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ビジョン・コントローラー  作者: ☆夢愛
第2章 アシュレイドとの決戦
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第9話 新天地

 田舎から都市に引っ越したり、単純に旅行に来た際に、「来たぞ!」みたいなノリになるネタを結構見たことがある。ドラマでも、本などでも。

 アレって、声に出してる奴が殆どだけど……絶対注目浴びるよな。マジで半端じゃない精神力が必要だと思うわ。


 つーか、都会に来ただけであそこまではしゃげるか? 俺は全く理解出来ないね。人がやたら多いだけだろ。

 例えば隣の町に移動したら都会〜って場合、一瞬で別世界に来たような気分にはならないだろ。「ここから先が都会です」って区切られてる訳でもないし。

 次第に景色が変わって行くんだから、「おお〜!」とはならねーよな。

 ──まぁ多分、俺が言ってることとは違う意味での感動なんだろうけど。


「……おお」


 そんで今俺は、自分のことを棚に上げて語っておりました。

 来たぜ更なる異世界!

 やっぱ、全然違う場所に来たってだけでテンション上がるな。こっちは世界を移動した訳だけど。


 はい、つまり異世界コード『Sinpin』に到着したってことっス。


「さて、荷物を置かなきゃね。この世界は人が住んでいないから、全ての建造物はどう使ってもいい。危険そうなのは諦めて。あまりに遠くだったり分かり難い場所もダメ。各々住む場所を決めよう」


 アノムスの声かけを聞いて、仲間達が楽しそうに動き出す──が、直ぐに呼び止められた。

 探すんじゃねーの? 要するに早い者勝ちだろコレ。


「まずは女性に譲ってあげようか。さ、ユーニ、シルフォ…………達行って来ていいよ」


「はぁん? 何だよビワにもレディファーストとかあんのかよ。この世界の女共は別にか弱くねぇだろ」


 つーか強ぇのばかりいる。シルフォだとか…………アレ? ビワだとレインは違うし他は強くはないし違うのか。

 ココアも実は男だしな。女顔負けの顔してるけど。


「レディファーストは、どの世界にも存在するんじゃないかな。多分。アウドラは何か、文句があるかい?」


「いや、よく考えたら別になかったわ。俺は別に少し汚い場所でも寝れないことはないし、どうせ戦って汚れるんだから特に気にならない」


 風呂だって頻繁に入る余裕ないだろうし。


「ふん、器の小さな男とでも呼んでやろうかと思ったぞ」


「うっせぇ。お前は所詮ゴリラなんだから寝床なんて何処でもいいだろうがよ。言っとくが俺は別に困らないからああ言っただけで、お前だけは本当に俺らと同じ扱いでいいと思ってるかんな」


