表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君のいない灰色と//異世界  作者: シマミ
DISC 1 前編〜灰色の世界〜
15/205

第14話〜斬られた世界//ズレる空間〜


「ミチオォ!!」


 横から何かが道夫を抱え高速で駆け抜ける。その一瞬の後、振り下ろされた巨大な鉈の様な刃が大地を諸共に両断していた。


「…っ!『変身(アクトゥス)』!!」


 ルギエが上に向けて銃を放つと、瞬く間に炎が彼女を包み姿を変える。髪や瞳は燃える炎の色に変わり、体の各所は炎で出来た装甲を纏っていた。


「ボーッとするなミチオ。改めて言うが、俺たちの仕事はなんだ?」


 先程道夫を救出したのはガレンだった。鎧の背中と足の辺りからスラスターの様に魔力が噴き出している。


「ち…治癒属の回収!」


「そういうこと!じゃあ頼んだ!」


 魔力の噴射が更に高まり、ガレンは一瞬で陣壁で攻撃を防いでいたイオレル達の所へ移動する。道夫もゴーグルと専用のグローブを着け魔晶塊の切り出しを開始する。

 切り出しても魔力が循環する様にしなければならない為、最初から最後まで細心の注意が必要になる。


 勿論、道夫自身も魔晶塊の切り出しには何回か成功している。コツを掴み出した彼には、魔晶塊一つ切り出すのは困難ではない。


(切り出し完了!後は…)


 物の数分で切り出し自体は終わる。問題なのはその数であった。依頼で要求された数は10個と個人的な要求で1つ。5分で1つ終わるとしても約50分、そして5分で終わらせる保証は道夫には無い。


「止まらず…今は進む!」


 道夫は立ち上がり、戦闘を続けている大鬼(オギガ)へ機械弓を放った。装填されていた薬瓶には前もって『誘導(サーゴ)』を掛けている。


 新しく覚えていた魔法によって、誘われる様に瓶は敵の顔に命中し薬品をぶち撒ける。

 薬品からはたちまち煙が溢れ、大鬼は剣をがむしゃらに振り回す。あの薬品は対象に張り付き、濃い煙と薬草類の強烈な臭いが目と鼻を無力化させる。


「だとしても、俺たちには関係ない。さぁ畳み掛けるぞルギエ!合わせろ!」


「了解、炎刀(アグスティオ)全開で決める」


明視(センナ)で煙の上から見通している2人が同じ構えを取った瞬間、姿が消えたと同時に足を斬られた大鬼が膝をつく。


「グルルォォォ!!」


 叫び声をあげ、剣を振ろうとするも動かない。いつの間に出したのか、蒼い炎の巨腕が大鬼の剣を押さえ付けている。


「…魂炎(レグ・アロム)


「さぁ行くぞ!」


 前方からガレンが、後方からはルギエが同時に大鬼の体を斬り上げる。自身が飛び上がる程の斬り上げからお互いに加速を掛けて威力を更に上乗せする。


「はぁぁぁ!!」


「てやぁぁぁ!!」


 息のあった斬り下ろしは、大鬼の体を更に斬り裂いた。悲鳴を上げる暇も無く、その巨体は倒れ伏す。


はずだった。


「…フフ、フフフフ…」


 最初に聞こえたのは4人の誰でも無い笑い声だった。声は次第に大きくなり、狂った様な笑い声がこだまする。声の主は、生き絶えるだけだったはずの巨人からだ。


「っ!?この!」


 ガレンが1番に駆け付けるが、既に姿は無い。いつのまに飛んだのか、壁に足を付け思い切り壁を蹴り出して飛び蹴りを放つ。

 高速で飛んで来る巨体をガレンは難なく回避し、大鬼は地面を派手にえぐりながら停止、その後巨体に見合わぬ身軽なバク転で端にあった木箱の所まで退避した。


「ミッチ!なんかヤバそう!急いで!」


 先程の一撃が入ったにも関わらず、大鬼の体はまるで無傷の様に動く。体には傷跡だけが残っている、そこで道夫は気付いた。

 狙うべき目標は大物だけでは無かったのだ。


「目標長距離、それに『鉄マッチ』装着。発射!」


 さっきの煙幕を道夫は発射する。撃ってはすぐに装填し立て続けに発射された薬瓶は、ある程度飛んだ先で炸裂、濃い煙は瞬く間に洞窟上方を覆う。

 方法は定かではないが、奴等は傷の治癒にここの魔晶塊を使っている。上にあった小穴には小鬼達が潜んでいて、主の危機にそこから治癒の魔晶塊を投げ渡しているのだろう。


「これで奴は治らない!今度こそ…!」


 三人も道夫の意図は分かっていた様で、口を覆って臭いを防いでいた。まだ全然切り出せていない以上、作業を急がなければならない。

 仮に切り出しを完了した所で、もう逃げ出せる様な状況では無いことをまだ道夫達は知らなかった。


「なんだ…あの武器は…」


 煙の先から見えたその武器は、道夫が1番良く知っている。独特な意匠の持ち手と鞘だけでも判別するには充分だった。


「ニ…ニホン刀?」


 あり得ないはずの武器に驚いてしまったが、今はそれどころではない。何故奴は得物を持っているのにこちらに攻めて来ないのだろうか。

 刀を鞘に収めたまま微動だにしない。その構えを漫画でしか見た事ない道夫だったが、それが彼に1つの答えを導かせた。


「動く気ないなら、溶けてなくなれ!『熱線(アグビラ)』!」


 最早炎ではなく、超高温の熱エネルギーが大鬼に向けて集まる。それでも動かないのは、奴にはその必要がないからだ。


「ルギエ!みんな避けるんだ!」


「グオォォォォァァ!!」


 放たれた熱線による爆音は、道夫の叫びを掻き消して

真っ直ぐに奴へと突き進む。そこでついに咆哮と共に大鬼が動き出し、彼らも構えようとした瞬間。


 聞こえたのは、何かが斬れた様な音。そして見えた光景は余りに信じられない物だった。

 世界が熱線ごと()()()いた。空洞内の壁も、魔晶塊も、ガレンとイオレルは無事であったが、ルギエは防ぎきれずに攻撃を受けたらしく、彼女の身体すらズレていた。


「これは一体……」


 陣ごと斬られた熱線は効果を保てずに消滅し、世界のズレが直りだす。そこには残心を終え、両手に大太刀を構える鬼の姿があった。

〜斬られた空間〜


 空間を斬るにおいて必要となるのが、魔力、剣の威力そして速度の3つとされ、合わさる事で空間を断ち切る事が可能になる。

 無論滅多にできる物ではなく、扱える者は人間でも一握りしかいない。


 次元の狭間を開いたり、空間をガラスの様に破壊する事も、世界がズレる様に空間を斬る等応用が効く。

 そして、斬られた空間は一定時間で自動的に戻る。それはイミュリーズ側から修正しようとしているという説が有り、世界の持っている力についても研究が続けられている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