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ビジョン・コントローラー  作者: ☆夢愛
第1章 コントローラー拾ったぜい
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第3話 最強の戦士2

 下で激しい爆音が聞こえたが、 俺とレインは振り向く事もなく最上階へと到達していた。

 縦横100mほどの巨大な広間の壁は青紫色に、 だが一色ではなく、 幻想的な宇宙のようなものだった。


「さっきまでと別の場所の来たみたいだ」


 先程までの明るいだけの廊下とは違く、 広大な宇宙の中に居る様な気分にさせるこの部屋には、 一つの玉座が置いてあるだけだった。


「……!! 」


 玉座に書いてある『AR』の文字を見て、 一層険しい表情になるレインは辺りを見渡し始めた。


「出て来て……! クロノス・コントローラーを渡しなさい! 」


 レインが怒ったように叫ぶと、 とても低めな笑い声が聞こえて来て、 玉座に座る人影が見えて来る。

 そこには、 黒づくめのツヤのあるコートを来たそこそこ顔立ちの良い黒髪ショートの若い男が居た。


「いやぁ、 意外と仕事が早いものだなビワの者達よ」


 足を組み、 右肘を肘置きに置いて不敵に笑う敵。

 先程の奴同様、 雑魚連中とは全く違う圧倒的な強さを感じられる。

 ……俺は何か違和感を感じていた。

 レインは少し前に出て、 奴に問いかけた。


「何でお前が玉座に座っているの!? 」


 ん? どーゆー事だ? 1番偉いから玉座に座ってるんじゃないのか? 全くわからん。

 理解出来ていない俺の左斜め前で、 レインは言葉を続けた。


「お前はこの世界の人間じゃないでしょ……! 」


「えっ! 」


 俺は違和感の理由がやっと分かった。

 この世界はドラゴン使いが殆どの筈なのに奴はドラゴンと一緒に居ないのだ。


「ああそうさ。 俺はこの世界の住人ではなく、 『アシュレイド』の人間だ」


 アシュレイド? 何だそりゃ。 でもとにかくここの世界の住人ではないってことは確かだな。

 その一方でレインは『やっぱり』と悔しそうに言う。


「じゃあここの本当の王様は……どこ!? 何をしたの!? 」


 奴は高らかに笑い、 右手の人差し指でレインを指す。


「別に大した事はしてない。 ただ最強の戦士の座を奪い取ってコントローラーを手にいれた……それだけだ」


 相手はそう言うと、 人差し指を下へ向けた。

 もしかしてここの本当の最強って……。


「お前を排除する……! 」


 シルフォの相手!?

