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私の異世界花記録  作者: 立花柚月
五章 異世界花屋と思い出
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第八十八話

夜。私は早速、その紙とにらめっこしていた。そして、この時点で、文字以外の問題が浮上していた。それは、ヴェリエ国の地図だ。千智さんの描いた地図は、すごく丁寧。ルイに貸してもらったヴェリエ国の地図と比較してみたら、本当にそっくりだったのだ。これ、もしかして、紙の下に地図をひいていたんじゃないかな、って思うくらい。どうしよう、私、地図描くのが本当に苦手なんですけど。まさか、文字の前に地図という名の壁が立ち塞がっているとは…。私が地図を描くと、いびつになるんだよね…。前に、簡略化した日本地図を授業で描かされたことがあったんだけど、途中から自分でも何を描いているのか分からなくなった記憶が…。その後、どうにか描き終えたけど、下手すぎてただの図形になってしまってたし…。どうしよう、とりあえず他の紙に練習してみようかな?私はじっくりと地図を観察した。…北が曲線みたいになっていて、東側がギザギザ???……どうしよう、やっぱり描けない!!もう、地図問題は後回しにしよう。その方がどう考えても楽だもの。…いつかは向き合わないといけないけれど。ということで、私は文字の方から先に書くことにした。しかし、お手本の文字を見つつ慎重に書いていると、あっという間に時間が経ってしまった。今日はもう寝た方がいいかな??でも、いいところだし、もうちょっとやろう。私は結局、続きを書くことにした。



……目の前が、眩しい。そう思った私は目を開けた。途端に眩しい光が目に飛び込んできて、私は再び目を瞑った。少ししてから恐る恐る目を開ける。少し寒い、かも…?…それに、もしかして、今って朝???あれ、私、何でここで寝てたんだろう?机に突っ伏しているんだけど…。寝る前の記憶がぼんやりとしている。なので、私は少し思い返してみることにした。えーと…。昨日は確か、千智さんの記録をシェーロン語にしようと思って文字を書いてて……。そこから記憶がない。もしかして私、そのまま寝てたのかな?そのせいか、腰が痛い。椅子に座ったまま寝るのって、あまり良くないみたい…。次から、書いている途中で寝ないようにしないと。そう思いつつ、立ち上がった。とりあえず、建物の方に行ってみることにする。庭を突っ切って建物の扉を開けると、何故かそこにルイがいた。ちょっとびっくり。…待ち伏せされてたのかな??すると、ルイが言った。

「おはよう。なかなか来ないから、ここで待ってた。具合が悪いのかと思ってたけど、大丈夫そうだな」

「おはよう。いつも通りだよ。…というか、なかなか来なかった、って今何時なの?六時を過ぎてる?」

すると、ルイは壁にかかっている時計を指し示した。…六時四十五分くらい。確かに、いつもよりかなり遅かったな…。反省。もしかしなくても、変なところで寝たせいかな?…やっぱり、椅子のところで眠るのは絶対に止めておこう。

「何だったら、小屋の中に入ってきて、叩き起こしてくれても良かったんだよ?その方が起きると思う」

「そういうわけにもいかないだろ…。大体、俺はお前の親じゃないし。いちいち起こす義務はないだろ。それに、鍵がかかってんだ。斧とかで壊さない限り、入れない。あと、扉を破壊したら直さないといけないし、面倒だ」

確かに、直すのって時間がかかりそう…。その間、寒い風が、小屋の中にぴゅーぴゅー入ってくるのは絶対に嫌だし。…あ、でも、そういえば昨日、鍵をかけるの忘れていたような気がする。ということは、普通に入ってくることが可能だったってことだ。なので、私は言った。

「確かに、普段は鍵をちゃんとかけてるけど、たまにかけ忘れることがあるから、その時はちゃんと入れるよ!だから、もし起きてこなかったら試してみたらいいんじゃないかな?」

しかし、ルイはちょっと顔を険しくして言った。

「それはそれで問題だな…。ちゃんと鍵かけろ。この前もかけてなかったみたいだし…。何だったら、結花が夜、中に入った後、俺が点検に行くけど、どうする?」

「…え、やめて。今の時期、すっごく寒いんだから、そんなことしてたら風邪ひいちゃうよ!それに、寒さで目が冴えちゃうかもしれないし…。そしたら睡眠不足になるかもしれないよ?だから、絶対に止めておいた方がいいと思う!!ちゃんと鍵かけるから!!」

私が全力でそう言うと、ルイはちょっと呆れたような表情になって、気にする点、そっちかよ…、と小さくつぶやいていた。いや、だって、もしそれでなかなか眠れなくなっちゃったら、体調不良に繋がるかもしれないし。前に、保健の授業で、免疫力の低下の原因の一つは、睡眠不足だって言ってたもん。だから、私は全力でそれを止めることにした。今日から、本当にちゃんと鍵をかけておこう、と思いつつ。ルイは私の言葉の勢いに若干引いているようだったけど、結局うなずいてくれた。よし、これで寒さを回避できたはず!私は心の中で喜んでいた。……と、ルイが再び話しかけてきた。

