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ビジョン・コントローラー  作者: ☆夢愛
第2章 アシュレイドとの決戦
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第18話 ユニバース・コントローラーの在り処

「生身で殺し合うことも出来ぬ臆病者が……! 私の手で肉片にしてやる!」


「鎧に身を包むのも戦略の内だ。寧ろ、刃を持つ相手に下半身を露出して立ち向かうなど、バカ丸出しだろうが!」


「だから好きでこんな格好しているわけじゃないっ!!」


 ──俺を蚊帳の外にして、人を見下しまくる二人が攻め合う。クナイや短刀が武器なシルフォは、リーチが圧倒的に不利だ。

 やっぱシノビ・コントローラーのスーツはおかしいよな。ユーニ作だけど。人によっちゃ興奮するとか言い出すぜアレ。

 下は大事なところしか隠せてないし。


「今ストップ押すのは危険だよな……。アイツを倒すことも先決と言えるが、アノムスを捕らえるのも急ぐべきじゃねぇか?」


 シルフォに聞かれないようにボソボソ呟いていたら、突然シルフォがバックして来た。まさか聞こえてたとか言わねーよな。


「貴様はまだアノムスが怪しいなどと宣うのか? 本当に殺されたいか」


「やっぱ聞いてたのか地獄耳がよ。ああ思ってるよ。お前は知らねぇだろうけどな、あの鎧野郎と話してほぼ確信した」


「……そうか」


「あん?」


 斬られることを警戒していたら、シルフォは肩の力を抜いた。深い溜め息を溢して、ポツリと言う。


「その話は、この後にしよう。まずはアシュレイドのボスを切り刻む」


「刻むのはお前だけでやっとけ……」


 意外にも、反論して来なかった。さっきみたいに俺の首を刎ねようともしない。

 真っ直ぐ鎧野郎に突っ込んで行き、ひたすら攻撃を続けるだけ。全て鎧や槍で防がれる様子を見ると、勝てる気がしない。


 シルフォの奴、アノムスを信じ切っていた訳ではないのか……?

 ──思えば確かに、いつもじゃないけどクールに装うシルフォにしては、俺に刃を向けるのが早かった。何も話を聞こうとしなかったのも、不思議に思える。

 まさかシルフォも、ほんの僅かだとしても……アノムスを疑っているのか?


「……話は後、だよな。よし。何が通用すんのか分かんねぇけど、やれる限りスタミナだけでも削っておこう」


 クロノスをアノムスが使っている恐れがあるのなら、ストップは無駄。過去に戻ったところで何か出来ることがあるとも思えないし、シャドウ・ビジョンも視えてしまうことが発覚した。

 つまり、ビジョン・コントローラーの能力は殆ど意味がないということ。 《サシルベ・ブレード》も鎧で弾かれるんだから……泥臭く食らいつくしか出来ないんだ。


「いいぜやってやるよそんなの慣れっ子だわ! 瀕死になりながらもあんのクソメガネに斬りかかった! 今更なんてことないわあ!!」


「やるなら早くしろ馬鹿者」


「おう」


 呆れ顔のシルフォに返しつつ、シャドウ・ビジョンを発動した。よっ、また会ったな影の俺。

 確かにこの能力は通用しないっぽいぜ。けどな、攻める人数は多い方が有利なんだよ!


「行くぞシルフォと影!」


「おい俺、本体の声はシルフォには届かないぞ」


「じゃあ代わりに頼む」


「おっし! やるぞシルフォと俺!!」


「え? あ、ああ……?」


 シルフォが、幽霊でも見たような目を向けて来る。俺本体ではなく影に。

 ムカつくけど、俺が視えていないんだから仕方がない。


「三人纏めて相手をしてやる」


「え、三人……? あ、アウドラが影を使っているのか」


 状況を把握したらしいシルフォと、影の俺は横に並んだ。俺は全力疾走して背後に回り、前後からの同時攻撃を仕掛ける。


「タイミングが合えば合うほど、簡単に防げるものだろう」


「うおっ!? っぶねぇ!」


「チッ!」


 鎧野郎は大きく回転した。鼻のすれっすれを、槍の先が通過する。

 シルフォと影も無事避けられたみたいだが、体勢を崩したため一旦距離を取る。

 そうそう近づかせてくれねぇなこれは。


「……さて、集まって来たようだな」


 ──鎧野郎が見上げた屋根の上には、水着姿のココアが立っていた。何だか不機嫌そうな顔をしている。


「中々珍妙なナリをしているが、それがアイロン・コントローラーのスーツか。死んでも着たくないな」


「私もこんなのだとは思わずマスターになったよ、最悪だ。……が、このコントローラーのお陰でお前を討てるのなら、安いもの」


 常に水着コスプレで戦わせられてるようなものなのに、安いのか。この鎧野郎を倒せると決まった訳でもないのに。

 ところでお前もシルフォも、何でそんな険しい表情なんだ? やっぱボスを目の前にしてるから?


