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君のいない灰色と//異世界  作者: シマミ
DISC 1 前編〜灰色の世界〜
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第11話〜石ころ拾い//雇われ三人衆〜


 やっと見慣れてきた天井で道夫は目を覚ます。起きたばかりの目蓋には晴天の空が眩しく感じる。慣れた手つきで朝の支度も済ませると、腕輪型端末、ユィンスから連絡が飛んできた。

 連絡先は、アルリア・エイギン。珍しいと思いながら応答する。


「道夫です。先生どうしましたか?」


「ミチオくん休みの朝早くにごめんね。お願いしたい事があるの。」


 お願いというのは、要するに急な採集依頼を代わりに行って欲しいという物だった。

 そして、その依頼に同行する仲間もいるのでその旨を伝えて協力する様にとも言っていた。しかし、その採集対象というのが…。


「治癒属の魔晶塊(マナイ)ですか。随分と珍しいものが急に出たものですね」


 魔晶塊は、魔力の流れである魔流(マナルウ)が中で凝縮され、その中で循環している結晶のことだ。調合でも触媒として有効である。

 そして、それぞれ多様な元素に属しているのだが、治癒属は魔法自体が非常に難度の高い代物であり、魔晶塊となればその稀少さは計り知れない。


「そうなの。だからお願いしてもいいかな?お小遣いも増やすし、こっち側も少し貰っていいんだってさ」


「分かりました先生。元々採集は俺の仕事のひとつですから。ではまた」


 通話を切り、採集道具の支度をする。出来過ぎた話ではあるが、採れるのであれば今後の収入や店自体の為にも繋がるだろう。

 魔晶塊となればそれなりの道具が必要になる。ただツルハシで掘り出せば良い物ではなく、結晶内の循環を乱さない様に見定めなければならない。

 成功すれば大元から離れても結晶内で新しく循環を始めていき、中にある魔法の力も保ったまま持ち出す事が出来る。


「さぁ、行ってきます」


 ドアを開けてまた、道夫は1日を始めていく。思えば休日出勤みたいな感じだが、嫌悪感が湧くことは不思議となかった。



〜大広場、騎士映場前〜


 恐らく、城下大広場の1番の名物なのが、この騎士映場だろう。噴水の上から映し出される映像と音声はさながら映画の予告の様だ。


「お待たせしました。エイギン調合屋のミチオです。この度わぷぅ」


 自己紹介しようとしたら、鎧を着ていた男に頭をガシガシと撫でまわされた。他にいたのは、前髪で瞳が見えない女と、銃らしき物を腰に下げている女性が1人だ。


「お前があの助手ってんだろう?あのセンセやっと身を固められたのかぁ…。よかったなぁセンセェ…」


「ヤクセンのことはいいけど、助手くん困ってるよ。わたしルギエ、よろだよミッチ」


 銃を下げてた女性が手を伸ばした。自分を騎士崩れの雇われと呼んだガレンという男とも握手をしたが、もう1人の彼女は握手に答えてくれなかった。


「その子はイオレル、ノリ悪いからね。ごめんよ」


「それはまぁ……ですが今回の依頼はただの採集では?」


「それなんだがなぁ…どうも怪しいと思ったんでルギエに裏を調べさせたら大当たりってわけだ。」


 ガレンがユィンスで地図を開く。魔晶塊は日の当たる所には発生しない。目的の反応は洞窟の中にあることを示していた。


「そこ、(ゴスブ)の巣穴になってる。安全ってのはまずウソだったわけ。むかつく」


 ゴスブというのは要するにゴブリン…みたいな物だ。そうと断定できないのは、奴らが肉体を持った生物ではなく、多くの概念が実体を得た存在だからだ。

 生殖も必要なく、素となる概念さえあれば生まれ続けていく。倒してもその場で復活しないのが救いである。


「そんなこと隠してたなら、治癒属の石ころもハズレなんじゃないのかぁ?」


「いんや、そっちはアタリ。手に入れたら色んな人に治癒の魔法やれる様になる…」


 最初こそ気怠げな感じだったが、ルギエの魔晶塊に対する目つきは真剣そのものだった。


「話はまだつづく?そろそろ行きましょう」


 話に割って入って来たのは、先程から黙っていたイオレルであった。


「悪い、つい話が長引くのが俺達の悪いとこでなぁ。まぁ今回は新顔もいることだから、慎重に行こうか」


「よ、よろしくお願いします」


「緊張することないよミッチ、私たちがミッチを守る。その代わり魔晶塊を集めるのは任せるから」


 ルギエが肩をポンと優しく叩く。ガレンとイオレルはいつの間にか進み出し、ルギエもすぐに追い付いた。


「俺さぁ……あのセンセがミチオを助手にした理由わかった気がするわ」


「私も、なんだかほっとけない感じするわ。あの子1人だったら間違いなく死んでたっしょ」


 道夫達は、馬車を借りて目的地へと向かう。近くまで乗せてもらうのかと思ったら、ちゃっかりと借りている所で彼らも相当続けて来ている証なのだろう。


「そろそろアレしようか。ミッチもこれ持って」


 ルギエが1つの鉄製カップを手渡す。中には甘い香りのする液体が入っている。


「俺たち、仕事の前には必ずやってるんだ。まぁ成功へのお祈りって感じでな。ミチオは初めてだから後に続いてくれればいいからな?それじゃあ…」


 ガレンに続いて2人もカップを掲げる。道夫も遅れてついて行く。


「これが別れであっても、この一杯が心を繋ぎ。そしてこの一杯は未来を繋ぐ。」


 道夫もなんとかズレずに言葉を繋げた。そして全員揃ってカップを呷る。目的地は近づくが、彼らとならば怖くはない様な気がする。


(ほんと、気持ちの良い人達だよなぁ…)


 いつの間にか日は沈み、寝袋みたいなベッドに横たわりながら道夫はそう思って眠りにつく。

 次の朝日が、仕事の合図だ。

〜魔晶塊〜


 魔力の流れが結晶内で循環している物。要するに魔法の力が込められており、魔力の無い者でも結晶内の属性魔法を行使できる様になる結晶体の事。


 結晶自体にも様々な属性に分かれ、主に日光の当たらない洞窟内に現れることがほとんど。


 しかし、イミュリーズでは魔法を使えない者を探す方が難しい程魔法は一般的に普及している為ありふれた属性の結晶では正に石ころの様な扱いである。


 時に稀少な属性が結晶となる事があり、その価値は一転して天井知らずになる

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