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私の異世界花記録  作者: 立花柚月
五章 異世界花屋と思い出
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第八十九話

◇以下、アケビ視点です。

それから数日が経った。私が書きながら寝ちゃったあの日以降、ルイに、私の体調に関してものすごく気を遣われたためか、風邪をひかずに済んだ。そのことは良かったけど、その日から翌々日くらいまで、寝る時間とかしっかり決められていたため、それはそれでかなり大変だった…。確かに、睡眠は大事なんだけど…。でも、やっぱりルイは、そういうところで過保護だな…、と改めて実感した。まあ、特に体調を崩したわけじゃなかったし、いいか。

そして、今日はお休みの日だ。なので、私は朝から地図を描いていた。文字の方も少しずつだけれど、進めている。おかげで、一ページ目と二ページ目の文字は何とか書き終えた。上手く書けているのかは何とも言えないけど…。でも、前よりも少しは上達しているだろう。…たぶん。分からないけど。あまり自信はない。でも、進んでいること自体、嬉しいので、とりあえずこのまま進めることにした。地図は、全部で三つ。それぞれ、違う区域が描いてあるので、ややこしい。悪戦苦闘しながら、ものすごくゆっくりと地図を描いていたその時だった。急に小屋の扉がこんこんと叩かれた。ルイ、…かな?というか、ルイしかいないよね。どうしたんだろう?何か用事でもあるのかな?そう思って私が扉を開けると、何故かそこにはアケビさんがいた。…!!?予想外のことに驚いていると、アケビさんが言った。

「結花ちゃん、こんにちは。あのね、すごく申し訳ないんだけど、ちょっと手伝ってほしいことがあるんだ。その代わり、お昼ごはんはちゃんと確保しておくから、お願い!あ、本当?引き受けてくれる?ありがとう。それじゃあ、早速行こう!ルイには許可もらってるから大丈夫だよ」

ちょっと待って、アケビさん。私、まだ何も言ってないし、首を縦に振ってもいない…。しかし、アケビさんは非常に急いでいるらしく、私の返答を待たないで、ぐいぐいとどこかへ引っ張っていく。というか、何事?ついさっきまで、割と穏やかに地図を写していたのに、何でこうなった?!私は混乱していたけれど、アケビさんは全くお構いなしで、何の抵抗もできずに植物屋さんへと連れて行かれてしまった。そして、植物屋さんではスイさんが待っていて、何が何だか分かっていない顔をしている私とアケビさんを見て、言った。

「師匠。ダメじゃないですか、ちゃんと説明してから連れてこないと…。結花さまがすごく不思議そうな顔をしていますよ?これ、半分誘拐なのでは?それと、さすがにルイ様にはちゃんと説明してあるんですよね?」

「もちろん。ちょっと結花ちゃんを借りるね、って言ってきたよ!それに、結花ちゃんへの説明はわたしよりもスイちゃんの方が得意でしょ?だから、いいかな、って思って!結花ちゃん、急に連れてきちゃってごめんね。でも、心配しなくて大丈夫だよ。むしろ、安心して!」

「……師匠、その言葉、逆に不信感が募ると思いますよ?それと、師匠に説明能力がないことは否定しませんけど、少しは説明する努力をして下さい!いつも私がいるとは限らないのですから…」

スイさんが呆れたような表情でそう言った。アケビさんがそれを聞いて少し落ち込んでいたが、スイさんはそれを無視して私に言った。

「結花さま、師匠がご迷惑をおかけして、本当にすみませんでした。私から言っておくので、許していただけませんか?」

いや、許すも何も、私、怒ってない…。多少、びっくりはしたけれど。それを伝えると、スイさんはほっとしたような笑みを浮かべ、私がここに連れてこられた理由を説明し始めた。

「実はですね、この前、管理人さんから、花を使った新しい商品を作ってほしい、って言われてしまったんです。…というのも、売れ残った花をそのまま捨てちゃうのは勿体ない、という意見が多いみたいで。なので、結花さまなら、色々な活用方法を知っているのではないかと思いまして。そのため、お呼びしたんです。…師匠による連れ去り事件になりかけましたが。後でルイ様にも謝っておかないとですね」

スイさんは最後に小さく、そうつぶやいた。アケビさんも大変そうだけど、スイさんはスイさんでまた別の大変さがありそうだな…。…というか、花を使った商品って、けっこう大雑把な指定だよね。花を使ったものって色々あるよ?…でも、売れ残った花を捨てないようにする対策なら、ドライフラワーが一番良さそう。確か、カスミソウとかだったら、それに香水とか、いい香りのものをつけて楽しむっていう方法もあった気がする。あと、背丈があるものだったら、リースにしても可愛いよね…。などなど、その辺りのものを提案しまくっていると、アケビさんが慌ててメモしていた。…もしかして、私、一人でテンション上がってた??少し、申し訳ない…。私は反省しつつ、他の案も出すことにした。さっきよりペースはゆっくり目に。色々な案を出した後、アケビさんは、

「これだけあれば、色々試せそう!もしかしたら、作り方とか、また聞きに行くかもしれないけど、とりあえずありがとね、結花ちゃん。これで、今回は管理人さんに怒られずに済むはず!」

「管理人さんを怒らせている自覚があるなら、少しは怒られないようにしてくださいよ…」

アケビさんはスイさんの言葉に聞こえなかったふりをして、さっさとフードコートへと行ってしまった。私とスイさんはその様子に苦笑しつつ、アケビさんの後を追いかけた。


「ところで、結花ちゃん、ルイとはどうなってるの?お祭りの後、どうなったのか気になっちゃって!」

お昼ごはんを食べ始めた直後、急にアケビさんがそう聞いてきた。ちょっとにやにやしているような気がするのは、気のせい…?というか、何を突然…??!特に何もないと思うんだけど…。たぶん…。あ、でも、一つ不思議に思ってることがあったっけ。

