表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君のいない灰色と//異世界  作者: シマミ
DISC 1 前編〜灰色の世界〜
57/205

第56話〜明け始める謎//夜は続く〜


〜少し遡り、南地区〜


「……ッ!ってあれ…?」|


 手薄となった街中を走り続けていたラクリオは、ふと地面を見た時妙な感覚を覚えた。

 こんな凡人である自分が感じたと言うのに、他の二人は全く反応しなかった様だ。


「どうした」


「い、いや…っとだなぁ…」


「推測でも勘でもいいですわ。話しなさい?」


「…今ここ、変な感じがしたんだ。分からなかったか?」


 問いに二人は首を横に振る。彼だけがそれを感じられたのは『描いた陣が命を持ってしまう』と言う余りに稀有な力を有するが故であった。

 ラクリオだけが、街の床に漂っている()()()()を感知できたのである。


「それにその感覚も、凄いゾワゾワして恐ろしかった。上手くは言えないけど…このままじゃやっぱりミチオ達が危ない気がするんだ」


「……分かった」


 津是は頷いたと思うと、進路を一切変えずに走り続ける。


「ちょっと、話聞いてましたの!?」


「無論だ、お誂え向きの物がオキナの所にある。話は通してないが、彼なら恐らく大丈夫だろう」


 それは果たして大丈夫なのかと疑問を抱きつつも、オキナの所へ着いた彼等はそのまま浮鉄騎(フォエコルジス)を借りて行く事になるのであった。


〜〜


「殺った!」


 巨大なグール『屍喰鬼(ヴィガーブ)』の脳天に、ココノエの『銀入りの矢』が突き刺さる。

 直後に肉が焼け焦げ、膨らんだ肉が崩れて溶けて行く。誰もがこの怪物の死を確信した。

 断ち切られた四肢が、急速に戻り出すまでは。


「ッ!?クラウ下がれ!」


「くっ!」


 後ろへ飛び、その場所を巨腕が通り過ぎる。四肢を取り戻し、原型を失った頭は人と形容できる物ではない。


「〜ーッォォォオオ!!」


「これで死ぬんじゃ無いのかよ!?」


 声を挙げた道夫の方に顔を向け、グールが力の限り飛び上がる。その巨体に見合わず、その動きは超人バルクの様に素早い。


「うわぁこっち来た!」


ありったけの警棒壁で拳を受け止める。たった1発受けるだけで壁が大きく(へこ)み、回り込む事も背後のクラウの事も全く意に介せず叩き続けていた。


「ミチオさん!きゃっ!」


 援護しようとしたナクを狙撃による銃弾が掠める。しかし付近の兵士は姿を隠し、こちらを伺っている。

 攻撃の必要が無いのか、それとも別の要因があるのかは不明だがこんな状況下で蜂の巣にされないのは幸いだった。


「もう…保たない!」


 壁を力だけで叩き破られ、クラウの刃が首を狩る。その一撃が間に合い、寸手の所で拳は空を切った。

 だがそれでも首無しの身体は止まらない。いよいよ持ってなり振り構わず殴り回り、全く手が付けられなかった。


〜〜


「あそこだ!ミチオ達!」


「煙が!?」


「変更は無い。各自煙幕弾装填」


 浮鉄騎(フォエコルジス)の砲塔を展開、煙幕弾を設定して装填する。今ある弾はそれだけだったが、彼等には充分だ。


「なんだあの首無し!?」


「構うな。撃て!」


 発射された煙幕弾は、道夫達を中心に広場全体を覆う。着弾を確認し、ラクリオ達は一気に加速させた。丁寧に乗せる暇はない。上手く行くかも分からないが、彼等なら大丈夫だと言う確信があった。


「捕まれぇ!飛ぶぞぉ!」


〜〜


「飛び乗れ!」


 道夫の声に二人は即座にすれ違い様に乗り込み離脱していく。

 煙幕から現れた鉄騎を逃すまいと兵士が身を乗り出して銃を撃ち始める。

 だがそれを聞きつけた首無しが銃声の方へと煙の先へ消えていく。

 最早敵味方の区別すら無いらしく、幸いにも時間を稼いでくれるらしい。


「ミチオ!」


 伸ばした手を掴み、体が浮き上がって行く。余り感じた事の無い浮遊感に鳥肌が立つ。

 既に煙は晴れ始めている。これが無かったら今頃蜂の巣にされていただろう。


「乗れ乗れ乗れ!」


「急いでくださいまし!」


「津是!」


「承知」


 ナクが弓を構え、津是がぶら下がった道夫を援護する為に動き出す。

 道夫も何とか両腕から機体に乗せてそこから体を跨がらせていく。


「動かし方はどこで!」「知らない!『あどりぶ』ってヤツだ!」「嘘だろ!?」


「狙撃は黙らせました!撤退…」


「いや、()()させる!高度上げるぞ!やり方多分こうだろ!」


 操作が偶然合っていたのか、機体はバランスを保ちながら高く飛び上がっていく。

 街の全容を見下ろして大教会の鐘が横に見える程の高度、その景色を見ていたラクリオの顔は険しさを増していた。


「くそ、やっぱり変だと思ったんだ…!人どころじゃ無い、この街全部…!」


「…ラクリオ?」


「…悪い、今ミチオ達にも見えるようにする。トッスポ、出番だ」


 ラクリオがポケットから取り出した笛を吹く。その音と共に街の各所で光が発され、街に隠されていた模様を映し出す。


「あれは…陣か?」


「そうだ…。しかもあれは、街一つ丸ごと囲ったトビッ切りヤバイ奴だ。しかも発動者は……」


 道夫達には見えなかったが、ラクリオにだけは『魔法と発動者を繋ぐ魔力の糸』が見えていた。街中に流れる夥しい量の糸は、ある一つの結論を導き出していた。


「魔法の発動者は……()()()()()だ」

〜次回予告〜


「街の人全員が、この状況を作ったと…?だがそれは…」


「あぁ、そして考えが合ってたら…」


「おかしい、痕跡の一つも残っていないとは…」


「皆さんに改めてご紹介します。あの方こそ翁のオランド様で、私達『反聖組織』の創設者。つまりはレジスタンスです」


第57話〜翁//抗う者達〜

街に響き巡る福音は、新たな復怨を生む。


「いやあの爺さん……めっっちゃ拗ねてますけど……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