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ビジョン・コントローラー  作者: ☆夢愛
第2章 アシュレイドとの決戦
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第19話 ギガント・コントローラー

 こういうのを災害って言うんだろうな。一薙ぎで周囲の建物を吹き飛ばしていやがる。

 ……言っちまえば、ただ暴れ回っているだけの脳筋なんだが。

 まぁ脅威であることに違いはない。


 常に距離を取っていなければ、破壊された家の瓦礫を受けることになる。しかし近づかなければ、俺とシルフォはマトモに攻撃すら出来ない。ココア頼みになってしまう。

 普通に考えりゃあデカい的で、ブラスターが有効とも思える。けど、いかんせん鎧が邪魔だよな……。


「そのまま巨大化しただけだから、さっきまでと同じで殆ど意味がない。それどころか、デカくなった分こっちの攻撃が弱くなったも同然……やっぱ問題はあの鎧だよ」


 家の屋根を飛び移りながら声に出していたら、どうなってんのかシルフォが追い越して来た。お前凄ぇ離れてたよな?

 言っておくが、空中移動に足の速さは殆ど関係ねーぞ。まさか踏み込みの強さだけで追い上げて来たとか言わないよな。

 脚力どうなってんだ。


「鎧が邪魔だなどと、赤子でも勘づくようなことを今更気づくな」


「赤ん坊はそこまで考えられねーだろ。アレを見て泣くか笑うかのどっちかだ」


「どうだかな。無表情の可能性もなくはないだろう」


「あんな爆音立ててるデカいの見て、動じない赤ん坊がいるのかよ……」


 可能性はゼロではないとしても、その数値は限りなく低い筈だ。赤ん坊は変顔ではアホみたいに笑ってくれるし、大声にはスコールの如く泣き喚くんだからな。

 後者は、たまに雷鳴とも言えるくらい恐ろしいものもあるが。


「ココアちゃんはどう思いますか。赤ん坊は泣くか笑うか無反応か……」


「ギガント・コントローラーの能力が判明していない分命懸けでもあるが、鎧を剥がせるか挑戦してみる。隙間に爆裂弾を滑り込ませられれば、弾き飛ばせるかも知れん。そこまではいかなくとも、鎧が浮き一瞬だけ隙が出来るだろう」


 ……ココアの兄貴は、完全に無視だった。下らん会話をしている余裕はない、ということだろうか。

 その通りなんだが、その作戦も中々だぜ。肉眼で見た感じ、鎧の隙間なんてのは殆どない。あったとしても極僅かな幅だ。

 改めて、どんだけガチガチにしてんだってドン引くわ。


「試してみる価値がないことなど、この状況においては一つもない。ココア、私達にも指示を頼む」


 鎧が重くて、その上デカいから空気抵抗が凄いのか、鎧野郎はノロノロとした速度で迫り来る。そんな光景を見据えながら、シルフォはココアの提案に頷いた。

 無駄なことは一つもないってお前さ、今ここで俺が「全裸になって気を引いてみる」とか言っても認めるつもりか?


「アウドラ、後で五発だ」


「そんなに殴るつもりか……」


「それとココア」


 シルフォは俺の抗議を完全に無視して、ココアを呼んだ。間にいる俺は、少し後ろに下がっておく。

 巨大な的を前にして不安そうなココアは、ほんの少しだけシルフォに顔を向けた。


「……何だ?」


「アノムスとユーニが信じられなくなった今、指揮を執るのは貴様だ。頼りにしているぞ。絶対に勝利へ導け」


 とんでもなく理不尽なことを、ココアに課した。何だ「勝利へ導け」って。自分でも行動しろよ。

 するんだろうけど。

 こんな急に指揮官に指名されても、大抵は何も出来ないだろ。ココアに負担をかけんじゃねーよアホニンジャ。


「……そうだな。どの道、奴を倒す他ないんだ。だとしても期待はしてくれるなよ?」


「期待などするか、ハレンチ野郎なんかに。ただ、指示されたことには従うというだけだ」


「ふっ…………じゃあまず最初の指示だ。私を二度と侮辱するな」


「それは指示ではないだろう。そして却下だ。さぁまずはどうする? 水辺で撮影会でもするか?」


「お前の頭を吹っ飛ばしてやろうか……?」


「お前ら何で結局喧嘩してんの!?」


 凄ぇよコイツらマジモンのバカだよ! よくもまぁこんな状況で殺し合いに発展しそうな会話出来るな!? ビッグ鎧野郎直ぐそこだぞ!?

 ──って危ねぇ!!


