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ビジョン・コントローラー  作者: ☆夢愛
第3章(最終章)最後の戦い
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第1話 勝てると信じましょう

「シルフォ、こんなところにいたのか。部屋にいるんだとばかり思ってたから、探し回ったぞ」


 いつか来た、壁画のある最下層。そこにシルフォはいた。

 まさかこんな場所に行ってるとは思わないから、地上は全部訪ねたぞ。物凄い疲れたわ。


「……私に用があるのか、アウドラ」


「ああ」


 壁画に向いたまま返事をされた。何だか、いつもの雰囲気とは違って見える。

 凡その見当はついてるけどな。俺も、それについて話しに来たんだし。


「アノムスは、結局敵だった。お前らが必死こいて集めたコントローラーを、全て自分の物にした。そんでもって、挑戦状を叩きつけて来た」


 アノムスはビワの参謀、そして2番目に強いか何かの戦士だ。皆が信頼していた奴が最後の敵となるなんて、そんな裏切りはない。あって欲しくなかった。

 今度は何も返さないシルフォだが、俺は構わず続ける。


「言っちまえば俺は、結構初めの頃からアイツに違和感があった。怪しさを感じていた」


 俺の視界に入るところでは絶対に、戦う姿を見せない。コントローラーを使う様子もない。なのに、ビワのナンバー2だからな。

 怪しくないと思う方が、どうかしていると俺は思う。

 そう言ってしまえばビワの連中、殆どが当て嵌るが。


「……お前が気づいたのは、やっぱ少し前か? 俺が言った後なのか?」


 少し訊き難い質問だったため、一瞬口篭った。

 でも訊いておきたいんだ。俺はシルフォをバカだと感じているが、アイツの嘘を見破れないマヌケとは思えない。


「ナタリーから聞いたんだ。世界樹が枯れた時、アイツはユーニと共にいたと。お前が敵を一掃した後、直ぐに世界樹を見に行ったわけじゃないって。アイツは嘘をついていた。それが今なら分かるだろ」


 俺だけじゃなく、ナタリーだって勘づいていた。

 ナタリーはずっと俺の背後、遠くの建物から援護してくれていたが、恐らくアノムスを監視していたんだ。独断で。

 俺がシルフォ達に敵視されてもただ一人、共通の認識を持つがために俺と接触した。きっと俺と二人で、協力するつもりだったんだよ。


「ここからは容赦なく言わせてもらうぞ。俺が間違ってたか? あの、世界樹が枯れた時。あのアイツを確保しておけば、こうはならなかった。お前らビワの連中が招いた悲劇だ。仲間だからって油断してるから……」


「質問の後に喋り続けて、いつ答えろと言うんだマヌケ」


 ──お前が中々口を開かねぇから、答えねーんだと思ったんだよクソニンジャ。

 シルフォはすくっと立ち上がり、澄んだ瞳を俺に向ける。悔しさでも悲しさでも怒りでも侮蔑でもなく、決意したような、凛々しい顔をしていた。


「貴様の言う通りだ、アウドラ。コレは、私達ビワの戦士が、苦楽を共にした仲間を疑うことが出来ず、招いた結果だ」


 気味の悪いくらい素直に、自分を責めている。大丈夫か? アシュレイドとの戦いで疲れ切ったか? 熱でもある?

 ──俺は空中で三回転半して床に伏した。絶好調じゃねぇかコノヤロウ。


「貴様の質問に答えてやろう。私がアノムスの異変……いや、異様さに勘づいたのは1年程前だ」


 髪を掻き上げるシルフォは、気づけばシノビ・コントローラーを持っていた。襲いかかって来るかは分からないから、俺もビジョン・コントローラーをポケットの中で触っておく。

 まぁ、大丈夫だとは思うが。


「一年って、何でその間アイツを問い詰めたりしなかったんだよ」


「仲間を疑いたくなかったのもあるが、確証などがなかった。『怪しい』だけで敵と決めつけるのは、私の正義反する」


「……ケッ。アイツを疑った俺のことは殺そうとしたくせにな」


「仕方ないだろう、信じたくなかったんだ」


 仕方ないわけないだろうが。何で変な奴を疑うだけで殺されなきゃなんねーんだよふざけんなバカ。

 信じたくないことくらいは分かる。それでも俺を抹殺するのはお門違いだ。それこそ、アノムスの掌で踊ることになる。

 もう、遅いけどな。


「アノムスは、これまで、貴様がやって来るより昔から集め来たコントローラーを全て、持ち去った。そしてどういうわけか、全てのコントローラーのマスターとなった。いわゆる、最強の敵になったということだ」


