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ビジョン・コントローラー  作者: ☆夢愛
第3章(最終章)最後の戦い
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第3話 フレイム・アナライズ

 ──刃は、コントローラーのクロスに覆われた肉体を裂くことはない。

 それでも、この全力を持ってすれば、少しくらいはダメージになる筈だ。


「オラァアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」


 振り下ろした腕に更に力を込め、アノムスの細長い身体をぶっ飛ばす。《サシルベ・ブレード》に持ち手があれば、もっと楽なんだがな。

 何でこんな、腕から伸びるタイプなんだよ。リーチは思いの外あるが、戦い難い。


 ……それより、あの野郎何でガードもしなかったんだ。


「ま、受けて立つって意味なのかも──」


 咄嗟に、高速で突っ込んで来る何かを躱した。危ねぇ、目を狙われた。


「……わざと吹っ飛ばされたってわけか」


「隙を狙ったつもりなんだけどね、流石だ」


 ゆらりと立ち上がったアノムスのクロスは、先程までと違っていた。

 右はブロックのままだが、左は紅蓮に揺らめき、実体がないようにも見えるクロスだ。

 まさか、この短期間でもう一度見ることになるとはな。


「そのコントローラー、フレイムか」


 ヨノギ戦の最中、髑髏メガネと共にやって来たチビ。そいつがマスターとなっていたのがフレイム・コントローラーだ。

 アノムスは「御明答」と手を叩くと、その左手に炎を出現させた。

 多分だがアレは、能力専用武器(アビリティウェポン)だ。見た感じ、炎の剣ってとこだろう。


「アノムス、お前俺と近接格闘でやり合うつもりかよ? 言っておくが、それに関しては自信がある。負けねーぞ」


「武器の使い方は一つじゃない。確かに、君の刃みたいな直接叩くしか脳がない物ならそうだけど、《ブレイズ・ソード》はもっと別の使い方が可能だ」


「あ? やっぱめんどくせぇ感じなのか」


「うん、当然」


 フレイム・コントローラーは、炎を操るだろ? で、あの剣は燃えている。さっき飛んで来たのは恐らく炎だ。

 ……火を飛ばして来るとかそんなとこか?


「あのチビは首切り包丁だったからなぁ。多分自前だったし」


 能力専用武器(アビリティウェポン)を使ってくれなかったし、シルフォとココアが喧嘩してて集中出来なかったしで、イマイチ把握出来てないんだよ、フレイム・コントローラーのこと。

