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ビジョン・コントローラー  作者: ☆夢愛
第3章(最終章)最後の戦い
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第2話 サウンドとブロック

 アノムスの両肩の上方に現れたコントローラーは、片方だけ俺が知っているやつだ。

 何せ、俺が必死で戦った相手が持っていた物だから。


「──サウンドか。嫌なもんだな、もう一度それと戦うことになるってのは」


 異世界コード『Missto』、ネグロ王国。そこの王様を殺してその座を奪っていたアシュレイド……名前は聞いた覚えがないが、そいつがマスターとなっていたコントローラーだ。

 超音波攻撃をしてきたり、人間じゃ聞き取れない音を感じ取って、消えている俺を見つけたりと、非常に厄介だった。マジでやり合いたくない。


「クソ……もう対峙することないと思ってたのによ。何でまた苦労しなきゃなんねぇんだよ」


「ふふ。過去のおさらいと考えるのも有りかも知れないよ。どの道、このコントローラーと戦うことは避けられないさ」


「んなことは分かってんだよクソ野郎。もう一回戦うのが嫌なだけだ」


 ニヤニヤ気持ち悪い目を向けて来るキツネ目に、中指を立てる。分かんだろそんくらい。

 サウンド・コントローラーはめちゃめちゃ厄介だが、以前やり合ったことで対策や対応は考えられる。より警戒すべきなのは、もう一方だ。


「シルフォ、右側に浮いてるコントローラーは何だ? 分かってるだろうが俺は見たことがない」


 中心に立つシルフォに耳打ちする。別に聞こえてもいい気がするけど。

 前に言ってたフレイムかブロックの可能性があるが、アイツが奪っていったのは計十一個。他にも知らないのがある筈だ。

 シルフォはアノムスから目を離さず、シノビ・コントローラーを起動した。こんな近くで変身すんなビビるわ。


「貴様が来る三年程前に手に入れた『ブロック・コントローラー』だ。以前は他の者がマスターとなっていた」


「……」


 つまり、元々はアシュレイドがマスターであって、倒して奪って、ビワの誰かがマスターになったわけか。

 ……んで、そいつは死んだんだ。浮かばれねーなこんなの。


 ブロックをコントロールするってのは、どうなんだ? どうなるんだ? どんな能力があるんだ? 全く想像つかない。

 努めて冷静に脳を回転させていたら、視界の端でココアも変身した。何を思うのか、マグナムっぽい銃を睨みつけている。


「思えば、彼の死は唐突だったな……アレも全て、お前が仕込んだものだったのか……?」


 銃をギュッと握り締め、アノムスに鋭い眼光を向けるココア。その目には怒りだけじゃなく、悔しさも混じっているように見える。


「フェオが命を落としたことに、僕は関係していないよ。残念ながら、彼は実力で負けただけだ」


 アノムスは肩を竦めて、悲しそうな声色で答えた。あの感情が本心なのかは、もう一切信じられない。

 俺の場合、元から信用はしていなかったけどな。


「アウドラ、君も変身しなくていいのかい?」


「……っ! 今しようとしてた所だよ!」


 急にこっち来たから驚いたが、アノムスのオーラに気づいて直ぐに変身した。もう誰も音声認証しねぇな。めんどいからか?


 ──そしてアノムスも、二つのコントローラーのスイッチを押した。


「さ、始めよう。僕と、君達にとっての最後の戦いだ」


 キツネ目を少し開いて、おぞましく微笑むラスボス。バカが考えた衣装みたいに、半分ずつのコントローラーのクロス。

 頭おかしい奴にしか見えねぇ。


「お前なんかに殺されるべきじゃなかったんだ、ロプトも……!」


 変身したばかりのアノムスに容赦なく弾を放つココアと、出会ったばかりにも使用していた気がする、起爆札をばら撒くシルフォ。


「「死ね……!!」」


 そして、元々仲間であった奴に軽々と言える筈のない言葉を、二人同時に叫んだ。ヤベェよコイツらやっぱ。

 ──なんて唖然としている内に、大爆発が起きる。思いの外近かったのか、爆風が凄ぇ。


「……開幕を祝う花火かな? 凄い迫力だったねぇ」


 …………おお? 何だありゃ。デカい立方体が固まってやがる。


「って分かるわな。それがブロック・コントローラーの能力か」


「そうさ。ブロック・コントローラーは()を操る。このようにガードしたり──広範囲に攻撃することだって可能だ」


「ストップ!!」


 反射的に叫んだ。アノムスも、シルフォもココアも、周囲に待機している仲間達も停止する。

 ──その仲間達の上方に現れた、直径2m程のキューブも降下を中断する。


「これ、味方だけでも解除出来ねぇのかよ! クソッ!」


 シルフォを揺らしてみるが、反応はない。ココアも同様だ。

 ってことは、俺が仲間達を避難させなきゃならないわけだ。


「ダメだ、この人数を全員移動させることは不可能……!」


 全力で仲間達を担ぐが、十数名を、ほんの一分程度の間に安全な場所へ、運べるわけがない。

 間に合わない────なら!


