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君のいない灰色と//異世界  作者: シマミ
DISC 1 前編〜灰色の世界〜
38/205

第37話〜追想//結晶と呼ばれた女〜


〜10年前、アテア国領地にて〜


 その日、リアーシェ達特殊魔法士隊は国に潜んでいた反抗組織の根城が判明した為壊滅させよと命令を受けていた。

 まだ一人前とは言えなかったキオスは、討ち漏らした奴を狙撃で処理するという役割で自前の狙撃銃型を構えて待機していた。


 内部への切り込み役として前々から部隊にいたリアゼンとセグント、そしてリアーシェがそこに居た。

 結果から言えば、討ち漏らして逃げ出した者は一人として居なかった。


 後から内部へ入った時には、辺りは真っ二つにされた者や色んな所が潰れてしまった者。そして結晶にされた者達が散らばっていたのだ。


「ひぃ…!」


 声がした方へ向かうと、リアーシェが生き残りに向けて魔法を放とうとしていた。彼女の魔法は世にも珍しい『氷と地』の2つの属を持っており、それが結晶という彼女の武器だ。


「リアーシェ待て!相手はもう…」


「…」


 彼女は無言で視線だけをこちらに向けていた。相手は完全に戦意とやらを失っている。確かに国に対して反旗を翻そうとはしていたが、これは明らかにやり過ぎだ。


「ここまで潰されれば再興も無理だ。これ以上死者を増やしても」


 キオスが言い切る前に、彼女は目の前の敵を結晶に閉じ込めてしまう。結晶には恐れで顔を歪めたままの敵だった物が映るだけであった。


「…それで?」


 結晶に変えた後で彼女は何の感情も無い様な声で聞き返した。物に変わった奴の事などもう微塵も興味無いという顔で。


「…っ!今言っただろ!これ以上殺す事なんか…」


「キオスは知らないでしょうけど、これもさっきまで武器を持っていたわ。なら敵でしかない。敵は全て、根元まで消すのは当然の事でしょう?」


 その時の彼女の顔は、今でも思い出せる。本当に何一つ込められていないそんな目をしていた。


「任務は終了よ。帰還の準備をしなさい」


 そこから先は、何も彼女に言い返せなかった。当時はまだ自分も甘ちゃんだった。だからこそ余りにやり過ぎな同期の彼女が尚更心配していたんだ。

 任務を終えて戻る間も酷い物だったさ。部隊の事を街の連中皆気味悪がっていたから、誰もがヒソヒソと陰口を叩いていた。


「ほら、町の死神(えいゆうさま)のお帰りだぜ…」「やめとけって聞こえたらどうする…」「見てあの女の顔…まだ娘さんと同じ位でしょう…?」「やめてよ奥さん…気味悪くなっちゃうわ…」


(…)


「気にすんなよキオス…俺たちのしてる事はそこまで間違っちゃいねぇさ…どいつも口だけの連中なんだから…」


「…ありがとうランツェル。」


「良いって事。後でこっそり取って来た菓子でも食べようぜ。今回はかなりアタリだったからな」


「また貴族の菓子を盗んで来たのか…?バレたらホントヤバイぞ…?」


「そこの2人、ヒソヒソしない。開門するよ」


 誰1人とて入れる気のない固い門が軋みと共に降りていく。ここが当時のキオス達が雇われていた拒絶城『アウテリューナ城塞』であった。


〜〜


「特殊隊任務を終え只今戻りました」


 リアーシェを陣頭にそれぞれが敬礼をする。その前に立ち、明らかにリアーシェをいやらしげに見ている男こそ雇い主のダール・ド・アウテリューナである。


 …そんな目してたの分かるのかって?いやあれはあからさま過ぎるというか狙ってやってるだろって。

 うちの特務スーツ性能は無駄に良いけど身体のラインとか出るからさ、女の子には特に受けが悪かったっけなぁ…。


「ふふふ〜…そうかそうかついに消えた消えた邪魔者消えたぁふふふふ…。良くやったぞお前たちぃ。」


 口元を押さえいかにも小悪党な笑い声を挙げながらダールは暫くの間笑い続けた。

 だが笑い続けるのに飽きて押さえていた手を下ろした時には既に笑いなど消え失せ、冷たい目線でリアーシェを舐め回す。


「結構。ではリアーシェ以外は退室しろ。私は彼女から詳しく話を聞く必要があるからな…」


 言われた通りその時は出ていくしかなかった。でも心配なんて誰もしてない。やらしさ全開だったけど、あいつ如きに彼女をどうこうできやしなかったんだから。

 案の定10分位で彼女は部屋を出てきて、その隙間からはやつの悔しそうな顔が見えて笑っちゃったよ。


「報告は終了したわ。各員は休息を」


 そんで何事もなかった様に部屋に戻っていった。そんな彼女に誰も声なんて掛けられなかった。


〜〜


「そんで何時しかついた渾名が『結晶士』って訳さ」


 終始懐かしそうな顔をしながらキオスは語り続けてくれた。

 聞いていた道夫にはリアーシェにそんな過去があった事を、話にあった結晶士を同一人物とはとても思えなかった。


「…まだ、続きがあるんだろ?」


 道夫の問いに、勿論だとキオスは頷く。


「この際だ、まぁとことん話しておかないとよ…。そう、そんな彼女と俺達の転機になったのはあの『天落(エンジェルフォール)』が起きてその調査に行った時だった…」


 突然現れたチキュウの言語に道夫は驚いた。何でもない所からまさかそんな言葉が聞けるなんて。


「ま、待て!エンジェルフォールって…ていうかその言葉どこで…」


「あ〜知らなかったけか?最近は滅法見かけなくなったが、『天使』が空から落ちてくるのさ。落ちたそれは大変貴重な素材や媒体になるから皆躍起になって探し出すのさ。その呼び方については俺もよく知らない。何時の間にかそうなってたんだ」


「…そうか。話切り上げてすまない、続けて欲しい」


 それを聞いて少し気落ちした彼を他所に、キオスは話を続けて行った…。

〜拒絶城〜


 ダールが国を興す際、元からそこにあった廃城を改修して作らせた。頑丈に作り上げた城壁と街を囲む高級な材質の防壁装甲と設置型掃討銃が複数配置された厳重な守り


 そして元が廃城である事、誰も寄せ付けない様な物々しさを漂わせる巨大な城門による城の雰囲気を利用した。


 危うきに近寄らずという人間の心理を活かした設計となっている。

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