第九十三話
◇以下、ルイ視点です。最近、ルイの方からの文章を書くことが何故か楽しい作者です。
次の日の夜、私はのんびり翻訳をしていた。一人でやっていると色々思い出して進まなさそうなので、建物の方に色々な資料を持ってきて書いている。そのおかげでかなりはかどっているのだが、テーブルの上に資料が大量に置いてあるので、ルイから苦情が来てしまった。何冊か小屋の方に持って行くよう言われたけど、全部重要なものなので、持っていけないままだ。そんなことを思いつつ、のろのろとペンを動かしていたのだが、段々と眠くなってきた。というのも、この日は雪だるまづくりをしていたから。本当は昨日やりたかったんだけど、残念なことに雪合戦するだけで終わっちゃったんだよね…。それに、昨日はずっと雪がずっと降り続いていたから、明日(つまり今日)も雪が残っていそうだと思ったのだ。…そこで、私は昨日の雪合戦を思い出した。そういえば、夕方やった時、ルイがものすごく本気出してたな、と…。朝やった時も、けっこう強かったけど、夕方の方が更にパワーアップしていたような…?それに、容赦なかったよ、あの攻撃…。一体何だったんだろう?不思議だった…。何かあったのかな?特に何事もなさそうな表情だったけど、最近ルイはお花の件で大変そうだし、気分転換になったなら、まあいいか。でも、あの勢いでもう一回雪合戦されたらさすがに私、負けそうだな…。と回想していると、そこに当の本人がやって来た。そして、ぐちゃぐちゃに散らかっている部屋を見て顔をしかめる。
「さっきより散らかってるだろ、これ!さっき、少しでもいいから小屋に持ってけ、って言ったのにやってないな。後でどの資料がどこにあるか分からなくなっても知らないからな!」
そう言いつつ、何故か散らばっている紙を片付け始めた。何だかんだ、優しい。…もしかしたら、私の散らかし加減に呆れちゃってるだけかもしれないけど。でも、私がやらかした物をルイに片付けさせるわけにはいかないので、私は一旦作業を中止し、資料を片付けることにした。意外と大量…。そして、重い。とりあえず、使い終わった物だけ小屋に持って帰ることにした。そうすると、けっこう部屋が片付いて、ルイがちょっと満足そうな感じだった。どうやら散らかっているのが相当嫌だったらしく…。手伝わせてしまって申し訳ない。
「ルイ、ありがとう。これなら、翻訳がはかどりそう!…あ、でも、また時間が経つにつれて散らかると思うから、先に謝っておくね。ごめん」
「散らかす前提かよ?!そこは散らからないように努力しろよ。ってか、それなら小屋の方でやった方がいいんじゃないか?そっちの方が資料も多いんだし」
「うん、それでもいいんだけど、それはそれで問題点があるんだよね…」
……って、そのせいで思い出しちゃったんですけど!!私の意志とは関係なく、ふわふわとあの時の会話が頭の中に出てきている…。タイミング悪い!けど、ここで変な反応をしたら怪しまれるよね?!そう思った私は慌てて椅子に座り、紙に意味のない文字を書き始めた。日本語とシェーロン語、どちらも書いている。こうしておけば、文字に集中できる(?)し、ルイから少しは離れられたし、大丈夫だよね、…たぶん。自分でも、何を書いているのか全然分からないけど、こうでもしておかないと、更に混乱することになる気がする…!私がひたすら、日本語とシェーロン語が混ざった謎の文字を書いていると、ルイはものすごく怪訝そうな表情をして、私の手元を覗き込んできた。せっかく離れたというのに、また近づいちゃったんですけど…。どうしよう、この状況??
「これ、何て書いてあるんだ?芸術っぽい感じのシェーロン語と、謎の言語が一緒に書いてあるけど、何なんだよ?何かの暗号…?」
全然違います!!でも、混乱して適当に書いてしまった文字、って答えるのも、それはそれで、どうして混乱してるんだって話になっちゃうし、何て答えよう?うーん…。少し考えてから、答える。
「…えっとね、シェーロン語と日本語で、似ている形の文字がないかな、ってちょっと気になって!」
苦し紛れにそう言った。…この言い訳、我ながら、非常に意味が分からない。そして、かなり無理がある。自分で言ってて、どういうこと?って思ってしまった。しかも、紙に書いてるのって、字の形にほとんど共通点がないような物ばっかりだし。むしろ、言い訳にもなってないような…。案の定、ルイが不思議そうな表情をしている。まあ、そうなるよね!全然似てる字がないないんだもん。だけど、今さら言い直すこともできないし、そもそも言い訳を全く思いついていない!
