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私の異世界花記録  作者: 立花柚月
五章 異世界花屋と思い出
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第八十六話

その日の夕方のこと。あの後、一時間ほどしてからお店スペースに戻ってきたルイは、どこか複雑そうな表情をしていたが、何故なのかは全く分からないまま、その日のお店の時間は終了した。本当に何でだろう?具合が悪いとか、そういうわけではなさそうだけど…。普通に歩いてたし。なので、ちょっと不思議だった。…それにしても、今日は比較的、お客さんが少なかったな。私が一人で留守番している間も、そこまでお客さんが来なかったし。そんなことを思いつつ、私たちは街に買い物へ行くことにした。外に出ると、ちょうど強い風が吹いてきて、ものすごく寒かった。体感温度だと、今の気温、何度だろう??と思ってしまうほどだ。でも、こういう寒い日って、鍋料理が食べたくなるよね!色々な具材が入ってて美味しいし、皆でわいわいできるのも楽しいもの。いつか、鍋パーティーみたいなの、してみたいな…。と考えていたその時だった。向こうから私たちのよく知っている人物がやって来た。すると、向こうの人物も私たちに気付いて、大きく手を振ってきた。

「あ、結花ちゃんとルイだ!何だか久しぶりだね!わたしがしばらく休んでたって言うのもあるけど、わたしが復活してから二人とも全然来てなかったしね。何かあったの?」

「特にないけど、とりあえずアケビが元気そうで何よりだ。…ところで、スイは?いつも一緒なのに、一人って珍しいな。…まさか、今度はスイが風邪とかじゃないよな?」

ルイがそう言うと、アケビさんは向こうの方にあるお店を指差した。そこでは、スイさんが何かをじーっと見つめていた。何を見ているのか全く分からないけど、すごく嬉しそう。それに、心なしか、いつもよりテンションが高いような…?どうしたんだろう??すると、アケビさんが説明してくれた。

「この前、私が風邪をひいたときにスイちゃんが一人で頑張ってくれてたから、そのお礼に何か一つ買ってあげようと思って。本当は朝のうちに行こうかと思ってたんだけど、そしたら、スイちゃんが、休んでいた時の分の書類整理をしてからにしませんか?って微妙に怖い笑みで言ってきたから、それをやってたら今の時間になっちゃったんだよね…。まあ、おかげで書類整理は終わったんだけど…」

アケビさんは苦笑いしていた。どうやら、植物屋さんに戻ってからも、ついこの前まで本調子ではなかったらしく、書類整理は少なめだったみたいで、ずっと書類がたまっていたらしい。そのため、完全に復活した今日、一気に書類を片付けたそうだ。そんな話をしていると、スイさんがこっちにやって来た。その手に、何かが入った袋を持っている。一体、何を買ったんだろう??すると、アケビさんと一緒にいるのが私たちだと気付いたのか、スイさんが微笑を浮かべ、駆け寄ってきた。

「お二人とも、お久しぶりですね。どうなさったんですか?もしかして、師匠が何かご迷惑を…?」

「ちょ、ちょっと待って、スイちゃん!?何でそういう発想になっちゃうの?!わたし、全然迷惑かけてないから。ただ、話してただけだから。…それで、スイちゃんは結局何を買ったの?」

アケビさんが慌てて話題をずらした。ものすごく慌てている。そんなアケビさんの様子にスイさんは少しだけ笑うと、袋の中身を見せてくれた。そこに入っていたのは、……三冊くらいの本だった。どうやら、それはスイさんが好きなシリーズの本らしい。でも、買いに行く時間がなくてずっと買えていなかったそうだ。選んだものがスイさんらしいな…。でも、逆にアケビさんは怪訝そうだった。

「本当に本だけでいいの?わたし、ものすごくスイちゃんに迷惑かけちゃったような気がしたから、本を選ばれてすごくびっくりしてるんだけど。本当に本当にいいの?」

「はい。本当にこれが欲しかったので、構いませんよ。それに師匠、…気付いていないのですか?師匠は一つだけ、と言っていましたけど、私、一つのシリーズとは言え、三冊も買ってしまいましたから」

すると、アケビさんは、そう言われたら、確かにそうだ…、というような表情になった。そういえばさっきアケビさん、自分で一つだけ、って言ってたよね。…いいのかな?アケビさんは微妙に衝撃を受けたように呆然としていたが、しばらくして言った。

「はあ…。そう言われても、もう買っちゃった後だからね…。それに、スイちゃんにはいっつも迷惑かけてる自信があるから別にいいよ…。でも、今度から、ちゃんと見張っておかないとだね」

アケビさんは意外と気にしてないようにそう言った。…まあ、本人がいいって言ってるからいいのかな。…と、そこで私はアケビさんに聞きたいことがあったのを思い出した。なので、突然で申し訳ないけど、早速そのことを質問してみることにした。

