。大きく見開かれた瞳が、俺と似た心境であることを教える。


「嘘だ……何でコレが、ここに……」


「アウドラ、コレはあの時……()()()()()筈、だろう……?」


「ああ。アシュレイドの手に渡ったとかなら分かるが、同じように敵であるアノムスを邪魔した。つまり、奴らの生き残りが使ったものじゃない……!」


「なら、何故……誰がコレを!?」


 視界の先の方で、アノムスがゆらりと身体を起こしている。だが、俺とシルフォは困惑していて、お互いを見合うだけだ。


 おかしい。おかしいだろ。

 ()()()()()と共に消えた筈だ。彼女はそこで殺され、この武器を扱うコントローラーは、残るとしても敵の物になる筈。

 なのに、何故アノムスに仕掛けた。今ここにいないビワの誰かが、この要塞内から見つけ出して使ったのか!?

 いや、この短時間で使いこなせるわけがねぇ! 宙に浮いていて、シルフォが壁になっていて、振り下ろされている最中の棍棒に当てるなんて、どんな腕してんだって話だ。

 最初から隊長クラスだろそんな奴。


「……ココアがこの部屋を出て行ったのは、君を解放するためだったのか」


 アノムスは、浅く切れた頬に触れながら、凍てつくような目を向けて来る。

 いや、向けているのは、俺とシルフォの丁度間だ。つまり、この部屋の入り口辺りなわけで──



「死んだなんて、言ってない」



 明確に、聞き覚えがある声がした。もう振り返らなくても、誰なのか察せる。

 ……なぁ、お前あの後、どうやって生き延びたんだ……? コントローラーも回収されなかったのか?

 何より、何故ここにいるんだよ……っ。


「久し振り。アウドラ、シルフォ」


 ゴージャスなんて言葉が目じゃないくらいの、金ピカドレスに身を包んでいる。血のように紅い髪が特徴的な──


「「レイン!!」」


 デューク・マクリシア・レイン。

 かつて共に戦い、バイブレ・コントローラーを回収しに向かった際、その崩れ行く世界に取り残された筈の少女。

 俺に、「愛してるよ」と告げ、永遠にお別れすることとなった筈の少女。

 その、レインが。ビワ最強の戦士であり、俺の恋人であるレインが、今俺達の前に立っている。


「貴様……レイン。何故……」


「ごめん、二人共。死に別れみたいになったのに、生きてて」


「いや! 生きてることはいいことだろ! それより、本物なんだよな……!?」


「本物だ。間違いなくな」


「ココア!」


 俺と、恐らくシルフォも脳の整理が追いついていない。そんな中、ココアも戻って来た。

 さっき、アノムスはココアがレインを解放したとか、言っていたよな。


「ココア、レインは……」


「ユーニが、レインの生命反応を見つけ出した。私が一旦この場を離れたのは、結晶の中に幽閉されていたレインを救うためだ」


「結晶……?」


「ああ」


 よく分からないが、要するに捕らえられていたということか。

 何で奴らは、レイン程の脅威を消さずに生かしたんだ……?


「そこは私が説明する」


 俺の疑問を読み取ったのか、レインが一歩前に出て言った。

 《シャイニング・ソード》を受け取り、神妙な面持ちになる。


「私は、改造されかけていた。脳を破壊し、新たに埋め込むことで別の生き物になるように、怪物になるように、計画は進んでた」


「レインを、俺達に対抗するための兵器にでもしようとしてたのか……!?」


 レインは頷く。まさかそんなことになっていたなんて。

 だが、レインが連れ去られてから結構な時間が経っている。何故未だ、レインはそのままなんだ……?


「ま、作るのに苦戦してたんだろうね。新しい脳みそ」


「ダセェな理由!」


「お陰で助かったけどね」


「そうな!」


 もうちょっと緊張感のある理由かと思った。俺達がコントローラーを回収し続けていて、それに対抗するので精一杯だった。とか。

 何はともあれ、レインが無事で何よりだ。ほっとする。また美味い飯が食えるんだと。


「……シャイン・コントローラーは奪われなかったのか?」


 シルフォが、俺も不思議に感じていたことを訊いた。今完全に頭から抜けていたが。


「ううん、当然没収されたよ。けど、私が生きている以上このコントローラーのマスターは更新出来ない。だから、ボスの机の引き出しの中にしまってあった」


「うぅぅぅんんんもう、何かアシュレイドってホント気が抜ける連中だなぁ!?」


 せめてもうちょいバレ難い場所か、保管室みたいなとこに置いておけよ! 何で思い切り見られてんだ隠し場所!

