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ビジョン・コントローラー  作者: ☆夢愛
第2章 アシュレイドとの決戦
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第13話 あばよ

 ──思った通りだ。このコントローラーは、強くない。


「お前の太刀筋は全て分析出来ている。闇雲に振り続けていたところで、俺に当たることはない」


 噴き出すのを堪えるのでいっぱいいっぱいなんだよな、この真っ黒メガネのせいで。まぁちょっと脱線。

 重要なのは、「分析出来る」ってとこだ。


 ──そこだけだ。


「っと、休憩休憩。あまり暴れてもバテるだけだかんな。その隙を狙われても面倒くせぇ」


 一旦攻撃の手を止めて、休めのポーズ。

 こんな余裕ぶっこいた戦い方してりゃあ当然、


「ならこっちが攻めてやる。しかし実力が対等ではないからな、30秒だけ猶予をやろう。その間に逃げでも隠れでもしてみるか?」


 ……こうやって警戒心を煽って来る。

 でもコレは嘘だ。きっとコイツは、30秒過ぎても何もして来ない。攻撃だけはして来ない筈だ。


 何故なら、コイツはコントローラーに頼り切っているから。

 もし場面を目撃していた人がいらっしゃるのであれば、思い出して欲しい。俺が奴の、髑髏杖を奪い取った後からのことだ。

 ──アイツは一度足りとも、攻めの姿勢に移らなかった。


 つまり、あのコントローラーを起動している間はロクな打撃も使えないのか、やっぱり杖が何らかの力を持っていて、弱体化しているのか。そのどちらかだと推測出来る。

 もしくは何か待っているって可能性もあるな。


「だとしたら、俺も守りに入りゃあ時間稼ぎにはなるよなぁ? 見た感じ、お前らのとこには指揮する者がいないだろ。応援が一切来ないもんな?」


「……何か勘づいたつもりか? 生憎だが、ここは俺が任されている。間抜けなことに地雷で、隊が半壊しただけだ」


「はっはっは、何だよそうだったのか」


 尚更ダセェなおい。

 お前、初めて会った時は絶望感じるような…………チート野郎だったってのに、久々に戦ったらダセェの神様みてぇになってんじゃねーか。

 言葉に詰まったわ今何故か。


 あまりにも戦況を想定していなさ過ぎる。未だに俺も挟まれてるってのに、あまりにも攻めて来ない。あまりにも様子見をし過ぎている。

 コイツが分かっていない筈がない。ここには俺1人しかコントローラー保持者がいないことと、自分以外の隊も決して余裕ではないってことを。

 時間をかけるだけ、リスクが高まって行くだけいうことを。


「──は。何考えてんのかと思ったら、そういうことかよ」


「どうした? 今度こそ何か勘づけたのか? それが正解かは……」


「悪ぃけど、多分正解だ。中々後ろの奴らが手ぇ出して来ねぇと思ったら、()()()()()してやがったのか」


 メガネの口元がピクリと、ほんの一瞬動いた。どうやら間違いないみたいだな。

 少しずつだけど、気になってたんだよ。俺の背後でアシュレイドが何をしているのか。

 今この静かな時間で聞き耳立ててみたら、ボソボソ喋ってやがるのな。まるで状況を報告しているかのような口調で。


 そんで今、メガネの後方にいるビワの仲間達が何かに気がついた。恐らく俺の背後から迫って来るソイツを見て、一歩下がる選択をしたんだろうな。

 ああ、何だろうな。全く見えていないのに、誰か分かっちまったぜ。



「先輩はぁ、そのコお願いね〜。僕はこの先にいる、スナイパーちゃんでも殺して来るからさ」



 元『バイブレ・コントローラー』保持者、ヨノギだった。前に会った時より女っぽくなってる。デケェけど。

 因みに、元保持者なのだが、今はビワにコントローラーを奪われた状態だ。マスターのままではあるが、使用不可能の筈。

 だってのにこの態度ってことは、コントローラーなしでも充分な戦闘技術を持ってるってことだよな。


「よぉ、頼れるコントローラー(相棒)がない気分はどうだ? 俺は存在だけで軽くトラウマだから、なるべく会いたくなかったんだけどなぁ」


「わわっ。あーぶないよー」


 声と足音を頼りに、ヨノギが過ぎて行くであろうと思った方に刃を伸ばした。ピンポンピンポン大正解。やったぜ。


「あー、やっぱあの時のコかぁ。強かったね君〜。多分〜。それより、トラウマなんて誇張しなくたっていいよ。僕が強いのは分かってるからね」