「ふふ、そうか。ところでアウドラ、私は少し身体が鈍っているのかも知れない。スパーリングに付き合う気はないか?」


「いや遠慮しとく。それより早く選びに行けよ、他の女共に良いとこ取られるぞ」


「それもそうだな。ではまた後程な」


「うぃーっス」


 少しシャドーボクシング風の動作をしてみせたシルフォは、大人気なくダッシュして行った。

 どんだけ欲深いんだよお前。血塗れでも平然としてる癖に今更何を気にするのやら。

 お前なんて野宿でも余裕だろ。


「さ、アウドラも行って来な」


 キツネ目が、更に細くなった目で微笑みかけてきた。マジで恐怖なんだが。


「……って、いいのかよ。まだシルフォ達行ったばかりだぞ?」


「どうせロクに確認もしないさ。うちにいるのは、そこまで繊細な子達じゃないよ」


「やっぱり野生動物の集団じゃねーか。違うとしてユーニくらいな気もする」


「ユーニは確かに、綺麗好きだからねぇ。でも、そのくらいだったら自分でどうにかするさ」


「あー、かもな。じゃあ行って来るわ。つーか俺らは早い者勝ちにしようぜ。俺も別に厳選する気はないし」


「そうかい? それなら、皆一斉に動こうか」


「ああ、時間もかける必要ないしな」


 後、遠くには行かないといっても、この中から住処を選ぶなんて面倒臭過ぎる。

 何ヶ所見て回るんだよそれ。1人だけでどんだけ時間かかると思ってんだ。最後報告するんだとしたら一層怠いわ。

 ……因みにロプトとココアは、さも当然のように2人で選んでいた。


「──さてと、荷物は整頓し終えた。ここが今日から俺が住む場所なんだな」


 ちゃんと覚えられるように、なるべく目立ちそうな家を選んだ。

 2階も庭とかもない地味なとこだが、そこまで重視する必要はないだろ。取り敢えず風呂が使えそうなことは確認したから、問題ない。

 いやでもアレだな、キッチンは見当たらないな。別に料理は出来ないけど、インスタントラーメンとかも作れやしない。


「おい、外から見た景色は俺の世界と大差ないからよかったのに、文化が違うんじゃ生活し難いんだが。何食べろっていうんだよ。う〇い棒食い続けたって限界があんぞ」


 しかも、苦手な明太子味ばかりだってのに。ココアに渡すの忘れてたわ。


「腹が減っては戦は出来ぬ……? とか言うだろ? こんなんでどうしろってんだよ。他の連中はどうすんだ?」


 あまりの衝撃に項垂れていたら、扉が2回叩かれた。ここはインターホンとかもなさそうだし、ノックの代わりだな。そりゃそうだろうけど。


「何だシルフォか。何か用か? 見て分かると思うけど、ここ何もねぇぞ」


「ふん、そうだろうと思ったんだ。バカか貴様は。こんなところでどう生活するつもりだ」


「うるせーな、気づかなかったんだよ。てかその口振り、お前のとこにはキッチンあったのか?」


「ああ、ビワとは勝手が違うようだがな。……仕方ない、荷物を纏めろ」


「はぁ?」


 何言ってんだコイツ。今荷解き終わったばかりなんだが? つーか何のために? 何言ってんだコイツ。

 腕組みをして目を逸らす、やたら腹立たしいシルフォの顔を覗き込んだら、顔を押し退けられた。何しやがんだテメェ。


「近いんだバカ。……いいから荷物を纏めろ。こんなとこでは暮らせないだろう」


「だから、荷物を纏めてどうすんだってーんだよ。ちゃんと説明しろ」


「はぁ……」


 何か溜め息なんて溢しやがって、シルフォはまた腕を組む。本当にムカつくなおい。


「私は、予め大きめな家を選んでおいた。風呂もついているし、先程も言ったがキッチンもある。全域合わせて電気は切れているらしいが、それはユーニが何とかしてくれるそうだ。そして……」