「そういえば、この前、まいた種、今朝見たら芽が出てたぞ。一歩前進だな」

ルイは、さらっと、まるで今までの続きの話をしているようにそう言った。本当に、何気ない感じで。だから、私は一瞬、その話を普通に聞き流しかけていた。

「へー。そうなんだ。それはそれは………。って…、え…っ?!えええーーーー!??」

私は思わず叫んでしまった。ルイがうるさそうに耳を塞ぐ。ごめん、ルイ。いや、でも、でもでも!それって、かなりすごいことだよね!!本当にすごい!!ルイの言う通り、一歩前進だと思う。この調子で成長していってくれればいいんだけど…。…というか、それを知っているってことは、ルイは既に植物置き場の部屋に行ったってことだよね。どうせなら一緒に見たかったな…。ちょっと残念。何でこんな時に限って私は寝坊するんだか…。その時、ルイが、まるで私の気持ちを読み取ったかのように言った。

「まだ少し時間あるし、見に行くか?どうせ、結花のことだし、今見なかったら、店番中も気にするだろ?」

言い方が微妙にひどいような気がするけど、一緒に見られるのはすごく嬉しい!それに、ルイが言っていることは当たっていると思うし。なので、そのことに関しては今回は何も言わないことにした。私がこくこくうなずくと、ルイは少し笑った。そして、何故か私の手を取った。…?!急にどうしたんだろう?!もしかして、既に具合が悪いとか!!?でも、足取りはしっかりしてるし、顔も赤くないから熱はなさそうだよね…?一体、本当にどうしたんだろう?まさか、これ、本物のルイじゃなかったりして??そう思った私は恐る恐る、敬語で聞いてみた。もし、知らない人物だったら怖いので。

「…あの?質問なんですけど、何で手を繋いでいるのでしょうか?」

「何で敬語…。急に距離ができた…?いや、それは一旦置いておくとして…。結花、微妙に顔色が悪い。もしかして、昨日、夜遅くまで起きてたのか?」

あ、そういうことなの?私が調子悪そうだから、心配になった…、ってことなのかな?…というか、最近、ルイが優しくなってる?何でだろう??どんな心境の変化があったのだろうか…。少し疑問に思う。けれど、そのことは、何だか嬉しくて、でも、少しだけ恥ずかしくて…。…もう少しだけ、このままでもいいだろうか?私はちょっとうつむきつつ、言った。

「たぶん、今日、椅子に座ったまま、変な体勢で寝ちゃったから、眠りが浅かったのかも。それに、布団をかぶってなかったから、寒かったのかな?たぶん、それだと思う。気付いたら寝てたんだよね…」

…って、何で正直に答えちゃったんだ、私!?言わない方がいいってことは、頭では分かってたのに!絶対に、これ、ルイが優しいからだよね!たぶん、私は、ルイが優しくなってて戸惑ってるせいで、正直に言っちゃったんだと思う。ルイのせい、みたいになってるけど、そうとしか考えられない。若しくは、私が、今までに感じたことのないような気持ちを感じているせいだ。…あれ、でも、よくよく考えてみたら初めてでもない…?確か、お祭りの時、ルイに髪飾りをもらった時もこんな気持ちになったような気がする…。それ以外には…?と考えていた私は、ルイが言った言葉で我に返った。

「それって、もしかして、母さんの分布図の紙を訳してたからか?…悪い、俺が煽るようなこと言ったからだな。きついんだったら、やらなくていいんだ。もし、結花が体調崩したら心配だし」

「ううん、ルイのせいじゃないよ。私がやりたいからやってるだけ。まあ、文字問題以外に地図問題も出てるんだけどね…。でも、大丈夫。私が始めたことだし、最後までやるよ!」

「…そうか。でも、無理だけはするなよ。…っと、着いたな」

ドアを開けるためか、繋いでいた手が離れる。そのことをちょっと寂しく思いつつ、じーっと今まで繋いでいた手を眺めていると、いつの間にか部屋の中に入っていたルイが言った。

「おい。ここまで来て入らないのかよ?それなら今すぐにでも……」

そう言われた私は慌てて中に入った。そして、ルイと一緒にその箱を見た。わ、本当だ!芽が出てる!すごい、昨日までは全然、発芽する感じがしなかったのに。でも…。

「これ、すっごく小さくない?予想以上に小さいんだけど。本当に花が咲くのかなー…?」

「は?芽にそんなこと言ったってどうしようもないだろ。それに、元々小さい奴だったし、これくらいでちょうどいいんじゃないのか?それい、逆にこれからの成長が楽しみだし。…そうとも、思えるだろ?」

すごくポジティブ思考だ…。けど、確かに、そう考えていた方が色々楽しそうだよね。なので、私は大きくうなずいた。すると、ルイはどこかいたずらっぽく笑って言った。

「それじゃあ、ちゃんと芽の確認もしたことだし、朝飯にするか。結花が遅かった分、早く食べないといけないけどな。でも、体調悪そうだし、しっかり食べとけよ。今のうちに対策しとけば、風邪まで行かないと思う」

「……そういうところ、やっぱりお母さんみたいだよね」

「…?今、何か言ったか?」

私は少し慌てて首を振った。ルイはちょっと怪訝そうな表情をしていたけど、結局何も言わずにすたすた、台所方面へと向かっていく。ちょっ…、いきなり置き去りにしないでほしいんですけど?私は慌てて後を追いかけた。

読んで下さり、ありがとうございました。

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