「はぁん? 全然誇張してねーんだわ。トラウマ部分があるんだわ。つーかお前らに文句言いたいくらいなんだわ。鼻ばかり狙って来んじゃねぇ」


「それはタイミング悪いだけだって〜」


 ほぉ。揃いも揃って鼻を攻撃する癖に、偶然だと言い張るか。ナメてんなおい。


「何だろうが、通さねーぞ。俺の役目はお前らを倒すこと以上に、仲間を守ることだからな」


 俺が視線を向けると、仲間達が一斉に爆弾を投げた。よし、ちょっと予想外のもん飛んで来たけどそれでいい。

 地面を思い切り蹴って宙へ舞う。直後、大爆発が起こった。


「お前ら! アレで倒せたとは限らねーから一旦離れろ!」


「「おう!」」


 仲間達が少し離れて行く間に、俺も着地。彼らより前で構える。

 多分、俺の前にいたメガネの方は先に察した筈だ。俺の目線も分かるし、分析や解析が可能なコントローラーを使っているからな。

 だから、そっちは対策したと考える。ヨノギも仲間達が見えていた筈だから、恐らく回避しただろう。


「死んでねぇのは分かってんだ、さっさと出て来い!」


「お前らは爆弾しか使う脳がないのか……?」


 煙を裂いて突っ込んで来たのは、メガネ野郎の方。俺の少し手前で急ブレーキをかけ、即座に蹴りを放って来た。


「っと。シルフォの怪力パンチに比べりゃなんてことない速度だな」


 軽く躱せる。これくらいなら余裕だ。

 問題はガードしてるところや避けてるとこまで分析されるとこだな。そこまで有効活用出来ているのかは定かじゃないが。


「ヨノギ! テメェも出て来いや!」


 メガネの連打を躱しつつ、コントローラーのスイッチを押す。シャドウ・ビジョン発動だ。

 それを見たメガネは当然、一度攻撃の手を止めた。コレで俺はヨノギにも警戒出来る。


「仕方ないなー」


「あ、ちょっと待てコラ!」


 ヨノギが煙から飛び出したと思ったら、空を駆けるようにして俺の頭上を越えて行った。アイツ飛べるのか。

 影がいるから、俺は少しの間自由だ。影がやられて仲間が狙われることになるのは不安だが、ヨノギを止めなきゃナタリーが殺される。

 メガネを一旦影に任せて、俺本体はヨノギを追いかける。


「あのクソ野郎……! 確かにスナイパーは面倒くせぇけど、あんな堂々と狙うとはな!」


 ヨノギ達アシュレイドも速度はあるが、俺も負けちゃいない。けど圧倒的ではないらしく、先回りまでは出来ない。


「ん? あっ」


「お?」


 突如、ヨノギが空中で立ち止まった。俺も無意識にブレーキをかけたが、まだちょっと離れてるからもう一度走り出す。

 ──そこに、シルフォが現れた。


「以前はよくもいたぶってくれたな? 今回はその礼をしてやる!」


「うわっ!」


 まるめ瞬間移動。そう言える速度で出現したシルフォは、ヨノギに力強いかかと落としを放つ。

 ドンッ! ……と大きな音を立て、ヨノギが地面に叩き付けられた。


「いたた……」


 背中を摩りながら身体を起こすヨノギを、俺とシルフォで挟む形になった。俺は不可視化中だが。


「君も前にいたね。リベンジしに来たってこと?」


「リベンジ……? 見方によってはそうなるな。だが私としては違う」


「リベンジじゃないんだ?」


「負けたつもりはないからな。今回私は──貴様をいたぶりたいだけだ」


 物凄く邪悪に満ちた笑みを浮かべたシルフォ。……アイツは本当にこっち側の人間なのだろうか。

 悪役以上に悪役なんだよな、顔が。あと発言が。

 戦闘狂ってだけでもアレだったのに。もうヒロインの座降りろよお前。


「僕をいたぶるなんて、出来るのかなぁ? 前は手も足も出なかったよね?」


「今の貴様にコントローラーはない。あの能力さえなければ、差程強敵でもない」


 偉そうに姑息な発言をするシルフォ。要するに丸腰を狙った訳だ。

 更にシルフォは、視線の先にメガネのことも見つけたらしく。


「また貴様か、懲りない奴だな。初めの頃、見逃さずに殺しておけばこんな面倒なことにはならなかったか」


「黙れバカ女」


 ヨノギと視えない俺を貫通して、シルフォとメガネが火花を散らせる。

 やっぱ前にシルフォが勝ってたのか。で、何の気まぐれか生かしてやったと。凄ぇ驚愕。

 アイツにも人の心が残されていたのか。


「まぁいい、どの道今日で貴様らは死ぬ。1人残らず惨殺してやるから安心しろ」


 人の心が残っていたのは、その時までのようだ。

