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君のいない灰色と//異世界  作者: シマミ
DISC 1 前編〜灰色の世界〜
65/205

第64話〜作戦開始//狂気の城〜


〜翌日、早朝〜


「あぁ店員さん、これとこれを。どうも」


 早朝から市場は沢山の賑わいに満ちている。そこで薬屋に寄っていた道夫は『回復薬』と書かれた薬瓶を二つ程購入していた。因みに昔からの癖で、釣りが出ない様丁度の額を支払っていた。

 その薬瓶には、アルリア・エイギンという懐かしい名前の印が施されていた。


(前に言ってた薬、できたのか?元気にしてるかな)


 少し懐かしさに浸っていたその時、全身を真っ白のローブに包んだ二人組が通り過ぎた。深く被られたフードからは、着ている者が男性なのか女性なのかも伺えない。

 二人組が離れるのを確認して、道夫はユィンスで連絡を取る。


「目標、指定地点通過」


 手短に内容を伝え、すぐに通信を切る。ここから先は時間との勝負でもある。

 薬瓶をポーチにしまい、道夫は足早に大教会の方へと向かって行った。


「頼んだぞ、クラウ……みんな」


〜〜


「……」


 とある家屋の一室で、クラウはただ一人静かに教会からの迎えを待っている間に作戦の流れを頭の中で繰り返していた。

 女性に扮して内部へと侵入。その後工作隊を中へ入れる為の手引き、リストにあった行方不明者の安否確認。そして一番の目的に『定刻の鐘を鳴らさせない』事があった。


『長いこと調べて確信したが、あの鐘は毎日全く同じ時間に鳴らされる。あれの洗脳は全てを完璧に騙し通せる代物だが、完璧であるが故に脆い。もしかしたら、街の洗脳を解くことが出来るかもしれぬ』


 鐘を止めるだけでそこまでの変化が訪れるとは思えないが、いずれにしてもまずは内部への侵入である。女性として振る舞う事は兎も角、やはり体の面で苦労した。

 女性と思われてもおかしくない姿体型ではあるが、どうにもならない所はある。


「(ミチオ、私に勇気を)……開いております、どうぞ」


 愛する人へ祈っていると、ノックと共に開いた扉から純白のローブに身を包んだ二人が現れる。

 その後ろには、ローブを剥かれ頭上に星が回っている二人の男女が倒れていた。


〜〜


「……やっぱりここだ。陣の核を中心じゃなくてこんな所にやるなんて」


 街の西側の端、人通りもない路地の裏にラクリオは他に手を触れて呟いた。

 陣という存在を魔法陣としてでなく『一つの命』として見ている彼には、その陣を構成する上での核となる部分を感覚的に理解していた。

 それを破壊すると陣は消滅すると彼は予想しているが実践でそれが出来た試しは無い。


(それに、こいつはとても()()()()()すぐに助けてやらないと)


 ラクリオは幾つもの鞄を開いて中の陣達を解き放つ。自由になった彼等は細かく分かれて核の部分へと染み込む様に消えていった。


「さぁ、おっぱじまるぞ。切り替えろよ俺……」


 ポケットのマッチ箱から『魔晶塊(マナイ)製マッチ』を取り出し、地下へ伸びる導火線へと点火させるのであった。


〜〜


「おじさま、これが……」


「そう、今ここにある全ての銀を注いで作り上げた。対サザーの切り札『銀聖釘(シルバアント)』だ」


 オランドが開けた小箱に納められたそれは釘と称するにはかなり大きく、杭と呼んでも差し支えない位だ。

 装飾も無い、只あの男を殺し切る為の切り札をナクは受け取る。


「それを射れる様、弓も改良を加えた。頼んだぞ」


 ナクは頷いて装備を整える。津是も既に準備を終え、彼女を待っていた。

 その間も組織にいた皆が「頑張れよ。また後で合流するから」「気を付けて…」と声を掛けてくれる。師匠程では無いがそれなりに長い付き合いになった人ばかりだ。


「皆もどうか死なないで。それじゃあ、行ってきます」


 隠し通路の扉を開き、ナク達は振り返らず真っ直ぐに歩いて行くのだった。


〜〜


「そろそろ到着する。そっからは単独行動だから注意してくれ」


 クラウともう一人は無言で頷いた。既に大教会は目と鼻の先だが特等だった彼女だけが、あの城から漂う異様な空気を感じる事が出来た。

 一見しても他と比べて大きい事と多少の装飾が施されている位だ。しかしそれならばこの空気、雰囲気は一体なんだと言うのだろう。

 数年前の『劇場都市』の時を思い出す。あそこにあった人間の持つ純粋な狂気がこの城からも感じられたのである。


(気持ち悪い……余り見過ぎちゃだめ)


 正体が全く分からない不気味さを飲み込んで歩き続ける。選別者に扮した二人が扉前の騎士と話し合い、頷いた騎士達が扉を開ける。


「うっ……」


 中へ入った途端目眩が起こり、ふらついた身体を何とか立て直す。目眩が収まると同時に、中に仕込んでいた「耐性」陣が消滅していった。


(やっぱり相手は仕込んでた。だけど……)


 たった今、彼女の心は今までにない程澄み渡り安らいでしまっていた。

 さっきまでずっと付き纏っていたあの空気は見る影も無く、遠くから聞こえる歌声と教会を照らす太陽がそこら中を照らしていた。


「ミチオ……皆、気を付けて」


 祈る存在など此処には居ないが、クラウは祈らずにはいられなかった。

〜次回、第65話〜


 それぞれが反抗作戦を開始したイビシュエルの街。外から感じた狂気が一切見えない大教会の中へ潜入した彼女が見た物は……。

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