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ビジョン・コントローラー  作者: ☆夢愛
第1章 コントローラー拾ったぜい
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第2話 ビワ国の戦士達2

 空は青くではなく、 紫色に変わっていった。

 これが夜らしく、 建物の電気は消え、 冷たい夜風が吹き始める。

 俺は最後に、 使っていいらしい部屋に案内された。

 広い窓があり、 外の景色を一望出来、 ソファーは3つ、 ベッドは何故か2つも有る。

 基本の家具は全て揃っていて、 住むのには全く支障はないようだ。

 冷蔵庫には食物が入っててキッチンもあるし。

 ただ1つ問題が、 俺料理出来ねーんだよね。


「ここは自由に使うといい。 何か分からん事があれば言え。 教えてやる」


 くノ……シルフォだっけ? 何故か急に優しくなっていた。

 やはり、 あのコントローラーのマスターになった事が大きいのか? だとしたらこれから利用されまくるってことじゃねぇか?


「……実は、 あのコントローラーは元は私が使う筈だった物だ。 だが、 私は認証されず、 貴様の所へ渡った」


 アレはやっぱコイツが落としたのか……それを使う前に俺が押しちまって、 俺がマスターになったとかそんな感じか? だとしたら悪りーことした上にメンドクセー事になったな。


「今、 新しく……まあアレとはまた別物になるが、 ユーニがコントローラーを開発してくれてる。 それが出来るまで私は役に立たんだろう」


 シルフォは悲しげに外の景色を眺めているが、 そんなに役に立ちたいんだろうか……。


「……結果、 お前が居なきゃ俺は死んでコントローラーも奪われてたんだろ? ならお前は役に立ったと思うぞ」


 大したフォローじゃないが、 俺は俺の言えることをシルフォに伝えた。

 それを言うと、 シルフォの表情は少し和らいだ様に見えた。


「そう言われると、 多少救われるモノがある。 気を遣ってくれてありがとう、 アウドラ」


「ああ」


 初めて見せた微笑みに対して俺は……特に何も思わなかった。


「なあ、 そういや俺はここの仲間になったんだよな? だけど何すりゃいいんだか説明されてねーんだよ」


 俺は思い出したここに来た理由をシルフォに聞いた。

 シルフォは先程と違い真剣な表情になった。


「私達と共に、 ここに在るコントローラーを守り、 異世界に散らばっている様々なコントローラーを回収するんだ」


 それは何でかと気になったがそれよりもまずは生きることが先決だ。

 ───────────────────

 意外にも柔らかく心地良いベッドに転がり、 俺はその日を終えた。

 ……あ、 飯食ってねぇ、 風呂も入ってねぇ。


 翌日の朝になると、 俺は真っ先に冷蔵庫の中の物を出し、 何かよく分かんねー食材を炒めていた。

 食べたらあまり美味しくはなかった……ていうかまずかったので、 持参した菓子を食った。

 広間に行くと、 アノムスがコーヒーを飲みながら真ん中にある人が4人座れるくらいのソファーに座っていた。


「やあ、 昨日はよく寝れたかい? あ、 コーヒー飲む? 」


「是非に」


 口直しも兼ねて淹れてもらったコーヒーを飲みながら思ったが、 コーヒーは普通なのに食材は元の世界と全然別なのか。


「なあ、 ここってもっと普通の食い物ねーのか? 」


「うーん、 僕達にとってはそれが普通だからねぇ。 そうだ、 今度君でも食べれる味付けを試して料理してみるから、 味見でもしてよ。 そうすれば毎朝作ってあげるよ」


 俺が頷くと、 後ろから『手伝う』 とシルフォが歩いて来た。

 風呂上がりのシルフォは、 身体が仄かに火照っているが、 まな板とも言えるその身体からは全く色気を感じない。

 その直後俺は宙を4回転した。

 あ、 思い出した思い出した。


「なあ、 風呂ってどこ? 俺も入りてーんだけど」


「ん、 背中流そうか? 」


 シルフォはそう言って来たが、 俺は風呂は1人で入りたい派なので遠慮した。

 とりあえず場所を聞くと、 俺は一目散に風呂に向かった。

