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ビジョン・コントローラー  作者: ☆夢愛
第2章 アシュレイドとの決戦
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第14話 パクってみよう

「ヨノギ……」


 動かないヨノギを見たメガネが、小さく舌打ちをした。


「ふんっ!!」


 そんで、俺の影を豪快に蹴り飛ばす。ようやく攻撃に移ったな、さっきまでは何だったんだ?

 俺は影が消えたことで、恐らくもう視認出来るようになっているだろう。

 ずっと思ってたがよ、影脆くね?


「……お前がやったのか」


「おーうその通りだぜ? 早く影を倒さねーからこんなことになったんだ。ヨノギが死んだのは、お前の所為だな? 先輩」


「……挑発のつもりか? 下らねぇ」


 下らないか? その割には怒っているようにも見えるが、それは一体どういうことかね。

 しかし、思ってたよりずっと取り乱してる感じだな。そんなにヨノギが大事だったか。


「アウドラ、私は嬉しいぞ。貴様もようやくぶっ殺すことを受け入れてくれたのだな」


「バカ言ってんじゃねぇ。マジで一緒にすんな。普通に一瞬躊躇ったわ」


「いっそこう考えればいい。『アシュレイドを殺すのは快感だ』と」


「そんな人でなしにはなりたくないね。狂人じゃねーか。幾らアシュレイドみたいな奴らが相手だと言っても、そんな異常者になんて成り下がりたくねぇ」


 シルフォは何故か不満気な顔になった。……いやもう分かり切ってるか。お前は殺すのが楽しいんだろそうなんだろ。

 味方に狂ってる奴がいるのって、中々気分悪いな。

 案外、ビワの連中はイカれた奴が多いけど。


「さっきのお前と本体のお前は、同じなんだよな?」


 不意に、メガネが質問を投げて来た。確かにそんなこと言った気がするな。


「おう、一応な。俺が特訓したんだから、影であるアイツも強くなってる。それがどうした?」


「フッ……」


 あん? 何笑いやがってんのコイツ。舐めてんの? 鼻で笑ったってことはバカにしてるんだよな?

 メガネは、メガネらしくメガネをクイッと直す動作をしてみせた。それ見ると何かナルシストに思えて来るんだよ、俺。


「なら、()()()()()()()。これからお前の攻撃を受けることはない」


「はぁん?」


 何言っちゃってんだアイツ。普通に当ててやるわボケ。


「お前と影とやらが同じであるなら、パターンも同じ。俺は影の攻撃を分析し続けていた。お前がどのように攻めて来るのかはコントローラーが自動で予測し、俺は脳に直接送られる指示で躱せる」


「ふーん……」


 そんなん有りか。脳に直接送られるってことは、「次こう来るぞ」みたいなのが常に報されるんだよな?

 いや、それだったらまだ余裕がある。ずっと攻めて行けば、寧ろその指示が邪魔になっていく筈だ。やかましくて。指示通りに避け続けられる訳でもないだろうし。

 だからきっと、もっと面倒臭い能力だ。

 たとえば、無意識に身体が躱すとかな。


「……そうだったら中々当たらねーだろうけど、逆に動き難くもなる。どの道そこまで使えそうな能力じゃねぇな。ハズレ引いたんじゃねーのお前?」


「甘く見ていると直ぐに死ぬぞ。コントローラーが俺を操り人形にしようが、俺はそれに対応して戦うことが出来る」


「マジか。やっぱ先に倒しておくべきだったなぁ」


「心配など何一つない」


 少しヤベェかもなと身構えていたら、肩をシルフォに叩かれた。その口元は、自信に満ち溢れている。


「奴は一度倒している。それに、分析されたのはアウドラのみだ。奴に勝機はない」


 おう、言うなシルフォ。大丈夫か? お前が倒した当時からアナライズ・コントローラーを持っていたんだとしたら、分析されてんじゃねーの?

