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君のいない灰色と//異世界  作者: シマミ
DISC 1 前編〜灰色の世界〜
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第3話〜リュカネの村//命の恩人〜


 道夫は、森林から来た人々と共に通り道を進んでいた。結局先ほど言った言葉も通じていなかったようで、今は手を差し伸べてくれた女性に手を引かれて歩いている。


(この人達はいったい何だろうか…。服も見たことない感じだし、どこへ進んで…)


 そうこう考えている内に大きな門を通り、所々に家が建てられている場所に着いた。

 一通り見渡して村である事は何となく分かった。他より少し高めの建物は教会だろうか。

 向こうから子供たちが走ってくる、誰もがその姿を見て笑顔を向けてたり、安堵の表情を浮かべている。


 そんな中、道夫と彼女、そして神父っぽい人とお年寄りの4人で教会の中へと入っていく。


「〜、ーーー?リアーシェ」


 リアーシェと言われて、彼女が反応し話し出す。どうやら彼女の名前らしい。

 何を言っているのかはさっぱりわからないが、2人が会話をしていると神父が道夫に声をかけてきた。


「〜〜。ーーー、〜?」


 笑ってウィンクされているが、やっぱり言っている事は不明なままだ。そんな気持ちが顔に出ていたのか、神父も気まずそうにしている。


「ほんとに…なんなんだ」


 意気消沈した道夫は近くにあった椅子に座り込む。リアーシェ達は再び話し合いだした。

 2人はどこか怪しげな表情をしているのに、リアーシェだけは悲しい顔をしている。

 声の調子もどこか強く、2人に何かを訴えている。

 よろしく無い雰囲気の中、ぐうとお腹の鳴る音がした。音の主は他でもない道夫自身だ。

 確かにここに来てからなにも食べていない。3人とも笑い出して結局道夫は、神父達と共に食事を取ることになった。


「……信じられない」


 テーブルを囲んで食事が並べられる。籠に入ったパン、いい香りのシチューとサラダ、グラスには一杯の水が入っている。まだ昼頃か昼過ぎ位の時間だが、中々に豪華であった。


「頂きます」


 両手を合わせて呟く。他3人は不思議そうにしていたが、その後祈りを捧げる様な仕草と言葉を呟いていた。

 食事が始まったところで、パンを口に運ぶ。少し硬めな食感だが美味しい。何より()()()()

 出来立てのシチューも、水水しいサラダも空腹の身にはたまらなく美味しい。ここまで味が有る物を食べたのは何時以来だろうか。


「〜、ーー♪」


 リアーシェは、道夫を楽しそうな顔で見ていた。まるで、やっと笑ってくれたと言っているかのように。

 道夫自身も先程の沈んだ気持ちは何時の間にか和らいでいた。


「…ご、ごちそうさまです」


 食事を終えて、やっと冷静さが戻ってきた。話し出した3人の会話を聞いて少しでも何か知ろうとしたのだが。


(ってわかるわけない!)


 気が付けば話は終わり、今日はリアーシェの家に泊まることになった様だ。

 それでいいのか仮にも男なのにそんなのでいいのか。

 妙な気持ちが悶々としてしまう道夫のことは気にせず、リアーシェは夕食の支度をしている。束ねられた茶色の髪がふりふりと揺れていた。


「〜〜。」


 鼻歌混じりで楽しそうにするリアーシェ。手伝おうとしたが、座っててと断られた。

 そして支度が終わったらしく、リアーシェは夕食を持ってきて隣に座ってきた。

 彼女をランプと夕日の明かりが照らす。ただでさえ綺麗な姿がより綺麗に見え、道夫も流石に胸がドキッとした。


「ふふふ〜、あいむ、リアーシェ。〜?」

「え!?」


 今朝言った言葉を返されて驚く。言葉使いから見て、意味は分かって無いのだろう。彼女はくすくすと笑ってこちらを見ていた。


「〜?ギミチオ」


「ギ、ギミチオ…?ぷふふっ」


 名前を変な所で区切られた。残りのヒイラの部分は何と思われてるのやら、なんだかおかしくて笑ってしまった。


「むむ〜」


 その後も食事をしながら、リアーシェと笑い合いながら。身振り手振りの会話で少しのことは分かってきた。

 ここは、リュカネって名前の村であること。そして『イミュリーズ』という名前がこの世界の名前であること。

 覚悟はしていたが、改めて異世界と認識するのは意外と辛い。

 それでも、リアーシェは落ち込みそうになった道夫を抱きしめて安心させようとしてくれた。


「だいじょうぶ」


 ここに来るまでに道夫がずっと呟いていた言葉も、彼女には聞こえていたようだ。ニホン語のことなど知らないだろうに。

 日も沈み、ソファーを使った急造ベッドに横になる。ここがニホンではない別の世界、帰るあても方法もさっぱり分からない。

 それでも彼女、井ノ上るあの行方がこの世界なら分かるかも知れない。あの日の約束通り、彼女を見つけてニホンへ必ず帰る為に。


(分からないだらけだが……何とかやってみるしかない)


 今の世界を生きて彼女を見つける。新しい決意を抱くも疲れた身体は道夫をそのまま眠りの世界へと運んで行った。

 歯車は周りだし、彼の全ては今ここで変わり始める事になる。

〜イミュリーズ〜


 大きく4つの大陸に分けられた。チキュウと全く異なる異世界。

 リアーシェが示すには、アブダルア、イナラン、ホズバグ、レザリュムアの4つが大陸それぞれの名前で、リュカネ村はイナランの首都『コーリュバン』から離れた場所にあると言う。


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