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ビジョン・コントローラー  作者: ☆夢愛
第2章 アシュレイドとの決戦
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第16話 決着……?

「静かになって来たな……」


 屋根の上から、周囲を見渡す。さっきまで殺伐としていた空気は────未だ同じだった。

 だが、さっきまでのとは違う。少し前までは、アシュレイドの威勢のいい雄叫びが聞こえるような状況だったが、今は恐ろしい断末魔ばかり。


 ビワの、勝利だ。


「アウドラ、貴様こんなところで何をしている。残りのアシュレイドも全て殺せ、逃げ帰られたらどうするんだ」


 青い返り血塗れになったシルフォが、俺の近くに飛び乗って来た。

 お前よくそんなで女とか言えんな。殺人マシーンでいいわ。


「何度も言ってっけど、俺は殺す気になんてなれねーんだよ。そこまで非道にはなれねーの。残ってんのは雑兵ばかりなんだから、お前らでやれ」


「今やっているだろうが、貴様が動かないから我々だけで。いい加減その情けない意志をどうにかして欲しいものだな」


「情けないとか知るかよ。メガネやヨノギのことだって、仕方ないからやっただけだ」


「全滅させることも必要なことだ戯け」


「どうとでも言え」


 目も合わせずにいると、シルフォは舌打ちして降りて行った。

 ビワの連中と絶対に分かり合えないのは、その点だ。俺は敵であろうと化け物であろうと、人の形をした生き物は殺せない。

 今日メガネとヨノギを斬れたのは、ヤケクソだったからだ。


「……サイレン擬き。終わったぞって合図か?」


 戦いの前にも聞いたサイレンのような音が響き渡り、仲間達は次々と腰を下ろし始めた。お疲れさん。

 さて、俺も一旦横になるか。丁度家は直ぐそこだし。

 手に入れた家の寝床につき、取り敢えず一段落。もう残りはボスくらいだろう……なんて目を閉じようとしたら、



「全員集合しろ! ビワに戻るよ!」



 アノムスの、鬼気迫る呼びかけが聞こえて目を見開いた。

 おい、全員疲れてるってのに何だよ。つーかアイツまたピンピンしてやがんのか? 声に疲労を感じなかったけど。


「何だよアノムス。俺は今から寝ようと思って……」


「緊急事態だ! あんなの、僕にだってどうしたらいいのか分からない……! 今はユーニが色々調べてくれてるけど、恐らく対処法なんかは浮かばない筈だ……!」


「……あ?」


 お前ら二人がどうにも出来ない問題が起きてるってのか。そりゃ確かに緊急事態……だけどよ、そんな焦ることか?

