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ビジョン・コントローラー  作者: ☆夢愛
第3章(最終章)最後の戦い
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第4話 メディカル・エスケープ・クロノス

 おい見てくれよ、あのキツネ目の姿。左がフレイム、右がアナライズ、真ん中にメディカルのクロスだ。何だありゃ。

 カスタマイズしてやたらフォームの多い仮〇〇イダーよりも、見た目が滑稽だぞ。ハーフ&ハーフまでにしとけよ。トリプルコラボすんな。


「つーか、メディカルはそこまで警戒する必要はないよな。ロプトとやり合った時だって、アシュレイドに比べりゃ大したことなかった覚えがある」


 隣のシルフォに目だけを向けたら、少し不安気な顔をされた。おっと、もしかしてロプトが使わなかっただけで、結構強力な攻撃が出来たのか?


「確かにそうだが、油断はするな。コントローラーを熟知しているアノムスが、どんな手段を使うかは分からん」


「確かにって、やっぱり他のコントローラーに比べたら弱いのかアレ」


「ただの注射器に何が出来るというんだ?」


「ただのってかデカいけど……俺が知ってるのは刺すのと液体を出すのくらいだな」


「それに加えて、能力専用武器(アビリティウェポン)のナイフ程度だ。アナライズやサウンドに比べればオモチャに過ぎん」


「そこまで言うか……」


 シルフォがオモチャというレベルのコントローラーなのに、ロプトはビワの中で二番目に強かったんだもんな。アイツ凄ぇわ。

 レインと互角くらいって聞いてたから、もっと強力なんだと思ってたわ。


「お喋りはそろそろ済んだかな?」


「いや、まだだ」


 真っ黒メガネに真ん中白衣という、不気味なスタイルのアノムスに掌を向ける。待ったをかけた。

 俺は再びシルフォに目を向けて、ボソッと話しかける。


「アイツ、どんどんコントローラーを変えて行ってるけど、倒せてんの? キューブもサウンドも、自分からしまわれた気がすんだけど」


「……そうだな」


 シルフォはチラッと俺を見て、直ぐにアノムスに視線を戻した。


「100%貴様の言う通りだろう。奴は己のタイミングでコントローラーを変えている。サウンドやキューブが、後々もう一度出て来る可能性は高い」


「だよな」


 だとしたら、長い長い戦いになりそうだ。面倒くせぇ。

 まだクロノスが残されているってのが一番嫌だ。何気に、一番苦戦した気がするしな。……バイブレかも知んねーけど。


「とにかく、攻撃は続けねーとな。やるぞお前ら!」


「「指図するな」」


「えぇ……」


 何だコイツら。こういう時は仲がいいんだなド畜生がよ。どうせ戦うんだから頷いときゃいいだろ。

 さてと、今度こそお喋りタイムは終了だ。いくぜ、シャドウ・ビジョン──!!


「……学習出来ないのかな? アウドラ」


「さーな、どうだろーな!!」


 影と俺の二人、サシルベ・ブレードを展開してアノムスに突っ込む。

 ──本体。つまり俺は、アノムスを目前にして急ブレーキをかけた。その頭上を、影の俺が飛び越す。

 バックステップと同時に、腕のスイッチを一つ押して、ストップを発動。アノムスには殆ど意味はないようだが、一瞬くらいは気を逸らすことが出来るだろう。


「オラァアアア!!」


 まず影の俺が縦切りをするが、当然の如く躱された。ここで、影の出番は終わり。

 影が即座に消滅し、その背後から切りつける!!


「ウルァアアアアアッ!!」


 全力の横薙ぎは、デカい注射器にヒット。流石に、重くて弾き飛ばすことまでは出来なかったが、アノムスがバランスを崩し大きな隙が出来た。

 信じてるぜ、仲間を!


「吹き飛べひょろ長キツネ!」


 悪口を言いながら、ココアが放った火炎弾。俺も巻き込まれる形となったのは少し納得がいかないが、アノムスの胴体に直撃。

 更に体勢を崩し、宙に浮いた状態のアノムスに向かって、音速で飛びつくシルフォ。

 ワイヤーの様な物で、アノムスの身体を縛りつけた。

 倒れもせず、立ててもいない不思議な状態で固定されたアノムスを見て、同じく吹っ飛んだ俺も起き上がる。


「いやー、流石シルフォとココア。俺に続いてくれるって信じてたぜ、サンキューな」


 複数のワイヤーの様な物を握り締め、アノムスの身体を支え続けるシルフォは、不満気に俺を睨みつけて来た。いや何で?


