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君のいない灰色と//異世界  作者: シマミ
DISC 1 前編〜灰色の世界〜
56/205

第55話〜喰らう鬼//揺らめく怨讐〜


「わんさか敵が来てるが、ちょっと無茶し過ぎたかも…!」


 家屋の屋根を飛び越えながら、追手の攻撃を掻い潜る道夫。警棒の罠や壁を駆使しどうにか捕まらずに逃げ続けられていた。

 しかし敵も屋根まで一飛びで追い続けていた。明らかにあちらの方が重装備なのだが、どうやら彼等には関係ないらしい。


(い、今耳の近く掠めた…!)


 当然銃弾もあちこちから飛び交って来るが、自律的に攻撃を防ぐ警棒によって何とか直撃を免れていた。当然全弾は防げない為、決して安全では無いのだが。


「よし次はこっち…にぃぃ!?」


 次の屋根に移ろうとしたその時、彼等を運んでいた輸送機が前方に立ちはだかった。取り付けられた砲座は此方に狙いを付けている。

 

「うおぉぉアァァァ!!」


 考える暇も無く道夫は前方高くへ飛び出し、そして勢いのまま輸送機の上に着地した。

 道夫自身まさか乗ってしまうとは思わなかったが、銃撃から逃れる事はできた様だ。


(プロペラ無くて良かった…あったら挽肉になってたろうよ…)


 機体の大きさから街道に着陸も出来ない為、からこのままやり過ごせるかと思ったが、数人の兵士が当たり前の様に飛び乗って来た。


「ま、マジか乗ってきた…!」


 敵は持っていた銃を降ろし、腰に掛けていた剣を抜く。銃で殺さないと判断したのだろうが、尚更都合が良い。

 長剣程の警棒に雷の魔法を付与していく。目視できる程の電撃がシャフトを走る『スタンロッド』である。


(吐いて……吸って…今!)


 息を吸って止め、一息に道夫は駆け出す。一人目の上一直線の剣を避け、脇へ警棒を叩き込む。

 雷その物を叩き付けられ、身を焦がしながら敵はそのまま地上へ落ちて行った。


(一人目)


 向けた背に殺気が迫る。左を逆手に持ち替え、死角となり呼び出していた右手の警棒と組み合わせて棍にする。

 そのまま棍を振り向き様に相手の右腹へと命中させる。剣の突きが身体ギリギリを掠め心臓が跳ね上がりそうになった。


(二人目!)


「おおぉ!!」


 即座に分離、左の逆手に持った警棒で一人目の剣を弾き、右側の物を『ジュッテ化』させて受け止める。

 左右挟み撃ちの攻撃を受け流しながら、道夫はある機会を待つ。幾重の攻防の末二人が同時に突きを放つ。

 切っ先が届く僅かな隙に、道夫は素早くしゃがんで刃を避ける。

 空中に固定した警棒で剣は封じられ、拳銃を抜こうとするも道夫が両手を(かざ)す方が速い。


獣祓い(シャグナ)!!」


 一陣とは言え、強力な電撃を受けた二体は他の者と同じく落下して行く。


(…改めて、戦える様になったよな。俺)


