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君のいない灰色と//異世界  作者: シマミ
DISC 1 前編〜灰色の世界〜
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第47話〜お前なんかに//はなしたくない〜


「…クラウ殿と戦った時の話ですか。良いですよ。噂の彼に頼まれたとあっては断れない」


 大遅刻の中、偶然成績発表の場に居合わせたスディリを見つけ事情を話した所あっさりと承諾し食堂で互いに向き合って席についた。

 軍師という渾名が付く位なのでどんな堅物かと思えば、その印象は柔和で穏やかでさえあった。


「率直に聞きたい。彼の見えない剣は一体何なのかを…」


「……見えない、というのは合っています。しかしそれでは」


「『明視(センナ)』で見破れない理由がない」


「そうです。だからあれには他の理由があると勘づきあの技を試した。実際それで剣は見えたのですが、彼の強さは私の想像を遥かに越えていました」


 逆立ちに降る雨によって見えない剣を見破られた後も、クラウはスディリの放つ戦術の尽くを斬り伏せ殆ど動く事なく勝利した。

 悔しかったけどあんなの勝てませんよと朗らかに彼は笑っていた。


「じゃあ俺も、その水を使えれば見破れるのか?」


「…残念ながら、この魔法は従来の陣をその場で無理に改造した物でして。慣れてない人には厳しいかと」


「…そうか、なら他を当たってみるさ。ありがとう」


「えぇ、無事をお祈りしています」


〜〜


「あぁ、1発だけ作ってくれれば…。そこん所はリリテに言えば手伝ってくれるから……お前友達少ないんだから丁度良いと思うし……。分かった分かった、今度な」


 メニライへの連絡を終え端末を閉じる。寄り掛かった椅子の背後には、何気ない表情でお茶らしき飲み物を飲むクラウがいた。

 互いに背を向けているのにも関わらず、背中から伝わるピリピリした気に道夫は立ちだした鳥肌を何気なく隠す。


「それでクラウ、勝負の日は決まったのか」


「明日」


「随分と急かすじゃないか?こっちは幾つも格下だぞ?」


「関係ない。既に今日も含め2日経った。先程の連絡もだが、お前なら何かしらの策があるのだろう?」


「それわざわざ教えると思うか?」


「何、ただの推測だ」


 何ともないという口調で話続ける道夫だが、勝負は明日とこれまた急な決定に焦りを隠せずにいた。

 未だクラウ対策はやっと一つ目処が立ち始めたばかりだ。全く持って時間が足りない。


「…もう少し時間くれない」


「ダメだ」


 最後まで言い切る前に言い切られ、クラウは席を立つ。思わず振り返って見た彼の姿は、どこか…どこか妙だった。

 上手く言えない感覚を抱く中、道夫の耳は偶然にもある言葉を拾ってきた。


「お前なんかに」


「え?……あっ」


 その言葉を問おうとした時には、もう彼は遠くの方へ歩いてしまっていた。


〜〜


「お前なんかに、かぁ…ミチオってやっぱり好かれてるわね」


「あれを好かれてるって言えるのは絶対おかしいから」


 あの後、メニライの作業室に戻った道夫。昨日の事をまた怒られるかと思ったが、当の彼女は普段通りの声で接してくれた。

 …腕に思い切り抱きついて、離してくれない事を除いては。


「まぁともかく、また何か変な事が起きないとも限らないわ。私の時みたいに」


「そう言えば……メニライと戦ってた時、途中から様子が明らかにおかしかったが何か覚えてたか?」


「どうかな…。ハッキリとは言えないけど、アウガンツの操作が少しの間完全に私から離れてた」


 つまりあの時、彼女とは別の何かが中にいた事になる。しかし影自体はあの戦いで完全に消えて、今のメニライにはその面影すらない…様な気がする。

 

「でも、ただの嫉妬から来てる物かもしれないし決定付けるのは難しいわ」


「…剣聖なんて呼ばれてる奴が、嫉妬なんて抱くとは思えないが……」


 ソファーに座るつもりで、気付けば2人ベッドの端に腰掛けていた。いつの間にこっちに来たんだろうか、それに枕が一つしか無い。


「え?だってミチオ今日一緒に寝るって約束」


 していない。それに彼女の目が若干光を失っている様な、既にボタンも外して臨戦態勢だ。据え膳食わぬは恥というが、食えんものは食えんのである。


「遅くまで悪かった。アレも受け取ったしじゃあ部屋に帰…」


 れない。左手が謎の帯によって既にベッドに繋げられている。いよいよ不味い事態になった、まだるあともシた事ないのに先に色んな物を失ってしまいそうだ。


「メニライ、ほんとに…!」


「ッ!!」


 押し倒され、上に彼女が跨って思い切り抱きついて来る。道夫はそんな彼女を振り払おうとは遂に思えなかった。

 涙を流していた少女を前にして逃げ出す事なんて出来る筈無かった。


「ミチオ……わたし、わたし……」


 今の彼女は、自分がどうしたいのか何をどうすればいいのか分からなくなっているんだろう。

 一人で抱え込んで来た彼女には、道夫という存在がどんなに大きかっただろうか。

 長命とあるエイン族とは言え、彼女は他の生徒達と同じ位しか生きていない少女と変わらないのだから。


「…これだけ、だからな」


 彼女をギュッと強く抱きしめる。胸の所で小さく聞こえる謝罪の声にも、ただ頭を撫でて答える。

 暫くそうして涙ぐむ声が寝息を立てた時、道夫もそのままゆっくりと眠りについた。


 その日道夫は、長い長い夢を見る。その世界に居たのは、たった1人の『剣士』であった。

〜スディリ・ザハ〜


 通称『水軍師』と呼ばれる程の水属の高等生。水という柔軟さと隙を無くす事に特化した戦術で次の特等生候補に選ばれる。


 クラウとの戦いが地味にトラウマ。二度と戦わせないでと心から願っている。

 水を扱う為、水を徹底的に弾く様に制服の素材から何まで改造している。


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