 ───────────────────

 58階はドラゴンの吐いた炎が廊下中に燃え盛り、 異常な暑さとなっていた。

 先程の間に炎が直撃してしまったシルフォの左腕は火傷し、 暫く使えなそうだった。


「ちっ、 迂闊だった。 まさか札が切れるとは……」


 シルフォがさっきまで使っていた水術用の札は全て使い果たしてしまったのだ。

 対して相手の男、 この世界の頂点に立っていた奴はシルフォに近づかれもせず、 ノーダメージだった。


「クソ……コントローラーさえあれば……」


 コントローラーで『クローズ・オン』すると、 圧倒的に頑丈な特殊スーツへと変貌し、 身体能力も強化されるのだ。

 壁に隠れてるシルフォを見て、 ドラゴンと目を合わせる男。

 すると、 男の目は炎が写ってるかのように揺らめき、 手からは赤い炎が出て来ていた。


「隠れているだけじゃ俺には勝てないぞ」


 男の手から高熱の火の玉が飛ばされる。

 それを察知し、 壁の裏から飛び出すシルフォ。

 火の玉は一瞬触れただけで壁を丸く綺麗に溶かし、 階段なども貫通して行った。


『当たったらマズイな……避けて正解だった』


「考え事をする暇は無いぞ」


 直後、 シルフォは男のドラゴンの物へと変化した巨大な手により、 壁に叩きつけられてしまった。

 骨の砕ける様な音がし、 シルフォは床へ落ちる。


「ぐっ……! 油断した。 左腕は……もう使えないな」


 腕の激痛に耐えながらも立ち上がるシルフォは、 右手のみの印を結ぶ。


「影分身の術!! 」


 そうさけぶと、 シルフォの影が4つに分かれ4人に増えた。

 そして全員がクナイ、 手裏剣、 短刀、 札をバラバラに持つ。


「おお……! 増えたとは、 こりゃまた面白いもんだ。 良いぞ、 もっと楽しませろ」


 男は再び火の玉をチャージし始める。

 オリジナルのシルフォは目を閉じ、 印を結ぶと、 静かに強く、 男を睨みつけた。


「楽しい時間はここで終わりだ!!」


 短刀を持つ影分身の1体は超スピードで間合いを詰めていく。

 そして男の首元に刃を突き付けようとしたが、 ドラゴンの長い尻尾で弾き飛ばされて消えた。

 その隙にドラゴンの後ろへ瞬間移動した本体(オリジナル)と札を持つ2人のシルフォは札から出した油を短刀にかけ、 ドラゴンを切り裂いた。

 ──────────────────

 ドラゴンの体内の炎と油が合わさり、 爆発を起こした。

 男はいち早く移動し、 その爆風を利用し手裏剣を持つ影分身の1体の首を折り曲げ、 消した。

 一方シルフォは札から出した鉄板の後ろに身を隠し、 そのまま爆風で吹き飛んだ。


「捨て身の攻撃だな。 だがこれでもうお前の分身は全て消えた」


「ふん、 今のはドラゴンを消すための作戦だ。 あいつらは役目を終えたと言える」


 そう言いつつも、 手裏剣を持った影で行おうとした牽制は失敗し、 実際奴には大したダメージを与えられていない。

 シルフォは自分の残り3本のクナイと、 辺りに落ちているクナイを交互に見た。


『次の攻撃で仕留められなければ倒すのは難しいかも知れないな……』


 ふとシルフォの脳内には、 レインの戦闘シーンが蘇って来た。

 どんな敵をも怯まずに圧倒的な強さで倒していく、 最強の所以を無意識に再生していた。


「……っ!! 」


 プライドの高いシルフォには、 自分より後に入隊し、 それでいて歳下のレインより劣っている事が何よりも屈辱だったのだ。

 ーー 最強の座 。

 それを自分がどれ程努力して手に入れようとしたか……どうしても手に入れられなかったその称号がいとも容易く他人の、 後輩の手に渡ったと考えると、 悔しくて仕方なかったのだ。


「知っている……私が実力不足だと言うことも、 アイツが……戦闘の天才だと言うことも理解しているんだ……!! 」


 だけど譲れない、 まだ諦めたくない……そんな思いをずっと抱えて生きて来た。


「だから貴様は絶対に私が倒す……!! 負けるものか、 負けたらまた、 レインに引き離される……!! 」


 両手にクナイを持ち、 構えるとシルフォは猛スピードで男に突っ込んで行く。

 そして両手のクナイを振り回すも、 軽く避けられてしまう。


「自分の弱さがコンプレックスとなっているのか」


「黙れ!! 」


 理性を失い、 猪突猛進な戦い方に変わるシルフォは、 左腕に限界が来てしまった。


「……ぐっ……!!! 」


 ハンマーで殴られた様な痛みが左腕を襲い、 動きが止まった一瞬の隙に再びドラゴン化した腕で壁に押さえつけられ、 減り込む。

 シルフォは気が遠くなっていき、 床に倒れた。


「……まだ、 私……は」

 ───────────────────

「お前は良くやった、 もう楽になれ。 それにその身体じゃ『ウォーブ』との戦いに参加も出来やしないぞ」


 薄れゆく意識の中、 再びレイン……そしてアウドラやユーニの姿を思い浮かべた。


『皆、 どこかで戦っている……私1人が諦めてなるものか……!』


 最早立つ事の出来ないような身体でも尚立ち上がるシルフォの眼は死んでいなかった。

 そればかりか、 先程と違い元の冷静な表情に戻っていた。


「悪いな……少々取り乱していた。 これで本当に最後だ。 行くぞ! 」


 シルフォは叫ぶと同時に残り1本のクナイを男目掛けて投げた。

 だが、 それを軽々と避けられる。


「当たらん当たらん! 終わりだ! 」


 走ろうとした男は急に動けなくなった。


「!? 」


 男の身体には先程投げたクナイと、 先に使用した2つのクナイの計3つあるクナイから伸びた糸が絡まっていた。


「動いたらバラバラになるぞ」


 そう言うとシルフォは右手を顔の前で握り締める。


「くっ! 燃やし尽くしてやる! ……!? 」


「炎はもう使えないぞ。 ドラゴンが死んでいるからな。 終わりだ」


「まだだあぁぁぁああ!! 」


 男は自分の身体が裂けてくのも気にせず、 力ずくで歩き、 近づいて来る。

 シルフォまで残り10㎝ ほどになった時に、 男の身体中から青い血が噴き出した。


「憐れな……」


 シルフォは指を2本立て、 片手で印を結んだ。


「破!! 」


 その瞬間、 糸に付いていた2つの『爆撃札』 が爆炎を上げ、 糸が男の身体を切り刻んだ。


「……終わった……。 ユーニ、 私は少し休ませて貰うぞ。 疲れてしまった」


『分かった! お疲れ様シルフォ! 』


「ああ」


 シルフォは壁に寄り掛かり、 目を閉じた。

 ────────────────────────。

 その頃レインと俺は、 ラスボス的存在の、 こことはまた別世界の住人、 『ウォーブ』 との戦いに苦戦していた。


「ちくしょう、 俺よりも早い! 」


「大丈夫、 私より早い」


 ウォーブは退屈してるかの様に欠伸をすると、玉座に置いてある青い透明なケースを開け、 コントローラーを手に取った。


「さて、 そろそろコレを使うとしようか」


 邪な光が放たれる。

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