「信じてくれるのは有り難いが、ストップを押されたら我々も動けないだろうが馬鹿者。もう少し考えてから動け」


「……アレ? もしかして俺って、ストップ押せてなかった?」


「私が動けているのだから、当然だ」


「…………」


 じゃあ俺、何のボタン押したんだ? 確かに押せはした筈。感覚があった。

 ……あ、影がもう一体いる。


「あっぶね! 俺の作戦的には押してて正解だったけど押せてなくて、押せてたらシルフォ達が動けず、やられてたかも知んねぇのか!」


「少し考えれば分かることだろう……」


 色々な意味で危なかったな今。おっ死ぬとこだったわ。

 特に、変身ボタンを押してなくてよかった。もし押してたら、攻撃出来てないどころか影も消えるし、ココアのがヒットして死んでた。

 マジで危ねぇ。


「ふふふ、呑気に話していていいのかい? 二人とも。僕はまだ、倒されたわけではないよ?」


 背後から全身を縛られているアノムスが、ワイヤーの様な物が食い込んだ顔で、不敵に笑う。ヤベェ笑いそう。

 更にシルフォが締めつけて、首元に刀を添えた。


「アノムス、今直ぐ全てのコントローラーを解除しろ。そして破棄しろ。そうしたならば、首を刎ねるだけで済ませてやる」


 最早殺意しか読み取れないくらいドス黒い表情で、シルフォは言った。

 それはもう、死ぬ以外に道がないんだわ。首を刎ねる()()に、「だけ」はないんだわ。どうやったってその後はないんだわ。

 そんな、選択肢があるようでないシルフォの命令を聞いて、


「ふふふ……」


 ──尚アノムスは、笑みを浮かべ続けた。


「待てシルフォ! いつの間にかコントローラーの種類が変わってる!!」


 ココアの大声にビビったが、即座にアノムスの体を見た。

 さっきまでは、揺らめく赤・白衣・真っ黒コートだったが、赤い部分はなく、デジタル系の緑色に変化していた。

 どの組み合わせもクソ酷い。


「貴様、逃げるつもりか……!」


「やめろシルフォ力入れんな! このまま裂いたらコントローラーが爆発するだろ!」


「……っ! そも、コントローラーのクロスはそう簡単に切れない! ()()()()叩きつける!!」


 シルフォが、振り被ってアノムスを宙に浮かせる。身長百九十センチくらいある巨体を簡単に持ち上げられるって、改めて怪力だなコイツ。


「惜しいね、気づくのが遅かったよ」


「はぁああっ!!」


 シルフォが壁に向かって、ワイヤーの様な物でアノムスをぶん投げた──筈だったが、それは空振りに終わった。

 ワイヤーの様な物で身動きが取れなかった筈のアノムスが、途中で姿を消したからだ。


「緑のポリゴン……ピクセル? 何て言やいいんだ? とにかく、そんな感じで消えて──」


 ゲームみたいな消え方をした。アノムスの姿は何処にもない。

 ……が、ある一ヶ所に向かって、強く踏み込んだ。


「──移動した!」


 ()()()()に右手を突き出す。デカい注射器に阻まれ、狙った首には届かなかった。


 アノムスは、シルフォの右隣に、消えた時と同じように現れた。


「……危ない危ない。まさか、君が容赦なく急所を狙って来るなんてね」


「チッ……そこにいたのか糸目ノッポめ」


 アノムスは俺に、シルフォはアノムスにそれぞれ不満気な顔を向ける。

 つくづく俺らって情けない奴らだなって思うよな。相手に対して、ガキみたいな悪口ばかり言うし。

 主に、シルフォと俺な。


「意外か? 俺の動体視力と勘の良さを舐めんじゃねーぞ」


「まぁ、さっきは普通に騙されそうだったけどね」


 ほくそ笑みやがったな。うるせーよ忘れろ。あん時は頭が回んなかっただけだ。

 俺は野性的な勘の方が強いんだよ。


 俺とシルフォは一旦アノムスと距離を取り、再びトークタイム。と言っても、最中に攻撃されないわけじゃないだろうし、警戒は怠らない。


「さっきの……立体的じゃなくて、視覚的には平面に見える緑のあったろ。何か細かいのが」


 説明が分かり難いだろうが、残念ながら俺は、アレをどう表せばいいのかが分かんねぇ。

 どの角度から見ても、形が変わらない平面の四角形だった。緑色の。


「身体がその四角いやつに変化して、蒸発したみてぇに消えた直後、お前が今立っているその場所に、うっすらと緑に光る、ほっそいサークルみたいなのが浮かんだんだよ。分かり易過ぎる」


