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君のいない灰色と//異世界  作者: シマミ
DISC 1 前編〜灰色の世界〜
29/205

第28話〜試験前日//木漏れ日と剣聖〜

非常に長い期間空いてしまった事による


〜今までのあらすじ〜


ニホンの大学生、柊道夫ひいらぎみちおは扉の先に広がっていた異世界『イミュリーズ』に迷い込んでしまう。


その先で出会った大切な人々との日々で、彼は自分が持っていた特異な力を知る事になる。


その力に目をつけた学城院アカリア学長のレイルスは力を制御する術を教える為。


道夫は力の本来の持ち主であり行方不明になっていた道夫の恋人『井ノ上るあ』の手がかりを得るために、彼は学城院へ入学する事になる。


その旅路に、不穏な空気を漂わせながら…。


 試験前日。それは全てがピリピリする特別な日である。


 ある者は試験前ムルチア復習講座に付きっきり、ある者は諦めムードアッパラパーに見せかけて他の奴を1人でも出し抜こうと画策し、筆記より実戦だと魔法の訓練に励む者もいた。

 そんなある者の1人である道夫は折角の復習講座に入り損ね、どうしたものかと教本と資料を木漏れ日の下読み続けていた。


(そういえば、ここって持ち込み可なのだろうか。だったら少しマシになるのに)


 大学では、試験に教本を持ち込めたりする場合がある。それのお陰で難を逃れた事も少なく無かった。

 それ以外にも当時は色んな人に助けられていたような気がする。

 この世界に馴染みすぎたからなのか、その頃の事を鮮明に思い出せなくなってきていた。


(あっ、アイツは…)


 偶然、道夫の近くで瞑想をしている男がいた。

 そこにいたのは『特等級のトップ』『剣聖』と呼ばているクラウ・イルリアである。

 真っ黒で美しさすら感じる長髪、右目も髪で隠れているがその顔立ちは見方によっては女性と見られてもおかしくない。

 そして、彼がしていた()()は只々完璧で綺麗だった。


「シッ!!」


 クラウは鞘に収まっていた剣を一瞬で抜き、次の瞬間には既に鞘の中へと刃は収められた。

 彼に斬られた目の前の木は斬られた事実すら知らないかの様に佇んだままであった。


「すげぇ…」


「…!」


 零れた言葉が聞こえたのか、クラウは目線だけをこちらに向けた。その目つきは刃の如く鋭く、敵意さえも感じる。

 


「え、えっと…邪魔したのなら…」


「邪魔とは思っていない。気にせず続けていい」


 どんな切れ味高めの言葉を出されるかと思ったが、彼の話し方は至って『普通』で年相応の言葉遣いだった。


「それで、何か用か?」


「あっと…別に用があるわけでも」


 嘘だ。本当はその正座について聞きたかったはずなのに、つい気圧されてそう言ってしまった。


(何したらあんな目になるんだ……怖いわ)


「ふふふ、あぁ済まない。この目つきは生まれつきだからあまり気にしないでいい」


 クラウはほんの少しだけ笑いながら話してくれた。彼については様々な噂が飛び交っていたが、彼はそんな噂通りの人物という訳では無いらしい。


「お前、あの人と同じ『二ホンジン』なんだろう?」


「…何か知っているんだな?それにあの人っていうのは」


「教えてもいいが、条件がある。明日からの『魔法戦(アセント)』必ず最後まで来て欲しい」


「お、おいそれってどういう…」


 彼に問いただそうとしたときには、クラウの姿は霞の様に消えかかっていた。魔法を使ったというのは分かるが、彼が陣を描いた様子は全くない。


「俺にも、確かめたいことがあるんだ。だがそれは言葉だけでは証明できない。だから必ず勝ち残って来い」


 こっちの返事を待たずして、彼はついに姿を消してしまう。魔法戦というのは、筆記よりも優先する人が多いくらいの『戦闘試験』のことだ。

 魔法学校という時点で大体予想ついていたのだが、道夫はここで他の生徒達と戦うことになる。


「そういえば…アレもうできてるかな」


 とは言っても、彼とて素人ではない。そして今までの日々で培ってきた『使える物は使う』という戦術を、彼は信じて挑もうとしている。

 メニライに用意して貰った道具を受け取りに工房へ来た道夫だったが、そこに彼女の姿はなかった。代わりにそこにあったのは、道具と一枚の手紙だった。


『こんな渡し方でごめん。でも魔法戦を負ける訳には行かないし、手の内を見せる気もない。頼まれてた奴はちゃんと作ったから安心して。もし敵同士だったら正々堂々と競いましょう』


「はは…あいつこんな事言うんだなぁ…」


 そう呟いて、完成した銃を手に取る。とても軽く握りやすいそれは、他の生徒達の大体が銃を用いておりその対策として彼女に製作をお願いした。


「取り敢えず、色々見てみようか」


 この世界における銃は、ただ実弾を撃つだけでなく魔法を組み合わせる事で様々な使い方に応用できる。

 そしてこの銃は弾丸からして他とは異なる彼だけの特注品である。

 ずっと昔にフラアから教わった通りに銃の動作を確認する。身体に染み付いたその手先は、その得物が十全に動く事をすぐにも理解させてくれた。


「よし、これなら…」


 気掛かりなのは、クラウの言ったあの言葉だ。正座をしていた事から見ても、彼がニホンを知っているのは確かである。

 しかしそれを知るにはこの戦いを最後まで乗り切る必要がある。

 あの後も彼を探したが、全く姿を見せなかった。

 道夫や井ノ上るあに関係している事かは分からないが、今は少しでも手掛かりが欲しい。


「後は野となれ山となれ…か」


 大分日も沈んできた。道夫は部屋に戻って最後の準備を行う。

 朝日が見えたら、勝負の時だ。

〜クラウ・■■■■・イルリア〜


 通称『剣聖』と呼ばれる程の『魔刃士』。実力では学城院のトップなのだが、その姿を学内で見る事は多くない。後、目つきが凄い鋭い上怖い。


 剣士ではあるが、彼は剣に限らず数多くの『魔刃』を持っている。彼の独特な剣術はある男から授かったと言うが、本人以外にその男の正体を知る者はいない。


 どうやら『ニホン人』を知っているらしいが…

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