 シルフォは少し躊躇うように肩を窄めると、上目遣いで俺を見上げた。


「寝室が2つあった」


 遠慮がちに放たれた言葉を聞いて、一旦脳内を整理する。

 設備はまぁまぁしっかりしていて、家はデカめ。で、寝れる部屋が2つあることをわざわざ伝えに来て、荷物を纏めろっていうことは、


「なるほど、同居させてくれるって訳か」


「そういうことだ」


「お誘い感謝。でも、お前も嫌だろうし断っておくわ。自力で別の場所を探す」


「残念だが、アノムスが決めた範囲内に住めそうな家はもう残っていない。分かったらさっさとついて来い」


「だったらせめて野郎に頼むわ。アノムスだったら軽く受け入れてくれるんじゃねぇか?」


「人の厚意を踏み躙るな。いいから来い!」


「んだよお前引っ張んな! 荷物も纏めてねぇだろ今!」


 ※


 シルフォの家は、確かにデカかった。想像してた大きさの2倍は間違いなくある。

 中も別段汚くはないし、使えんのか知らねぇけど水道から水が出る。汚染されてるなら見なかったことにする。

 最早無理やり連れて来られた俺だが、キッチンがあるため甘えることにした。つーか他より汚くないからなんだが。


「水はまだ使用するな、無害とはまだ判断されていない。喉が乾いたら言え。水を持参しておいた」


 色々教えてくれる。何かしっかりしてんなコイツ。カップもあるし。

 因みに、ここら一帯はユーニが色々作ったり何かしたりして、取り敢えず使えるようにしておくらしい。詳しいことはよく分からない。

 ただ、水や電気などに関しては任せてとのこと。シルフォが言うには。

 更には、何処かにスピーカーを建てて指示したりするらしい。


「しかし、シルフォと同居か……いや、ビワでも一応1つの建物に一緒だったたんだけど。今は、建物内には2人だけだかんなぁ。変な感じだな」


 親と2人切りなのとはやっぱ別モンだな。血の繋がっていない他人ってだけで緊張する。

 しかも凶悪な戦闘狂ゴリラだし。そんでもって手が早いし。吹っ飛ぶくらいのパワーで殴って来るし。

 そんなのといたら緊張するわそりゃ。


「変な感じ……か。それは私もだな。今まで同室になった相手もいなかったから、不思議な気持ちだ」


「何でビワの連中はわざわざ1人ずつ部屋分けてんだ?」


「元々は一部屋に2〜3人だった。しかしアシュレイドと戦って行く内に、いつの間にかガラ空きの部屋が増えていたんだ。だから分けた。それだけだ」


「……そうか」


 訊くべきじゃなかったのかもな。少し空気が重たくなった。

 俺は自覚があるんだが、何故余計なとこまで気になるんだ。少し考えれば分かるだろ理由なんて。


 シルフォは表情を変えず、特殊なケースに入った『シノビ・コントローラー』を手に取る。

 そして少し眉を寄せて、瞳を閉じた。かつての仲間達を思い出しているのかも知れない。


「……よし、一度アノムスの元へ行こう。私とアウドラはコントローラー保持者、主戦力だ。作戦会議などもあるかも知れない」


「だな。後々呼び出しくらって慌てて向かうより、先に向かう方がマシだ」


 シルフォの言う通りにし、俺もコントローラーとう〇い棒明太子味と、ホログラムメール機を準備する。

 コントローラーは取り敢えず持っておくべきかなって思って、無線機は途中で呼ばれるかも知れないから。う〇い棒はココアに渡すため。

 もし集まってるとしたら絶対いるだろうし。最古参メンバーらしいから。


「やぁ2人共、いいタイミングで来てくれたね。次の目標について少し、話し合っておこうとしていたんだ」


「だと思っていた」


 予想は的中。アノムス・ロプト・ココアの3人が、アノムスが選んだ家に集合していた。

 そう言えば、最古参メンバーとエリナさんは30付近なんだよな? その次辺りに古参なのはシルフォとからしいが、まだ10代だった気がする。

 もしかして、結構差があったりすんのか?

 ──あ、ココアまだ20代半ばか。


「まぁいいか何でも」


「急にどうしたアウドラ」


「ほいココア、コレやる」


「急にどうしたアウドラ」


 繰り返さんでいいわ。前のハンバーグのお返しだよ、俺は嫌いな明太子味で。

 取り敢えずソファーの空いているとこに腰掛けて、ココアが出してくれたココアを口に運ぶ。……ダジャレみたいなんだよな、毎度思うけど。

 ていうかこのソファー、ビワから持って来たのか? だとしたら凄ぇな。


「この世界ではまず、生活に慣れることを優先する。環境が変わるだけ体調を崩す可能性もあるからね。出来れば1週間で慣れて欲しいけど、主戦力メンバーがダメそうだったら少し先延ばしにするつもりだよ」


 突然話し始めるから驚いたじゃねーか。せめて何か合図しろよ。

 んで? はいはい環境に慣れてくれってことな? なら多分、


「俺は平気だぞ? 元いた世界からビワに移動しても、食生活以外は余裕で慣れたし。食い物さえあればきっと、野宿もいけるんだろうな俺」


「それは心強いね、助かるよ。サバイバル能力が高いのはいいことだ。役に立たない時なんてない」


「私も問題ないな。食材がこの世界で採れないとしても、ビワに取りに帰ればいいだけだ」


「それなんだが、この世界に人はいない」


 ココアが何かパソコンっぽいけど何かテレビっぽくも見える、直方体の何かをテーブルに乗せる。何かだ。取り敢えず、液晶画面みたいな部分もある何かだ。

 何て説明したらいいのコレ。前後から画面を見ることが出来る、キーボードらしき物が取り付けられたテレビ……?


「ココア、人がいないことは既にアノムスからも聞いたぞ?」


「お前は最後まで話を聞けシルフォ。人はいないが、植物や他の生物は棲んでいるんだ。それらが食育可能であれば、取り敢えず問題はない」


「ま、ぶっちゃけ僕がいれば色々余裕だしね」


「お前いつからそこにいるんだよ」


「実は最初からいたんだけど、君達が気づかなかっただけなんだよね」


 何食わぬ顔で、見た目は煎餅感触は餅みたいな不気味な食べ物を、ユーニは頬張る。

 マジか、気づかなかったのか俺。やっぱチビ過ぎてか。

 まぁ、ユーニがいれば諸々安心ということは分かったし、とにかく次へ進もう。進めるの俺じゃねーけど。


「と、まぁ生活については慣れることが目標ってくらいかな。それで、皆に伝えておくことが1つある」


 キツネ目のアノムスが、また目を開いた。

 いや別にさっきまで閉じてた訳じゃねーんだけど、開いてるようにも見えないからな……。


「伝えておくこと……次のミッションについてだな?」


「うん、その通り。今日、ここに来る前にも話したけど、アシュレイドのアジトにはコントローラーが大量に保管されている。その代わり、他の世界からの反応は見られなかった」


 テーブルの上で指を絡ませたアノムスは、いつも以上の真剣な声色で告げた──。


「恐らく次が、最後の戦いになる」

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