 早く身体を洗いたいが為に。


「はぁ……これから俺はあの怪物どもと戦うんだろ? 忙しいなぁ」


 怪物と戦う事になるというのに、 俺は別に怖くも何ともなかった……むしろ、 退屈しなくて良いとまで思っていた。

 感覚が麻痺しているのか、 コントローラーがある為安心しきっているのか問われると、 どちらでもない。

 とにかく退屈しなければそれで良かったのだ。


 廊下を走る音が聞こえる。

 何かあったのか、 凄く騒がしい外が気になったので、 俺は早めに風呂を出た。

 広間に行くと数十人のモブと、 シルフォ、 アノムス、 ユーニを合わせた全員が同じ方向を向いていた。


「アノムス、 何か有ったのか? 」

 ────────────────────

 俺が問いかけても返事もしてくれなく、ずっとエレベーターの方を見つめている。

 当着音が聞こえると扉が開き、中から人が出て来た。

 首の真ん中辺りまでの血の様に紅い癖っ毛で、 とても目付きの悪い男だった。

 身体中に青い液体が付着しているのを見ると、 恐らく『敵』 を倒した後だろうという事が分かる。

 身長は160前後くらいで、 結構華奢な身体つきをしている。

 男は俺を見ると、 表情を変えず首を傾げ、 近づいて来た。


「初めて見た……君、 誰? ……それに変な臭い……別世界の人間……?」


「あ? ああ、 俺はアウドラってんだけど、 ここで言ったら別世界から来てここに仲間入りしたんだ」


 詳しい事はアノムスが説明してくれたが、 表情の変わらない奴だ……これはこれで恐いな。


「ふーん……マスターに……ね。 そっか」


 ぼそっと呟くと、 男は手を差し出して来た。


「私、 デューク・マクリシア・レイン。 レインって呼んでくれればいいよ。 よろしくアウドラ」


 私? ……てことは女? その顔で?

 あ、 でもコイツの着てるやつ、 ピッタリ身体にくっついてて身体つきが分かりやすい。

 本当だ、 女だ女、 見りゃ分かる。

 俺はそう思った瞬間、 シルフォを警戒したが、 今回は気付かれずにすんだ。

 それによく聞きゃ声も女声だしな。


「おう、 よろしくなレイン」


 俺はレインの手を握り、 最初の挨拶を交わした。

 この時から既に俺は、 レインとは永く関係が続く気がしていた。

 ─────────────────────。

 数時間後、 部屋で筋トレをしていた俺はシルフォに呼ばれ広間に向かった。

 そこには朝見かけたここのメンバー全員が揃っていた。


「アウドラ、 こっち」


「あ、 おう」


 レインは俺を普通に受け入れてくれたのか、 自分の横に俺用の椅子を用意し待っててくれた。

 初めて見た時は返り血だらけでおっかねー奴かと思ったけど、 実際は優しい奴なんだな。


「はい皆注目! 次の目標を言うねぇ~?」


 真剣な雰囲気の中、 アノムスは明るく始めた。

 成る程、 次コントローラーを回収する場所を発表するのか。

 スクリーンには、 青いドラゴンが映し出された。


「ここさ」

 ───────────────────

 どこさ。

 そう思っていると、 アノムスは説明を続けた。


「ここは異世界コード『KRONOS・AHOYA』だ。 数々のドラゴンが生息する世界で、 ここの人間は皆ドラゴン使いだ。 厄介だが、 『クロノス・コントローラー』 があるんだ」


 ビジョンよりも時間に関しては格上っぽい名前だな……ビジョンって幻影とかも使えんのかな。

 それよりコードヤベーッつの。


「今回ここに行ってもらうのは、 まずシルフォ」


 シルフォは立ち上がり、 『了解』 と言って武器などを準備しに部屋へ向かった。


「撹乱とかは勿論ユーニ」


「よっしゃあ! 新作試しちゃうよ~! 」


 ユーニはよっしゃあが口癖なのか? 聞くの2度目だぞ。

 前回はレインしか行かなかったらしいが、 基本は3人で行くらしい。

 あと1人は誰だろう。


「さあ、 ラストは新メンバーでコントローラーはリェイブのアウドラだ! 」


 アノムスが大声で言うと大歓声があがる。

 たまにブーイングが混ざる。

 俺かよ! 戦闘慣れもしてねーぞ!?


