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君のいない灰色と//異世界  作者: シマミ
DISC 1 前編〜灰色の世界〜
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第36話〜束の間の日//彼女の秘密〜


 ようやく療養を終えた道夫はすぐにムルチアを探した。しかし彼は何処にもおらず、聞けば学城院の外で実地任務に行ったという。少なくとも数日は戻って来れないらしい。


「参ったなそれ…」


「まぁ急な話だったらしいし、戻ってきたら探してた事伝えとくから」


 道夫は図書委員に礼を言いその場を後にする。最初はあの洞窟で、次は少し前の魔法戦で起きた力に彼が言っていた言葉


(あの力はもう使ってはいけません。使い方が分からなければそのまま封印するべきです)


 その言葉の真意を聞く暇もなく彼は離れていった。そこに何かしらが潜んでいるのは間違いないが、本人がいなければどうしようも無い。

 悩む中校庭に出ていくと、ゲートの方に大勢の生徒達が集まっていた。

 走ってそちらに向かう者もいる中、気になった道夫も向かう事にした。


 近づいてみるとかなりの人数がいる事が分かった。テレビで見た、有名人が空港から帰ってきたかの様な感覚だ。近くの生徒に声を掛け、とりあえず事情を聞いてみることにした。


「なぁ、ここで何があるんだ?」


()()()が来てくれるんだ…ってミチオさん知らないっけ」


「簡単に言えば、ここを卒業した人が来てくれるの。実際に色んな国の魔法士として活躍してるのよ」


「う〜ん…それだけでこんなに人が集まるのか…?」


 そう言っていたらゲートから1人の男が現れ、辺りは黄色い声が響き渡った。


 ムルチアとは違う細く鍛えられた体をやけに黒いマントが覆い、中に着ていたスーツには所々に光る線が入っていた。

 黒くボサついた髪と無精髭、そして一番特徴的だったのはその身長と同じ位の『ライフル』を肩に担いでいた事だ。


「キャーキオスさーん!」「生キオスさんだぁ…」「またお話聞かせて〜!」


「やぁみんなただいま。そんでごめんな?他の奴らも呼んだんだけど結局無理だったみたいだ」


 それを聞いて落ち込む生徒もちらほら見かけた中、キオスと呼ばれた男は皆に聞こえる様に言った。


「その分、俺たくさん土産用意してきたからよ!みんなの分もちゃんとあるから元気な顔を見せてくれよ後輩たち!」


 落ち込む生徒達もその言葉で表情が戻っていく。どうも相当慕われている様だ。声援の中、道夫は彼のスーツが何か気掛かりだった。


「あの感じ、どこかで…」


「それでみんなに聞きたいんだが!ここに時期外れの新入生が来たって話を聞いたんだが、誰か知らないか」


「新入生って…」「ミチオのことだよな…?」「あっミチオ…」


 辺りがざわつき、生徒が自分から離れていく。キオスもそれを見つけたか自分の方へと近づいてくる。


「君がヒイラギミチオ…だな?」


「…ええ、そうです」


「なるほど…ここに来た目的の一つを果たせそうだ…。ミチオ、少し2人だけで話をしないか?」


 そんな言葉に返す暇もなく、キオスは道夫の手を引いて歩き出す。この世界の人達は本当に押しが強いらしい…。


 そして連れてこられたのは、第一校舎の屋上だった。キオスが言うに、当時何かと悩んだらここの景色を見て気分を落ち着かせてたらしい。

 学院を一望できる景色には、道夫も少し助けられた事もあった。


「それで話というのなんだが…。君はこの服の事を知っているね?」


「…あぁ、姉さん…リアーシェという人が似た様なのを着ていたのを覚えてる」


 あの日、リュカネの村で起きた龍の襲来。そして…実在していた彼女との最後の日。遠巻きでは分かり辛かったが彼のスーツを近くで見て間違いないと確信できた。

 だがその話を聞いた途端、キオスは飲み物を盛大に吹き出した。変な所に入ったらしくむせ込みながらも話し出す。


「ね。ねえさん…!?あの…リ、リアーシェがかぁ!?げほっげほっ…」


 何もそこまで驚く程の事なのだろうか。彼女については確かに自分も全て知っている訳では無いが、いつだって優しかった彼女の事でここまで驚愕されるのは心外だった。


「けほけほ…あぁ、すまない。まさかあいつが血の繋がりすらない弟を持つなんてな…。昔の彼女じゃ考えられない」


「姉さんの事何か知っているのか?」


「知るも何も、俺とリアーシェはここの卒業生で、しかも同期で更に同じ部隊だったんだ。その頃からよーく知ってるさ…『結晶士(グリヴィア)』なんて恐れられてたあいつの事なら」


「結晶士…」


「だからあいつの()()を聞いた時、時間掛けてでも無理にその村まで駆け付けたもんだ。もうその頃には、村にでっかい結晶があるだけでなぁんにも無かったけどな…」


「…キオスさん。姉さんの事…知ってる事全部、教えてくれないか?俺にも姉さんの事全部知らないんだ…」


「その前に一つ聞く。君の姉さんは本当に優しかったと?」


 その問いに疑いなく道夫は頷く。もしキオスがそれを偽りだというのなら真っ向から否定する所だ。彼女の優しさや自分への愛は間違いなく本物であったと。


「なら尚の事言いたくなんか無かっただろうさ…。その名に恥じなかった結晶の様な心を持っていた自分の頃なんか…。でも、もう良いよな?言っちまってもさ…」


 キオスは道夫に背を向けて一本の煙草を吸い、吐いた煙を見つめる様に静かに語り出した。


「あれはもう…10年近かったかなぁ…。ここを卒業した俺達がある国の特殊魔法士部隊として雇われてた頃の話さ…」

〜キオス・リー・フランド〜


 かつての学城院アカリア卒業生。生徒達の大先輩として非常に慕われており、外に中々行けない生徒達へのお土産品や土産話は皆んなの楽しみの1つとなっている。


 現在はどこかの国で雇われ狙撃士として腕を奮っており、「雷弾サバム」という異名の通り、雷属の魔法による特殊弾頭の加速は正にレールガンその物である。

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