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君のいない灰色と//異世界  作者: シマミ
DISC 1 前編〜灰色の世界〜
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第25話〜目覚め//その手に相棒〜


 場面が戻り、また天使の刃が目の前に迫る。だが、自分が死ぬとは微塵も思わない。

 無理矢理にでも信じきって、祈る様に念じた。何が起きたかは分からないが、結果として道夫が斬られる事はなかった。


「と…止めれた!」


 色も形も無い、純粋な力の流れが彼の両手に握られていた。その力が天使の刃を完全に受け止めたのである。天使の剣が再び襲いかかるが、道夫はそれに合わせて弾き返す。

 打ち負けるどころか、こちらが常識外の怪物を少しだが押し返す事が出来た。


(これじゃ振り辛い…!何か形に…!)


 この力が心を信じる事で出来たのなら、その形を信じることで変えられるかも知れない。

 やぶれかぶれだが、要はその形をイメージするだけでいい。そのイメージに応える様にその力は形を変えていった。


「…変わった!」


 道夫が選んだ形は『警棒』だった。化け物達と最初に戦うと決めたあの日から、道夫にとって一番の相棒だ。


「ーー」


 後ろへ下がった天使が何かを呟き、あらゆる方向から複数の鎖が現れる。あの時に道夫を押さえ付けた物と同じであった。

 数で来るならばこちらも数で立ち向かえば良い。道夫は迷わずイメージを描き出す。物理的な可否は必要ない、只出来ると信じれば力は思うままに発動する。


「射出!」


 叫ぶと同時に自身を囲う警棒のシャフトが伸び続け、襲い掛かる鎖と相打ちになっていく。

 天使に心が有るかは不明だが、驚いたのか動きが止まっている。


「二本目!!」


 攻め時と見た道夫は、右手と左手に1本ずつ警棒を持つ。二刀流など経験が無い以上悪手だと思ったが、今は考えるより自分の本能や直感に従った。

 右手の警棒が天使の頭部を捉え、確かな手ごたえを感じるとともに警棒は粉々に砕け散った。


「まだッ!」


 念じるまでもなく右手には再び警棒が握られ、そして天使の剣と打ち合いになっていく。

 剣に当たるたびに警棒が砕けては補充され、衝撃に手が痺れ出した時、振り上げた左手の警棒が天使の剣を上へ弾きその体勢を崩す。


「そこだ!」


 すかさず道夫は右手の警棒を構え、天使の胴に向け横に振り抜く。剣で斬ったかの様に天使の背後へ切り抜けた道夫。

 天使の視線を感じるが、勝負は既に決していた。


「もう…遅い」


そう呟いた瞬間、そこから現れた巨大な警棒が天使を空へと押し出した。

 そこから逃げ出そうとする天使を、無数の警棒が檻の様に重なり動きを封じていく。


「悪いな七夏!教え破らせて貰う!」


 全身に力を込めていく。

 今考えたコレは絶対に当たると確信する彼の首には、いつの間にかマフラーの様に光が巻かれていた。

 そして道夫は助走をつけるべく距離を取る。


「必殺技その1!」


 天使に向かって走り出し、そしてある程度の距離でしゃがみ、バネの様にして空を跳ぶ。

 その際足下から警棒が飛び出し、その伸縮による加速は、結果天使より上空に到達するほどの大ジャンプへと変わった。


「その2!」


 空を飛んだ状態を保たせ、シャフトを後ろへ向け力の限りを纏わせる。

 最早警棒と呼べない、巨大なエネルギーの剣は推進力の塊となって解放されるのを待ち続けていた。


「その…3!」


 解き放たれた力の奔流による加速は、世界が罅割れる程の衝撃を伴って天使に接近していく。

 回避不能を察し、天使は防御の構えを取ったがそんな物はもう意味を為さない。


「ぜりゃぁぁぁァァ!!」


 声の限り叫び、道夫はその力を叩きつける。

 元より振れる様な代物では無いエネルギーを、彼は無理矢理に制御し天使に向けて振り下ろしてみせた。


「ーー……」


 防御も虚しく、天使は檻ごと両断され消滅していった。

 なんとか着地した道夫が振り向いた時には、割れて消えようとしていく世界と、斬った時に感じた懐かしい香りだけが残っていた…。


〜現実、学城院(アカリア)


「う〜ん…中々戻ってこないですね…」


 道夫を心の中へ送り込んで1時間が経とうとしている。これ以上は彼にとっても負担にしかならないと考えていた。


「学長にも申し訳ないですが、まずはミチオくんに謝りませんと」


 トイカが解除の為に魔杖を当てようとした時、道夫の体が動き出し、手から現れた武器が魔杖を受け止めた。


「…それ、心臓に悪いからやめて下さいよ。先生」


「ほっ…あぁごめんなさいミチオくん。これ位しか方法がなかったんです…。うん、戻って来てくれて良かった」


 道夫は1時間弱そのままの体勢だった事にふらつきながらも立ち上がる。


「それに、収穫はあった様ですね。一目で分かりましたよ。それなら、今日の所はゆっくり休んで下さいね」


(あぁ……懐かしい、空気だ)


 優しい風が誰かの声を運んでいく。誰の声なのかを察しつつ、道夫はトイカに言われるまま、嫌にぐったりした体を休める事にした。

 そして休息の中で道夫は、この力が心の中でやった様に扱えない事に気付く。あれは切っ掛けに過ぎず、後は現実の中で腕を磨けと言われているかの様だった。


「…また一つ。お前に近づけた気がする」


 誰もいない個室の中、眠りにつく彼の心は少しだけ晴れやかだった。

〜ミチオが手にした力〜


 彼自身も知るはずのなかった新しい力、名前はまだ無い。今の彼には原理も何も分かっちゃいないが、この力は長く使っていても全然消耗しない。

 

 警棒を自在に呼び出したり操る事が可能であり、彼次第で幾らでも応用が効く。しかし、現在は心の中での様に扱えなくなっている。

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