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ビジョン・コントローラー  作者: ☆夢愛
第2章 アシュレイドとの決戦
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第15話 VS『フレイム・コントローラー』

「『アナライズ・コントローラー』、回収完了だ。よくやったアウドラ」


「どーも」


 ヨノギとメガネは無事亡骸となった。ストップが解除されたシルフォは、メガネの『アナライズ・コントローラー』をケースにしまう。

 他のアシュレイドは状況が不利と見たか、いつの間にか居なくなっていた。


「ユーニ、残党は何処かへ消えた。他の応援に向かったと考えられる。今一番苦戦している奴は誰だ? 私とアウドラも向かう」


『今は、ココアがコントローラー保持者と交戦中だよ。その他のアシュレイドとはリーダーが戦ってる』


「了解した、直ぐに向かおう。コントローラー持ちが四人もいれば問題ないだろう」


 シルフォはユーニと会話を終えると、俺に着いてくるよう顎で促した。うぜぇ。

 つーかな、四人もいれば〜とか言ってたけど、前にヨノギに負けかけたじゃねーか。レインしかマトモに戦えてなかったぞ。


「そういやお前が担当してた場所は今どうなってんだ? アノムス達は?」


 コイツ、ココア達の場所を挟んで、俺とは一番離れた位置に待機してた筈なんだが。思いの外早かったよな来るの。

 まさか、アノムスに全部任せたなんて鬼畜なこと言わないよな。アイツも恐ろしい程に強いみたいだが、流石に可哀想だ。


「安心しろ、アノムス達は休憩中だ。多分な。敵は私がサクッと殺しておいた。あの道は今血の海だ。ふふっ」


「素直には喜べねぇなそれ」


 何で血の海とか言いながら笑ってんのコイツ。マジでサイコパスなんだが。狂ってんだが。

 俺は敵を殺すことに、未だ躊躇いがある。それがいつか大きな隙になるとは分かっているから、ヤケクソで即殺すが。やっぱり慣れない。

 けど、ビワの連中は違う。コイツらは躊躇いなんかしない。

 むしろ殺さなくてはならないという使命感すらあるようだ。気持ちは分からないが、俺も殺されるのは嫌だからな。先にやるのは同じだ。


「……待てよ? 俺らの場所にはもう敵がいない。シルフォの担当した場所は血の海。だとしたら、アシュレイドの残りは全部ココア達のとこにいんのか? コントローラー持ちも」


