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君のいない灰色と//異世界  作者: シマミ
DISC 1 前編〜灰色の世界〜
52/205

第51話〜剣の秘密//地霊点作戦〜


「…泣き止んだか?」


「あぁ…」


 2人きりの医務室、漸く泣き止んだクラウは耳まで真っ赤にしてそっぽ向いてしまった。

 自分の背中には、信じられない程の大きな傷が残っていた。即死してもおかしくないというのに、今の体はほぼ完治している。


(魔法様々だぁほんと…)


「それでミチオ…あの話は覚えてるか?」


「あの話?あぁアレか。話してくれるのか?」


 クラウの知るニホン人の話を思い出す。思えば、手がかりを得る為だけにかなりの無茶をした物である。

 道夫の問いに、クラウは正面を向いて頷いた。その顔はすっかり落ち着きを取り戻し、いつもの彼に戻りつつあった。


「改めて、ミチオに話さなきゃならない事がある。俺の秘密とその師匠『トキムネゲンイチ』の事を…」


 長かった話を纏めると、師匠であるゲンイチは少なくとも十年以上前からこの世界に現れた。

 そして彼がいつも語っていたのは『英雄』と呼ばれた少女と共に当時の魔王を倒すべく戦っていた話だった。

 

内容からもそれが井ノ上るあで間違いない。不可解な事も多いが、今の彼からはそれ以上の情報は得られそうに無い。


「その後は俺を弟子にとって、剣の技を沢山教えてくれた。寿命で亡くなるまで、師匠から一本取れたのは最後の手合わせの時だけだった…」


「クラウ、お師匠さんの話に『空の穴』の事とかは無かったか?なんでここに来たのかとか…」


「いや、そんな話は何故かしてくれなかったんだ。何度聞いても誤魔化してたのを覚えてる」


「いいや、無いなら良いんだ…。話を戻そう、それでお前の秘密ってのは?」


 それを聞いた途端、彼は恥ずかしそうな顔をした。言いたく無い事ならと付け加えようとしたが、クラウはそれを制して深呼吸する。

 呼吸を整え目を開けた時、彼の雰囲気が急に柔らかくなった。男性である筈なのに、その姿、立ち振る舞いはとても女性的だ。


「俺…いや、私は…『反性(レセクス)』なんだ」


「……れせくす?」


「体は男でも、心とかは…女。イミュリーズでは基本的に、忌む者として嫌われてる。これを知ってるのは、師匠と…ミチオだけ」


「…なんだ。それだけか?」


 それだけ言って、道夫はクラウの手を握る。この異世界でどうかは知らないが、チキュウではそれ位の事は別に珍しくない。


「っ!い、嫌だとは思わないのか…?こんな、気持ち悪い自分を…」 


「思わない。そんな奴こっち(チキュウ)じゃ少なく無かったし、そんな事で見損なったりする程俺も子どもじゃない」


「そ、そんなあっさり言い切るなんて…」


「そうであってもお前はお前だ。皆に打ち明けるには時間も掛かるだろうけど、胸を張っても良いと思う。それに…」


「それに?」


「そんな事を馬鹿にする奴がいるなら、俺が力になる。大人として、仲間として…だから大丈夫さ」


 こんな言葉、普段はペラペラ出やしない。かなりデリケートな問題故思いつく限りを話していたら、クラウはいつの間にか胸を押さえ息は荒くなっていた。

 やはり不味かったかと思ったが、彼はいきなり服のボタンをゆっくりと外し出す。

 隙間から垣間見える肌は男と思えぬ程きめ細かく、なんだかえっちだ……ん?


「え?なんで脱ぐの?」


〜〜


「あぁミチオい…たんだぁ…?」


 道夫を探していたラクリオは、目の前の光景に思考が停止した。彼があの剣聖に押し倒され、当のクラウは何故か涙目である。


「おい待て!俺怪我人!けがにんだから!後その気は無いから!…あ」


「なんで!お…私じゃダメなのか!?さっきから胸が高鳴って仕方ないんだ!…え」


 2人してラクリオの方を見る。暫しの沈黙の後、ラクリオはやっと口を開いた。


「あァ、学長ガヨンデタゼェ。ウン、オタノシミ続けててイイから。ウン」


 ロボットみたいに部屋を後にするラクリオ。

 思い切り不味い所を見られたが、流石にクラウも目が覚めた様で脱ぎかけの服を直して一緒に学長の下へ向かう事にした。

 そこまでの間、クラウは全く口を聞いてくれなかった。


〜〜


「やっと来ましたか。クラウ、ゆうべはおたのしめましたか?」


「えぇ学長、あの手は上手く行きました。貴方も人が悪い」


「いや記憶無いんですけど。俺何されたの?ねぇ」


 学長室に来て早々とんでもない事を聞いてしまった。だが後の2人であるラクリオとリリテが入室した途端、学長の顔が真面目な物に変わった。


「揃いましたね。では話を始めましょう」


「いやゆうべの……分かった分かりました聞きます…」


「よろしい。他の二班は既に出発されてますが、君達には実地任務として三班に分かれて三つの『地霊点』を探って頂きます」


 地霊点とは、星の中核から流れる魔力が集中する箇所の事を指す。大気に流れる魔力とは比較にならない程膨大で純粋な力である。

 殆どは海の底や火山等人が住めない場所だが、時折人の住める場所に出来る事がある。

 既に人類がそこを基点に街を築き、豊富なエネルギーを活用しているらしい。


「待ってくれ学長、こっちは起きたばかりでまだ…」


「あぁごめんなさい。またまた気を急いて…簡単に言うと、魔王がこの地に現れました」


「それ簡単に言っていいことか!?」


「ですが、奴はまだ居城の封印を破れていません。だから封印の鍵である地霊点を改めて調べ直す必要があります」


「その中で目星を付けたのが、この三つだったという訳です。いずれも街ではありますが、魔力の減りが妙に大きい。その原因の調査もついででお願いします」


「それって今ここにいる4人でって事ですよね?またミチオさんとご一緒できるなんて嬉しいですわ〜」


「それで俺達の目的地は…アブダルアの『イビシュエル』?」


「別名『教会の国』。国丸ごと『血聖(ヘゼイル)教』の宗教国家だ」


 場所はアブダルア大陸の更に北部、寒冷地ながら自然に囲まれた場所に立つ大国である。


「現地の協力者方には話を付けてあります。皆さんも準備出来次第出発を」


 随分急な話だったが、数ヶ月ぶりに学院の外へ足を踏み入れる事になる道夫であった。

〜次回予告〜


「あれが教会?城の間違いじゃないのか?」


「件の学院生ですよね?初めまして『ココノエナク』です」


『聖なる血の流れ、我らを動かし導き給え』


「教義の本の最初の所、大分長く書いてるけどこれ…『早寝早起き』ってことか?なんだそりゃ」


「結論から言います。この街は……」


次回、第52話〜早寝早起き//聖なる血と蒸気の街〜


「あのお二方、距離が近くありません?」「チカイネェ…」

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