「ああ、そんなことに今頃気づいてんのはお前くらいだと思うぜ」


「奴の正体は不明。アシュレイドでもなければ、ここで生まれたわけでもない。未知の生命体というものなのだろう」


「ああ、そーだな」


 正直、改めて話す内容じゃないよな。とっくに分かり切っていることだと思うんだよな俺は。やっぱバカかコイツ。

 何より、シルフォと和解出来たのはよかった。一応、戦闘中に多分出来ているんだが。


「貴様のお陰で目が覚めた。やはりアノムス……奴は、生かしておくべきではない」


「名前じゃなくて別の部分を躊躇って言えよ。それと俺のお陰だってんなら、謝れ一回でいいから」


「断る」


「断んな」


 全く悪いと思ってなさそうなシルフォは、シノビ・コントローラーをリュックのような物にそっと入れた。

 襲われることはないみたいだな。俺も、手を離しておこう。殴られるのは警戒したままだが。


「……ところで、アウドラ」


「あん?」


 シルフォが、俯きながら名前を呼んだ。何だか、モジモジしている。

 ……トイレ行きたいのか? いや、多分違うよな。何だ?


「ロプトが亡くなり、古参の一人であるココアは泣いていた。それを、ユーニが頭を撫でて慰めていたんだ」


「へぇ、何かそれ、想像すると凄ぇ光景だな……」


 身長が低いユーニと、高いココア。きっと、ココアは膝枕をされていたに違いない。

 身長差的に、ココアが立ってたら、ユーニが何かに登るしかない。ココアがソファーに座っていても、ユーニは立つ必要があるだろう。

 ……普通に立ってかな?


「……で、それが?」


 ココアが泣いて、ユーニに慰められていたと伝えられたところで、特に何もなくないか? ユーニ優しいなぁくらいしか感想なくね?

 俺が少々困惑していると、シルフォはギロッと睨みつけて来た。と思ったらキュッと口を結んで、またモジモジし始めた。


「わ、私もアノムスが敵なんだと受け入れて、ショックだったんだ! これから仲間を切り刻んで肉片にしなくてはならないのかと、怖かったんだぞ!!」


 怖ぇのはおめーだ。

「私がやらなきゃいけないの? そんな……」とかみたいな切ない話じゃない。倒さなきゃというだけで、何故切り刻まなくてはならないという思考に至るんだ。

 流石にアノムスに同情したくなるわ。お前のサイコパスレベルは一般人とは程遠いんだよ。


「くっ、ここまで言っても察せないのか……! この鈍感が……っ!」


 何故か悔しそうに睨みつけて来るシルフォ。熱湯被ったみたいに真っ赤だぞお前。怖っ。

 ──本気で心配しかけたら、胸ぐら掴まれて血の気が引いた。いつもと違う! 殴るんじゃねぇのか!?



「私を慰めてくれって言っているんだバカアアアアアア──ッ!!」



 ────────は?