 折角アシュレイドの殆どを殲滅したってのに、更なる緊張を煽って来んじゃねーよ。休ませろよ。


「とにかく着いて来るんだ全員! 僕らの、ビワ……その象徴となる世界樹が──枯れている!」



 ──アノムスの後を着いて行き、ビワに戻った俺達は言葉を失った。恐らく、この場の誰もが思ったであろう。

 大樹デカ過ぎで分かんねーよ、と。


 だって葉の部分殆ど見えねーよ? 雲の上だかんなアレ。クッソ幅広い幹しか見えないのに、枯れてるとか言われてもしっくり来ねーよ。

 まぁ、アノムスが言うんだし枯れてるんだろうがよ。


「見ての通りだ。世界樹が、突如生気を失い始めた。後数時間もすれば、僕達のアジトは崩壊するだろう」


「そりゃあ、木が枯れてんならそうなるよな。何で世界樹の中に造ったんだよお前ら」


「それは大昔の戦士達に問うて欲しい。とにかく、僕が言いたいのはどういうことか分かるかい?」


「……世界樹が死ぬから、中に残ってる物とかは取りに行けない。どうしようもない緊急事態って、さっき自分で言ってたろ」


「大方正解だ」


 アノムスは俺達の中心に立つと、両手を大きく広げてことの重大さをアピールする。


「アジトの中には、ユーニの科学力を詰め込んだ部屋なども存在する。しかし、いつ崩れるか分からないあの中に進むのは危険だ」


「つまりは、ユーニの脳に頼る術は殆ど失われたわけか」


 冷静に腕を組むシルフォは、一斉に注目を浴びた。何でやたら堂々とした佇まいをしているんだアイツは。

 アノムスが重たい雰囲気で頷き、コレは相当ヤベェ状況なんだってのを実感した。


「ユーニの力なしに、アシュレイドのアジトへ乗り込むのは危険過ぎる。言ってしまえば、ユーニは戦力外となってしまったんだ」


「おい、そりゃ酷ぇ言い方だな。アイツは向こうにも色々持ち込んでたろ?」


 ユーニを庇ったつもりだったが、アノムスの鋭い眼光を向けられて萎縮した。何で睨むんだよ。


「全ては持ち運べていない。大部分は取り残されている。ユーニの科学力は、これまでの半分以下となった筈だ」


 半分以下……ってことは? よく分かんねー表し方すんじゃねぇよ。このクソ糸目が。

 言っておくけどな、俺はお前だけは一切信用してねぇんだ。今も随分と、綺麗な姿でいやがるなおい。


「なぁアノムス。キツネ野郎。この異変に最初に気がついたのはお前か?」


「……アウドラ?」


 怪訝そうな顔をしたシルフォに構わず続ける。

 お前の秘密、暴かせてもらうぜそろそろ。ふざけた猿芝居はやめてもらおうか。


「どうなんだよアノムス。そのくらい答えられんだろ」


「……君が何を企んでいるのかは分からないけど、その通りだ。世界樹が枯れていることに気づいたのは、僕が初めだね」


「だろうな? 俺達が必死こいて戦っている最中、指示を出しているユーニにさえ注意を払えば、自由に行動出来たもんな。お前んとこの敵は、先にシルフォが一掃してたんだからよ」


 仲間達に囲まれるようにして、俺とアノムスは睨み合う。

 ──視界の端にクナイが入り込んで来たから、一旦口を閉じた。来ると思ってたよ。


「アウドラ、貴様何が言いたい? この場を乱す目的ならば、自重してもらおう」


「……場を乱す目的なのは俺じゃねぇと思うが? つっても、長く苦楽を共にして来たお前にとっちゃあ、見抜けねぇことなのかも……」


「私はいつでも、貴様を肉塊に出来るぞ」


「……」


 目だけを動かして周囲を見てみた感じ、全員がシルフォと同じ心境のようだった。ま、そりゃそうか。

 つっても、俺だけは見逃さねぇぞアノムス。俺はお前が──


 本当の黒幕だって思ってるからな。


「シルフォ、焦り過ぎだよ。武器を下ろして」


 沈黙を破ったのは、案の定アノムスだった。この場合そうする方が得策だろうしな。

 そんでもってこの後目を向けるのは、


「アウドラも、何か……僕を疑っているみたいだ。でもきっとそれは勘違いだよ。僕は、故郷を滅ぼす悪魔になんてなれやしない」


「ああ、悪かったな疑ってよ。あまりにも綺麗なナリをしてやがるから、胡散臭くてよ」


「ああ、それは君が言ったじゃないか。シルフォが率先して全滅させたから、戦っていないんだ。その後はユーニと共に、状況を確認していただけだよ。サボっているみたいで申し訳ない」


「……そうか」


 これ以上責めると、本当に首を取られそうな空気だ。納得いかねぇけど、ここらで止めとくしかねぇな。

 ただ、アノムスが何かを知っていることは間違いない筈。たとえ本当に世界樹に手を出していないとしても、本当に信じるべき相手かと言ったら違う。

 いつかボロを出すのを待った方がいいが、そんな時が訪れるかどうかは不確かだな。


「──うまい棒全部持って来ておいて正解だったな。俺が置き去りにしたのは……ゲーム機か」


 何ともまぁ。高かったのにな。悪い母さん。


「貴様、何処へ行くつもりだ」


「おおシルフォお帰りー。何処って、仲間を疑ったような奴だぜ俺は。お前の刃が怖ぇっつーの」


 リュックに私物を全部詰めていたら、金剛力士像みたいな顔をしたシルフォがやって来た。シワ凄ぇな。

 顔しかよくねぇくせにそんな顔してんなよ。


「まさか貴様、未だアノムスを疑っているのか? その場合、私は貴様を一人にする訳にはいかんな」


「謀反を起こさねぇか監視するつもりか? 冗談じゃねぇ。尚更同居なんてしたくねーな」


「……認めるんだな? 奴を疑っていると」


「だったら何だってんだよ。逆にテメェら、よくアイツを信じ切っていられるな。あんな不審点ばかりのキツネ目野郎、疑うなって方が無理な話だ。長く仲間やってるから感覚おかしくなってんのか?」