 まぁ、分かりやすく炎を操るけど。それくらいは名前だけで察せるけど。


「どの道全部に警戒……」


「考え事は済んだかい?」


「今喋っただろうが丁度!!」


 言い切る前に炎の斬撃波が飛んで来た。反射的に転がったから躱せたが、深く息を吸い込んでたから結構苦しい。

 ──斬撃が直撃した背後の壁は、横一線の切り込みが入りそこから、チロチロと炎がはみ出している。


「バカみてぇに破壊する武器じゃないってことは分かった。切れ味だって《サシルベ・ブレード》より数段上だな」


 もう、とっくに《サシルベ・ブレード》が最弱クラスの武器だってのは察してるけどな。

 圧倒的に何も出来ねーもん、この刃。赤くカッコつけた感じにされてるだけで、特殊能力も無く、ただ叩き切るくらいしか出来ねー武器だもん。

 そんで、クロスが邪魔で大したダメージ行かねーし。

 もう分かってるし弱いって。


「うーん、外れちゃったねぇ。もうちょっと精度をあ・げ・た・い・なっと」


 人知れず愚痴っていたら、アノムスが気色の悪い喋り方で何か言った。精度がどうとか。

 その手には、またもや最近対戦した覚えのある、真新しさも懐かしさをも欠片も感じない真っ黒メガネが現れた。


「アレだ。史上最ダサコントローラーだな。マグロだか何だかっていう髑髏杖野郎が使ってたやつだ」


 リーダー・ロプトのメディカル・コントローラーにも度肝を抜かれたが、見た目だけに絞れば最もマヌケに見えるのが、あの……


「アナライズ……だな」


 隣でそう呟いたシルフォに、「そうそうそれ」と頷いておく。

 そうそれ。炎とかキューブとか超音波に比べると、凄ぇ地味なやつ。

 と言っても、動きを計算されてしまうのは非常に厄介だ。一旦キューブの方は放置して向こうを狙おう。

 にしてもフレイムの出番クソみたいに短かったな。


 そう考えている間に、アノムスの変身が完了した。


「分析を開始しよう。……と言っても僕は、アウドラ以外の面々がどんな動きをするかは、大体把握出来てるけどね。それに──」


 アノムスが、全く似合わない真っ黒メガネ姿で気味悪く笑う。

 しかしコントローラーが作動する暇もなく、アノムスは強烈な斬撃を受け吹き飛んだ。シルフォの攻撃だ。


「……君達ならアナライズを、ちゃんと警戒するだろう」


 仰向けで倒れるアノムスは、ぶっ飛ばされる前の言葉に繋げる。ゆっくりと身体を起こして、メガネをクイッと上げた。

 その光景を黙って見ていたら、少し手前に立つシルフォが舌打ちをした。


「チッ……外したか」


 悔しそうにというよりは、苛立っている様子のシルフォ。俺はよく分からないまま頷いた。

 ……いやだって、アノムス吹っ飛んだだろ? 切り傷がないとは言え、確実にヒットしたのをこの目で見てるしな。音もしっかり響いた。

 なのに「外した」は、おかしいよな。


「予測出来ていたからね。言っただろう? アウドラ以外の君らがどう動くか……共に戦って来た中で学習したんだ」


「ふん、まるで『当たるわけがない』とでも言いたげだな」


 会話を聞く感じだと、本当に外したらしいな。正確には躱された、か。

 うん、分からん。


「君とアウドラは既に一度、このアナライズ・コントローラーと一戦を交えている。シルフォに関しては、二度かな。だとしたら、真っ先にやることなんて限られているだろう?」