「最近、何故かルイが優しい気がします。あと、保護者っぽい感じが強くなった……?」

しかし、私がそう言うと、アケビさんとスイさんは何故か微妙そうな表情をした。あれ、何でだろう。もしかして、質問の意味とは別の答えを言っちゃったのかな?でも、それくらいしか言えることがない。他に何かあるかな…。しばらく考えてみたが、思いつかない。何かあったっけ???すると、アケビさんが言った。

「えっとね…。確かにそれもそうかもしれないけど、結花ちゃん自身、何かなかったのかな、って…」

私自身…???それは一体…。と、考えていて一つ思い当たったことがある。それは、この前、私が書き物をしていてそのまま寝ちゃった日のこと。芽が出た、って聞いてその部屋に行った時の出来事だ。その時、私は、感じたことのない、不思議な気持ちになった。そして、それは、お祭りの時とかにも感じたような気がして…。あれが結局何だったのか、未だによく分からないけど、もしかしたらアケビさんとか、私以外の人なら分かるかもしれない。なので、試しにそれを言ってみることにした。すると、二人は顔を見合わせた。そして、

「やっぱり、結花ちゃん、あまり自覚がないみたいだけど、それ、恋してるってことだと思うよ?というか、絶対そう!それ以外あり得ない気がする」

と、アケビさんに言われた。…??恋、ですか…。そう言われても…。前に、ジェシカに私が恋してる、って言われて、一時期すごく混乱してたけど、実はいまいちピンと来ていなかった。どういうものが恋なのか、ちゃんと分かっていなかったというか…。その時はただ、恋って複雑なんだな…、と思ったくらいで。というか、こういうのって恋なの?恋とは結局、何なのだろう??経験がなさすぎてさっぱり分からない。そういうのって何で分かるんだろう???私が色々考えていると、再びアケビさんが言った。

「要するに、何気ないこととかでもその人と一緒にいると楽しかったり、一緒にいて楽しいな、って思ったりするのも恋だと思うよ、ってこと」

そう言われた私は今までのことを思い返してみた。…あれ、アケビさんの言うこと、当たってるような気がするんだけど?………って、つまり、私はルイに恋している、と??!ジェシカに言われた時にはうっすらとしていたのが、ここに来て急にはっきりしたような、現実味を帯びたような…!き、気付いて良かったような、気付きたくなかったような複雑な気持ちなんだけど、どうしよう?でも、そうなると、この前感じた不思議な気持ちも、恋の一種、ってことなのかな?たぶん、そういうことだよね…?!

「でも、私、恋とか全然分からないのですが…。というか、今、私、すごく混乱してます…」

「わたしは逆に、結花ちゃんがようやく自分で気付いたことにびっくりしてるよ…。傍から見ると、二人ともすごく仲良いから、普通に恋人に見えるよ?」

アケビさんは本当に驚いているらしく、目を丸くさせていた。いや、でも、私からすると、他の人の言葉がなくても、自分で恋に気付ける人の方がすごいと思う。

「…でも、ルイが誰を好きかは本当に分かりませんよ?それに、もし告白したとして、それで断られたら怖くないですか?今までよりもぎくしゃくするかもしれないですし…」

「まあ、そうだよねー。でも、ルイはこの前のお祭りの最終日の時、誰か女の子に一緒に踊りませんか、って誘われてたでしょ?口は悪いけど、外見はかなりいいから、きっと人気だと思うなー。だから、早くしないと、誰かに取られちゃうかもよ?そこは、当たって砕けろ、ってことで!」

言いたいことは分かったけど、アケビさんのルイに対する評価が何だか…。本人がいたら怒られそう…。私がそんなことを思っていると、スイさんが言った。

「…師匠、例えてるのは分かりますけど、砕けてしまったらダメだと思いますよ?」

「それもそうだね。じゃあ、砕ける勢いでいこう!」

あまり変わっていないような…。その後も私たちはしばらく話をしていたが、あまり長居しすぎるとルイに心配されそうな気がするので、私は帰ることにした。それに、お店に戻る前にちょっと冷静になりたい…。私は二人と別れ、植物屋さんの外へと出た。寒いけど、このくらい空気が冷たいなら、少しは落ち着けそうだな…。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


…ちょっと混乱させすぎちゃったかな?でも、まあ、大丈夫なはず!わたしは適当な結論を出しつつ、結花ちゃんを見送った。そして、自分のお店のところへ戻るところで、スイちゃんに聞かれた。

「師匠、結花さまがいたので言いませんでしたけど、あなた、わざと煽りましたよね?当たって砕けろ、って…。そこまで言わなくても良かったと思いますよ?というか、私たちが何も言わなくても結花さまはちゃんと自覚したと思うのですが…」

さすが、スイちゃん。わたしの意図にばっちり気付いている。もしかしたら、わたしが分かりやすいだけかもしれないんだけどね。そう思いつつ、わたしは答えた。

「うーん、確かにそうなんだけど…。あの感じだと、見ているこっちがじれったくなるんだもん。というか、何であの二人ってすごい仲いいのに、すれ違ってるんだろう?」

この前、話してたら、何故か結花ちゃんは、ルイに自分以外で好きな人がいると勘違いしてたし…。何でああなっちゃったんだろう?本当に不思議。

「それは…、お二人がお互い鈍感だからでは?というか、そうとしか考えられません」

やっぱりそうだよねー…。今後も時々、それとなく状況を確認してみよう、と思いつつわたしは午後のお店の準備をしていたのだった。

読んで下さり、ありがとうございました。

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