 妙な関心も束の間、輸送機が大きく揺れて動き出した。振り落とされまいと道夫は使っていた警棒を機体に突き立ててしまう。

 電気が流れる音と共に、各所から煙が吹き始め火が上がる。

 スタンロッドを差し込んだ事による機器のショートで、飛ぶ力を失った鉄塊は墜落を始めたのだ。


「不味いまずいマズい!!」


 何とか立ち上がり、伸加速で機体から離れ着地する。流れの止まった噴水が立つ大広場に機体の断末魔が響き渡る。

 そこに居た一人を追っていた兵達は、機体の下敷きになり爆発と共に塵になっていく。


「…追われてたのお前だったのかクラウ」


「斬っても斬ってもキリが無い…。助かったと言えば助かったが、この状況は…」


 言葉を言いかけたその時、別の屋根から炸裂と共にココノエナクも此方へ降り立って来た。

 数名の追手も現れたが、彼女の正確且つ素早い射撃はその全てを射抜いていた。


「やはり、銀入の物でなければ…あら、また会っちゃいましたね。これって偶然?」


「ミチオは兎も角、俺はこの場所以外の逃げ道を抑えられていた…とすれば」


()()()()()()…と」


 示し合わせも無しに、三人それぞれが背中合わせになる。既に辺りから気配と殺気に囲まれ、至る所から銃口を向けられるが誰も引き金を引かない。


「ヴオォォォォォ!!!」


 代わりに聞こえて来たのはおよそ人でも獣でもない、地を揺らす程の雄叫びと大きくなる巨体の足音。

 墜ちた輸送機を叩き潰しながら現れたのは、大人三人位の体躯と太く大きな手足を持つ吸血鬼の眷属が一体。つまり『屍喰鬼(グール)』である。


「今度はデカブツか。街中なのに容赦無いな…」

 

「奴は確か痛みを知らなくなっているとの事、お二人は手足かその筋肉を狙って下さい。私は今から『銀』を使います!」


「オニガシマで行く。少し時間を稼いでくれ!」


「了解した」


 クラウは頷き、グールの方へと駆け出した。

 此方を狙って銃を撃って来るが、警棒壁『トーチカ』がそれを防ぐ。


「ヴォアア!!」


 怒りの咆哮と共に右ストレートが放たれる。クラウの体を確実に捉え直撃するも、その姿は霞に消える。

 後の目に映ったのは、細切れに斬られる己の腕だけであった。


「…シッ!!」


 クラウの一閃が左腕を切り離す。そして無防備となった両脚の筋肉さえも瞬く間に切り裂き地に跪かせる。


「オニガシマ・グラインダァァ!!」


 トーチカからの伸加速で飛び出し、グールの横腹を思い切り振り抜く。その一撃は肉を抉り斬って、二つに分かれた身体は血の一滴も流さず倒れていった。

 しかし斬られた部分はひとりでに癒着し始め、脚は膨れ上がる肉と共に新しく形成されて行く。


「やはり彼女が決め手か…だがこれなら」


 トーチカの隙間から一本の矢が放たれた。銀を僅かに混ぜ込んだそれは、寸分狂わずグールの頭を深々と射抜いていた。


〜〜


「如何にも、私がオランド・ホーン。勝手にオキナなどと呼ばれているが…この街の秘密を最初に知り、復讐を抱いたしがない老人よ」


 今の所誰も居ない大規模な地下水道、その老人はたった一人で出迎えの挨拶を練習していた。

 街が今までに無い異変を見せた以上、ココノエ達が此処へ来るかもしれないと妙な勘が働いたからだ。


「…なんて、ココノエちゃんに早く会いたいのう…。遠慮などせず共良いのに…」


 初めて国の異変に気付いた時からどれだけ経っただろうか。燻っていた怨讐の炉に再び炎が灯る中、誰かが地下水道を走る音がする。

 遂に来たと呼吸と姿勢を整えて、厳かに声を上げる。


「如何にも、私が…」


「ごめんよおじさん!これ借りちゃうから!」


「ごめんあそばせお爺さま!」

 

「……」


 ココノエの姿は無く、見知った男と見知らぬ二人が颯爽と現れ、そのままこっちには見向きもせずに『浮鉄騎(フォエコルジス)』三騎を発進させ夜の街へと飛んで行った。


「……挨拶ぐらい聞いておくれよ」


 オランドは、深い悲しみに包まれた。

〜次回予告〜


「これで死ぬんじゃ無いのかよ!?」


「捕まれぇ!飛ぶぞぉ!!」


「動かし方はどこで!」「知らない!『あどりぶ』ってヤツだ!」「嘘だろ!?」


「くそ、やっぱり変だと思ったんだ…!人どころじゃ無い、この街全部…!」


次回、第56話〜明け始める謎//夜は続く〜

明けぬ夜無く、しかして明けの日は遠し。

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