 アノムスが不敵な笑みを浮かべつつヒントをくれたため、俺もようやく答えに辿り着けた。なるほどなるほど。

 シルフォは、アナライズ・コントローラーを要警戒しているから、先制攻撃を仕掛けたわけか。変身はされたけど、何かされる前に倒そうとしたんだ。


「ああ、メガネを外してやればクロスは解除されるからな」


「ふふ。そう上手く事は運ばないよ」


「……」


 ……………………あー、そっちか。あーあーそっちかなるほどなるほど。へぇ。

 シルフォは先制攻撃を仕掛けたというよりは、アナライズ・コントローラーそのものをひっぺがそうとしたのか。あーそっちかへー。


「……ってシルフォ何やってんだ! もしコントローラーに傷でも入って爆発したら──」


「そんなヘマをするか。貴様じゃあるまいし」


「やんねぇって保証は何処にもないだろうがよ……!?」


「私を甘く見るな無能人間」


「何だとテメェ」


「──騒ぐな」


 俺とシルフォがいつもの様に言い合いをしていると、超大型ブラスターを構えた状態のココアに止められた。

 呆れたような感じだったよな今の声。バカにしてんのかお前。


「そもそも、コントローラーが破壊されることくらい奴も注意しているだろう。爆発には自分も巻き込まれる筈だからな。そうならないよう自分から避けるだろどうせ」


「どうせって」


 ココアが少し不満そうに右頬を膨らませる。まるで、「アイツの考えは分かってる」的な言い方だった。

 ま、納得が行く筈ねぇもんな。ココアにとっては、今ここにいる中で、最も古い仲間だった奴なんだからよ。

 ──にしても、アイツは思いの外簡単に口を滑らせてくれるな。有り難い。


()()()の連中がどう動くかは予測出来るんだな? だったら、まだ付き合いが浅い俺が相手してやりゃあいいわけだ。これ以上深い関係になることもねぇがな!」


 シルフォよりも一歩前に出て、ニヤニヤして気持ち悪いアノムスに刃の先を向ける。いい感じに決まった。

 ──と思ってたら、後頭部に軽い打撃が襲いかかって来た。シルフォの手刀だった。何しやがるバカニンジャ。


「バカか貴様は」


「何だと? 戦闘中に手刀噛まして来るバカに、バカとか言われたかねーよバカ」


「貴様、アナライズ・コントローラーの能力を、もう忘れたのか?」


「あ?」


 忘れるわけねーだろ、簡単な名前ついてんのによ。「分析」「解析」だ。そもそも髑髏メガネと戦ったばかりだっつんだよ。


「はぁ、哀れだな。何故そこまで低能に生まれて来てしまったのか」


 シルフォは、やれやれといった感じで深い溜め息を吐く。ぶっ飛ばしてぇこのクソ痴女ニンジャ。

 まるで「バカでも理解出来るように」、みたいな口調で、シルフォは「いいか?」と指を立てる。うぜぇ。


「あの巨大キツネは、我々、貴様以外の戦士の動きを予測出来ると言ったんだ。ここまでいいな?」


「んなこと分かってるわ」


「そして貴様は、身の毛のよだつ程の低能を存分に発揮し、奴の策に引っかかったんだ。分かるか? 理解してくれると助かるのだが」


「お前バカにしてんだろ」


「無論だ」


 俺がアノムスの弱点を見抜いたつもりが、逆に誘われていたんだと言いたいんだろう。このバカは。

 けどよ、俺が突っ込もうが何だろうが、お前らもいるんだから状況は変わらねぇじゃねーか。


「……ダメだったみたいだ」


「ああ、残念だな」


「何だテメェら人を憐れむように見やがって」


 ダメだったみたいって何だこのクソニンジャ。絶対今の解釈で合ってるだろ。そんで、俺の考えも間違っていない筈だ。


「あまり、頭の方は成長していないみたいで安心したよアウドラ。一対一でやったのなら、僕は確実に君に勝つことが出来る」


「何だとキツネ目。言ってんだろ、俺だって身体能力には大いに自信があんだってよ」


「だから、その考えがもう既にいけないんだって」


 おかしそうに笑われて、少し後ろからは蔑むような視線を感じる。何だっつーんだよテメェら全員。


「アウドラ、分からないのか? アナライズ・コントローラーがあるということは、お前の動きも段々分析されていくということだぞ」


「……でもま、お前らもいるから問題ないだろ」


「私達の動きは、既に分析されているも同然だ」


「あのキツネは、貴様を突っ込ませてアナライズで分析し、全員の行動パターンを予測出来る状態にしようとしていたんだ」


「……あー」


 ただ誘われていたんじゃなくて、アナライズ・コントローラーの能力で俺を、ほぼ無力化しようとしてたってわけね。簡潔に纏めると。

 だったら最初からそう言えや。


「だとしても、どの道戦っている内に分析されんだろ。変わらないのも事実だ」


「アウドラ、お前は本当に()()()()ようだな。倒し切れずに分析を済まされれば、勝ち目はなくなる。ただ闇雲に、普段通りに挑むのではなく、100%解析されないように器用に立ち回る必要があるんだ」


「……」


 そんなこと言われても、このコントローラーで出来ることなんて限られているんだが。

 普段からフルに使って戦っているから、本当に変わりようがないんだが。


「まずは手本を見せてやろう、アウドラ。──ハッ!!」


 シルフォは刀を構えると、三人に増えた。確かに普段は見かけないな。この分身の術っぽいのは。


「私達の場合はパターンが既に、アノムスの脳に刻まれている。そのため足掻くことくらいしか出来やしないが、まだ新参者の貴様は違う。続け!」


「手本見せてくれるんじゃないんかい!」


「身体で覚えろ!!」


「それしかないんだろどうせ!」


 三人並んで駆けて行くシルフォの後を追い、アノムスに突進して行く。えーっと、なるべく普段やらない行動を取ればいいんだよな?

 ──とか、数秒の間で必死に考えていたら、


「死ねアノムス──!!」


 シルフォが三方向に分かれ、同時にアノムスに斬りかかった。

 ……いやお前増えただけでいつもと変わらないじゃん。


「視えているよ、君達の考えはね」


 全員の攻撃をバックステップで躱したアノムスは、自分から向かって左側のシルフォの、頭を掴んだ。

 ──そしてその身体は、小さな爆発で散った。


「チッ……!」


 ココアが舌打ちをする。今のは、シルフォとココアのコンビネーションアタックだったみたいだ。凄ぇな何も相談せずにって。

 あ、正面のシルフォが退いた。つまりコレはアレか。俺もやれってことだよな。よし。


「フックーーーーーーーーーッ!!」


 鼻フックに見せかけた、メガネ外し攻撃。極普通に避けられ、炎の弾でぶっ飛ばされた。まぁまぁ熱い。


「ダメか、クソ。マジで警戒してんだなそこは」


「当然だろう、マヌケが」


「うるせぇ、お前に言われたかねーんだよ」


 何だあの三人同時攻撃は。せめてコンマ数秒くらいの時間差攻撃にしろよ。三人に増えた意味あんのか。


 またも睨み合いの時間がやって来たが、相手は未だ気味の悪い薄ら笑いを浮かべている。


「さぁ、次に行こう。コレなんてどうかな?」


「「あ……」」


 シルフォと、ココアが分かりやすく怯んだ。俺は別段、変わった気持ちはない。

 ──ただ、アレも奪われたんだと、少しムカついた程度だ。


「我らがリーダー・ロプトがマスターだった、『メディカル・コントローラー』のお出ましだよ」

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