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君のいない灰色と//異世界  作者: シマミ
DISC 1 前編〜灰色の世界〜
19/205

第18話〜再会//結晶の村〜


 ここに戻ってきたのは、実に何ヶ月ぶりなのだろうか。鉄騎を止めて見回したその風景は余りにも信じられないものであった。

 辺りの地面は草一つない。完全に死に絶えた荒地に囲まれる様に巨大な結晶がそこら中に生えている。道夫は門を開けて村の中へと入る。


「すごい…」


 結晶の中で守られていた建物には傷一つ無い。あの日の村そのままなのは。彼女がここを守ってくれていた証だ。


「あれは…」


 村の中央にポツンと、人間サイズの結晶が一つだけ残っている。理由も理屈も分からないが、道夫には()()()()()()()()()()()()()()()()()


「姉さん…」


 結晶に映るその後ろ姿を、道夫は決して忘れてなどいなかった。

 確かにそこには、自分を家族として迎えてくれた恩人であるリアーシェの姿があったのだ。最後に見た時とは違う、いつも通りの装いで。 


『ミチオ、久しぶり。かな?』


 結晶越しに聞こえた声はあの日のままだったが、それでも道夫の心には引っかかりがあった。

 触れ合える距離なのに触れ合えない。限りなく近いのにその手は彼女に届く事は無い。


「久しぶり…姉さん」


『もう、また泣いてるの?ほらお姉ちゃんがよしよししたげるから……ってこれじゃ触れないか』


 てへへと笑う彼女の言葉の暖かさはまるで本当に撫でられている様にさえ感じられた。


「姉さん、これは一体……」


『ええと…色々飛ばして結果を先に言うとね。アイツを追い払ったお姉ちゃんは「思い出」として結晶になっちゃいました』


 この世界にも少しだけ馴染めた彼にも、結晶の中に命や意識は生まれる事はないことや思い出がこんな生々しくいられることも前例が無いことを知っている。


「はは…姉さんはホント凄いよ」


『えっへん凄いでしょ。それで、ミチオはどんなお話をしに来たのかな?』


「…最初はお別れを言おうと思ってたんだ。姉さんがいた所に行けば踏ん切りも付くだろうなって」


『お別れだなんて、どうして?』


「んんと…それは上手く言いにくいなぁ…。頑張って話すよ」


 そうして道夫は、彼女に今までの事を話した。エイギンの事について話した時目付きが変わっていた様に見えたのは気のせいだろうか。


『そんな人が…ミチオはやさしい子だから…ぶつぶつ』


 気のせいでは、無かったらしい。


「そ、それで姉さん。この世界でやっと彼女の手がかりが掴めたんだ。」


 道夫は、るあのマフラーを取り出して彼女に見せる。るあの正体についても、自分に恐ろしい程の力が突然現れたことも含めた全部を細かに話した。


『まさか…ミチオの恋人が英雄イウェルその人だなんて。でも変な話じゃないかな』


「変な話って…?」


『英雄イウェルの逸話がホントだとしてもそれは何十年も前の話。君がその子と離れ離れになったのが三年前…何にしても時間が合わない気がするの』


「イミュリーズと俺のいた世界で時間がズレてるとかは…」


『それは考えにくいかな。君の言う三年前にはこっちでも巨大な空の穴が現れたの。だから世界の時間差は無いと思う…たぶん』


 るあについての謎がどんどん深まってしまう。本当に話すべき事は他にもあったというのに。気になるのは確かだが、今話してもきっと答えは出ないのかもしれない。


『それで学城院(アカリア)行きになるなんて、本当に色々あったんだね』


「うん…本当に色々あった…。だからここに来たかったんだ」


『ふふ、なんだか嬉しい』


 リアーシェの姿が結晶から結晶へと移っていく。その先にあったのは、一緒に住んでいたあの家だ。

 彼女の以前と変わらない笑顔を前にして、道夫の心は針が刺さるように痛み出した。なぜだかその姿が思い出にあった光景と重なって見えた気がしたからだ。


『ミチオ、そろそろ戻った方がいいかも。出発明日なんでしょ?』


「な!?なんでそれしって…!」


『ふっふふ〜、お姉ちゃんはちゃあんと分かってるんですよ〜。ミチオがちゃんと覚えていてくれたら、お姉ちゃんはずっと味方でいるからね』


「忘れないよ、ぜったいに」


 月が光出す夜、そこに降り立つもう一つの影。毛に覆われ、二本足で立つ巨大な狼。あの日に会った狼人間がそこにいた。


『久しぶり、驚いたでしょ。というか、アレが来たのに生きてたんだ』


「……丁度良いよ、見ていて欲しいんだ。今の俺なら…大丈夫だってことを!」


 自分にあるなけなしでありったけの魔力。ガレン達にあった魔力の半分程しか無いが、今ここで無茶を通してでも大好きな姉に証明したかった。

 でもきっと、ホントはただ格好付けたかったからなのかもしれない。


(さぁ、やるぞ!)


 覚悟を決めた道夫の心は、いつかに『戦う』と誓ったあの日に戻っていた。

 あの時の警棒は持っていないが、その代わりに左腕の機械弓を展開して構えるのだった。

〜ヒイラギミチオ〜


 イミュリーズではない、何処かから来たと言われている青年。数ヶ月を経て魔法の発動を可能にするまでに至る。得意とする属は無く、技術も高くない。


 しかし、彼は英雄イウェルと同じ力をどういう訳か所持している。アレは危険だ。あの子が起こしてしまった『事故』を、もう一度この世界で起こさせはいけない。


ーとある誰かの記した記録、最新号ー

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