第16話〜生還//そして畏怖〜
結局、道夫は何故あの戦いを生き延びたのか知らなかった。
気づいた時にはベッドの中で、隣でガレン達の他にエイギン先生も安堵した表情で抱きしめてくれて、無事に起きてくれた事を心から祝ってくれた。
そして詳しい話を聞いて、道夫は余りの非現実さに言葉を失うことになった。
道夫が放った極大魔法によって、洞窟は魔晶塊のみを残して完全消滅。その後彼は意識を失い、約半日程眠っていたままだったらしい。
「ミチオくん…これ」
エイギン先生が渡してくれたのが彼女、井ノ上るあ手作りのマフラーだった。色々話を聞いた後でも、道夫の頭の中は無茶苦茶だ。
「ミチオ、目覚めた様だな」
ドアを開けて入ってきたのは、なんとコーリュバンの王様であるセイスであった。護衛の兵士も少し同行している為、場の空気は一気に物々しい雰囲気に変わった。
「ヒイラギミチオ、まったく驚いたよ。といってもあぁなるのは視えていたんだが…。先代が見た『毒の炎』と同じ様な力を持っていたとはな」
「…核?」
「あぁいや、こちらの話だ…。それより、目覚めてくれたので通達する。あぁほら私が読むからはやく取り出してくれ」
護衛から一枚の紙を取り、あくまで形式に則った口調で読み上げる。
「通達、ヒイラギミチオ。明日、セイス城にて尋問を行う。私自ら話を聞く為覚悟する事。そして『学城院』より特別な方も呼んで行う為、重ねて覚悟する事。嘘ついたら許さん以上解散」
読むだけ読んで、言うだけ言ってセイス王は兵士を連れてさっさと帰ってしまった。
「…あの方、話聞かせる気あった?」
「明日来いってだけで後は好き放題って感じだぁ…」
「ミチオ明日尋問されちゃう」
皆揃ってこちらを見る。まだ細かい事情も分かってないからか、どこか楽観的な気持ちになっていた。
「明日、お城に行けば良いわけですよね。あの方のことだからきっと悪い様にはしないと思います」
「そうかもしれないが…まぁ今日はしっかり休んでおくんだ。それじゃあセンセ後はお願いな」
「私たちは後片付けが残っちゃってたから行ってくるよ。またねミッチ」
「元気になったら、少しだけ占いもしてあげる。じゃあねミチオ」
3人共部屋を出て、後は先生と自分だけが部屋に残っている。2人きりになった瞬間、先生はさっきよりも強く抱きしめてくれた。
「本当に、無事でよかったよ…」
「先生ごめんなさい。約束の結晶、持って帰れなくて」
「…あぁ、それなら…」
先生が取り出したのは、本物の治癒属の魔晶塊だった。しかもサイズも両手で持てる程の大きさである。
「あそこは今、国の方で切り出ししてるの。大きな機械も運び込まれてすごい規模だったよ。これはそこから貰ってきた」
「国中にアレが届く訳ですか。薬売れなくなっちゃいますかね?」
「そこは大丈夫、魔晶塊だって万能じゃないし。だからまずはご飯にしよ?」
言われて初めて空腹な事に気付いた。ベッドから出て食事を取る。
その後、ベッドが1つしかないからというあまりに単純且つ強引な理由で一緒に寝ることになった。薬品臭い調合室での日々とは裏腹に…。
(めっっちゃ良い香りする。後背中にすごい柔らかいのが…)
振り返ったら終わりだ。るあに合わせる顔が無くなってしまう…。
そう考えてとにかく目を閉じて眠る事にした。半日眠っていたにしては深い眠気に誘われ、眠るのに時間が掛かる事も無かった。
〜〜
日が昇り、先生と朝食を終えた直後に兵士から出頭の命令が下された。そして、その付き添いとして彼女もついてくるというが。
「ヒイラギミチオ1人で出頭せよとの命令は受けていない」
兵士はそれだけ言って城へと案内を始める。途中、少なくない程の人々が道夫を見て、恐ろしいと言った。信じられないと呟いた。隣人とヒソヒソ話していた。だが誰かがカッコいいと言っていたのも聞こえていた。
「…」
「あ、あまり気にしちゃダメだよミチオくん…。」
「私語は城内に着くまで慎む様に」
テレビで犯罪者が捕まって、警察に連行される場面があるが、きっと今みたいな感覚なのだろうか。いや、それとこれとは別だなと考えている内にセイス城の門前へと辿り着いた。
門が開き、そこからは1人で内部に入っていく。そのまま兵に連れられ『尋問室』と紙に適当に貼られた部屋に入る。
そこには、何も無かった。360度何も無い空間が広がっており、鏡の様に映った自分の姿があらゆる角度から見えている。そしていつの間にか、アルリアの姿が何処にも無かった。
「ホントに来るとはな。いや、分かりきってたが」
そこには、瞳を虹色に輝かせているセイス王ともう1人、碧色の長髪に性別が分からない程の綺麗な容姿、手には長い杖を持ち、見たこともない紋章が施されている。
「『ここ』なら、お前がいくら暴れても何も滅ぼせない。私たちが滅べば、お前はここで枯れて消えるだけだ」
「それを使うのはさすがにやり過ぎではないかなぁ?」
「…何が起こるか分からないからな。それでは後はよろしく『学長』殿」
空間が割れ、その中へセイス王は入っていく。空間が閉じた後には、自分と学長と呼ばれていた人だけが残っていた。
「これは一体…?」
道夫がそう言った時、彼…?は瞳を開けて微笑んだ。その瞳にはいくつもの亀裂が走っていて、一つ一つがまた異なる彩りを宿していた。
『こんにちは』
「!?」
微笑んだ彼から聞こえた言葉は、道夫が一番良く知っている「ニホン語」であった。
〜瞳に宿る力〜
イミュリーズでは、自らに宿る力が瞳に現れて来るという事は珍しくはない。
魔法を発動する時のみ瞳の色が変化する場合もあり、産まれてからの素質や才能を表す物として色を宿す者も存在する。
コーリュバン王家に受け継がれて来た力とは『視る』瞳そのものであり、あらゆる対象の先を視る事が可能になる。




