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君のいない灰色と//異世界  作者: シマミ
DISC 1 前編〜灰色の世界〜
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第60話〜朝日来来//震える街〜


〜反聖組織地下聖堂基地〜


 地下であるにも関わらず、差し込む朝日が未だに眠る二人の姿を照らす頃。突如聞こえた轟音と喧騒は、眠っていた道夫の目を覚まさせるには充分過ぎた。


 敵襲でもあったかと、何故か(はだ)けていた衣服を急いで着直す。

 ドアを開ければ、それが敵襲ではなく何かが稼働する音の様であった。


「な、なんだぁ?」


「ん…んぅ、みちお?」


()!朝だよにいちゃん達!起きて起きて!」


 廊下の向こう側から案内役を買って出た少年、テッチが走りながら声を挙げた。クラウも目元を擦りながら起き上がり、何も着ていない上半身は美しい肌を曝け出していた。

 そんな中、テッチが勝手に部屋の中へ入ってくる。その光景をみて何かを察したのか小さく頷いた。


「……あぁ〜、そういう事かぁ。やっぱり付き合ってたんじゃん。ほら早くこっち来て!」


「だから……分かった、分かったから一旦出てけ!」


 テッチを適当に追い払って支度を済ませる。洗面台の前で顔を洗っていたら、着替えを終えたクラウが背中に抱きついてきた。


「昨日ミチオが言ってた事、信じてみる……」


「あぁ。それでクラウ、俺の首元になんか跡付いてんだけど……どういう事かな」


 道夫の首元にある跡について、クラウは小さく「ごめん」と呟くだけであった。

 テッチにまたからかわれるのも癪なので、少し着込んでキス跡を隠して部屋を後にする。


「二人とも遅いよ!近道するからついて来て!」


 やけに急かしてくるテッチの方へ小走りで向かう。階段脇のジップラインっぽい物を使って降りた先は、夜に訪れた時とは全く別の空間が広がっていた。


「蒸気、もう二回り追加してくれ!」「調整入るぞ!離れとけ!」「遅いぞテッチ!すぐ作業入れ!」


「は〜い!またねにいちゃん達!まずはあっちでご飯食べてね〜!」


 それだけ言って、吹き出す蒸気の音と人々の喧騒の中へテッチはあっという間に消えて行った。

 辺りでは、ゴーグルを付けて銃器の整備をする者や神妙な顔持ちで蒸気の機器を弄る者。食堂っぽい所ではかなり大きな鍋で調理をする人々もいた。


「そこのお二人さん!ほら今日の朝食だからしっかり食べるんですよ!」


 やはり大忙しなのか、呼ばれたと思ったらあっという間に二人分の食事を道夫達は受け取っていた。

 トレイの上にはしっかりと焼き上がった黒パンに卵とベーコンという如何にもな組み合わせ。

 汁物の方はコーンスープの様な良い香り、そして出来立てを証明する暖かい湯気が漂っていた。


「これは……」


「驚いたろう?気付けばここまで増えてしもうた」


 食堂の隅で茶を嗜んでいたオランドが声を掛ける。口ではそう言っているが、彼の顔は嬉しそうだった。

 パンを千切ってスープに浸して食べてみる。味の方もイメージ通りで美味しく、冷えた身体によく染み渡った。そうして食事を楽しみつつ、この基地の事を改めて聞くことができた。


 朝になると『兵隊』達の姿と痕跡は消える。そこから日が暮れるまでの短い時間の中で着々と装備や設備を揃えて来たらしい。

 しかし規模が大きくなる事はそれだけ敵側にも気付かれやすいのだが、今のところ敵襲された事は無いらしい。


「奴らに此処は見つけられはせんよ。仮に見つかっても近付こうとは思うまい。奴らは意外にも弱点が多いからの」


「その『銀』の事だけど、こっちにも少し分けては貰えないか?」


 道夫の問いに、オランドは申し訳なさそうに首を横に振る。元々この世界に無かった物を少しずつ使っているという事情から、現在は分けられる程の数も無いらしい。


「あぁそうだ、津是の奴が2人を呼んでおった。場所は聖堂から地下にある訓練場だ」


「分かった。そういえばラクリオ達を見てないけど、どこ行ったか知らないか?」


「若いの二人なら朝早くから外の方へ行ったぞ。調査をしたいと言ってな」


 オランドに礼を言って食堂を後にする。聖堂と称した工房は忙しなく動き回る人々と、蒸気と濃い油の匂いが漂っている。

 聖堂奥の階段から更に地下へ降りた先には、中々に広い空間が広がっており、訓練用の的や人形が少々雑に配置されていた。

 掘削機器が置いてあるという事は、まだ広げている最中なのだろう。そして津是は訓練場の中央で道夫達を待っていた。


「少し遅い。ココは用事があって来れなくなった」


「いや聞こうとした事先回りするな。それで、俺達を呼んだのは?」


 津是は腰の剣に手を掛けゆっくりと抜く。口一つ動かさなかったが、それだけで彼の「手合わせをしたい」という言葉が聞こえてくる様だ。

 クラウは既に戦う体勢だが、流石に理由がないと理不尽だと思う道夫。しかしそんな心も読んでか、津是は彼らに理由を告げた。


「理由はある。二人にはこれから『銀無し』で奴等と戦う力を身につけて貰う」

〜次回、第61話〜


 街を調べたいと外へ出たラクリオ達。彼が最初に目を付けたのは、街の至る所に張り巡らされた鉄管を走る謎の液体であった……。

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