「頼んだ俺!」


「おう!」


 シャドウ・ビジョンで影の俺を召喚。残りの仲間達を移動してもらう。

 俺は、こっち側は何とかなったから、今は様子を見よう。キューブがどんな動きするか分かんねぇし。


 ──そしてストップが解除されると、宙にあったキューブが勢いよく落下。物凄い振動だし、食らったら一溜りもないな。

 仲間達は全員避難させられたようだ。全員「何事?」って顔をしているが。


「シルフォ、サウンドもだがブロックにも充分な注意を……」


「アウドラ、ストップを使ったのか? 皆をありがとう、助かった」


「おう! 気にすんな!」


 ……。そうだった。今俺、影がいるから視えてないんじゃんな。

 どうでもいいことだけど、影を出すと総スカンされてるみたいで寂しいんだよな結構。


「流石だね、アウドラ。ここに来る前から怪物だっただけはあるみたいだ」


「「……おう、お陰様でな」」


 俺と影の二人で答えた。理由としては、アノムスは今、()()()に言ったわけじゃないからだ。

 影も答えたのは、シルフォ達に気を遣ったから。

 アノムスの視線は、確実に()()向けられている。


「何だよ、やっぱり視えやがるのか」


「そうだね、ハッキリと。ついでに、ストップにも抵抗出来る。完璧に動けるわけではないけど、戦うくらいなんてことないよ」


「はっ……そこまでのバケモンとはやりたくねぇな本当に。これがゲームなら苦情が来るんじゃねーの?」


「ゲームはプレイしたことがないからねぇ」


「知るかロン毛ギツネ」


 またまた中指を立てる。ついでに舌打ちもしておいた。

 因みに、今の会話は本体の俺が喋っていただけだから、シルフォは影の俺を見て困惑している。口開いていないからな。

 でもお前、ここまで何度シャドウ・ビジョン見て来たんだよ。影だって分かれそろそろ。ココアは理解してるっぽいぞ。


「それじゃあ、続けよう。攻め続けるけど、どうにか出来るよね? 期待しているよ」


「おお! 期待してやがれクソが!!」


 俺何回「クソ」って言うんだよ、お口が悪うございますなぁ。

 ──なんてふざけている場合ではないことを、一瞬で悟った。

 アノムスの左手の上に、無線機のような物体が現れたからだ。アレはマジでヤバい武器の一つだと思う。


「シルフォ、ココア!! あん時と同じだ気をつけ……」


「分かっている! 使わせるものか!!」


 ネグロ王との戦いを思い出して叫んだら、シルフォが弾丸みたいな速度で突っ込んで行った。無線機はまだ起動していない。


 サウンド・コントローラーの武器……アレ名前知らねーな。とにかくあの無線機から発せられるのは、強力な超音波だ。

 以前の戦いでは、アレを使われて呆気なくぶっ飛ばされた。クロノスの停止や巻き戻しもクソみたいだったが、身動きが取れなくなるのはアレも同じだ。


「シルフォ、正面から突っ込むのはいいけど、防がれたら意味がないだろう」


 シルフォの短刀が、一瞬で現れた一つのキューブに邪魔をされた。


「くっ……!」


「ほら、どうにかしなきゃ」


 ──そして、超音波が襲いかかって来る。

 頭が割れるうううううううううううううううううっ!!


「踏ん張れお前達! っぉおおおおおおお!!」


「ココア……っ!」


 一人攻撃に耐え、ブラスターをぶっ放すココア。今シルフォ、アノムスの目の前にいるが!?


「……っ!!」


 ほら、爆発でシルフォが吹っ飛んで来たじゃねーか! 一応超音波は止まったから助かったけど!