 一応味方であるソイツは、コントローラーの能力で作り出したピンクのクナイを構える。もう片方の手は、サムライみたいに腰に装着された剣にかけてある。


「シルフォ、ニンジャなのに何で腰に差してんだ? ニンジャならこう、背中にだろ?」


 ……………………反応はなかった。そりゃそうじゃ、俺今消えてるもん。


「シルフォ、ニンジャなのに何で腰に差してんだ? ニンジャなら背中にだろ?」


 俺の心と繋がっているからか、影が代わりに訊いてくれた。サンキュー相棒。

 シルフォは呆れたように溜め息を吐いて、バカにしたような目を向けた。


「それは偏見だろう。腰に差す者も多い。……別に何でもよくないか?」


 仰る通りで。目の前に敵がいるってのに何やってんだかって話っスよね。

 俺らのやり取りを黙って見ていたアシュレイド達は、最早興味すらなさそうな虚ろな目をしている。今なら不意打ちが成功する気がする。


「……ヨノギ、お前がコントローラーを奪われていなければ、確実にコイツらを倒せた」


「えー、アレ僕のせい? 先輩だって油断してたじゃ〜ん」


「生意気言ってんじゃねぇ。自分のことくらい自分で何とかしやがれ。変身解いておけばよかっただろうが」


「あー、そういうこと言うんだ。先輩なんて大嫌〜い」


「もう二度と庇ってやらねぇからな。認めさせたきゃソイツのコントローラーでも奪ってみせろ」


「ちぇ〜、しょうがないなぁ」


 なるほど、ヨノギがシルフォのコントローラーを奪おうとするなら、結局サシでの戦いになるのか。

 てか、少しだけ教えておいてやりたいことがある。

 シルフォのコントローラーはユーニが作った紛いもんだってことだ。まぁ代わりに俺が狙われるし言わないけど。


「ふん、貴様など取るに足らん。またたたくまに殺して、次はそっちだ」


「「ふん」」


 自信に満ち溢れた笑みを浮かべるシルフォに対して、俺とメガネとヨノギは同じ反応をしてみせた。

 ……「またたたくま」って何だよ。「又田拓真」さんとかそんなとこか? 日本人かよ噛み噛みくノ一。


「さっさと始めるぞ。あまり時間をかけていても、意味はないしな」


「やりづらいなぁ」


 シルフォとヨノギが、戦闘を開始した。俺の影とメガネも再開するが、やっぱりメガネはガードに徹している。

 なら向こうは放っておいて問題はない。シルフォに加勢しよう。


「問題は視えてんのか視えてないのか……。前はまるでバレてたもんな」


 これまでにも、何人かは不可視化した筈の俺が視えている敵がいた。ネグロの時にいたマスクマンもそうだし、ネグロ王自体もだ。

 あのメガネもそうだと思ってたが、今日戦った感じ勘で避けていたってとこだろうな。

 もしかしたらヨノギもその可能性はあるが、どの道シャドウ・ビジョンが殆ど無意味な相手ってことだ。


「チッ、ビワの連中は誰1人視えてねーってのに、ズルいなおい」


 より強い者が視えるというならば、ビワの連中の方が弱いってことになる。だから違うだろう。見ての通りシルフォや、ココアはバカ強い。

 だとしたら単なる素質……あるいは、コントローラーの能力でってとこか。

 よく考えりゃあネグロ王も、サウンド・コントローラーで音を拾っていたか何かだったもんな。


「そうと分かりゃ、影が消えちまう前に……」


 低い体勢から、一気にヨノギに接近する。音も充分に立ってるぜ、気づくか? それとも気づかないか?

 コントローラーを失ったヨノギは、鉄製っぽい棍棒でシルフォとやり合う。

 背後から急接近する俺に──


「やっぱり、コントローラーがなくても充分戦えるみたいだねぇ」


 ──気づいていない。


 だったらこのまま倒すだけだ!


「前はよくもいたぶってくれたなクソ野郎! 鼻が骨折しなかったのは奇跡だぜ全く!」


 一瞬躊躇ったのをヤケクソみたいな怒りで塗り潰し、一思いににヨノギの背中を──胸の辺りを貫いた。


「えっ」


「お……?」


 シルフォとヨノギがそれぞれ、小さく声を漏らした。シルフォの表情は正面から見えるが、「何事?」といった顔をしている。

 何事? そういうことだ。


「あちゃあ……油断したね」


 ああ、俺のことをよ〜く警戒しておくべきだった。やっぱりコントローラーで感じ取っていただけってことみたいだな、ヨノギ。


「参った」


 明るい声色で言ったヨノギは、口から血を噴き出して地面に倒れた。


 あばよ。

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