「……アシュレイドのボス。貴様に質問させろ」


 ココアが、2メートル級のブラスターを立てながら言った。こんな状況で堂々と質問っスか。

 アイツさっき戦いは中断しない的なこと言ってたし、無理じゃね?


「構わん、何だ?」


 いいんかい。シルフォと俺は構えた状態だし、隙があればまた仕掛けるつもりなんだが。

 一呼吸置いたココアは、鎧野郎に一層力の込められた、鋭い視線を向ける。


「ユニバース・コントローラーは、誰が持っている……?」


 ココアの発言を聞いて、俺もシルフォも鎧野郎から目を逸らした。

 確かそれって、ビワを創り上げたおっかないコントローラーじゃなかったか? まさか、残りのアシュレイドが持ってるってのかよ。

 この場の全員が鎧野郎に注目する。けど鎧野郎は、まるで呆れたとでも言うように、槍を地に立てた。


「貴様らは分からんのか? 何故何の力も持たなかった、作り物でしかない貴様らが、他所の世界からコントローラーを奪えるのか」


 その言い方はまるで、こっち側に何かがあるみたいだ。


「初めはコントローラーを持っていなかったというのに、どうやって我々と戦った? そしてどうしてビジョン・コントローラーやメディカル・コントローラーを奪えた? ()()()()()()()()()()がいる筈だろう?」


「──え」


 いや、ち、ちょっと待てよ? 冗談にしては笑えねぇだろそれはよ。それじゃアノムスじゃないだろ? 別の奴のことを言ってるよな?

 戦闘には一切参加せず、縁の下の力持ちとして活躍し続けた奴が、俺達の仲間にはいるんだから。



「ユーニトロ・ボルフィネット──奴が、ユニバース・コントローラーを隠し持っている」


「……っ!!」


 息を、呑んだ。このおっさん、断言しやがったのか。

 名指しで断言ってことは、ユーニがそれを持ち運んだのを見たのか。あるいは本人がそう言っていたのか。恐らく前者だろうけど。

 アノムスじゃないって知った瞬間、次に疑わしいので浮かんだのはユーニだった。まさか本当に、アイツらグルだったのか……?


「シルフォ、聞いたか」


「……ああ、予想通りだったな」


「はっ? お前らも疑ってたのかよ!?」


「薄々、そうなんじゃないかと思っていただけだ。私のシノビ・コントローラーを創り上げたり、ビジョン・コントローラーを修理したり……ユニバース・コントローラーの創造力がなければ不可能なことをやってのけたんだからな」


 嘘であって欲しかった。そんな感情が、シルフォの表情に溢れ出ている。

 そうだよな……アノムスとグルだとかどうだとか以前の話だったんだ。少し考えれば分かることだったってのに、言われるまで気づかなかった。


「ユニバース・コントローラーは世界を創造する、恐ろしい代物だ。アレは俺が管理させてもらう」


 空気も読まずに、声だけで笑っているのが分かる。何だあの鎧野郎。そんなん嘘だって分かるだろ普通に。

 悪事ばかり働いて来た奴が、悪巧みをしないなんて考えられねぇ。どうせ利用するに決まってる。

 当然、シルフォとココアも俺と同じ気持ちだ。


「寝言は死んでから言え木偶が。ユーニが如何なる理由でユニバース・コントローラーを隠していても、彼女が悪用するのでないのならそれでいい。貴様は違うだろう?」


「……まぁそうだな。隠すつもりも毛頭ない。ユニバース・コントローラーの力で世界を創り上げるのが目的だ」


「だろうね」


 それ以外に、こんな殺し合いしてまで奪う理由なんてないだろ。自分が望む思い通りの世界が創れるんだからそうするだろうよ。誰でも分かるよ悪役が考えそうなことなんて。


「なら渡す訳にはいかないな。そもそも渡す訳がないが」


「ユーニは後で問い詰める。返答次第では幽閉することにはなるだろうが、それだけだ」


 シルフォとココアは、各々武器を構えた。鎧野郎も槍をシルフォ達に向ける。

 ユーニを幽閉しても、コントローラーのマスターなら安心は出来なくないか? ぶん取っておけばいいのか?