 ……こんな一瞬しか食らってないのに、ふらふらする。チクショウ。


「シルフォ、無事か」


「ああ、助かったココア……」


「立てるか? 休んでいても構わないぞ」


「ふん、水着ガンマンに借りを作るなどごめんだ」


「……終わったら決闘だな」


「望むところだ」


「お前らバカみてぇなこと言ってんじゃねぇぞ」


 何でラスボスを前にしてまで、喧嘩ばかりしていられるんだろうか。ビワの連中は血気盛ん過ぎるだろ。

 ──さて、吹き飛んだわけじゃなく、バックステップからキューブの盾で身を守ったアノムスは、どんな顔しているだろうか。


「……」


 無言でただ、柔らかく微笑んでいただけだった。薄気味悪い。


 ところて気がついたんだが、あの野郎二つしかコントローラー使わないな。十一個のコントローラーのマスターになったくせに、一度に二つが限界、とかか?

 ……いや多分、違うな。一定数ダメージ受けたら次に、みたいなゲーム感覚なんだろう。今のアイツはそういう奴の筈だ。


「だとしたら、後々にクロノスとかが控えてんのか。地獄だな。簡単に食らうつもりもねぇみたいだしよ」


「……だな、確実に過去一大変な戦いだろう」


 俺と考えていることが同じなのか、シルフォも溜め息を溢す。だよな、十一個分ってしんど過ぎるよな。

 今まで一つで限界だったのによ。


『皆、よく聞いて!』


「ユーニ!」


 外でこの部屋を観察しているユーニからの通信だ。イヤホンとかを必要とせず、直接脳に届ける技術、俺の世界にもあれば便利だろうなぁ。


『アノムスがやろうとしているのは、正にゲームだよ。一つ一つ、コントローラーを解除するんだ!』


「解除!? どうやって……!?」


 これまで、いくら追い詰めても変身が解けたことないぞ!? そんな無理難題押し付けられても……


『アノムスは今、十一のコントローラーと一体化してる。アノムス自身にダメージを与えれば、コントローラーを解除することが出来る!』


「取り敢えず、どの道ぶっ飛ばせってことだよな。つまりは。シンプルに言ってくれた方が助かるんだが」


『まぁ、とにかく最初は()()()()()()()()()()()()()()()()()ことだけ考えて!』


「了解」


 剥がすってのは、解除すればいいってことだよな多分。ひたすら攻撃するしかないって状況は理解した。

 けど、十一個のコントローラーを解除出来るくらい攻撃したら、アイツでも流石に死ぬんじゃねーの? 普通に。


「アイツを普通って見るべきじゃないか……っていうか、ユーニ。お前何でアイツがやろうとしてることが分かってんだ?」


『……アノムス自身が、教えてくれたんだよ』


「……そうか」


 なら仕方ないな。本当にそういうゲームってわけか。

 自分を倒せるのかどうか。勝てるのかどうか。アイツは本気で試しているってことだろう。

 余計なことをするんじゃねーよ。お前は何か別の生物なのか、もしくは生物でもないとか言うのかも知れねーけど、あのまま終わりでよかっただろ。リーダーを殺す必要もなかっただろ。

 仲間で終わりじゃ、何か許せなかったのかよ。


「はああああああああああっ!!」


 再び突っ込んで行ったシルフォだが、さっきと同じようにキューブに阻まれた。

 ──だが、まるでそれが狙いだったかのようにキューブを蹴り、高く舞い上がる。アノムスも追うようにシルフォを見上げた。

 その隙を狙った、ココアのライフル。


「おや……」


 ライフルの弾速はかなりのもので、キューブが現れる前に無線機を弾いた。アノムスも間の抜けた声を出す。

 そして、上空から降り注ぐ、クナイの雨。勿論シルフォだ。


「ああ、危ない危ない」


 危なげなくキューブで防いだアノムスに、間髪入れず影と突っ込んで行く。既に《サシルベ・ブレード》は出してある。

 こんな攻撃食らわないだろうってことは察してる。それでも、一瞬でも俺に集中させれば、誰かは仕掛けられるんだ。


「アノムスうううううううううううううううううっ!!」


 それでも決して手は抜かない。クナイの雨が止むタイミングで、射程範囲内に入る。


 お前は折角戦って回収したコントローラーを奪った。そして力にした。

 お前はあんなにも信頼してくれていたコイツらを裏切った。それでも「愛しい」なんて言いやがる。


 ふざけんじゃねぇ。俺はよくても、コイツらにとってはどれ程ショックだったか……!


「来い、アウドラ……!」


「オラァアアアアアアアアアアアアア──────ッ!!」


 俺の振り下ろす刃が、何故かガードをしなかったアノムスの腹に、叩きつけられる。

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