第85話〜再会と//故郷からの手紙〜
〜定期船上〜
「いやぁ〜面白かったなぁ戻ってきた時の道夫の姿!あぁ待って思い出してきたぷくくくく……」
「まさかあそこの雪があんなに引っ付く物だとは思わなかった。後ラクリオは笑い過ぎだし、ほんとよく生きて帰ってこれたな…」
定期船の甲板で、二人は潮風に当たりながら話し合っていた。
女子風呂を覗き、見事それがバレたラクリオ。偶然一緒に入っていたリリテに魔法で引き寄せられ、袋詰めにされて選別者の子達の部屋へ運ばれたという。
そこで死を覚悟したラクリオだったが、咄嗟に閃いた陣を使った芸を披露した所子ども達に大いにウケ、彼女達の慈悲により難を逃れたとか。
「すまないラクリオ、あんな事言ったばかりに…」
「今更いいって、お陰でなんか仲良くなれたし。リリテとは……まぁあれだけど」
そろそろ学城院に到着する座標だ。道夫達は残り二人の所へ向かう。
ある船室の中では、珍しく船酔いしたリリテとその看病をしていたクラウがいた。
「そろそろだ、二人とも行けるか?」
「大丈夫」「ま、まぁ大丈夫ですわ〜……」
四人(うち一人はふらふらだが)の手を合わせ、一つの陣を描いていく。学城院は世界の裏側に存在し、通常の方法では入れない為、裏側への転移陣が生徒たちにのみ教えられている。
「座標合わせて……今っ」
道夫の号令で陣を発動させ、一瞬で転移が完了する。慣れずに閉じた目を開くと、ゲート前に多くの生徒が集まっていた。
「帰って来た!」「おかえり〜!!」「きゃ〜ミチオさーん!」
「…こりゃ予想外だ」
黄色い声援の中地面に降り立つと、一人の少女が道夫に思い切り抱きついた。
「ミチオ!ほんとのミチオ!」
「久しぶり、メニライ。色々あったけど、こうして帰って来れたよ。そっちも無事そうで良かった」
「うぅ……ゔわぁぁぁぁ!!」
前まで一室に篭っていた彼女が、一目も気にせずわんわんと大泣きする。
メニライも今回の作戦で変われたのかもしれない、詳細は兎も角その頭をよしよしと撫でてあげた。
「久しぶりだなクラウ。……?何か変わったよなお前?」
クライスが彼女に歩み寄る。自分の心に正直になったクラウは、事情を知らない彼等からすれば別人に見えただろう。
「…まぁ、色々ね。クライスこそ、その装備どうしたのよ」
「愛の奇跡さ、俺とレアさんのな!まぁなんだ、そっちの方がなんか自然でいいと思うぞ。前よりは、さ」
クライスが差し出した拳を「それはどうも」と軽く小突いた。
「はいは〜い、学長さんが通りますよ〜道開けてくださ〜い」
付き添いも無く、レイルスが一人で生徒の波を掻き分けながら道夫の方へと進んで来た。
通り抜けるだけでわざとらしくひぃひぃと息を切らすレイルス。聞きたい事が山程出来た。今度こそ、本人の口から聞き出さねば。
「学長、今回の一件、聞きたい事が山ほど……」
メニライを降ろし、レイルスに近付こうとした道夫。しかし突然足がもつれてバランスを崩し、レイルスの胸に顔を埋めてしまう。
「いやん///」
わざとらしい喘ぎ声を出しながら、レイルスは道夫を更にぎゅっと抱きしめ頭を撫でた。
「えぇ、分かっていますよ道夫くん。でもまずは部屋でゆっくり休んで下さい。話なら何時でも出来ますし、私は何処にも行きませんから。ね?」
道夫を胸から解放し、レイルスは生徒達に解散と言いながら新たに人だかりを作りながら離れていった。
それに合わせて解散してもいいのに、仲間達はわざわざ道夫の言葉を待ってくれていた。
「じゃあそうだな…現時点で俺達の作戦は終了だ。皆んな揃って此処へ戻れた事、嬉しく思う。本当にありがとう」
彼の言葉でそれぞれが「またね」と別れていく。漸く一人になった道夫も、久しぶりに自分の部屋へと戻って行くのだった。
〜〜
(結局、分からず終いな事が増えるばかりだな……この力の事、それにコレの事も……)
日も沈み、星月が部屋を照らす中。道夫はベッドの上で地霊点の剣を眺めていた。刃の長さは拳六、七個程で派手な装飾もある訳じゃない。
だが刃を走る光と、柄にただ一つ埋め込まれた宝石らしき物からは魔力とは違う神秘性を感じられる。
「ミチオさま〜!います〜?」
「ん…?はい、いるよ」
ドアを開けると、肩掛けの大きなカバンを持つ女の子がいた。
ティラ・レポリー、茶髪のポニーテールと一目で分かる程のキラキラな瞳、トレードマークである配達帽子。
そして十五歳にして道夫とほぼ同じ身長と中々の巨乳という、一目見たらすぐ覚えるであろう美少女の一人だ。
「コーリュバンのアルリアさんからお手紙です!後好きです!付き合ってください!」
「あぁ、お手紙ありがとう。後、付き合うのはダメって……」
「はい!まだ駄目って事ですよね!今日はもう失礼します!お手紙読んで下さいね!きゃ〜♡」
駄目という言葉も彼女好みの解釈をされ、弁明する暇もなく彼女は廊下を走り去ってしまった。
二つに増えた手紙を机の上で開けていく。一つはティラからのラブレターである。
中々戻らない自分を案じてくれていた事や彼女の好きという想いを内容からもハッキリと見てとれる。
(好き、と言われて嫌な訳じゃないけど……これはいつかハッキリさせないとな。まぁあんな調子じゃ時間かかるだろうが……)
互いの為にならないとはいえ、どうも甘い自分に深く息を吐く。あの時の様な事は、もうごめんだというのに。
次にアルリアからの手紙を開く。中身は複数あり、一枚目を見るとそこには端から端までびっちりと書き連ねられていた。
『ミチオへ、会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい……』
「ヒッエ……」
どうやらかなりマズイ事態らしい。時々戻るという約束を色々あってすっぽかしたからだろう。
震え出した手でもう一枚を見ると、今度はちゃんとした文面になっていたので少し安心した。
『ミッチへ。
センセイが倒れたので代筆のルギエだよ。
届いてるか分からないから結論から言うと、みんな早く顔を見たいってさ。
ミッチがいない間も色々あってね?かくいう私も早く会いたい〜って思ってる。
聞けばもうすぐ長い休みになるんでしょ?センセイの事とか、例の鍛冶屋ちゃんの事も沢山話したいな。だってさ。待ってるよ。
追伸、ガッコの方で好きな人できた?できたら教えてそいつブッコ』
「え、何でそこで途切れるの。ちょっと!?」
冗談混じりなのか本気なのか相変わらず分からない人である。
手紙を戻してベッドに潜り込んだ道夫、しかし気になって気になって中々寝付けないのであった。
〜次回、86話〜
春の訪れが近づく中、道夫はレイルスの元へ向かう。彼?の口から告げられる物とは……。