 アイツらやっぱり間抜けだよな!?


「──またこうして、皆と一緒に戦える」


 ふと、剣を握り締めるレインが溢す。その表情は穏やかに見えるが、相変わらず目つきだけは鬼のようだ。

 俺の彼女、クールで顔立ちの整った、少し変態です。目つきはヤバいです。


「アノムス、まさかお前が敵だったなんてね。さっき初めて、ココアから聞いて知った。縦に切り裂きたいくらい、腹が煮えくり返ってるよ」


 レインは、ゆっくりとアノムスの方へと歩いて行く。さっき知ったばかりだってのに、元仲間に対してもう戦闘態勢だ。

 お前らビワの連中、仲間意識上っ面だけじゃね?


「ふっ……参ったな。君が解放されることは想定外だった。いや、そもそも生きていたことが想定外だったか。あの場で僕も君を見捨て、僕を倒せる可能性を一部取り除けたつもりでいたんだけどね」


「残念ながら、アシュレイドも私の強さを知ってた。だから怪物に変え、自分達に利のあるものにしようと企んだんだと思う」


「ふふ。君の身体能力をそのまま使えなければ、無駄だけどね」


 アノムスも先程までと変わり、おちゃらけた雰囲気を消す。真剣だ。

 やっぱレインは脅威なんだな。ビワでも圧倒的だったし。

 ただ、アシュレイドのボスには、一度負けてるらしいんだよな。コントローラーを得る前だが。


「それじゃあ、死ねアノムス」


 全く慈悲のない声色で言ったレインは、閃光と共に消えた。

 これはテレポートをしたわけではないが、実際それくらいの速さで動いている。

 俺がこんな解説をしている間に、アノムススレスレでレインが停止した。クロノスの能力、ビジョンより高性能なストップだ。


「危ない危ない。あと僅かでも遅ければ頭蓋骨を破壊されていたね」


「惜しい」


 空中で停止した状態のレインを放置で、アノムスは俺とシルフォに目を向ける。

 チッ、忘れてりゃあよかったのによ。レインにストップを使ったから、


「行くぜ、相棒」


「おう、俺」


 影が動き出す────ってアレ? さっきから俺、消えてる筈なのに全員にバレてね? なになにどういうこと? 不具合?

 まぁそれは後でいいか。とにかく、影と、シルフォと三人でアノムスに仕掛ける!


「ココア! 撃てる時撃ってくれ!」


「任せろ!」


「ああ、下手しても味方は撃つなよ変態水着女装野郎!」


「まずお前から撃つぞ『実は奥手で告白すら出来ない無能くノ一』!!」


 シルフォが途中で滑った。急ブレーキをかけて、真っ赤な顔でココアを睨む。


「何を言う貴様ああああああああ!!」


「お前が言えるかヘタレがぁあああああ!!」


「いいから集中しろっつーんだよテメェらは!?」


「呆れる」


 俺はアノムスから目を離していないが、その目の前で停止させられているレインは普通に喋っている。何故、そんな余裕を持っていられるのか。

 ──ってあれ? 俺、もうちょっとでアノムスの近くだった筈だよなさっき。何でこんな距離あんの?


「まさか……」


「アウドラ、早くおいでよ。待ちくたびれてしまいそうだ」


「あららららららら」


 リ・ワインド。巻き戻しだ。

 うぜぇ……うざ過ぎる。あのクソ糸目、シルフォが馬鹿やってるからって俺で遊びやがって……!