 何、叫んでんのコイツ。涙目で。

 多分俺今信じられないものを見る目になっちまってる。マジで信じられないし。

 とにかく頭を整理して、と。


「……いや、何で俺がお前を慰めなきゃなんないんだよ」


「し、ショックを受けたんだと……」


「だからって!? 泣いてもないしそこまで落ち込んでいるように見えねーんだけど!?」


 人を三回転半させる元気もあるし。今涙目ではあるけど。

 でも本気で意味が分からないからな……。


「いいから……私だって、誰かに甘えたいんだ……」


「甘えたいって言われても……」


 シルフォが再び俯く。何か俺が悪いことしてるみたいで気分が悪い。

 よく見たら胸の前で手を握り締めていて、無性に頭を掻きたくなった。だからめっちゃ掻き毟った。

 コイツも、確か俺よりも若い頃から戦って来たんだもんな。しゃーない。


「……言葉は見つかんねぇから、黙ったままな」


「……っ」


 頭を撫でるのは何だかめっちゃ恥ずかしいから、シルフォの視界を覆うように抱き寄せた。

 シルフォは俺にピッタリとくっつかると、小さく肩を震わせた。顔を胸に擦りつけて、途切れ途切れに息を吐く。

 気持ちが溢れたのか、嗚咽を漏らす。その身体を、包み込む様に抱き締めた。


「あーっ! シルフォのこと泣かしちゃってる〜。レインに教えてあげなきゃ!」


「おわっ!? ユーニ!? エリナさんまで……!」


「中々やるじゃないアウドラ君」


 ニヤニヤする二人にハッとして、シルフォを引き剥がす。シルフォも涙を拭った。


「違うかんなコレは……っ! ていうか、レインにどうやって教えんだよ!?」


「二人共、皆に知らせてくれ。アシュレイドのアジトへ向かうと」


 ユーニ達が俺のツッコミに反応する前に、シルフォがいつもの凛とした声で言った。お前はそうじゃなくちゃな。

 シルフォに優しい笑みを向けたユーニは、何かを手渡した。丁度シルフォで見えなかった。しかももうしまってやがる。


「もういいの? 甘えたいだけ甘えてていいんだよ?」


「いやそれ俺のセリフじゃね? 何勝手なこと言ってんだよおい」


「大丈夫だ。帰って来てから、()()からな」


 ふっ、と。シルフォも柔らかに微笑んだ。何を盗るつもりだ。

 ユーニとエリナさんは何を強奪するか分かるのか、ニッコリと笑いかけている。教えてくれと切実に思った。



「これから、最後の戦いへと赴く。敵はこれまでの相手より格段に厄介だろう。準備はいいか? 引き返せやしないぞ」


 ──いつもの広間に集まった戦士達に、シルフォが不安そうな目を向ける。失うのを恐れているように、一人一人をじっくりと焼きつけていく。

 共に最終決戦へと向かう仲間達は、真剣な眼差しで頷いた。


「手を抜くな。予め言っておくが、奴のことは忘れろ。仲間だったことなど頭から捨てろ。アノムスは敵だ。いいな」


 続いて、アイロン・コントローラーを握り締めたココアも。これにも、少し躊躇いの間があったが、全員が頷いた。


「そんじゃあ行くぜ、皆。あのキツネ目を倒してコントローラーを回収して、本当に戦いを完結させる!」


「おーう」


「何で俺が言う時だけダルそうなんだよ!?」


 思わずツッコミを入れると、笑いが巻き起こった。緊張は解けているみたいだが、そんな風に笑わなくたってよくないか?

 俺をいじっただけじゃねーか。


「行くぞ! アシュレイドのアジトへ──!!」


 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 ──アシュレイドのアジトは、何か如何にもアジトって感じの建物だった。全体的に黒い、要塞のようなデケェもんだった。

 好きだねぇ、悪役。こういうの。


「こんだけ広けりゃアイツ捜すのも手間だな。どうするシルフォ、ユーニ。どう分かれる?」


「こっちだ、全員ついて来い」


「あら……?」


 手分けした方がいいと思ったんだが、シルフォ達はどんどん進んで行く。お構いなしか。幾ら他の敵がいないからって。


「アノムスからのホログラムメールが届いてね、マップを送って来たんだ」


「あー、なるほど。あの野郎、正面から来られても負けねぇって意味か?」


 本当に嫌な奴だ。初めて会った頃から思ってたけどよ。あの糸目が。


 階段を上り下りしたりして暫くすると、長〜い廊下が現れた。こんなん外から見た時はなかったよな。

 シルフォ達が躊躇いなく進んで行くから、俺もついて行く。


「罠ってことはないよな。辿り着いた瞬間攻撃とかよ」


 俺がボソッと言うと、シルフォはこっちに目もくれずにフッと、鼻で息を吐いた。


「奴の自信からしてそれはないだろう。正面から堂々と私達に勝つつもりだ」


「……ま、そりゃそうだよな。アイツがこれ以上小細工をするとかは、俺も考えられない」


 見えて来たぜ、大扉が。あの先から嫌って程感じる。

 間違いなくアノムスだ。空気自体は別モンなんだけどな。


「覚悟はいいか、お前達」


 扉に手を添えたシルフォが、恐らく最後の確認を取る。全員が、それぞれ決意表明をした。

 俺もシルフォに微笑みかけ、そっと肩を叩いた。


「勝てると信じましょうぜ、リーダー」


「勝つさ」


 俺とシルフォでグッと扉を押し開く。アシュレイドのボス戦にありがちな、異様に広い部屋が現れた。

 円形のステージみたいな場所がド真ん中にあり、周辺はまるで観客席。落ちたら危ないな、戦ってる最中に。

 ──そして、その円形の舞台には、アノムスが笑顔で待ち構えている。


「相変わらず気味の悪い笑顔しやがって。向けられて心地いいもんじゃねぇんだよそれ」


「言ってやるな、あの顔が悪い」


「お前こそ言ってやんな」


 ココアの指示で、コントローラーを持たない仲間達は観客席 (じゃないけど)から囲むように配置される。

 俺とシルフォとココアの三人は、階段からアノムスのいるステージへと上がる。


「やぁ、僕の愛しい仲間達。正真正銘最後の戦いを始めようじゃないか」


 アノムスの両肩の上に、コントローラーが二つ現れた。

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