 リュックを離れた位置に蹴り、素早く立ち上がる。左手にはコントローラーを隠して。

 シルフォの威圧的な眼差しは、段々と光を消して行く。ガチギレしてんな、コイツ。なんて分かりやすい奴なんだ。


 全くよ、何で強引に巻き込まれた上に酷ぇ目に遭い続けて、仲間を疑うことになった挙句──殺されそうになってんだか。


「私はアノムスを疑った貴様を疑い、()()()()()()。……それでいいな?」


「知るかよ、その手は喰らわねぇわバカニンジャ」


「死人は声を発せられんだろう」


 俺とシルフォはほぼ同時に、仲間と見合っている状態で叫ぶ筈のない言葉を、力強く叫んだ。


「ビジョン・クローズ オン!!」


「シノビ・クローズ オン!!」


 ……何で俺達、仲間同士で構えているんだろうか。

 なぁシルフォ。お前さ、そんなんでいいのかよ。

 もし俺の想像していることが真実で、ビワを救えなくてもいいのかよ。滅ぼすことに繋がっても、それでいいのかよ。


「貴様如きが私に勝てるとでも思っているのか……? 愚か者が」


「違うね、俺は勝つつもりなんて更々ない。戦わずにお前から逃げるために変身したんだ」


「私から逃げられるつもりでいるとは……哀れだ」


「お前こそ、間抜けだぜ。ビジョン・コントローラーが何を出来るか、忘れた訳じゃねぇよな?」


「させるか」


 ──たった一歩の踏み込みで、シルフォはゼロ距離まで近づいて来た。まぁここまでは完全に想定内。


「甘く見んな! どんだけお前と特訓したと思ってんだ!」


「チッ……!」


 バク転しながら躱し、後方へシルフォを蹴り飛ばす。これで出口までの道は確保出来たし、ボタンを押す隙も出来た。


「ストップ!!」


 叫びながらそのボタンを押し、空かさず立ち上がる。直ぐにリュックを手に取って駆け出し、玄関の前で振り返った。

 頭から突っ込んでプリケツをこちらに向ける、間抜けな姿をしたシルフォが見える。


「……お前がロプトやココアだったら、俺はここで死んでたかもな。お前がシルフォだったから、行動パターンが読めたんだよ……」


 ──外に出て真っ先に向かうのはアノムスの元。

 ではなく、少し離れた空き家だ。とにかく新たな拠点が必要となる。

 俺はきっと、アノムスだけでなくココア達にも警戒されているだろうしな。


「一人じゃ何も出来ねぇってのに、まさか孤立する羽目になるとはな」


 さてと、これからどうするべきか。俺が戻らなけりゃ戦力が大幅に減る上に、コントローラーを盗まれたのと同じだろう。

 アイツらと次に会うのは、俺を殺しに来た時か。


「そんなことは私がさせないよ。アノムスさんが怪しいなんて、一目見れば分かることだもんねぇうんうん」


「うおっ……ナタリーお前いつの間に」


「いやぁいやぁ上から見てたらさ、何だかおかしな状況になってるなって思ってね。ところでところで、孤立したアウドラくん。この先どうするのかなかな?」


 やたらテンション高いなコイツ。今ちょっと傷心中なんだがこっちは。

 まぁ、空気を照らしてくれるんだったら、気持ち的に助かりはするがよ。


「どうって、もしまたアシュレイドが攻めて来るんなら一応戦う。どの道お前らビワの連中に殺されるんなら、逃げても意味ねぇしな」


「だぁからそんなことさせないって。さっきも言ったでしょ? アノムスさんは、何かおかしいんだって」


「……何かって?」


「あの人ね、世界樹なんて見に行ってないのよ?」


 ……は? 何言ってんだコイツ。俺が言いたいこと分かってる風で全く分かってねぇじゃねーか。

 俺は世界樹のことは、アイツがやったと思ってんだ。それじゃ俺に勘違いだって言ってんのと同じだろ。


「アノムスさんは今日、ビワには戻っていなかった。シルフォさんが敵を倒した後、一人ユーニさんの元へ赴き、そこからは一切動いていないのだよ」


「……つまり何が言いたい?」


「アレ? 分かんない? アノムスさん、だってさっき、『一番最初に世界樹の異変に気づいたのは自分』だって言ったんだよ?」


「……あ」


 んじゃあ、どういうこった? ユーニと共謀して偽ったってことになるよな? グルってことだよな。

 自分が気づいた訳ではないのに、よく分かんねぇ嘘をついた。ナタリーみたいに何処かで見張られていたら、一発でバレる嘘を。


「……けどまだ完全に指摘することは出来ないな。ユーニの持つパソコンでも、ビワの状況を知れるだろ」


「あ〜んな映像だけ見ても枯れてるかどうかなんて分かんないって。それに、全員に指示を出してたユーニさんにそんな余裕はないと思うな?」


「……だな」


 そうなるとやっぱり、アイツがこの上なく怪しいよな。どうしたらいい?

 まだまだ数で負けてるんだから、ナタリーの言葉を伝える訳にはいかない。そうしたら今度はコイツに危機が及ぶ。


「だったら、まだ息を飲んで待つしか──」



 目の前が白くなった。いや、灰色かも知れない。

 粉末が舞っている。瓦礫が横切って、前方の天井が崩れ落ちて積もる。


 爆発した……? いや、砕かれたらしい。火は見られない。

 誰かが、壁を壊した。粉砕し、家を半壊させた。

 その瓦礫が積もる場所には……



 さっきまで、ナタリーがいた。

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