「お……?」


 込み上げて来る怒りは、真横から吹いて来た風で掻き消された。

 口論していた筈のシルフォが、アノムスの至近距離まで詰めている。


「無様な死骸を晒せゲテモノ……!!」


 ……アイツの口の悪さ、世界取れるんじゃないかって思うよな。意味もなく嫌なこと言うだけだけど。

 つーか「死骸」かよ。「死体」にしてやれせめて。

 いやでもゲテモノっつってたし、人として見ていないのかも知れないな。だとしたら最低だ。


「甘いよシルフォ!」


「チッ、クソゴミが……」


 棍棒で弾かれ、ボソッと悪口を言うシルフォ。アイツの性格の悪さは、ビワが誇れるものではないだろうか。

 そんなもの誇る奴はバカなんてもんじゃないが。


「……ん?」


 アノムスの、棍棒を持つ左腕が爆発した。クロスのお陰か血が飛び散るとかはないが、確実に直撃。ダメージも充分に入った筈だ。


「油断したなアノムス。いつ動き出すか分からんレインに、真っ直ぐ突っ込んで行くバカ、更にシルフォの3人を警戒しなくてはならないからな。私の弾など、止める暇もないだろう」


 いつも通りの巨大ブラスターを構えるココアは、アノムスを見下すように笑う。見事にヒットしたが、腕だったため致命傷とはならない。

 だとしても、棍棒を手放させることには成功した。


「終わりだアノムス!」


「よっし! 三人全員防いでみやがれ化けギツネ!!」


 俺と、影と、シルフォの三人でアノムスに斬りかかる。三方向からの攻撃は、一度ネグロ王にやって通用しなかったが、アノムスの背後は壁だ。やすやすと躱せはしないだろう。

 今チラッと見たが、レインも停止を振り切り始めている。最早勝利は確定。そう信じた。

 ──が。


「リ・ワインド」


 アノムスの手に、さっき吹っ飛ばされた棍棒が現れた。俺と影の攻撃は防がれ、反対側から挟むように突っ込んで来ていたシルフォは……


「がっ……!!」


 振動を発する棍棒で、腹を殴り飛ばされた。その際、ガラスが割れたような嫌な音も聞こえた。

 今の音は骨が砕けた音とかではない。まさかとは思うが……。


「くっ……ぅ」


 かなり遠くまで飛んで行ったシルフォは、何とか立ち上がるも──変身は解除されてしまった。

 やっぱ今のは、コントローラーが破壊された音だったか。ちょっとよく分かんないのは、額当てなのに壊れたこと。振動が原因か?

 一応爆発はしないみたいだが、ユーニが作った紛い物というのが理由だろう。大爆発を起こすようなエネルギーは入ってないってことだ。


「これで、シルフォは脱落かな? レインとアウドラ、そしてココアだけで僕を倒さなくてはならない」


「……っ! 甘く見るなゴボウ男が。私はビジョン・コントローラーがアウドラに渡ってからは、生身で戦っていたんだ。コントローラーを失ったところで戦える……!」


 アノムスに嘲笑され、屈辱でか拳を握り締めるシルフォ。確かに、お前は生身でも強ぇけどさ。


「シルフォ、流石にやめておけ。今の打撃も軽いものじゃないだろう。逃げろとは言わない、一旦休め」


 ココアに宥められるが、シルフォは子供みたいにいやいやと首を振る。我が儘な女だな本当によ。


 「あのなシルフォ、理解しろよ。そのまま戦ったら一瞬で死ぬと思うよお前。だからせめて休憩しろって言ってんだよ。俺らもお前に死んで欲しくないからな!」


 バカ過ぎるニンジャにハッキリ教えてやり、最後にフォローも入れてやった。どうよ、今の俺良い奴だろ。多分。

 気遣いはしたつもりだ。


 「黙れカス」


 「何だとコラァ!!」


 このクソ女、人がせっかく優しくしてやったのに何なんだ。カスって何だカスって! 全裸に剥いて〇〇〇〇(自主規制)!!



 「戦う手段なら、まだ残っていると言っているんだ」


 

 瞳を閉じ、肩で息をしながら、シルフォはポケットに手を入れる。

 あのな、どうせクナイとかだろ? 忍術で戦うつもりなんだろ。


 「それじゃ勝ち目ないって──」


 俺は、キレかけて口を結んだ。というか、言葉を失った。

 シルフォが取り出したのは……


 「久々の変身だな」


 ──俺と同じ、ビジョン・コントローラーだった。

残り3話です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