第13話〜見えない巨刃//残る残像〜
戦闘とは名ばかりの駆除を終え、道夫達は更に洞窟の奥へと進み出す。
「ミッチ〜、目的地はまだー?」
「反応はあっても、ここ自体がかなり入り組んでいます。まだ何とも言えない…」
まさか、洞窟だったのがいつのまにか坑道になっているとは思わなかった。既に棄てられた場所なのか、何もかもが朽ち果てている。
「ここで少し休憩だ。時間的にも悪くない」
そう聞いた途端、道夫はその場に座り込む。思えば洞窟に入ってからかなりの時間を歩き続け、途中で敵とも遭遇した。緊張で忘れてた疲労が今になってやってきたのだ。
そして、今頃になって目の前で敵が真っ二つにされていた場面を思い出してしまい、吐きそうになったがとにかく堪えた。
「…干し肉にしたの間違いかも」
ささやかな昼食はすぐに済ませ、水も飲んで一息つく。とにかく今は嫌な気分を遠ざける為に、先の通路がどの様な物か調べておく事にした。
端末の反応を強化した視界が追っていく。近づく度に反応は数を増していき、最も多くの反応がある場所が見えたその時。
「…!?」
見られた。否、睨みつけられた。強化した視界且つ入り組んだ道の先であったにも関わらず、『ソレ』はこちらを睨んでいる。
「バレた…いや、バレていた?」
「ミチオ、しっかり」
イオレルが強制的に道夫の魔法を解除する。思い切り引っ張られる様に戻った視界には、坑道先の闇を映すだけだ。
「手短に聞く、何が見えた」
「…大きい何か。さっきの敵とは違う何かとしか言えない」
「まぁ奴らがいた時点で察しはついてたけど、やっぱりね〜…」
落ち着いた所で話を聞いた所、その大物は大鬼の可能性が高いらしい。大物らしい巨体が特徴なのだが、その身のこなしは大きさに見合わず軽く素早い。
「大物は確かに厄介だが、倒した事がない訳じゃない。無論、その経験が通るとは限らないがな」
「それに、それは私たちの仕事じゃないし。時間稼いで回収してすぐ逃げればなんとかなるっしょ」
「…ほんと、慣れてますよね。皆さん」
当たり前だと言わんばかりの顔を3人ともしていた。こんな人達にセンセとか言われてたエイギン先生は一体何者なんだろうか。
考えても仕方ない話は閉め出して、道夫達は暗闇の先へと進んでいった。
その後の道筋は、思っていたよりも順調であった。魔物の襲撃も殆ど無く、着実に目的地へと近づけた。それに安心していた道夫だったがそれが続いたのはほんの少しの間だけであった。
彼らが言うには、誘われているとの事だ。そして、こんな事は彼らも初めての経験だったようだ。
「思ってたよりも、やり手の様だな。好き勝手が形になった連中をこうも抑えられるとは」
大きな空洞に出た時にも至る所から視線を向けられていたが、一匹として襲ってくる事は無かった。
「もうすぐ到着だ、それぞれ準備しておけ。そしてミチオ、先生から貰った薬はあるな?」
「問題なし、どれも使える……まさかホントに使うとは思ってなかったけど」
「もしもの備えって言うのはいつだって欠かしちゃいけないのさ。そこん所、あの先生もちゃんと分かっている訳だよ」
エイギンから貰った薬瓶の一つを手に取り、専用の機械弓に取り付ける。闇の先から光が見え、そこから多くの気配が感じられた。
ここからが彼らの、そして道夫にとっての本当の仕事である。光の先へ辿り着いた時、その光景に全員が息を呑んだ。
まるでこの空間自体が結晶そのものと見紛うばかりの巨大な魔晶塊がそこら中に生えており、空間自体を青く輝かせている。
魔晶塊がここまで大きくなるのは本来あり得ないはずであり、それにここまで巨大であれば人目に付かないはずもないのだ。
そして中心に座っている巨体こそ、ここの主にして道夫達の最大の脅威である大鬼だ。
屈強な体の至る所についている傷跡は、あの怪物が勝ち取り足掻き続けてきた勲章のつもりだろうか。
「さぁ、どうくる…」
お互いにかなりの距離がある。何か行動を起こしても充分に対処でき、対処されるであろう距離感だ。敵が身の丈程の大剣を構え、土埃のみを残して姿が消える。
「後ろぉ!!」
ガレンの叫びと同時に振り返った時には、巨大な刃が振り下ろされようとしていた。
しかも、よりによって道夫に向けて。
〜大鬼〜
大きく、そして屈強な体を持って生まれる巨人。一般的に言うならば、オーガと呼ばれる魔物である。
鬼達とは異なり、肉体を持って生まれ、それと同時に誇りある戦士として命がけのスパルタ教育をされる。
その巨体からは信じられない様な身軽さを持ち合わせており、見かけによらず俊敏。
武器の扱いと知恵も長け、殆どの者はより下級の魔物を従える立場になる。




