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君のいない灰色と//異世界  作者: シマミ
DISC 1 前編〜灰色の世界〜
28/205

第27話〜神速//特等生クライス〜


〜学城院、東寮〜


 校舎が集まっている中央部からそれなりの距離に、クライス達が寝泊まりする寮がある。そして、当の本人は入り口の前で道夫を待っていた。


「クライス、待たせたか?」


「いいや、今さっき調整終わった所。だから早速付き合ってくれよ。実践に」


 道夫は頷いて、広場まで歩き出す。運動場でもあるこの広場では、自らの魔法を試そうとする生徒も少なくない。


「いつでも良いぞ、クライス」


「あぁ。俺の魔法は…安くはないぞってな!」


 いつもの掛け声と共に、クライスは一つの『鍵束』を取り出す。それこそ、学城院たった1人の『機属』の魔法使いである彼の魔法である。


「いつも思うが、隙だらけだからな!『無色(ララアス)』!」


 道夫は隙だらけの彼に魔法弾を放つ。今の道夫は、この程度の魔法で消耗しない位には成長していた。


「隙じゃない……強いやつ特有の余裕ってやつだ!発動(スピルィナ)!」


 右太腿に付いている機械に鍵を差し込み回す。どんな魔法も、彼の前にはそれだけで発動する。エンジンが掛かる音と共に陣が現れ、そのまま(かかと)に装着された。

 そして車輪の様に回転する陣は、クライスの動きを一気に加速させていく。


 魔法弾が届く頃には、彼の姿は既に無い。連続して放った魔法を縫う様に避け、その右手に持つもう一つの鍵を発動させた。


発動(シャルクス)!」


 二本目の鍵から現れた陣は、クライスの手元で1本の鍵の様な刃を持つ剣へと変化する。

 接近戦のつもりだろうが、道夫は構えず頭の中でイメージを描く。

 かつて自分の心が見せた力を、そのままこちらに引き寄せる。


(大事なのは、信じる事…)


「はぁっ!!」


 さながら矛を防ぐ盾の様に、描いたイメージそのままに現れた警棒達がクライスの一撃を阻んだ。


「…できた。だけど重い…!」


 道夫の左手からは、クライスの一撃による衝撃が伝わって来る。

 速さ重視なスタイルとは思えぬ重い衝撃を抑えるだけで手一杯となってしまう。


「盾か!それならもう対策済!」


 クライスは剣の横にある陣を回転させる。途端に剣から炎が溢れ、陽炎が剣を包む。

 今の盾では炎を防ぎ切れないと悟り、道夫はすぐに新しいイメージを描いていく。


「火炎斬りってな!喰らえッ!」


 放たれた剣撃を、盾を大きく拡張させて防いだ。炎自体は何とかできたものの、溢れ出す熱波と拡張した盾は道夫の視界を塞いでしまう。

 炎が収まり、盾が炭となって崩れていく。

 その時には既にクライスに後ろを取られていた。警棒は間に合わないと、道夫は陣壁で攻撃に備える。


 その時のクライスが持っていた武器だが、見覚えが有る様な気がしていた。


「これで勝ちだな?ミチオ」


 爆発の様な衝撃が道夫を襲う。否、爆発は本当に起こっていた。陣壁が直撃こそ防いだものの、衝撃まで防ぐことは出来なかった。

 クライスは左手に装備した兵器を下げる。飛び出した杭が収納され、空薬莢を排出したソレは光と共に消えていく。


(……ゲームでしか見たことないけど、ほんとにあったんだなぁ。()()()()()()()


「…やりすぎちまったかな。ほら」


 クライスが差し伸べた手を握って立ち上がる。制服についた土埃を払っていると、寮の窓が開いた。そこにいたのは、東寮のもう一人の住人である、レティア・ミアゼルだ。


「クライス、昼間っから騒がしいけどまたそんな鍵使っていいの?」


「うっひょ〜レアさん…。いやいや、え…えぇ鍵の複製は簡単で〜…重要なのは、中身の…」


「それは前に聞いた。クライスはいつも肝心な所で何かあるから聞いただけ。今日そっちが当番なんだからご飯作って」


「おまかせ下さいませ〜」


 それだけ行って彼女は窓を閉める。ここ東寮には現在2人しか住んでいない。というのも寮の中が彼らにしか住めない様なガラクタ屋敷になっているからだ。

 クライスの使う機属は、鍵の生成に魔力を使う代わりに、発動の際には魔力を用いない特別な物で、素材となる物質もただの鉄では上手く機能しないとか。


「…ミチオさん」


「なんだね…」


「レアさん、()()()()()()()()…」


「まぁ……見えてたな」


「流石お気づきで……。それと、調整は後少しで済みそうでな。奢るから一緒にどうだ?」


 食事の誘いに乗り、一緒に寮内へと入っていく。もう誰もが知っている事だが、彼はレティアに思い切り惚れている。更に彼は学城院に数人しかいない『特等』の学生である。


 それが『クライス』という1人の男だった。


「ヒソヒソ…それはそうと…このガラクタ屋敷何とかならないのか…?」


「ひそひそ…それ以上言うな。それ以上はレアさんに殺されるぞ…それに学長も許可しちゃってるし…」


「マジか…」


 幸い、異臭もしないし生ゴミの類はしっかりと処分されていた。


「良かった……」


 それが数秒後に頭上から迫るガラクタの洗礼を受ける道夫の最後の一言であった。


 おのれガラクタゴミ屋敷。

〜機属〜


 簡単に言うなら、「機械+魔法」。様々な兵器や機械に魔法を混ぜ込み、物質が持つ限界を超えさせる。

 機属を扱う者は現在クライスのみで、彼は自分の魔法を鍵として生成し、脚にある発動機に差し込むことで使用する。

 多彩な兵器と、車輪の様に足に付いた陣による加速が彼の一番の武器である。

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