「安心しろ、 私が貴様を守ってやる。 慣れはまず実戦からだ」


 くノ一の格好をして戻って来たシルフォは偉そうに言ってきた。

 仕方なく考え、 了解と口にした直後にレインが手を挙げる。


「私も行く。 アノムス、 いい? 」


「でも、 今君は帰って来たばかりで疲れてるんじゃ」


 大丈夫、 とアノムスの心配を受け付けないレインは、 俺が心配らしい。

 それに、 戦闘慣れをしてるのがシルフォだけってのが特に心配らしい……確かに。


「いいでしょ? アウドラ。 ……絶対……役に立つから」


「俺は別に良いんだけど……」


 俺が答えると、 レインは『ありがと』 と言ってアノムスを無視し部屋に向かった。


「んー、 自由だねぇ~」


 頭を掻き、 溜息を吐きながら笑うアノムスは俺の方を見て来た。


「じゃあ、 初任務頼んだよ。 アウドラ君」


「了解。 きっとコントローラー持ち帰って来るぜ」


 俺はアノムスに敬礼すると振り返り、 準備をしに部屋へ戻った。

 準備をし終わると俺達は4人で集まり、 特製スーツを装着する。


「セット」


 俺達はシルフォの合図と同時にタイマーをセットし異世界へ繋がるゲートへ入る。

 ────────────────────

 異世界へ到着すると、 ユーニは持参したスーツケースの様な物を開いた。


「ここら一帯を拠点にする。 開くよ! 」


 ユーニはケースの中にある機械の一部のボタンを一斉に押し、 紫色のバリアーの様な物を張った。

 それにしてもこの世界の空は黒く濁っていて君が悪い。

 空気は淀んでおり、 息苦しい感じもする。

 街の景色も全体的に暗く、 人影すら見当たらない。


「なあ、 この紫のって意味あんの? 」


「この中に居ればステルス機能が作動して身体が見えなくなるよ」


 おお、 ファンタジー感よりはSF感のあるキャラだなユーニは。

 ガスマスク代わりの様に首元から伸びた布を口の辺りにやるシルフォは、 辺りを見渡した。


「私達が来た事がバレているな。 仕方ない、 強行突破だ」


「とにかくあの大きな建物に行かないと」


 お? お? 俺が何をしたら良いのか迷ってる間に話を進めるシルフォとレインだが、 レインが指差した方には見た感じ1番デカいビルの様な物がある。


「行くぞ」


 シルフォの掛け声と共に俺達はユーニを拠点に残し、 歩き始める。


「おい、 アイツ1人にして大丈夫なのか? 」


「心配は無い。 ユーニは大抵1人行動で生き延びて来た」


 あのチビ何気に凄いのか? レインが教えてくれたが、 ユーニは基本サポート系な為、 殆ど拠点を離れずゲートを守るのだと言う。

 俺達はユーニが見えなくなる程歩き、 あの大きな建物が残り数百メートルって所にいた。

 すると何かに反応したレインとシルフォ。


「退がれ! 来るぞ! 上だ!! 」

 シルフォの言う通り下がると、 上から体長が10mほどの青く綺麗な色をしたドラゴンが降りてきた。

 そしてその上に大量の人間と似た生物が乗っていた。


「ふっ、 アウドラ、 貴様は見ていろ。 私だけでも終わる」


 シルフォが戦おうと走る体勢になった直後、 弾丸の様な速度で敵を斬り捨てるレイン。

 そして最後にドラゴンの首を、 返り血を浴びたまま鋭く長い剣で両断した。

 その間数秒、 ドラゴンから(こぼ)れる青い血の雨に打たれるその姿は、 味方からしても恐ろしいものだった。


「さあ……先に進もうか」


 レインは剣に付いた血を振り払い、 微笑んだ。

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