「アケビさん、質問したいことがあるんですけど…、特に急ぎの用事はありませんか?」

「え?質問?いいけど、たぶん、わたしよりもスイちゃんの方がちゃんと答えられると思うよ?それでも、いいなら、どうぞ」

「あのですね。今の時期に何か植物の種をまいたとしますよね?その後、三か月で成長して、花も咲くような、寒さが全く成長に関係ない種類の植物ってありますか?」

私の、おかしすぎる質問に、アケビさんは首をかしげた。それを聞いていたスイさんも、ちょっと怪訝そうな表情をしている。そうだよね…。もし私がそんな質問されたら、同じ反応すると思う!だって、こんな寒くても、春みたいな感じでにょきにょき成長するような花なんて聞いたことないもの。というか、普通に考えて、存在しないと思う。…でも、ロディル卿の話では、三か月くらいで咲かせることも可能みたいだったから、ちょっと気になっていたのだ。もしかしたら、違う世界だから、そういうことも可能なのかもしれない、って思ったんだけど…、アケビさんたちの反応からして、なさそうだな…。すると、スイさんがこう言った。

「そんな花は聞いたことありませんけど…。でも、前にどこかで、異世界には、その植物の性質を変えることができる技術があると聞いたことがあります。それを使えば、寒くても普通に育つような種もできるのではないでしょうか?それに、一応この世界にも、植物の成長を早めるような技術がありますし。…私はよく知らないのですが。けれど、それらを組み合わせれば、可能かもしれませんね…」

すると、スイさんの意見に同意するかのように、アケビさんがこくこくうなずいた。たぶん、その通り!って言いたいのだと思う。…でも、そっか。やっぱりないみたい。たぶん性質を変える技術って品種改良のことだと思うけど…。簡単にできるものなのかな??私もそこまで詳しくないので、よく分からない。でも、千智さん、花が好きだったみたいだし、あり得なくはない…かな?でも、こっちの技術も使ったとすると、それは一体、どこで習得したものなんだろう?色々謎が残っているけど、そういうこと、なのかな?真相が分からないから、想像するしかないんだよね…。私が色々と考えていると、ルイが言った。

「おい、結花、早く買い物を終わらせないと、暗くなる。まだ何も買ってないし、そろそろ行くぞ」

「え、…あ、うん、分かった。アケビさん、スイさん、突然変な質問してすみませんでした。あと、ありがとうございます」

私は二人にお礼を言った。すると、アケビさんが笑って言った。

「全然、気にしなくて大丈夫だよ。少しでもお役に立てたなら、嬉しいな」

「ええ、そうですね。…ですが、師匠はさっき、結花さまの質問に何も答えていませんでしたよ?私の言ったことにうなずいただけだったと思うのですが?」

…アケビさんは、痛いところを突かれたらしく、聞こえないふりをしていたのだった。


アケビさんたちと別れた後、私とルイはあちこちのお店に行って買い物をした。なので、帰る頃には、日はほとんど沈んでいて、西の方の空が濃いオレンジ色で染まっていた。影が濃くなってきた道を歩いていると、不意にルイが質問してきた。

「そういえば、さっき、アケビたちに謎の質問してたけど、どうしたんだ?その後で何か考えてたけど」

「あー…。そういえば、ルイは聞いてなかったんだっけ。この前、ロディル卿に会った時、ルイがもらってきた花の種について質問したんだよね。その時に三か月くらいで咲く、みたいなことを言ってたから気になっただけだよ」

すると、何故かルイは、すごく複雑そうな表情になった。あれ、何か変なこと言ったかな?…あ、もしかして、ロディル卿との話について、ルイに伝えてなかったからかな??それとも他に、何か理由があるのだろうか…?…あ、そういえば、その前にも私、ロディル卿に不思議なことを言われたような気がする。確か…。最初、ロディル卿は、私を千智さんだと思いかけていたんだっけ?なので、それを踏まえてルイに聞いてみることにした。

「あとね、ロディル卿に、私が千智さんに似ている、って言われたんだけど、そんなに似てるの?」

そう聞くと、ルイはじっと私の顔を見た。そんな、改めてじっくりと顔を見られても、どう反応すればいいのか困るんですけど…。

「似てる…か??…確かに、遠めの場所から見ると、似ているような気がする。前に俺、間違えかけたし。でも、慣れてくると、全然違うように思うけどな。そもそも、性格が似ても似つかないし…」

それ、褒めてるのか褒めてないのか、よく分からないんですけど…。というか、ルイから見て私ってどんな感じに見えているんだろう?ルイは、話を続けた。

「母さんはどっちかと言うと、色々な面から物事を考えて行動するような感じだった。まあ、たまに大胆な行動をしてたけど。…それに、丁寧だったし」

「そうだったんだ…。ところで、私と千智さんだと性格が全然違うってことは、私はあまり考えないで行動してて、雑だってこと?」

「……そこまでは言ってないけど」

今の沈黙は一体何だったんでしょう?妙に間を作らないでほしいんですけど!要するに…、そういうことなんだね…。と、私はちょこっと落ち込んでいた。まあ、確かに、雑なところはあるかもしれないけど…。すると、ルイが軽く私の頭をぽん、と撫でた。…??

「まあ、俺は、結花はそのままでいいと思うけどな。別に、そういう性格も、………嫌いじゃないし」

私は、急に自分の体温が上昇したような気がした。何なの、一体…?!そう思いつつ、私も言った。

「…ありがとう。……私も、ルイが時々、素直になるの、嫌いじゃないよ」

「な…、何言ってんだ、お前…。意味分からん」

そう言って、ルイは急に早歩きになった。何の前触れもなく早くならないでよ…!?私を置いていくつもりなのだろうか…?私は、慌ててルイの後を追いかけた。

読んで下さり、ありがとうございました。

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