「だろうな。ユーニの口振りからすると、コントローラー持ちは1体だけのようだが」


「そりゃおかしくねーか? 残りが全部いるんなら、コントローラー持ちも複数人いる筈だろ。それとも、アシュレイドの本拠地に待機している奴らもいるってことなのか?」


「……さぁな。奴らのアジトに、どれだけ残っているかは見当もつかん。しかし本当に総力戦を挑んで来たのなら、コントローラー持ちを待機させる訳がない」


「……んじゃあ、コントローラーを持ってたのは、髑髏メガネとココアと交戦中の奴だけだってか?」


「そう考えるのが妥当だろう」


 シルフォは面倒臭そうに溜め息を吐く。俺はまだ、納得していない。

 ……それじゃやっぱりおかしいんだよ。思い出せ、コントローラー保持者とユーニでした会議を。

 アシュレイドにはメガネを除いてあと、最低4人はコントローラー持ちが存在する筈だろ。残りの3つは何処だ。


「分からんことに気を割いている場合ではない。そのくらい分かれ。見えたぞ、()()()だ」


「ずっと見えてたけどな」


 ココア達の場所とは、家を幾つも挟んでいるとはいえ隣だ。あんだけ空に向かって伸びてる火柱が、見えない訳がない。


「アレが何を意味してんのか……まぁ分かってるよな」


「当然だ。貴様が察していて私が不思議に思うなど、一度たりともありはしない」


「は? お前どの口が言ってんの? 今までのこと思い出してみ? 何処かしらに一回はあっから」


「自分でも分からないのに言うな」


 シルフォと横並びで走りながら、互いの顔を殴った。俺は女だからとめちゃくちゃ手加減してやったのに、シルフォのパンチは目眩がする程の力が込められていた。

 まさかそれで手加減したとか言わねーよなマウンテンゴリラ怪獣。

 ──肘で顔面を殴られて、鼻血が少し出た。アシュレイドの打撃でも出なかったのに。


「お前の小人のような身体には当てづらいな、ガキ。その醜き肢体に感謝しろ」


 相変わらずの水着姿で、身長くらいのサイズがあるブラスターを構えるココア。確かにお前は、手足クソ長ぇもんな。

 ……で、そのお相手は宙に浮いているみたいだ。



「八ッ! 戦場では小せぇ身体の方が有利なんだよ。お前みたいにバカデカい奴は的が広くてやりやすいぜ。その立派に育った身体を恨みな!」



 立派と聞いてココアの股間を凝視してしまったそこの君。普通は胸を見るんじゃないかね? 仲間として悲しいよ俺は。なんつって。

 まぁ、予想はしてたよ。敵が誰かってのは。髑髏メガネとヨノギがいたんだから、あの時俺らとやり合った奴らが来てんじゃねぇかって思ってた。


 金髪がカールした、藍のコートを纏う小学生──ではないと思うが、とにかくチビッ子な女だった。

 ()()()、髑髏メガネと共にやって来た、アイツだ。


「相変わらずドデケェ剣持ってんだな!」


「……ん? ああ、あの時のガキか」


 チビの武器は、あの背丈以上の首切り包丁に掌から噴出される炎。それ以外にはコントローラー。……てことくらいは知ってる。

 その上浮遊能力を持っているみたいだな。前回絨毯を浮かしてたのはコイツだったか。


「ようチビッ子、ヨノギとマクロは死んだぞ。お前の仲間はもう、ここにいる奴らだけだ!」


「そうかよ、んなもん想定内だ。今回私らは捨て駒扱いだ、前のが原因でな。だから勝てるなんて思ってねぇ」


「……あ?」


 溜め息を吐きながら着地したチビは、静かに息を吸って首切り包丁を構えた。

 スゥッと開かれた眼には、炎のような揺らめきが確実に見えた。


「けどやられたまま終わるなんてのは気に食わねぇんでな。()()()()ことも問い質すつもりだし、そう簡単に死にゃしねぇよ」


 首切り包丁からは炎が噴き出し、刀身を覆っていく。

 ありゃあどんなコントローラーだ? つーかコントローラーはどれだ?


「アウドラ! シルフォ! 奴は『フレイム・コントローラー』のマスターだ! 炎を操る気をつけろ!」


 いいタイミングで、ココアが説明してくれた。非常に分かりやすい。

 なるほど、シンプルなのが出たなようやくよ。炎ってか。


「シルフォ、アイツは確か強かったよな。多分、髑髏メガネよりも」


「そうだな。奴の反応速度には驚かされたが、些か弱過ぎる。奴のが強いだろう」


「あのメガネを弱ぇって思うならお前はバカだ」


「貴様も私も大したダメージは受けていないだろう。先に行くぞ」


「直ぐそこですが」


 ──シルフォに後ろ蹴りをされて吹っ飛んだ。アイツ何してくれてんの? ってもういねぇし。


「貴様の首を取れば後は雑兵だけなのか?」


 突っ込みながらシルフォが問いかける。チビは少し後退して、ココアではなくシルフォに向けて構えた。


「お前もあの時にいた奴だな? その質問には答える理由がねぇ」


「そうか、ならいい。貴様さえ殺せば直ぐに分かることだしな」


 シルフォが高速で接近するのを、チビは刃を振り回して牽制する。炎も相まって、上手く近づけない。

 それにココアの射撃を気にしていない訳でもなさそうだ。アシュレイドは警戒を怠らないらしいな、ヨノギ以外は。


「シルフォ、下がれ!」


 ココアの呼びかけで、シルフォは反射といった反応速度で飛び退いた。

 ココアの銃口は既にチビを捉えているが、チビもココアに目を向けている。あれは避けられるか防がれるかするな。


「──お前のコントローラーも、私らが回収する」


 チビが呟いた直後、地面から特大の火柱が噴出した。アレはヨノギ相手にも使った技だ。


「コントローラーは渡さん。私達は、お前のコントローラーを奪取するだけだ」


「当たるかよ。甘く見すぎだ痴女が」


「ち、痴女……!?」


 火柱に風穴を空けたチビは、そのままココアに向かって直進。その間に放たれた侮辱の言葉は、ココアの集中を途切れさせるには充分だったみたいだ。

 まずい、実況してる場合じゃなかった!


「ココア! 事実を指摘されたからといって、その程度で取り乱すな!」


「チッ……」


 流石の速度でチビを蹴り飛ばしたシルフォが、ココアにとんでもない追い討ちをかける。お前最低だよ本当。

 ほら見ろ、ココアが内股になっちまっただろーが。ある訳ない胸を隠してんじゃねーか。


「だ、だだ誰が痴女だバカ女! 人のこと言えた口か貴様! 下半身殆ど露出しているくせに!」


「はぁああぁあっ!? こ、これは好きでこんなのを着ているんじゃない! ユーニが変なデザインにしたからだバカ者!」


「私はそもそも女じゃない! だから痴女なんかじゃない! ふざけるなゴリラ!」


「誰がゴリラだ女装野郎がああああ!!」


「このコントローラーが女性専用だなんて知らなかったんだよコスプレ女あああ!」


 ……お前ら何してんの? この状況で何で口論なんてしてられんの? 神経どんだけ図太いの?