 ……あ、でも、新しいコントローラーに変わったんだから、元のデータは殆ど無駄か。

 なら行けるか? まぁ、2対1なら行けるか。


「じゃあ基本は任せたぜシルフォ。俺はどうやら分析されちまったらしいからな」


「任せろ。足手纏いにさえならないでくれれば問題はない」


「……へいへい」


 やっぱムカつくなーコイツ。マジで腹立つなー。何なのその言い方。

 普通さ、わざわざバカにしたような表現するかね? もうちっとマシなこと言えねーのかよ。俺も思いつかんけど。


「直ぐにお前も分析し尽くしてやる。かかって来い」


 真っ黒メガネの所為で威圧感とかあんまり感じねぇけど、声だけは凄みがある。本当にクロスが邪魔だなアレ。

 これまでもロプトの医師みたいな格好とか、変な衣装は見て来た。でもコイツが1番ダサいだろ絶対。


 シノビらしく、シルフォはクナイを構えた。もう片方の手には、短刀が握り締められている。


「1分も要らん。瞬殺だ」


「出来るものならやってみせてみろ」


 2人の間で火花が散る。メガネな瞬殺されるとこは、俺も見てみたい。

 けどシルフォ。お前そんなこと出来るくらい余裕あるんなら、前回会った時に倒しておいてくれよ。

 ……まぁ、ヨノギのダメージもあったしムズいか。


「ふん、躱せるといいな……?」


 ボソッと呟いたシルフォが、一瞬にしてその場から消えた。気づけば、既にメガネの至近距離まで詰めている。

 振り上げられた短刀はメガネの喉元に迫り──


「お前の速度はもう通用しない……!」


 ──なんと、ギリギリで躱された。

 マジかよ。生物ってそんな速度で動けるっけ。


「これで終わりだとでも思っているのか? おめでたいおツムをしているようだな」


「……!」


 超スピードのまま回転したシルフォの右手には、さっき構えていたクナイが握られている。連撃を狙っていたみたいだ。


「躱すだけだと思うな!」


 メガネもメガネで、直ぐ様それに対応。身体を気持ち悪いくらい仰け反らせて、攻撃を躱した。

 どっちも人間を超越し過ぎた動きをしている、正に強い奴らの戦いって感じだ。そう見える。

 でも実際はそう錯覚しているだけで、恐らく違う。

 全部ギリギリで躱し続けているんじゃ、シルフォの速度に敵わない。!

 ──シルフォが身体を更に捻ることで、3度目の刃が襲いかかる。


「ぐっ……!」


「躱すだけではない? 貴様は何をしたかったんだ? 速度は通じないのではなかったのか?」


 直撃した胸部から脇腹にかけて、切り裂かれてはいない。最早打撃のような音もした。

 だが、これで明確になった筈だ。分析をし続けたところで、シルフォの速度を越えられなければ無意味でしかないってな。


「チッ……」

 

「おやおや、そのコントローラーがなければ既に死肉だったのではないか? 私はまだまだ、本気を出していないが」


 自信に満ち溢れた様子のシルフォが、残念でならない。何で斬られた瞬間死肉になるんだよ。

 何でそんなに偉そうなのに言ってることはバカ丸出しなんだよ。


 シルフォを睨みつけて黙ってしまったメガネに警戒しつつ、ゆっくりシルフォに近寄る。

 なるべく邪魔をしないように、少しだけ離れて横に並んだ。


「なぁ、アイツは分析し続けるんだろ? んで、コントローラーの力で勝手に避ける。としたら、今結構ヤバめな状況なんじゃねーか?」


「何? 奴が意志とは裏腹に動いてしまうのならば、寧ろ殺しやすいだろう。下手くそなマリオネットと同じだ」


「その表現はよく分かんねーけど、取り敢えず一旦落ち着いてみ? んで、よ〜く考えろ」


 メガネの野郎は、アナライズ・コントローラーの能力で俺達の動きを学習していく。

 そしてアナライズ・コントローラーの指示によって、無意識に攻撃を躱すことが可能だ。反応速度も殆ど関係ないんだろう。

 つまり、幾ら速くても段々手がつけられなくなって行く筈。


 なのに、その短刀で切り傷がつきもしない。


「平然とガードされちまうんなら、こっちの攻撃を受け続けることも出来るかも知れないんだ。その間に全部学習されて、当たらなくなる。そんなのが続いたらこっちがバテる。最終的にアイツは、弱った俺らを倒すことが容易になるって訳だ」


 メガネはコントローラーが勝手に避けさせるから、恐らくスタミナ切れでも問題はない。

 時間をかけてたら無理ゲーになる。出来るだけ早く、アイツのことを倒さねーと。


「……ならばどうダメージを与える? 私の短刀では、服すら切れなかった」


「そこは俺も画策中。あんな勢いで当たったっつーのに傷もないかんな」


 そんじょそこらの攻撃じゃ体力の無駄になるだろう。

 何とか一発で大ダメージを狙わねぇと。何なら行ける……?


