第41話〜繋がらない//大切な繋がり〜
「今思えば、俺も彼女を追うべきだったのかもしれない。あの後は作戦通りに動いて、俺が逃げたのは大分後だったがいつの間にかリアーシェの姿も無くなってた」
「でもなんで、後半人が変わったかのように姉さんは……」
「……それについてはな。彼女は元々冷たい奴じゃないってのと、あの頃には既に一回目の契約を使っていたんだと思う。それが何時かは不明だがリアーシェは自分の死期を分かってたんだろうさ。だから使うなって学院の頃からあれほど……」
人間、余命が分かると変化が現れるとは言うらしいが、姉は10年も前からそれと向き合ってたことになる。
「姉さん……」
落ち込む顔をする道夫の肩に手を置くキオス。気付けば少し道夫は泣いていた。
脳裏に浮かんでいたのは本当に暖かく優しい彼女の姿と、別れの日に見せた悲しそうに笑顔を浮かべたあの瞬間だった。
「ミチオ、お前の力の事はある程度知ってる。学院時代、リアーシェも似た様な事で悩んでいた。自分の手に入れた力の特異性と代償に……」
「学院時代の姉さん……?」
精霊達は、使用者との契約に基づき力を与えるとされている。彼女が契約した精霊クキヴァはその力の発動に条件を設けたのだという。
一つ、変身の使用は三回目を限度とする。二つ、契約の度に彼女の命を幾らか頂戴する。そして三つ、契約を終える時彼女の願いを叶えて届ける。
「確かにふざけた内容だったが、彼女にあれ以上適合し且つ力を引き出させた個体は居なかった。誰もが考え直す様に言ったが、それでもリアーシェはそいつを選んだ」
何でか分かるか?というキオスの表情に、道夫は首を横に振って答える。
彼には、姉がどうして自らの命を危険にさらしてまでその道を選んだのか分からなかった。
「彼女は言っていたよ。『大好きなものを守る為に』って」
『ありがとうミチオ、大好きになってくれて』
「……大好きなもの……か」
その言葉を反芻する道夫を背にキオスは立ち上がる。
そろそろ別れの時間だと悟った道夫は最後に彼へ掛けようとした言葉は遮られた。
「もう俺からは話すだけ話した。姉の事が知りたいのなら、こっから先はお前自身で考えな」
「……分かった」
背を向けたまま手を振り、キオスは屋上を後にする。道夫はただ静かにそれを見送った。
静まり返った屋上で、道夫は既に目星を付けていた。彼女の真実を知る者は後1人いる事を知っていたからだ。
「戻る理由が増えちゃったな。コーリュバンに」
〜〜
「珍しい所みっけ。ミチオ」
人形相手に訓練をしていた所を、メニライが声を掛けてきた。訓練を止めてベンチに座ると、彼女も隣に座ってくる。
「いいのかよ? 俺なんかに構ってて。魔法戦第二も近いんだろ?」
「いいったらいい。それに、構ってくれるの君位だし」
「それだから友達少ないんだぞ?友達いないって結構後で堪えるからな」
「私は友達なんて少ない位が丁度良いと思う。その方がお互い深く知り合える。そう言う物しょう? 」
そう言って彼女がさりげなく距離を詰めた。経験の無い男子には中々にドキッと来る展開だろうが、当の道夫には慣れ切った事であった。
「……それで、結局何の用なんだ? 」
「別に、珍しく外に出てみたら君がそこにいた。だから少し声掛けてみようと、最初は思ってた」
気付けばお互いに顔を見合っていた。彼女の翡翠色の瞳に自分が映る程に。
今更動じる彼では無いが、るあの物とはまた違った綺麗な瞳だと思っていた。
「今、他の娘の事考えていたでしょう? 」
「……前にも同じ事を言われた。女の子ってのはそう言うのが分かる物なのか? 」
「考えてたのは、否定しないのね」
くっつきそうな程に近付き、彼女は道夫の手を握る。ここまで積極的になったメニライを見るのは流石に初めてだ。
そして、どうしてそんなに切なそうな顔をしているのか。そこから浮かぶ感情の渦は、今までの関係を崩すには充分過ぎた。
「ねぇミチオ……最後に一つだけお願いがあるの。もし次の魔法戦、君……貴方が負けたらずっと私の側にいて」
プロポーズも同然な言葉を投げ掛けて、彼女は離れて席を立った。
まさか告白されるとは思わず、道夫も流石に面食らった。
「ま、待って。なんでそんな事を……」
離れていく彼女を引き止めるも、振り返った彼女の顔は『負ける気はない』という決意を秘めていた。
「それは、次の魔法戦『決昇戦』。私の相手が貴方だったからよ」
(そして、私の中で燻っていた心が何かを知ってしまったから……)
それだけを言い残して消えていく彼女の背を見届けながら、道夫は予想外の強敵に当たってしまった苦悩を頭を抱えるのだった。
〜決昇戦〜
魔法戦第一『生存』を乗り切った生徒が対象で行われる第二試験。
運が良ければ、自身の等級を上げる事も可能であり昇級に目がない生徒は是が非でも参加しようと努力を重ねている。
しかし、最近では第一の突破者も減少傾向で第二は成績・評価に影響しない事から、下級の生徒達からは上級者の戦いを楽しむ場という状態となっている。
「楽しんでるのは良いけど、学ちょ……先生としてはいつか自分もそこに立てる様に頑張って欲しいのになぁ……」
〜とある女装好きな先生からの言葉〜




