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君のいない灰色と//異世界  作者: シマミ
DISC 1 前編〜灰色の世界〜
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第9話〜脱出//思い出の香り〜


「姉さん……あぁ」


 転移の光を抜けた先には、転移していた村の皆がいた。

 既に移動の準備がされており、後は自分が来るのを待ってくれていた。


「ミチオ…リアーシェのことは…」


「大丈夫……わかって、いるから」


 この上ない強がりだった。涙は止まらず、声も上ずっている。心に大きな穴が出来た様にさえ思えた。

 だが、3年前のあの日以降そんなどん底の状態からでも道夫は立ち直ってきた。

 正確には、立ち直らざるを得なかっただけなのだが。


「すすみ…続ける」


 手に持つ手紙が、今の道夫にとっての道標だ。

 今こそ姉から教わった全てを持って、井ノ上るあを探し出す時である。

 その時、遠くから響く様な音が近づいてきた。道夫にとっては聞き慣れた、そしてこんな世界で聞けるとは思わなかった『バイク』の音だ。


鉄騎(コルジス)だ!」


 鉄騎と呼ばれたそれは、道夫にはどう見てもバイクにしか見えなかった。

 バイクにしては余りに大きく、そのボディから何まで至る所に甲冑の様な装甲に覆われていた。

 そんなゲテモノが、草の生い茂る草原を難なく走破してみせ、道夫達の前で停止する。


「リュカネの者達だな?事の経緯含め、城内で全てを話してもらう」


 顔すら見えない仮面の中から聞こえた声は、身も凍る様な鋭い声だった。


〜首都コーリュバン、セイス城内〜


 生まれて初めての事情聴取は、何も悪いことはしていないのに息が詰まるようだった。

 ただ、自分が他の世界から来たなんてことは自分含め、村の誰もが伏せてくれていた。


「ミチオ殿、陛下がお待ちだ。謁見の間まで同行願おう」


 先程の身も凍る様な声の主である女性、ミリエ・アンス騎士長に連れられて向かった先は、豪華な空間が広がる謁見の間だった。

 その先の玉座に座っている彼こそ、間違いなくこの国の王様なのだろう。


「君が、ミチオ君か。なるほど確かに視たことない……。ミリエ、下がって良い」


「仰せのままに、陛下」


 彼女が退室し、2人きりになる。美しささえ感じる程の銀色の髪、整った顔立ちと皺1つない衣装に身を包んでいる。そして1番に気になったのは…。


「王様にしては若いと?これでも君の倍は歳を取っている。…失礼、改めて私がここの1番偉い人こと、アウムス・コーリュバン・ジグ・セイスだ。」


「お…お初にお目にかかります、陛下。私は…」


「ヒイラギミチオ、リアーシェからの手紙は読ませて貰った。届けてくれた事も心から感謝する。」


 心を読まれた。道夫が言おうとした事を、彼は先回りする様に話していく。


「失礼ですが陛下、そのお手紙には…」


「君の事について取り上げるなら、君をここに住まわせてほしいこと。それと、君が大好きだってことも書いてあった。可愛いのに目がない彼女らしい」


 大事そうな手紙なのに、そんな事書いちゃうとは本当に姉らしい。


「とにかく、君と村の人々を住まわせる事は問題ない。彼女が為すべき事を成した以上、こちらも相応の準備をしなければならない。」


 用は済んだという感じでお互いに退出しようとする。あの王様は、同じ人間とは思えない程底知れない何かを秘めている様だった。

 後ろに振り返った時、王様が立ち上がり口を開いた。


「ミチオ、リアーシェの事は本当に感謝する。彼女が使命を果たせたのは間違いなく君のおかげだ。きっと彼女は私達との関わりを教えてはくれなかっただろう。今から君が向かう場所にはその答えがある」


「…失礼します、陛下」


 皆、誰もが感謝をしてくる。彼女を助けられなかった自分に感謝される資格など無い。

 人間は死んでしまえばそれで終わりだ。絶対に生き返ることなんてないし、使命もへったくれも無くなる。


「いや…姉さんなら、きっと…」


 生きてる。そう願う言葉のなんと弱々しいことだろう。そう考えている内に、1つの住宅に到着する。

 使用人が鍵を開け扉を開く。部屋から感じた空気には、どこか懐かしさも感じた。


「ここって…」


「…リアーシェ様がここを発たれる前、あの方はここに住んでおりました。あの時に施された維持の魔法も未だ稼働しております。今後は、ミチオ様がお使いになって構いません。」


「…姉さん」


 1人暮らしの空間にしては、ニホンで自分がいた所より広い。家具や並べられた本1冊からも、思い出の香りがする。

 かつてリュカネの村で感じた物と何1つとして変わらなかった。


「ミチオ様、リアーシェ様の日記がここにございます。これが維持の魔法を解除する鍵であり、開いた時からここは貴方の家となります。」


 机の上に置かれた日記帳の他にも数多くの紙束が並べられている。彼女はどうやら、様々な研究を調べていたらしい。いつの間にか使用人の姿も見当たらない。


『イェレンとして』


 机に近づき、懐かしい筆跡で書かれた日記に触れる。彼の心に迷いは無い。

 

「姉さん、俺はやるよ。あの約束を果たして、また会いにくるから」


 日記を開き、魔法が解ける。道夫はついにこの世界に挑み出す。彼の新しい世界がまた1つ始まろうとしていた。

〜首都コーリュバン〜


 イナラン大陸の首都であり、現在も拡張を続けている。犯罪への取り締まりも厳しく、取引も盛んであり、魔力の流れで出来た道が数多く置かれ活用されている。


 道夫が1番驚いたのは、「ユィンス」と呼ばれる魔法で起動する腕に付ける小型端末があるという事。スマフォより明らかにハイテクなそれに、手に入れた当初は凄い驚いた。


「ここニホンより住み良いかもしれない。トイレを除けば…」


 と呟いてしまう程であった。


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