第八十四話
昨日、投稿できずすみません…。
その後もしばらく、沈黙の時間が続いた。非常に気まずいのですが…!立ち去るべきかここにいるべきか…。と私がかなり本気で考えていると、再びロディル卿が話しかけてきた。
「ところで、私は一つ、君に質問がある。君は一体、何者だ?一回、ヘルに調べさせたが、結局報告は来なかったから、分からないままだった。その後も、他の者に色々と調べさせてみたが、大した情報は得られなかった。故に、君が誰なのかが全く分からない」
え、そうなの?!いつの間に…!?全然知らなかったんだけど…?それに、何か怖いんですけど。勝手に人のことを調べるって、元の世界だったら、プライバシーの侵害、って言われて訴えられてもおかしくなかったと思う。まあ、この世界はどちらかというと貴族の方が権限を持っているから、無理だろうけど…。と、私はあまり関係ないことを考えていた。…って、今はそんな話、どうでもいいって!!とりあえず、ロディル卿への対応を考えておかないと…。どうしよう。異世界から来たことはあまり言わない方がいい、ってルイが言ってたし、ごまかした方がいいんだろうけど…。果たしてごまかしきれるだろうか?国の名前とかほとんど知らないし、適当に言ってもばれそうだしな…。何故かこういう時に限って、元の世界の国名しか、頭に浮かんで来なくなるし!前に一応、ルイに国の名前とか教えてもらったんだけどな…?それに、ロディル卿が私のことを調べさせた、ということは、私がどこから来たのか、っていうことも調べたのだと思う。だから、もしここでシェーロン国の地名とか言ったとしても、記録が残ってない、って言われたらおしまいなんだよね…。さて、どうしたものか…。でも、考えるのに時間をかけていると、逆に怪しまれそうなので、時間稼ぎすることにした。とりあえず私は、ロディル卿の意図を聞いてみることにする。
「…ロディル卿は、どうして、私について知りたいんですか?直接的な関わりはありませんよね?それに、話すのも今日が初めてですし」
「決まっているだろう。君がルイの近くにいるからだ。もし、今後ルイや私の害になるかもしれないなら、早めに対処しておいた方がいいだろう」
私はそれを聞いてぞっとした。…そこそこ柔らかい表現になってるけど、要するに、ロディル卿は、もしも私がルイやロディル卿にとって邪魔な存在だったとしたら、遠慮なく排除しようと思っているということだろう。やっぱり、この世界は元の世界に比べたらずっと危険だ。普通の人の命は、簡単に散ってしまうものなのだろう…。でも、私は特に、何か邪魔をしたいわけではない。そのことを分かってもらえれば、自分の正体を明かさなくても何とかなる…はずだ。けど、問題は、どうやってそれを証明するかということ。どう考えても、簡単には信じてもらえない相手だ。それに、私の出自は分からない状態になっている。そのことは、かなりロディル卿に不信感を持たせているだろう。…これ、本格的にまずい状況では?このままだと、私が異世界から来たことを言うことになるか、その前に文字通り、存在を消されるような気がする…。その時だった。
「……結花!!遅いから何かあったのかと思った。そこで何してるんだ…、……は?!何であんたがここにいるんだよ?この前、ヴェリエ国に帰ったんじゃなかったのか?」
ルイがそこにいた。ロディル卿を見て、すごく驚いている。一方のロディル卿もまさかルイが来るとは思っていなかったのか、少し動揺しているようだったが、すぐに普段の様子に戻って言った。
「…ああ。確かにこの前は一旦、帰ったな。仕事があったから。だが、その日と今日はまた別だ。今日は今日で少し時間があったからここに来た。ただそれだけだ」
「あんたな…、ここに来る暇があるなら仕事しろよ。ってか、そもそもここで遊んでる暇ないだろ」
ルイがちょっと面倒そう…。早く店に戻りたい、って顔に書いてあるような気が…。そして、ロディル卿はロディル卿で、少し悔しそうだった。恐らく、私からもう少しのところで、情報を聞きだせなかったからだろう。でも、私は逆にほっとしている。ルイのおかげで何も言わずに済んだから…。後でお礼を言おう。すると、ルイが私の腕を引っ張って、ロディル卿から距離を取らされた。そして、聞いてきた。
「結花、あいつに何もされてないよな?それと、何を話してたんだ?」
話しちゃってもいいのかな?一瞬、気になったけど、特に口止めはされてないし、まあいいか。そう思った私は、ルイに、ロディル卿との会話について話した。すると、ルイは怪訝そうな表情になった。まあ、そうだよね。ルイの方ではなく、私の方に用事があったんだもの。
「…ってか、それ、脅しじゃないか?何やってるんだよ、本当に…。大の大人が子どもを脅すとか、最低だな。そんなに、俺の近くにこいつがいるのが怖いのかよ?あんたには関係ないだろ」
…言いたいことは分かるんだけど、子ども、って…、私のこと、だよね?確かにまた成人してないけど、子どもって言われるほど小さくはないはずなんだけど…?それに、それを言うならルイも子ども、ってことになっちゃう気がする…。
「出自がちゃんとしているなら、私だってわざわざ確認にしに来ることなどしない。だが、この者は、何者なのかがさっぱり分からない。一つも、手掛かりが見つからないなんておかしいだろう」