 おいチビ、お前もこっち見んな。ビックリしてんな。気持ちは分かるぜ? ココアの顔見たら女だと思うよな。

 でもまずは身体を見てみろ。流石に男だって分かるから。


「……貴様、この戦いの後覚えておけ。勝負だ! 貴様が負けたら全裸で謝罪しろ」


「……嫌だ。私が勝ったら……」


「貴様が嫌なら私だって断るに決まっているだろうが!」


「全裸は嫌だ。絶対」


「じゃあ、アレだ。土下座ってやつをしてもらおう」


「ふん、いいとも。ならお前が負けた時は──アウドラに告白しろ」


「「何でだああああああああああああ!?」」


 思わず、俺も叫んだ。ココアは満足気な顔をしている。

 アイツマジで何言ってんの?


「テメェら私を無視して何言い合いしてんだ……!?」


 ハッとして、声のした方に見向く。シルフォの直ぐ後ろにチビが迫っていた。


「殺し合いの最中に背中向けてんじゃねぇよ!!」


 ──物凄い剣幕で叩きつけられた首切り包丁によって、砂埃が巻き上がる。

 普通に考えたら、シルフォが今のを躱すことは不可能だろう。普通に考えたらな。あくまで、俺の世界での「普通」で考えたらだ。

 もう流石に理解したよ。どういう流れなのかもう分かったよ。


「……テメェ」


 チビの顔面はシルフォにアイアンクローされており、シルフォは間一髪とも言えるギリギリの位置に避けていた。

 その目つきは、最早鬼と言っても過言ではないくらいに迫力を感じる。ブチ切れてますね。


「邪魔……」


「すんなぁああああああ!!」


 ココアが、アニメやゲームで見かけるような、散らばる光弾をぶっ放す。シルフォのことなんか一切気にせずに。

 チビではないその他のアシュレイドも纏めて吹き飛ばし、着弾した家は燃えている。ココアは満足気に鼻息を出した。


「……いや、ココア。シルフォ巻き添えなんだが。死んでたらどうすんだよ」


「あの程度で死ぬような女じゃない。死んでいたとしても一向に構わない」


「な訳なくね? まだアシュレイドはいるんだが?」


「私達だけでも何とかなるだろう」


「それ定かじゃねーよね!?」


「──私は死んでいないが、貴様は後で本当にぶっ飛ばす。ココア覚悟しておけ」


「お前凄くね!?」


 いつの間にか屋根の上にいたシルフォの手には、チビの生首が握られていた。

 ──おい、とんでもねーもん見せんじゃねぇテメェ。夢に出て来たらどうすんだ。


「私がシノビ・コントローラーの使い方を理解していてよかったな。このガキは貴様のを受ける前に斬っておいた」


「私もお前なら躱すと信じていたからな。感謝しろ、より確実に殺せる隙を与えてやったんだ」


「ほう……中々仲間思いなことをしてくれるじゃないか。お陰でボロボロだがな」


「おや、それは大変だな。早くエリナに治療してもらおう」


 また、今度は静かな殺意をお互いに向ける2人。きっとこの場の、敵味方関係なく思っていることだろう。

 アイツらバカだ……と。

 ほら、敵を倒し切ったロプトも呆れてんぞアレ。


「お前ら、仲間割れだけはしてくれんなよ? アノムスやユーニが言うには総力戦なんだ。まだまだ敵が湧いて来る可能性だってあんだからな?」


 俺も、リーダーに賛同しておく。ココアとシルフォは一瞬ロプトを睨むと、目を合わせて頷いた。


「私は一旦エリナの元へ行く。貴様らも必要がない、という場合は備えておいてくれ」


「了解した」


 さっきまで殺し合いでもしそうだったシルフォとココアは、お互いクールに戻った。軽いなお前ら。

 因みに、さっき俺が予想出来た結末は、「どうせシルフォは避けている」ということではない。結果的にはそうなるが、そうじゃない。


 ──今回攻めて来たヨノギにメガネもそうだったし、あのチビもどうせあっさりやられるんだろうなぁってことだ。


 そしたら本当にあっさりなんだもんな……。前の苦労は何だったんだ。

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