「……ちゃっかり先に回避してやがんのなあの二人。俺はお前らの所為で判断遅れたっつーのによ」


 だが、結構離れててもあの長い槍が届くってことが分かった。アイツの動きの早さ次第では、追撃が来たら非常にマズイな。

 空気抵抗様々である。ナイス大気!


 再び距離を取れたのはいいが、代わりにシルフォ達と離れちまった。不思議なことに、俺と同じ方向に跳んだ筈のシルフォはココアの隣にいる。瞬間移動でもしたのか。


「これじゃ策戦決行なのかやっぱやめ〜なのか分かんねぇな。ココアの動きを観察しつつ、こっちはこっちで対策練るしかないな」


 ただ、他の策を考えるといっても、あのフルアーマーと巨大化してリーチがバカな槍が邪魔過ぎる。特に何も思い浮かばない。

 あの決定的な弱点である鈍足を突いた策だとして、そもそも鎧がある分ほぼ無駄だしな。

 やっぱ鎧どうにかしてぇな。何だあのボス。顔くらい見せろや。

 何でボスとかって、ああいった仰々しい格好が好きなんだろうな。


「ま、今みたいに有利になる場合もあるからかもな。ただカッコつけたいとか見かけだけでも強そうに、とかだったら鼻で笑ってやるけどよ」


 静かにシャドウ・ビジョンを発動して、鎧野郎の行動を観察する。意外にも、俺ではなくシルフォ達を狙い始めた。

 基本、他より弱いって分かってる奴を先に倒して、出来るだけ数を減らすって戦法が多かった気がするアシュレイドにしては、結構珍しい。


 ……うん。別に弱点とかではないが、段々分かって来たな。どっちかと言えば憶測に過ぎないけど。


「口数が信じられないくらい減ったな。こんだけ躱されてるのに能力を使おうともしない」


 隣の影と目を合わせて、家から飛び降りた。俺なんて眼中にないのか、鎧野郎は完全に尻を向けてる。


「俺のこの憶測が正しいのかどうか……シルフォが言っていたように、試してみる価値もないことは今、殆どない。もしかしたら、これで勝機が見えて来るかも知れないしな」


「おう、行くぜ本体」


「ゴー!」


 わざと見つかりやすくするために大声を出して、鎧野郎に急接近して行く。俺と影はそれぞれ、奴の左右に陣取る予定。

 ──知ったところで何か気づけるかも不確かだが、やってみねぇと始まらない。


 奴はさっき、返信した直後には声を出していた。普通に話していた。だから喋れなくなったは違う筈。

 俺の予想では、なるべく喋りたくない状況下にいるということだ。

 多分。恐らく。きっと……


「なぁアシュレイドのボス! まさかそのコントローラー、変身以外に能力がない訳じゃねぇよなぁあ!?」


 ──実は他のボタンが一切ないのでは?


 これが俺の憶測。もとい推測だ。

 だって、ただ槍を振り回して破壊作業を繰り返し続ける鈍足が、能力を使わないのは変だろう? それに、ギガントをコントロールするって時点で、何が出来んのか分からんし。

 あんな携帯電話みたいなコントローラーの癖して、ボタン一つしかなかったら笑うんだけども。


「──どれだけ阿呆なら気が済む。一つな訳がないだろう」


 そんで返って来た答えがこれ。残念ながら、俺の読みは外れたということか。

 まぁ、シルフォ達から一瞬だけだとしても気を逸らせたし、その間にアイツらも少しは離れられたっぽいし、よしとしよう。

 悪いことは、俺が思いの外近づき過ぎた程度だ。


「二つだ!」


「どの道二つしかねぇのかよ!?」


 衝撃的な答えも、ついでに返って来た。あながち間違いとも言えなそうだぞ俺の推測。

 まだ攻撃しなそうな雰囲気だったので、本体の俺自身だけ猛スピードで退避した。

 ここから影と鎧野郎だけが暫く会話。任せたぜ俺。


「……ってことは、そのもう一つのスイッチは《能力専用武器(アビリティウェポン)》か。巨人が使ってた武器でも出すのかよ?」


 何か、神話だし凄ぇ武器とかありそうだよな。巨人だから剣はないと思うが、巨大ハンマーとか?

 素手で戦った可能性もあるし、武器ではないか?

