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君のいない灰色と//異世界  作者: シマミ
DISC 1 前編〜灰色の世界〜
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第105話〜//〜世界の数式と一条の矢

「世界がどうって、そりゃあ星が長い年月を掛けて、地殻だの海だのを作っていったからじゃねぇのか?」


私達(エルファタ)の間じゃ、世界に生えた一本の大樹から世界が出来たって言い伝えがあるね。ま、そんな訳ないんだろうけど」


「…みんな、それ以前に星の爆発から来てるって知ってるよね……ちゃんと勉強したよね?」


 レイルスの話を聞いた三人組は、世界の成り立ちについて思い思いの考えを述べ始める。

 道夫も彼等の言ってる通りではないかと考えていたが、レイルスは首を横に振る。


「皆さんの考えは、間違ってはいません。ですが正解とも言えません。星が産まれるという意味では、イオレルさんが一番近いのかもしれないですが」


「そんな、星が産まれる前にあるものなんて……」


「そうじゃないんですよ。星の誕生や成長、その中で育まれてきた神話さえも、全てはある存在がそうなる様に設定しているからなのです」


 ある一人の存在、その話を聞いたガレン達は頭に疑問符を浮かべる。そんなことが出来る奴がいるのかと、信じられないといった顔をしていた。彼一人だけを除いて。


「……まさか、神か?」


 道夫の言葉に、レイルスは頷く。余り信じたくない話ではあったが、彼の顔からしてこの考えは間違ってはいないらしい。


「……神というよりは、世界の数式と私は呼んでいます。わざわざここに連れて来たのは、外の世界ではその数式の話が出来ない様にされているからです」

 

 思っていた以上に壮大な話になってきたなと、道夫は心の中で呟いた。しかしまだ彼の話に納得がいった訳では無い。


「…それとこの身体に、何の関係が?」


「これから説明しますよ。数字も交えたりして、分かりやすくね?」


 胸に手を当てながら俯く彼の姿を見て、レイルスは軽く咳払いをし、彼は眼鏡を掛けて脚をセクシーに組み直す。

 まるで授業でも始まる様に、彼はそれぞれに一枚の紙とペンを空中に浮かせて手渡した。 


「まずミチオ君、貴方の生命(ライフ)が500あったとしましょう。そして君はあの時確かに淫魔の銃で頭を撃ち抜かれ、君の生命(ライフ)は0になった」


 何でそれ知ってるんだこの人、という疑問はひとまず置いておき、道夫は彼と向かい合う様に座って頷く。そこまではまだハッキリと覚えている。普通ならそこで柊道夫の人生は終了、する筈だったのだが。


「でも君は、数年前から魔族の因子をその身に宿していた。それが死地の瘴気に長く触れた事で、君の中にある負の側面という形となって現れた。0という死をこえた、(マイナス)9999となって」


 そうらしい、としか道夫にはいえなかった。そこでレイルスは、窓の外を眺めていたナナシを呼び出して道夫の隣に座らせる。


「人間の中に魔族が混じっていたというイレギュラー、でもそれもまだ想定できる範囲だったのでしょう。でもそこでこの子の力が現れた」


「……」


 ナナシは自分の右手から、見たこともない様な煌めきを放つ光を放った。その光からは、暖かさや心臓の鼓動にも似た不思議な温もりさえも感じられた。


「ナナシちゃんの持つ『生命』の力。負を正に変えられるその力を彼女は君にぶつけた。それが世界にとって決定的な食い違いを起こさせたのかもしれません」


「食い違い…?」


「えぇ、負を正に変える。即ち−9999だった生命が、いきなり+9999に書き替えられた。ミチオ君の元々の生命を差し引いたとして、残りの9499は何処にいったかというと……」


 レイルスはゆっくりとミチオの胸を指さす。そこには黒く淀んだ魔族の核が光も放たずに埋め込まれていた。


「恐らく、世界の数式とは非常に緻密で繊細に作られている。故にこの急速且つ異常な変化を処理しきれなかった。だからそれに代われる物を与える事で、世界にとっての辻褄(つじつま)を合わせたのでしょう」


「辻褄、合わせ……」


 そんな訳のわからない物の為に、自分の身体を書き替えられた。それを聞いても尚、彼の心にはやはり怒りも絶望も湧いてはこない。

 心に浮かんできたのは、ただ一つだけ「そうか」という言葉だけであった。


「ミチオ、大丈夫?」


 隣に座るナナシが自分の顔を覗き込む。心配そうな彼女の頭を、微笑みと共に優しく撫でる。


「大丈夫だよナナシ、心配しないで」


 安堵の表情を浮かべる彼女の姿は、何故かは分からなかったがあの時の彼女(るあ)そっくりであった。


「それで、世界に残された時間がないっていうのは?」


「それは……各地の魔物が、ある方角に向けて移動を始めたという話がありました。恐らく魔王の受肉に向けて軍勢を率い、人類への侵攻を始めようとしているのでしょう」


 魔王の受肉、そして軍勢と人類への侵攻。先程とは打って変わった現実的な話に、ここにいる全員が息を呑む。


「こうなってはもうなり振り構っていられない。ミチオ君にはこれからすぐにでも、イウェルちゃんと同じ『全』属を得る為の行動に移って頂き、その間に私達は全生徒も混じえた最終作戦をもって、奴等との戦いに備えるのです」


「全……何だって?」


 道夫の言葉を無視して、レイルスがまた指を鳴らす。すると筒状に閉じられていた大きな紙がテーブルの前で広げられた。

 全員がそこに集まって紙を見ると、そこにはイミュリーズの世界地図の上に、読めない位の細かな文字がびっしりと書かれていた。


「こっまか……読めないんですけど……」「虫眼鏡あるぞ、使うか…?」「…へぇ、これはまたえげつない」「「え、読めるのイオレル(ち)?」」


 ナナシも目をまん丸にして地図を眺めている中、道夫も同様に地図を眺め、ミミズにしか見えない様な文字の羅列の中心に、日本語で書かれた一人の名前を見つけるのだった。


 『柊道夫』と。


「それでレイルス、これは一体何なの?」


「作戦名『一条の矢』。その名の通り、このイミュリーズに生きる人類全てを結集させて魔王の軍勢に対抗します。かつて彼女が『滅び』に立ち向かった時の様に。ここには誰がどこを担当するかの振り分けや指示を書き記しています。ですがこの作戦の要は……」


 最初にレイルスが道夫の方を見ると、残りの全員がそれにつられるようにして彼の方を見やる。


「……あぁ、やっぱり」


 皆の視線を注がれた道夫は、デジャヴと共に自身を指差した。

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