第12話〜初めての戦い//駆除〜
「よし、目的地到着だ」
途中で馬車を降り、木々に身を潜めながら洞窟入り口周辺に道夫達は隠れている。入り口には少数の鬼が見張っている。
顔が見えない兜を被り、誰かから奪ったのか身の丈に合わない武器を持つ者もいる。
「どうするんです…?まさか正面からってことは…」
「なぁに言ってる、直球で行く必要なんかないじゃないか。いつだって危険は避けるもんだぜ?それじゃルギエ頼む」
「りょうかい、休息発動っと」
ルギエが魔法を放つと、バタバタとゴスブ達が倒れ出す。気づいて慌てる者もいたが、すぐに深い眠気に包まれ地面に倒れ込む。
「ミチオはそこにいてくれよ?邪魔者の駆除は俺達の仕事だからよ」
ガレン達は隠れてた場所から出て、寝ているゴスブの急所を作業の様に突き通していく。ほんの数分程度で終わっていた。
絶命したゴスブ達は元の概念体という魂に戻っていく。本来であれば暫くその場に留まり、遠くない日にまた実体を持つ様になるのだが…
「…吸魂」
漂っていた魂は、イオレルの手に集められていく。そして集まりきった魂を握り潰し自身に取り込む。
「おっかないよねアレ。イオるんアレだったっけ?私たちも死んだら?」
「もちろん、こうする。でも後で弔いちゃんとしてあげるから安心して」
軽いノリで死について語る三人に道夫は内心ゾッとする。これから洞窟内に向かうはずなのだが、3人はまだ入ろうとせず、ルギエだけが腰の銃を抜く。
「正直、私めっちゃ働いてると思うの。大半の駆除は私がやってばかりだし」
「そこについてはほんとすまねぇ。まぁ今回も1発頼む」
ルギエは持っていた銃に何か妙な物質で作られたパーツを重ねていく。銃に詳しくない道夫だが、その形が狙撃銃に似ていると思った。
「…祈りを、おきて。仕事」
『やぁご主人、久しぶり。契約?』
銃から人型に近い炎が現れ、結晶となって実体化する。両手足がない姿であったが、炎その物が結晶化した様なその輝きは暖かく、そして激しさを秘めている様に思えた。
「いいや契約は無し。半分以下でいいからいつもの撃つよ」
『りょうか〜い。そんなわけで引き金をどうぞ?』
「はい粗方駆除完了っと」
彼女は引き金を引かずに言い切った後、たった1発の弾を発射する。弾丸はそのまま洞窟の闇へと消え、その後ルギエがもう1発撃つ事もなかった。
「ル、ルギエさん…これは一体…」
「さん付けはしないでいいよ、こっちも遠慮なく呼んじゃってるし。後、ミチオって確か狩人もしてたっしょ?見てみ?」
言われるままに『明視』を発動する。強化された視界から見えたものに、道夫は戦慄する。
最早物理法則も何も無い軌道で銃弾が駆け巡り、敵を貫いては更にもう一体を貫いて、一帯はもうゴスブの死体と魂だらけだ。
慌てて逃げ出す者や盾を構える者もいたが、時に逃げ足より速く、時に盾スレスレを避けて弾丸は直撃する。
これまた数分後には、見える限界までのゴスブは全滅していた。
「な…なんてこった。」
「さぁ、派手に鳴らしちまったから時間はそんなに無い。行くぜみんな、ミチオは離れるなよ?」
ガレン達はすぐに洞窟に入っていく。道夫も慌ててついて行った。彼にとって恐ろしかったのは、ゴスブでも、それと戦うことになるかもしれないという懸念でもない。
あんな凄いことを表情1つ変えずにやってみせた彼らだった。
〜洞窟内〜
「松明」
道夫が魔法を発動する。手のひら程の小さな炎が辺りを照らす。明視を使える道夫には不要ではあるが、念の為として用意しておいた。
「やっぱり結晶となると、こんなとこには無いよなぁ…」
「残念ながら、どれもただの石です」
魔晶塊探知用のゴーグルを付けた道夫が答える。まだ入り始めてそれ程経っておらず、魔晶塊自体が洞窟の奥に発生しやすい性質だ。
「やっぱり、奥に行く必要があるみたいだ。そして……ミチオは少し下がってな。お客さんが来た」
ガレンの見ている方向には、何もいない。ただ強い風が…と言おうとした瞬間、真っ二つになったゴスブが突然目の前に現れ、斬れた半分が通り過ぎていった。
「…え?」
「…悪いミチオ、斬るの少し遅れちまった」
「うっわぁ…ミッチ大丈夫?やば顔真っ赤…ほら拭いて…なにガレン?まだくる?ああもう邪魔『燃波』!」
ガレンまで巻き込みかねない様な炎の波が前方を覆い尽くす。しかし彼が巻き込まれる事はなく前方にいたゴスブの群れは残さず炭に変わっていた。
「ほら、拭き拭きしたげるからじっとして。」
「あれがアイツらの本来の速さだ。最早風と音しか感じられない程のモンだが、なぁに大した事はない」
また風が流れてゴスブが襲いかかってくる。姿も全く捉えられないというのに、ガレンが剣を振ると真っ赤な血が流れ出した。
「ヤツらは速いがそれだけだ。真っ直ぐにしか行かないから、どこに飛ぶかを見切れば…」
まるで方法を教える様に、ガレンは剣をある位置に構える。すると丁度その位置にゴスブが現れ、派手に頭を剣に食い込ませその場に倒れ込んだ。
「ほらこうなる。簡単だろ?」
一体どこを簡単だと思えば良いのか。音速級の動きをする相手を、彼らはどうやって感知しているのだろうか。
「これより駆除を始める。まぁ見てな」
結局、彼らの前ではゴスブ達はまるで話にならず、戦では無く、正に駆除であった。
そこに道夫が出る幕は一切無く、ただ見ている事しか出来なかった。
〜鬼〜
人間より小柄で、小鬼の様な顔立ちをしている。分かりやすく言うならば、ゴブリンである。
彼らは生物の様に肉を持って生まれず、様々な概念が集まり、それが魂となって後に実体として現れる。
残忍で、ずる賢くて、狡猾で、殺した者の全てを奪い尽くす中、戦士としての矜恃も魂の中に宿している。
彼らの魂にあるのは、『王』への忠誠と叛逆心。多くの物を固めて作られた彼らには、矛盾した心が常に同居しているという。