 ……あ、そもそもコントローラーの名前が関係あるとは限らないわな。俺のが刃なのは意味不明だし。


「察しの通り。──ならば見せてやろう、ギガント・コントローラーの大いなる武器を!」


 いちいち雑魚感が満載のセリフを吐きながら、鎧野郎は天高く掌を掲げる。こういう時、鎧さえなければ隙だらけなんだけどな。

 アニメとかそういうので、大体主人公達はその様子を眺めているだけだが、この隙に逃げるだの攻撃するだのと思考は働かないのかね。


「いでよ『ミョルニル』──!!」


「それは絶対に違うだろおおおおおおおおおおおお!?」


 鎧野郎の頭上で、めちゃくちゃ細い稲妻が轟く。神々しく仰々しく輝きを放つ、掲げた左手。そこに、鎧野郎の身の丈程ある超巨大なハンマーが現れた。

 何だ、その。演出がバカみてぇなんだが。

 因みに俺の悲鳴は鎧野郎にしか聞こえていない。


「これが、ギガント・コントローラーの《能力専用武器(アビリティウェポン)》。全ての武器において、抜群の破壊力を誇る」


「んなこと知らねぇけどな、神話に謝れ取り敢えず」


「逃げなくていいのか? 貴様ら全員、被弾範囲にいるというのにな──!!」


「ヤベッ!」


「逃げろ影!」


「そりゃお前もだ!」


 シルフォもココアも当然俺二人も、一目散に駆け出す。取り敢えず高く跳んでみた感じ、近いとこには味方はいなそうだ。

 だからきっと外れる。全員無傷で済む。

 ──そう思っていた。


「破滅へ導いてやる!!」


 地に巨大ハンマーを叩きつけた鎧野郎の周囲に、感覚的に視える衝撃波が広がって行く。ハンマーの先を中心にして、円状に。

 衝撃波は建造物を破壊して行くというよりは、崩壊させていた。遠目に見れば「粉々」、とも言える。


 かなり走っている筈なのに、まだまだ収まらない。未だ拡大が終わらない。

 アイツの言葉通り、本当に破滅が始まったかのような恐ろしさを感じた──。


「…………あのクソ野郎、やってくれやがったなチクショウ」


 ギリギリ躱し切った俺は、自分に軽くのしかかった瓦礫を押し退けて立ち上がる。

 ……え? ホントホント。一応躱し切れた。最終的にずっこけて、近くで崩れた物の一部が乗っかってただけ。マジで。コレマジだから。


「全くよ、何だこの有り様。ついちょっと前に転居したってのに、前方最早更地じゃねぇか」


 瓦礫塗れだというのに、更地な訳がない。そんなことを心の中で思いながら、周囲を見渡した。

 辛うじて視認出来る距離に、一応建物がある。半壊してそうだが。

 あそこまで逃げ切れたんなら、ビワの連中は無事だろう。

 ただ、ナタリーの遺体回収は、困難となった。


「……生命探知機みたいなのねぇか? こんな状態だからか、静まり返ってやがる。味方の誰の気配もしねぇ」


 まさか全員巻き込まれたなんてことはないだろう。まず、シルフォとココアは俺より離れていて、一足早く走り出していた筈だ。

 そんで、シルフォに至っては俺より速い。まず無事だ。

 ……だが俺がギリギリだったんだから、その他がどうかは分からない。


「あんのジジイ……俺が怒らねぇと思ってんなら勘違いだぞクソ野郎。こんなに荒らされて、危機に陥って、まず理解出来ねぇまま戦うことになった俺に対して、同情くらいしてくれてもよくねーか!?」


 後半は、未だに引き摺っている心からの抗議だった。

 少し前までは無人なだけの、まだ建物も無事だったこの世界。今は見渡す限り瓦礫の山。

 そんな道なき道となってしまった、道だったであろうがもう道ではない道を進んで行く。瓦礫の上は歩き難い。

 暫くする訳でもなく最初から見えていた、巨人野郎を遠くに見据えた。


 ──奴は何故か、鎧姿ではなくなっていた。言ってしまえば、パンツ一丁スタイルだった。

 そのパンツと思しき、下半身を殆ど覆うのは、前後にあるタオルみたいなものだった。

 つまり、デカい所為で丸見えなのだ。言葉通り目に毒である。


「おい、変態オヤジ。テメェ何いきなり露出狂になってやがる。何で顔だけ隠して他全部曝け出してやがる。シルフォのことよく言えたなおい」


「……ふん、生きていたか運の強い奴め。この姿はミョルニルの衝撃波によるものだ。本当は纏めて殺すつもりだったんだがな」


「よかったな身軽になれてよ。あと神話に謝れ。それと座る時は気をつけろよ。ケツの穴とタ〇キンに瓦礫が食い込んだら悶絶もんだか──」


「埋めるぞ、アウドラ」


 下は瓦礫だというのに、全体重かけながら踏み潰された。超痛ぇんだが。特に脛とか。まさか飛び乗って来た訳じゃねぇよなテメェ。

 明らかに視線が明後日の方向に行ってるシルフォは、最早全裸となった鎧野郎改めアシュレイドのボスに、ビシッと剣先を向けた。


「これで肉片に出来るな」

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