「貴様らの中には裏切り者が存在するぞ。それとユーニトロ・ボルフィネットが共謀していた場合、ユーニトロ・ボルフィネットがコントローラーのマスターになっていたならば、怪しんでいるのを勘づかれた時点で終わりだぞ。裏切り者を探さなくていいのか?」


 時間を稼ぐというよりは、掻き乱すのを楽しんでいるような声色だ。狂人ってのは怖いねぇ。

 シルフォもまぁまぁ狂人だが。


「……そっちの目星もついているようなのでな、同じように後で問い詰めるさ」


 一瞬だけ、シルフォの瞳が俺に向けられた。ユーニと同じようにゲロらせる訳ね、りょーかいりょーかい。

 んでそんでもって?


「まずは貴様を解体する。二人についてはその後でいい。まずは不安要素を徹底的に取り除いてからだ」


 ギロッと鎧野郎を睨みつけたシルフォは、全員に配られたユーニと繋がる通信機を口元に近づけた。


「聞こえていたな、ユーニ。そこで待っていろ。もし逃げ出そうものなら……貴様はもう信用ならん」


 ユーニに忠告するシルフォの声には、一切の棘が感じられなかった。悔しさと祈りが垣間見える、そんな声だった。

 ユーニが敵じゃないことを願う。そういうことだろう。


「ココア、殺るぞ」


「ああ、当たり前だ」


 シルフォは両手に札がついたクナイを構え、ココアはブラスターを向ける。戦闘再開みたいだ、俺も頑張ろう。

 ……にしても、シルフォの言葉には何か違和感があったな。「戦うぞ」的なのとは違うように聞こえた。


「愚かだな。ビワの主力がここに揃っていて、他がどうなるか分かっていないのか。敵は俺だけじゃない」


 ここで引き裂くつもりだったのが見え見えな鎧野郎は、構えつつほざく。安心しろよ、まだリーダーがいる。

 それに、ココアがやや遅れてやって来たのはきっと、コントローラー保持者を一人は撃破したからだとも思うし。


「問題ねぇよ。まずはお前をぶっ飛ばして、『ギガント・コントローラー』を回収する。んで、残りがいたらそいつらも倒して、その次にユーニとアノムスを囲めばいいだけだ」


「ああ、それが最善だろう。アシュレイドのボスを名乗る者がどの程度やるのか、不明だからな。私達三人であれば、取り敢えず問題はないだろう」


「だよな。ぶっちゃけるとビジョン・コントローラーの能力は殆ど無駄。だから俺は、奇襲中心に戦う」


「了解した。撹乱も頼んだぞ。隠す必要もない策戦は単純だ。私が攻め、アウドラが惑わせる。ココアが援護だ」


「そうするしかなさそうだもんな。任せたぜ」


「ああ。ただ、アウドラに一つ指摘することがある」


「……この後に及んでアノムスは違うとか」


「『ぶっ飛ばす』のではなく『ぶっ殺す』んだ」


「……」


 いや、分かってるけどよ。分かってるけど、口に出したくはねぇじゃんそんなこと。シルフォには理解出来ないのかも知れないが。


「……仕方ない。ユニバース・コントローラーを相手にすることになった場合に奥の手で使うつもりだったが、俺も使おう」


 鎧野郎が、ガラケーみたいな形した機器を取り出した。もう説明されなくても何か分かってる。

 分からないのは、何処から出したのかくらいだ。


「シルフォ、ココア! 来るぞ!」


「妨げることは不可能だな。『ギガント』か……一度離れるぞ!」


「「おう!」」


 ギガント──つまり巨人であると踏まえて、俺達は距離を取る。ココアによれば、巻き込まれると思われる範囲に仲間はいなそうとのこと。

 ……悪い、ナタリー。この戦いが終わったら、どんな姿になっていようが見つけるから。

 ありがとう、俺の味方をしてくれて。



「ギガント・クロス──!!」


 巨人族の衣装か何かでしょうか? それ。中々見ないコスプレになりそうだな。

 ──なんてふざけていたら、鎧野郎は神々しい天の光に照らされた。そして、姿は見えないが巨大化していくのが分かる。

 やっぱり巨人ってか。神話に沿っているつもりなのか、その演出はよ。

 ギガントをコントロールするというか自分が巨人になってんじゃねーか。


「さぁ、何処からでも来るがいい。俺に敵うなどと、妄言を吐くのならばな」


 サイズは、家よりも遥かにデカい。その上鎧はそのまんまだ。

 能力はまだ分からないが、存在自体が過去最強であるのは間違いない。

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