「ダメだ思いつかねぇ。分析されんのは厄介だが、手当り次第試してみるしかないみたいだな」


「ならまずは私から行こう。──気流椿刃!」


 シルフォが投げたのは、いつものあの花柄の札。毎度毎度敵が惨殺されるあの技である。

 正直、それ当たれば勝てるんじゃね? と思って、一瞬気を抜いた。


「バカが。こんなもの、食らってやる必要などないだろうが」


 メガネは、迫る花弁をいとも簡単に躱した。ぶっちゃけ、横に移動しただけだ。

 そう言えばあの技、直進しかしないのか。そりゃあこんなに広い道で当たる訳がねーよ。


「隙だらけだ。死ね……!」


「チッ……!」


 すっかり丸腰状態のシルフォに、拳を握り締めたメガネが突っ込む。

 いや殴られるだけで死ぬとは思えんが……


「『ストップ』!」


 取り敢えず時間を止めてみた。シルフォも停止したが一応、メガネも停めることが出来るらしい。

 ……あ、でもやっぱり微妙に動いてんな。


「…………お?」


 一旦シルフォを持ち上げて救出を試みたが、あることに気がついて手を放した。

 顔から倒れるシルフォ。まるでマネキンだ。

 んでんで、コレは何だ?


 まるで、残像のようなものがうっすらと、メガネから飛び出している。


「あ、見覚えあるぞコレ。丁度このクソメガネと初めて戦った時に見たやつだ」


 ヨノギのバイブレ・コントローラーによって、異世界コード『ANDBENA』は崩壊現象に包まれた。凡そ5分で全てが消えてしまうってのに、シルフォ達は諦めずに戦い続けた。当然俺も。

 その時、このメガネともう1人チビッ子……ヨノギの先輩らしい2人が現れ、更に激しい戦闘が始まった。

 味方側はほぼ全員満身創痍。それでも何故か逃げることなく、俺とレインが戦っていたのがこのメガネ。


 その最中、俺は何もねぇ宇宙空間に放り投げられてしまった────が、この残像が現れ、それを辿るように元いた場所へ戻れたのだ。


「……つまりコレは、戻すことが出来るってことなのか? 逆再生が可能だってことなのか? リワインドが出来てしまうのか?」


 実際はこの場合リワインドじゃないだろうけど、クロノス・コントローラーの真似ってことで。

 あと、フィルムとかを巻き戻せるみたいな状況だから、そっちでいいよな。別に。

 って、さっさとしねーとストップが解除されちまうよ。えーと、どうすんのコレ。


「メガネに触れたら何か起こん──おわぁああああああああああっ!!」


 メガネに触れた瞬間、メガネが物凄い速度で残像を辿って行った。シルフォの花弁攻撃を躱した位置に戻っている。

 ……ビビったぁ。怖過ぎんだろ今のは。


「コレ、ピンチを切り抜ける時とかに便利だな。問題は使い方が分かんねーとこだけども」


 そうだよ、クロノス・コントローラーをパクって『リ・ワインド!』とか言ってる場合じゃねーよ。どうやって発動すんだよコレ。

 コントローラーにも残ってるボタンなんてないしな……ランダムで発動すんのか? タイミング分かんねーし、ストップ使ってなきゃ難しいよな。


「取り敢えず、まだストップが解除されねぇみたいだし、一発試してみるか!」


 たとえば、露出している顔面を攻撃してみたらどうだろうか。俺のビジョン・コントローラーの能力みたいに、鼻はやたら頑丈になっているのだろうか。

 つっても、メガネ型コントローラーを破壊してしまったら終わりなんだよな。何か特大のエネルギーが爆発するらしいし。この星自体無くなるくらいの規模で。


「……メガネ、外してみるか? いやどうなんだ。外せるのか!?」


 コントローラーは基本的に、変身すると何処かと一体化して取れないようになる。らしい。

 ビジョン・コントローラーの場合は、左上腕部だ。服というより、俺自身に減り込んでいるようにも見える。

 そう考えるとやっぱ取れないか? 外せないようになっているか?


「……よし、物は試しだ。1回触れてみよう」


 コントローラーからの攻撃とか、ある可能性はゼロではない。だから慎重に、メガネのブリッジに指をかける。

 いやかけられるんかい。


「外……せた。外せた! 外せた!?」


 嘘だろおい!? コントローラーがこんな簡単に外れちまっていいのか!? 大丈夫なのか!?

 おいおいおいおい変身解けてんぞ! 止まった状態で、ただの服着てる人間になってんぞ!? あらららららら……。


「…………えーっと」


 何だか凄ぇ複雑な気分だが、まぁ、その……絶好のチャンスってことだよな。大チャンス到来なんだよな。

 最早、勝ち確なんだよな?


「何かすまん!!」


 あまりにも無防備なメガネの首を、一思いに斬り裂いた。


 本当にすんません!!

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