「それは当然知っていたけど、まさかアウドラが気づくなんてね」


「お前は俺をバカにしてんのか?」


「舐め切っていただけさ」


 ほぉ。次こそ首を思い切り刎ねてやる。もういい躊躇いやしねぇぞ。

 丁度、俺とシルフォで挟む形になったしな。


「シルフォ、あの緑のコントローラーは? 反応してたから知ってんだろ?」


 アノムスの気を少しでも逸らせるように、というのも込みで問いかける。シルフォは真剣な面持ちで、静かに頷いた。


「『エスケープ・コントローラー』だ。能力はその名の通り、脱出などになる」


「……厄介な能力だな」


「ああ。しかし、その代わり武器を持たず、逃げることに特化したコントローラーだ。単体であれば脅威ではない」


「単体なら、な」


 シルフォとココアが目を細める。恐らく、カウンターを警戒して動き難いんだろう。

 これまでの敵は、コントローラーを使用するのは一人一つだった。だがアノムスは違う。一度に、二、三種類のコントローラーを扱う。

 今で言えば、エスケープの他にアナライズとメディカル。主に回避に特化した組み合わせだ。厄介過ぎる。


「エスケープで逃げて、アナライズで分析。メディカルはオマケでも、分析さえ済んじまえば他ので蹴散らせるしな」


「せめてアナライズを奪えれば勝機があるが……」


 確かに、シルフォの言う通りだ。分析されなきゃ、元は勝ち取ったコントローラー達。どうにかなる。

 アナライズ・コントローラーも体内に埋め込まれているわけじゃなく、メガネなので奪うことも可能な筈だ。さっきからそれを狙ってるし。

 つまりはあのメガネを奪えれば、問題という問題が減るわけなんだが。


「うーん、これじゃあチート過ぎるかぁ。流石にね」


 ──何やら、アノムスのアホがボソッと言いやがった。チートとか知ってんのな。


「それだとつまらないし、アナライズとエスケープは取っておくことにしよう。その代わり、この組み合わせはどうかな?」


「……っ! テメェそれ……!!」


 メガネを外し、アナライズが解除された。それと同時にエスケープのクロスも消滅。メディカルだとなった。

 だが、アノムスが次に手にした、十字形のコントローラーは、絶望するに値する物だ。


「させるか──!!」


 俺とほぼ同時にシルフォが突っ込むが、到達するより一瞬早く、紫色の光がアノムスを覆った。

 この時間は無敵状態になるのか、俺とシルフォの刃がそれぞれすり抜ける。クソ、遅かった!


「嫌な記憶が一気に蘇ったぜクソ野郎……! 初めてアシュレイドと戦ったのも、死にかけたのも、絶望したのも、鼻が折れる恐怖を覚えたのも、そのコントローラーを使った相手の所為だ……っ!」


「アウドラにとってもシルフォにとっても、忘れられないコントローラーだろうね」


 妖しく笑うアノムスには目が行かず、かつての戦いが思い出されて、半分ではあるがそのクロスをじっと睨む。脚が竦むし、手が微かに震えてる。


 ──クロノス・コントローラー。

 とうとう、来やがった。


「シルフォ、アウドラ。アレはお前ら二人とレインが担当したコントローラーだったよな? どんな能力を持っている?」


 このメンツで、当時別の任務だったか何かで、ビワにすらいなかったココア。名前も知らないのだろうか。


「ありゃあクロノス・コントローラーってやつで、ビジョン・コントローラーの上位互換みたいなもんだ。時間に関してはな。当時は、レインすらボコボコにされたようなコントローラーだ」


「……なるほど。それは骨が折れそうだな」


 俺の場合は、鼻を折られた。能力が原因ではないが。

 今の内に取るべき行動を確認しておこう。以前戦った際はどうやって倒したんだっけ?


 まず、これは使用者がウォーブだったのが問題なのかも知れないが、シルフォどころかレインの速度ですら、辿り着く前に停止させられた。

 ただ、シャイン・コントローラーでならそれを掻い潜れる。

 能力専用武器(アビリティウェポン)・《スォイフ・クロッグ》は、瞬時に巻き戻しや停止を行える、最強格の武器。

 そして知る限り唯一、全てのボタンを同時に押すことで、世界を崩壊させて行くことが可能なコントローラーだ。

 破壊力は、攻撃で崩壊を始めたバイブレの方が上だろうが、並んで強力と言える。


 ──あの時は、過去に戻って攻撃したんだっけな。

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