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君のいない灰色と//異世界  作者: シマミ
DISC 1 前編〜灰色の世界〜
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第40話〜せせらぎ//心燃ゆる〜


 ゴブリンに天使の部品を奪われてから数週間位が経ったが、珍しい事も無く変化があったとすれば、城へ浴びせられる罵声が増えた程度だ。

 それもこれも、ダールが天使から得た技術をこれまた欲張って独占すると大きな声で言ってしまった事が原因だった。

 今や日々の生活にも密着している物を独り占めされるとなれば誰だって憤る。

 だがそんな怒りの行進も、数十分後には聞き飽きた領主が兵に命令し掃討銃で脅して帰らせた。

 時折銃声も聞こえたが死傷者が出たという話は無い。


「……また聞こえてたね。銃声」


 貴族達の菓子を食べながらランツェルがぼやく。リアーシェはいつも通りの顔をしていたが、今や部隊の誰もが浮かない顔をしている。


「潮時、ってやつなのかもなぁ……」


「でも……ダールも手放す気は無いだろうし、抜けた所で…」


 彼等には今いる場所以外に頼れるアテなど無かった。知ってか知らずか、部隊の結成当初もそういう訳ありな連中が殆どだったそうだ。

 当時の雰囲気は本当に最悪だった。心に重しでも乗っかった様で何も話すことすら出来なかった。

 でもそこから連れ出してくれたのはリアーシェだった。俺にしか分からない様に目配せをして……。


「どうしたんだ?珍しく呼び出して」


 城塞裏の船着場にいた彼女は、いつも通りの顔だったのにどこか悲しそうだった。

 その日初めて俺は彼女の「表情(カオ)」を見れた気がする。


「……どうしてかしら。今までだったら何とも思わなかった筈なのに、海を見ていると少し安らぐ気がするの」


 その時の彼女は雰囲気からして違って見えた。上手くは言えなかったが、何かを悟ったかの様だった。

 実際あの後の事を考えるとその時既に何かを分かっていたんだと思う。


「そりゃあそうだ。海ってのは生きるも死ぬも全部受け止めてくれる。だから海の前じゃ誰もが正直になれるのさ。だからリアーシェ、お前の本心とか本音を教えてくれないか」


「近く、あのゴブリンはここへ来るわ。天使の部品を集めていた時、彼自身が言っていたの。そこで私はある賭けをする」


 彼女が言うには、ゴブリンの襲撃をわざと成功させるのだという。

 正直無茶だと彼女を止めるのが普通だったんだろうが、突然遠くから響きだした角笛の音にそれは遮られてしまった。


「最後に一つだけ、こんなふざけたこという私でも、貴方なら信じてくれると思ったから」


「……大丈夫さ。ずっと上手くやってきたんだ、だから信じる」


 その言葉を聞いて頷いた彼女と共に、大急ぎで作戦室へと向かうのだった。


~~


「おいおい……どこから湧いてきたんだあの数。リアーシェも来たから言うが、見ての通り小鬼(ゴスブ)の大群がいきなり湧いて出た。外はこっちの兵で抑える。リアーシェとおまけ共は城下で避難指示、大事な『市民()』を守れ」


 ダールは妙なメガネを付けいつも通り下衆な指示を飛ばしまくっていた。部屋を出て遠くを確認すれば、確かに信じられない程大群の鬼がこちらを狙っていた。


「……あれだけの数を抑えろだぁ?確実にこっちが死ぬじゃねぇか」


「外の兵だけじゃまるで足りない。ざっと1000体近くいると虫が言ってる」


「ど、どうしよう……」


 皆重い空気の中にいたことでかなり士気が下がっている。だがリアーシェはいつもと変わりない様に部隊の皆へ声をかける。


「各員、戦闘時は『変身』の使用を許可。手分けして市民の避難を最優先。そして担当区域の避難完了後は市民を連れて設定済みのルートから城下を退避」


 この城を見限ると言い切ったリアーシェの言葉に戸惑う隊員達。しかし彼女の言葉をそれぞれが飲み込んだ時、下がっていた士気は次第に高まっていた。


「全く、いつの間にそんな悪者になったんだウチの隊長は?仮にもダールに仕えていたってのによぉ」


「あいつからは、市民を守れって命令しか受けていないわ」


 だから問題ないでしょ?と何食わぬ顔で言う彼女を見て誰もが少しだけ笑っていた。

 そしてついに遠くでは激しい銃声が戦いの始まりを告げる。

 城門の上で、全員が別次元に隠していた銃のホルスターを呼び出し天に構える。


「この引き金が、私たちの最後の別れ。また会えるかも分からない、今を生きられるかも分からない最後の戦いへの合図」


 皆の方へ向き直った時の彼女の顔は、いつも通りだったけど少しだけ優しそうに見えた。


「だからみんな、必ず生きて……。作戦、開始!」


『変身!』


 城門に響く幾つもの銃声。それが結晶と呼ばれてた女との最後の会話だった。

〜アウテリューナ特務隊名簿〜


第一、リアゼン・トー。使用精霊『鎧』オー・ダン。任務中行方不明。

第二、セグント・パッサ。使用精霊『風拳』サデ。任務中行方不明

第三、エオマ・テパ。使用精霊『狼』カキチ、チサビ。任務中逃亡確認

第四、チキ・ウィンボルド。使用精霊『蜂』クィチア。任務中戦死(焼死体の為判別困難)

第五、ランツェル・ルポット。使用精霊『波』カラシャ。任務中行方不明

第六、ツゼ・ネウマ。使用精霊『影』ゾール。任務記録無し。

以上6名及び作戦逃亡首謀者

リアーシェ・クナッド。使用精霊『特殊型・結晶』クキグァ。任務中行方不明。

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