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君のいない灰色と//異世界  作者: シマミ
DISC 1 前編〜灰色の世界〜
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第94話~決戦//無限対二人~前編

「kkk……」


 決着を付けようとするこちらの意図を感知したのか、道夫はナナシの方を向きながら自身の胸に生み出した剣を突き立てる。それはまるで門を開く鍵の様に、道夫の中にある無を辺りに拡散させる。

 強力な風圧と共に柵のような何かが三つ現れては彼等を囲む。先程と違って明らかにこちらを阻もうとする意思が感じられた。


「……っ!!」


 だがナナシはそれに臆することなく、地面を踏み込んで一気に加速する。狙いは一直線、道夫のいる中央地点だ。地中から襲い掛かる黒の剣は回避していけば越えられる、そう思っていたその時だった。


「ギギギ……!!」


「えっ!?何っ!」


 その時、地中から現れたのは剣ではなく『彼自身』であった。黒の大地から無数に現れた道夫の影は、身体をギチギチと揺らしながら此方に掴み掛かろうと一気に駆け出して来た。


(いまさらっ!飛び越えていけばっ!)


 伸ばして来た腕をかわし、その頭を踏み台にナナシは軽々と彼等を上を飛び跳ねていく。

 一つ目の柵が見え始め、後少しで越えられるその時だった。彼女が足場にした道夫の影が思った以上にバランスを崩し、それに合わせてナナシもその場から崩れ落ちてしまった。


「うわっ……!?」


 地面に落ちた彼女に、無数の影が群がってくる。何体もの影がナナシに覆い被さるが、その内側から放たれた輝きによって一人残らず消滅する。

 倒れていたナナシを包む様に、光の糸がドーム状に広がっており、その前には見慣れない一人の人間の女が右手をかざしていた。

 自分とは対象的な黒く長い髪色、振り返ったその瞳は不思議にも見る角度によってその色を変える。


『…大丈夫?さぁ立って』


「え…?また、人間?」


 どうやら彼女が光の糸を操作し守ってくれたらしい。しかしその姿はどう見ても霊体だ。そして霊体は普通、何かに干渉する事は出来ない筈なのに。

 そしてその彼女を見た時、歪に笑っていた道夫が初めて表情を変えた。


「……Ru……a」


「ルア?」


『私の事は後、あの人を助けたいの。力を貸して?』


 ルア、と道夫に呼ばれた彼女がナナシに手を差し伸べる。即断即決、ナナシは頷いて彼女の手を取って立ち上がった。

 光の糸は再びナナシの手に収まり、不規則な軌道で宙を舞う。前方では再び道夫の影が湧き始め、彼女達を阻もうとしていた。


『いい?私に動きを合わせて、その糸を振るって』


「…分かった」


『うん、行くよ!』


 ルアの動きにぴったりと合わせて走りだす。迫り来る影の群れが近づいてきたその時、彼女と共に右手を手刀の形にして横に振るう。

 光の糸は舞い踊る刃の様に、触れた端から道夫の影を消滅させていく。


『合わせて!』


「うん!てやぁ!!」


 開いた右手を同時に突き出し、奔流となった光が一つ目の柵を破壊した。真ん中では道夫が淫魔の(コア)を食らおうとしていた所だったが、彼女達が柵を破壊した事で注意がそちらに向いた。


「kik…」


「あぁっ……あぁ♡ぎぃっ……!」


 同化を止め、餌がどこかに行かぬ様に道夫は淫魔の腹に黒の刀を突き刺した。

 そして彼は黒の翼を開いて空へ上がり、ナナシ達の前へと立ちはだかる。看過出来ない状況になったのか、その顔に笑みは全く無い。


「……」


「ミチオ、いまたす『みちお』」


 ルアの声に、道夫は右目を押さえて表情を歪ませる。だが彼はすぐにそれを振り切り、黒の剣を生み出して左手に握った。


『……やっぱり、戦わなきゃだめなんだね。いい?次はその糸達に、戦う為のカタチを与えてあげて』


「戦う為の、カタチ……。つまり、イメージ……」


 ナナシのイメージに応える様に糸は数を増しながら紡がれ、一振りの剣の様な形に変わった。

 彼女は両手で剣を握り、接近する道夫の一撃を受け止めた。衝撃と風圧が辺りに吹き荒れる。


「くうぅ……!やっぱりおもい……くっ!!」


 道夫の剣を押し付けられ、その重さに膝が折れそうになるナナシ。すかさず剣を受け流す様に刃先を変えて体勢を立て直した。

 左から右へ受け流された剣を、道夫は身体を軋ませながらの無理矢理な薙ぎ払いで彼女との打ち合いに挑む。


『次、大きいの来る!彼に合わせて!』


 まるで道夫の手の内を知っているかの様に、彼女の言う通りに攻撃がやってきた。

 ナナシがその一撃に合わせて剣を振ると、触れ合った瞬間に黒の剣に亀裂が走って砕け散った。

 


「……!」


『よし、効いてる!そのまま攻めるよ!』


「…GAaaaaaAァァァァァァ!!!」


「きゃあ!」


 道夫の赤黒い雷と共に轟かせた咆哮が二人の動きを止め、すかさず翼によって空へと舞い上がった。


「グゥ、ウゥゥゥ……ガァァ!!」


 彼の翼が更に四つ、計六枚の翼が背中に生え、道夫はそのまま右手人差し指を天へと向ける。

 その先にあるのは、丁度真上に昇った太陽であった。


『何をする気…!?何か不味いわ、止めて!』


 動き出す二人へ「もう遅い」という様に、道夫は一つの黒い弾丸を指先から空へ放つ。弾丸は僅かな時間差を置いて、なんと遥か彼方の太陽を黒い闇で覆い始めた。


『まさか、日食…!?』


「影…!いや、明かりが!」


 太陽を侵食した黒は影が落ちるというレベルでは無く、辺りからあらゆる光を奪っていく。

 彼女の右手と彼の右目だけを残して、世界は完全な黒に染まるのだった。 

〜次回、第95話〜


 世界を黒に染めたミチオと、共に立ち向かうナナシとるあ。

 次回、後編。戦いは決着へ……!

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