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君のいない灰色と//異世界  作者: シマミ
DISC 1 前編〜灰色の世界〜
31/205

第30話〜衝突//人型流星〜


「くっそぉ!」


 一番に動いたのはラクリオだった。即座に『獣祓い』の陣を描きレイソードに放とうとしたが、陣から雷が放たれる事は無かった。

 描かれた線や文字が一頻りに震えた後、まるで意思を持った様に辺りを飛び回ったのだ。


 彼の描いた陣は、()()()()()()()()()()()。彼だけが持っていた特異性であり、悩みの種であった。


「まぁ、同情はしておこうか。ただ…」


 レイソードは高めた魔力を陣に乗せて描き出す。星属の陣は従来の陣と異なり、幾つもの星座が周囲に現れるという。

 無論それを見過ごす彼らではなく、ラクリオの描いた文字や線達も光線や接近戦で応戦しようとする。


「その様に散らばって『星』の真似事をされるのは気にくわないが。『星流(ルラルバ)』」


 星が彼の剣に纏われて加速された斬撃は、空いた距離などお構い無しに、ラクリオの陣達を塵へと変えていった。

 そして不自然に残った軌跡、それに危険な気配を感じた道夫はすかさず自分達を覆う様に警棒を地面から生やして盾にする。


 予想通り盾の外から爆発音と衝撃が響く。凌ぎ切ったと同時に視界が開ける。既にレイソードは次に移ろうとしている、まずは奴を足止めしなくては。


「させるか!」


 警棒を複数召喚し、加速の下レイソードの懐に入り込む。襲い掛かる剣撃も警棒で確実に受け止めた。


「中々の勇敢さだね。勝算はあるのか?」


「それがなきゃ、こうやって戦いやしないさ。」


 流れる様なレイピアの攻撃を、一つ一つ警棒で防ぎ、砕けた端から新しい警棒を召喚する。

 砕けた破片を飛ばしての不意打ちも、レイソードは躱した上で道夫に追い討ちをかける。


「そんなものか?噂通りの力、見せてはくれないのか?」


「はぁ…はぁ…噂って、なんの噂だよ」


「洞窟一つ丸ごと消し去ったという話を聞いた。是非一目見ようと思っていたのだが…どうやら訳有りの様だね」


 彼の言う通り、道夫が現実で英雄イウェルの力とやらを発動させたのはあの洞窟の件以降一回もなかった。元より発動の仕方も理解している訳でもないのだが。


「ははっ…期待に添えず悪い。生憎使い方を知らないんだ」


 疲れた身体を誤魔化して、余裕そうに道夫は笑う。それを聞いて残念そうにする彼の瞳は、冷徹な物へと変わっていた。


「…そうかい。なら君には負けて貰うよ。勝算ごと、星粒にしてあげよう」


 レイソードが更に陣を展開する。今度の魔法は先程までとは比べ物にならない。食らえば一撃で全員沈むだろう。

 だが、道夫もそれを待っていた。更に、いつ広まったかも分からない噂話で対抗策への時間も稼がせてくれた。


「ラクリオ!リリテ!」


 道夫の声と共に、何もいなかった空間から2人の姿が現れる。リリテの陣は既に発射準備を終え、ラクリオの陣達がレイソードの足を封じる。

 逃げない為の一手であったが、彼は最初から避ける気はないらしい。後は真っ向勝負だけだ。


「受けてみなさい!火龍咆(ドラガギガ)ァ!」


「終わりたまえ!!星禍天刀(ルマカリナ)!」


 後ろに下がり、咄嗟に身を守った道夫。瞬間、轟音と衝撃、そして爆風が同時に襲いかかる。周囲の木々事何もかもをソレは吹き飛ばしていった。


〜〜


「よ…ようし、振り切ったっぽい…」


 あの後ぐったりと倒れ込んだリリテを抱えてあの場を逃れた道夫達であったが、あの一戦で2人共かなり消耗した。

 衝撃と煙で分かる物では無かったが、道夫にはあのレイソードをさっきので倒せたとは思い辛い。悪くなった状況に深い溜息を疲れと共に吐き出す。


「それに…リリテ本当に大丈夫なのか?」


「あーうん…彼女ならまぁ…うん…」


 ラクリオはやけに歯切れの悪そうな顔をしている。あんな大魔法を放ったのだから無理は無いのだが…。

 そしてリリテがブツブツと呟いていた言葉を聞いた時、道夫は今までの気持ちを必要最低限に撤回した。


「…ウふフフ…あんなの撃っちゃった撃っちゃったぁ…げほっげほっ…あぁ痛いの気持ちいい…反動きもちいぃ」


(oh…)


 曰く、彼女は()()()()()()()()らしく、自分に見合わない魔法による反動を愉しんでいるらしい…。

 何故こうもへんた…変わった女性と縁があるのだろうか、先生元気にしているかな…。と少し遠くを見つめた道夫であった。

 そうして空を見上げた道夫は、偶然にも流れ星が落ちるのを目撃した。


「なんだ…あれ?」


 流れ星にしては大きい、否そもそも青空に流れ星だなんて不自然極まる。

そして気づいた。あれは星なんかじゃ無く、とてつもなくヤバイ奴だと。


「2人共!逃げ…!」


 そう叫ぶ瞬間、聳え立っていた山から派手な金属音が遠くからでもハッキリと響き渡り、大気さえ吹き飛ばす様な衝撃と共に山は溶けて弾け飛ぶ。

 咄嗟の行動虚しく、3人は衝撃と気流に飲まれ吹き飛ばされそのまま意識を刈り取られていった。

〜一方その頃〜


「いててっ! カーラもっと手当ては優しく…」


「失礼。当主様なら大丈夫だと思いましたので」ギリギリ…


 あぁやめてギリギリ締めないで…。それにしてもあの一撃には驚いた。大分無茶をしてた様だが…。


「レンア戻りましたよしゅじん様〜。3人共遠くに逃げたようですぅ」


「お疲れ様レンア。まぁ目的は果たせたので良しとしようか…」


 手当てを済ませ、あちらの準備も終わらせなければ。今回現れるかは不明だが、念を押しといて損はないはず…。


「しゅじん様、流れ星が見えますよ〜?」


 あぁ星なら幾らでも見て…。なに?星!?今までの予定より15分程早いぞ!?


「それは星じゃ無い!2人共後ろへ!」


 大分想定外な事態だが、『奴』が来た以上立ち向かわねばならない。


 …今回こそ勝ってやる。ムルチア…!

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