「全然似てる文字はなさそうだけど。でも、そもそも結花の個性的な字だと、比較できないだろ。ちゃんとした本の文字を参考にする方がいいんじゃないか?」
…微妙にぐさっとくる指摘をもらったような気がするけど、とりあえずごまかせた…かな?うん、たぶん大丈夫なはず!なので、私は答えた。
「確かに!今度、時間がある時に、ちゃんとした本を見て比較してみようかな」
あ、危なかった…!!でも、とりあえず大丈夫そうなのでほっとする。何でこういう時に思い出しちゃったかな…。と考えたけど、どう取り繕おうかということで悩んでいたせいか、落ち着いたので、私はその後は普通に翻訳を進めることができたのだった。
それから一時間ほどが経った。眠いな、と思いつつ顔をあげたが、気がつくと、再び資料がバラバラな状態に…。このままだと、ルイに怒られそうな気がする。ものすごく眠いし、キリもいいから今日はこれくらいにしておこうかな?私はあちこちに散乱している本を拾い集めた。そして、一つに重ねる。さっき、少し小屋に持っていったけど、それでもまだ大量。紙と本の山ができてしまった。とりあえず、運ぼうと思ったのだが、非常に眠くて動く気になれない。…ちょっとだけ寝ようかな?ちょっとだけなら、大丈夫だよね!そう思った私は少しだけ眠ることにした。
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…何か、やけに静かだな。さっきまでは隣の部屋から物音がしていたのに、非常に静かになっている。さっきは普通に話してたけど、具合が悪くなったのだろうか…?心配になったので、俺は隣の部屋を見に行くことにした。隣の部屋を覗いてみると、さっき散らかす宣言をしてた割には部屋が綺麗なままだ。その代わり、テーブルの上に紙と本でタワーができている。こんなにたくさんの資料を使ってることに驚いた。そして、その後ろで結花が寝ている。だから静かだったのか、と納得する。けど、ここで寝てたら風邪ひきそうだよな…。起こした方が良さそうだ。なので、俺は結花に声をかけた。
「おい、結花。起きろ。眠いならちゃんとベッドで寝ろよ。ここは寝るところじゃない」
しかし、全く反応しない。ってか、そもそもよくこんなところで寝られるよな…。ある意味すごいと思う。…いや、感心している場合じゃない。このままずっとここで眠られても困るし、起こさないと。なので、起こすために突っついたり、軽く叩いてみたりしてみたのだが、何故か全然起きない…。何なんだ、一体…。俺は早々に起こすのを諦めた。そして、タワーの一番上に置いてある紙を見てみることにした。シェーロン語で花の名前とか、性質とか、色々書かれている。…字が微妙に上手くなったかもしれない。けど、まだまだ個性的だな、とも思う。読めなくはないが…。俺は結花のこの字に慣れてしまったけど、メアリさんはこれを見た時、どう思うか…。たぶん大丈夫だと思うけど、微妙に不安だ。そう思いつつ、ぼんやりと文字を見ていたら、何故か急に、昨日のアケビとの会話を思い出してしまった。理由はよく分からないけど…。それにしても、いつくっつくか、って言われても困る…。もしかしたら、一生、今の関係のままなような気がしなくもない。…そもそも、気持ちを伝えたとして、結花の方がどう思っているかが問題だ。これが一番分からない。まあ、他人の気持ちが分からないのは当然なのだが…。けど、今までの感じを見ると、何とも思われていなさそうな気がする。たぶん、結花からすると俺は、せいぜい友達だろうな…。だから、もし俺が告白したとしても絶対に怪訝そうな表情される気がする。ってか、反応がそれしか思い浮かばない。もしくは、友達から、とか言われるような…。それでもいいかもしれないけど、それはそれで微妙な…。ずっとその関係性のままで終わってしまう可能性が高い。それに、もしそれで関係が悪くなったら嫌だしな…。…って、俺は一体何を想像してるんだ。想像してもどうにもならないだろ…。そのことは自分でも分かってるけど、何故か想像してしまった。そんな自分が意味不明だ。最近、そういうことが多いような…?それに、今のこの状況と全く関係ないだろ。俺は思考を無理矢理戻した。再び結花を起こそうといじってみるが、やっぱり反応しない。何でここでこんなに熟睡してるんだ…。もしかしたら、それだけ疲れているのかもしれない。最近、翻訳で忙しそうだし。それに、今日の昼間は雪だるまづくりではしゃいでたな…。雪が降っていて寒いのに、びっくりするほど大きい雪の玉を作って非常に楽しそうだった。ついでに、ミニ雪だるままで作ってたな…。と思い出した。そのせいで、庭中が雪だるまで埋め尽くされそうになっていたので、慌てて止めたのだが、何故か少し不服そうだったっけ。ってか、同じようなものを作っててよく飽きないな、と思ってしまった。
「それにしたって、何で起きないんだよ…。普通、誰かに声かけられたら起きるだろ。こんなところで寝てるんだし。手間がかかる奴だな…」
一瞬、このまま放っておこうと思ったのだが、それで風邪ひいたら、それはそれで…。けど、何しても起きないから、これ以上できることがないし…。俺はしばらくその場をうろうろとしていた。けど、放っておいたら後々気になって、結局様子を見に来ることになりそうなので、とりあえず起きるまで近くにいることにした。ついでに、適当にブランケットをかけておく。…あれ、でも、そしたら温かくなるから、更に起きなくなる…?一瞬、そう思ったが、かけてしまった後なので、あまり気にしないことにした。何だかんだ言って、結局そんなことをしている俺は一体何なんだろう、と思いつつ、俺は結花が起きるのを待っていたのだった。
読んで下さり、ありがとうございました。




