表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君のいない灰色と//異世界  作者: シマミ
DISC 1 前編〜灰色の世界〜
5/205

第4話〜始めての生活//雑草だらけ〜


〜竜の月、2周りの日らしい。〜


 リュカネの村で暮らすことになる上で、道夫が最初に始めたことは『言語の理解と習得』だった。

 何も分からない道夫は、それこそ子ども向けな教材や絵本から少しずつ言葉を学んでいく。

 かなり必死に取り組んだ結果、簡単な事なら会話も可能になった


「リアーシェさん、薪、とれました」

「ありがと、ミチオ。男の子の手を借りれてうれしいよ」


 

 ここまでに至るまでに何週間も費やしたが、ただ言葉を学ぶだけでなく様々な家事を手伝った。

 したこともないような経験に主に腰を痛める事になる。家事の後は夜まで彼女が付き添って勉強を見てくれた。


「ミチオ、結構できるようになったね~。」

「リアーシェさんのおかげ」


 夜の帳の中、彼女が長めの髪をかき上げながら微笑む姿はいつだって綺麗でつい見とれてしまう。

 ニホンにいた頃は携帯を見ながら夜更かしなんて事もあったが、今は早く寝て早く起きる。そんな当たり前な規則正しい生活を長年振りに取り戻していた。


 村ですることは家事の他にもたくさんある。彼女以外との村人への挨拶、時々来る商人の所で買い出し。

 家の掃除や洗濯…は流石に分けて行っているが、偶にリアーシェのが混ざっていたりする。本人は軽く済ましているが、酷く気不味い。


 村の子供たち、主にガキ大将の遊び相手になることもあった。

 ここまではまだ楽な物だ。しかし一番の難敵は『畑の世話』である。水やりや虫対策はまだ良いが、昨日抜き取ったばかりのそいつらは日の光を浴びて再び地上へ芽吹いていたのである。


「…また雑草だらけか!」


「あはは…」


 後になって聞いたのだが、畑一面に茂っている草の名前は「ザッソウ」だったのだ。

 二ホンにはその昔、雑草という名前の植物はないといった人物がいたらしい。


「まさか異世界にあったなんて…」


 まず何がキツイというと、毎回手入れをしても数日か最悪翌日には生い茂っているということ。

 当然草刈機なる物は無いので全て手作業で行う。照りつける太陽の下、長時間しゃがんだ体勢でいれば腰が痛み出してくる。


 この世界には当然、シャロンパスの様なオーパーツはない。一方リアーシェの方はせっせと雑草を刈り、既に道夫が刈った分を超えられた。

 日が暮れて、くたくたで限界を迎えた腰に、リアーシェは何事も慣れが必要だよと、痛み止めの薬草を用いた塗り薬を塗ってくれた。


(いやぁあんなの絶対慣れないって…農家の人達は凄かったんだなぁ…)


 腰への感触が、いつの間にか手で押されている感覚へと変わる。

 マッサージまでされるとは思ってもなかったが、マッサージというには何か妙だと思ったその時、後ろから優しい光が出ているのが垣間見えた。


「…リュナリ」


 リアーシェが小さく呟く。光が消えるころには、道夫の腰の痛みは完全に消えていく。

 この世界で学んだことはもう一つ、イミュリーズという世界には『魔法』というニホンでは有り得ない概念が存在している。


 あの狼男を追い払ったのもその魔法の1つで、道夫も勉強の中で彼女からある程度の事は教わった。

 魔法は、使用する魔法に対して適切な陣を描き、言葉を唱えれば放てるという単純なものだと彼女は言う。


「ミチオだってもしかしたらできるかもよ?魔法」

「いやでないって…」


 魔法の使用には、当人の体にある魔力が源になっている。元より扱えるとは思ってない為、今日の疲労も溜まっていたのでさっと聞き流すことにした。

 ある日、リアーシェやクラセン神父にあの手紙を見せた。 

神父が言うには、古代に使用されていた統一言語らしい。

 とうの昔に言語そのものは消えてしまったが、解読の方法は未だ失われてはいなかった。


『お前の持つものを返してもらう。それは私たちのものだ』


 手紙にはそう記されており、読み解いた瞬間に手紙そのものが焼き消えた。

 2人はよくわかってない顔をしていたが、道夫は手紙の言う物について心当たりがあった。

 鞄に入れた覚えのない、るあとの思い出のマフラー。


「この世界にいるのか?るあ…」


 今にも探し始めたい心を道夫は抑える。今の自分は余りにも無力である事を充分に理解していた。

 るあの為にも、まずはここで生きていく方法と知識が必要だ。


「ミチオ、なにか目的があるって顔してる」


 リアーシェには既にお見通しのようだ。道夫は彼女に向き合って頷いた。


「はい。だから力を貸してください。リアーシェさん」

「むっふふふ〜、いいよ。色々教えてあげるけど、そのかわり〜」


 リアーシェは道夫の近くまで顔を寄せる。道夫も顔を少し赤らめながらその瞳を見つめていた。


「これから私たちは家族!私のことは、リア姉さんもしくはリアねえって呼ぶこと!かたっくるしいのは抜き!」


 余りの突拍子の無い言葉に、道夫の思考は一時停止する。そして思考がまた再生された時、道夫はその大胆な家族宣言に大いに驚く事になる。


「えっ、えっーーー!?」 

〜イミュリーズの魔法〜


 使用するのは、魔法を放つ為の正しい言葉と、魔法発動の為の適切な魔法陣の形成の2つである。


 言葉と陣、後は体内の魔力さえあれば子供でさえ簡単に発動させられる。

 威力や効果を高める為にはより大きく陣を形成し、状態に合わせて言葉を発する必要がある。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