異世界から来た私に、この世界の戸籍はないから、見つからないのは当然のことだけど…。確かに、この世界の人からしたらそれは怖いことなんだろうな…。どこから来たのかも、誰なのかも全く分からないわけなんだし。…それにしても、それだけのためにここまで来るってことは、ロディル卿って、案外、優しいところもあるのでは?それだけ、ルイのことが心配なんじゃないかな。…ただの予想だし、ロディル卿がどう思っているのかは当たり前だけど、全く分からない。でも、もしかしたら、ロディル卿は怖いだけの人じゃないのかもしれない。
「あんたがどこか、探し忘れたんじゃないのか?ってか、人の情報を勝手に探るとか、ただの覗き魔と同じじゃないかよ…。大体…」
ルイが散々言いたい放題言ってるんだけど…!このままにしておくと止まらなさそうで怖いので、私は慌ててルイの言葉を無理矢理、途中で止めた。
「ルイ、もういいから!!私は何ともないから、全然気にしないで!本当に大丈夫だから、ね?」
ルイは微妙に納得してないような表情をしていたけど、少ししてうなずいた。ちょっとほっとする。これ以上話してたら、大変なことになりそうだし…。…と、ロディル卿が唐突に尋ねてきた。
「そうだ、もう一つ聞きたいと思ったことがあった。…お前たちは、交際しているのか?」
「「……!!?」」
な、何を言うかと思ったら…!何でそんなことを急に聞いてきたんだろう?!私が混乱していると、少なくとも私よりは混乱していないだろうルイが、答えた。
「違う!全然そんなんじゃない!!ってか、何でそんなこと聞くんだよ。今までの話と内容が全然違うだろ。本っ当に何なんだよ…」
はっきり否定されると、微妙にもやもやするんだけど…。何か悲しい…。ルイが誰かのことが好きなのは知ってるけど、はっきり聞いちゃうとすごく複雑だ…。一方のルイはすたすた、どこかへ歩いていってしまった。え、一人でどこに行くつもり?!私、置いていかれた?その場に、私とロディル卿が取り残される。また二人になっちゃったんですけど…。一体、どうすれば?私は少し考えた。そして、一つ聞きたいことがあったので、意を決して聞いてみることにした。
「あの、一つ質問があります。…違っていたら申し訳ないんですけど…、この前あなたがルイに渡した種って、もしかして、あなたが前に、千智さんからもらったもの…だったりしますか?」
すると、ロディル卿は驚いたように私を見た。…当たりみたい。巾着袋だったし、もしかして?って思ってたけど、やっぱりそうだったみたい。…ということは、ルイが元々持っていた方の種と、ロディル卿の方の種はどちらも同じな可能性が高い。
「…あの花は、千智が昔育てていたものだった。寒い季節に丈夫に育っていたのを見てとても驚いたのが記憶に残っている…。何の花か聞いた私に、千智は言った。この花の種は、冬にまいても最短三か月で咲く、と…」
ロディル卿はぽつりぽつりと思い出を語った。千智さんはお屋敷を出る前、ロディル卿にこの花の種を渡したらしい。なので、千智さんがルイと去ってしまった後、ロディル卿は試しに、自分の家の庭師にその種を咲かせるよう命じたのだと言う。しかし、その庭師はそれを咲かせることができなかったのだそう。他の人にやらせても、自分でやってみても、全くダメだったらしい。それを語るロディル卿は、どこか寂しそうな様子だった。それを聞きつつ、私は考えた。…どうして千智さんは、ロディル卿とルイの二人に、花の種を渡したのだろう?何か、特別な理由があったのだろうか…?もしかしたらその種に、何かメッセージが隠されているのかもしれない。根拠はないけれど、何だか、そんな気がする。そしてそれは、とても大事なことであるような気もした。…と、ロディル卿が考えている私の方を見て、言った。
「ところで君は、さっきの質問に答えていない。結局君は、何者なんだ?」
さっきまでは、何て言えばごまかせるだろう、とか考えていたけど、私は早く、種の謎を解き明かしたくてそれどころではなかった。なので、私は適当に答えて、その場を去ることにした。
「さあ?一体、誰でしょうね?いつか、分かるかもしれませんよ?」
私はそう言って、植物屋さんへの道を戻ることにした。後ろでロディル卿が何かつぶやいたような気がしたけれど、あまり気にしない。でも、少し行ったところで、ルイを見つけた。完全に戻っていたわけではないらしい。ルイが少し申し訳なさそうな表情をしていたので、私は言った。
「急にどこかに行こうとしてたことは、全然気にしなくて大丈夫だよ。花の種について、話を聞けたし」
「あ、いや、それもそうだけど、そっちじゃなくて…。あの人が、俺たちの関係について聞いてきた時に、思いっきり否定した方を謝りたいと思ったんだよ。…あの場ではああ言ったけど、別に結花のことが嫌いってわけじゃないからな!」
私はきょとんとした。そっちだとは思ってなかったので拍子抜けしたのだ。…何だか、ルイ、ちょっとかわいいかも。そう思いつつ、私はうなずいた。
明日の投稿は、都合により、お休みさせて頂きます。最近、更新が途切れ途切れになってしまっていて、本当に申し訳ないです…。
読んで下さり、ありがとうございました。




