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私の異世界花記録  作者: 立花柚月
五章 異世界花屋と思い出
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第八十一話

次の日のこと。この日はいつも通りのお店の日だったので、私はいつも通りの時間に起きた。お祭りとか色々あったせいか、久しぶりに感じる。カーテンを開けると、日の光と共に冷気が部屋の中に入りこんできた。まるで氷みたいな冷たさ。…今日も寒い日になりそう。これからもっと寒くなるのかな……。でも、その分、朝目覚めやすくなるから、そういう面ではいいのかもしれないけど…。何とも言えない。そう思いつつ、私は、髪飾りで丁寧に髪をまとめた。いつも通り、髪飾りは光を浴びてきらきらと光っていた。その様子を見るたびに、髪飾りが本当に綺麗だな、と思う。身支度を整え、小屋の扉を開けると、一気に寒さが襲ってきた。しかも、今日は風が強いせいで、余計に寒い。その寒さを恨めしく思いつつ、庭を突っ切る。普段なら庭の植物に水をあげるけど、寒い時期は、そこまで頻繁に水をあげなくても大丈夫らしく、毎日あげなくてもいいとのことだった。寒さが苦手な私としては、本当にありがたい。

「早く春にならないかなー…。そしたらしばらく冬は来ないし、あったかいし」

でも、この感じだと当分春は来なさそう。そのことを少し残念に思いつつ、私は建物の中に入った。中の方が当然のことながら暖かい。何故だかそのことにほっとしつつ、私はルイがいるだろう、台所へと向かった。


その日の午前中。早朝は快晴だった空が時間が経つにつれ、少しずつ曇ってきた。灰色の雲が段々と増えてくる。…もしかして、積乱雲?ここには天気予報は存在しないけど、何となく、雨が降りそう、という予感がした。どうやらそれはルイも同じだったらしく、洗濯物を仕舞ってくると言ってお店を私に任せて店の奥へと行ってしまった。雨が降って来る前に間に合うといいんだけど。ちなみにルイは、洗濯物を取りに行く直前で、

「何かあったら呼べよ」

と言っていた。一瞬だし、大丈夫だと思うんだけど…。やっぱり、ルイって心配性なんだな…。私はしばらくぼーっとしていたが、誰も来ないので、少しお店の扉を開けて外の様子を眺めることにした。通りを見てみると、どこのお家でも、洗濯物を慌てて仕舞っている。やっぱり雨になるみたい。さっきよりも雲が分厚くなったような…。私がそう思った、その時だった。急に強い雨が降りだした。ばちばちと道に雨粒が打ちつけている。それは、本当に突然のことで、洗濯物を仕舞っていた人たちは更に大慌て。…ルイ、大丈夫かな?雨が降って来る前に中に入れたかな?雨のせいで風邪とか引いちゃったら大変だ。それと、洗濯物が濡れてないといいんだけど…。と私が心配していると、ルイが戻ってきた。全く濡れていなさそうなので安心する。

「何とか濡れずに済んだけど、何なんだよ今日の天気…?起きた時は普通に晴れてたから、洗濯日和だと思ったのに…。すぐに止むといいんだけどな」

そう言ってルイは窓の外を見た。さっき見た時よりも道路に強く、雨が打ちつけている。それを見て、昨日がこんな天気じゃなくて良かったな…、と思った。でも、今日はこんなに寒いのに、よく雪にならないな…。案外、夜とかになったら雪になるかも?そんなことを考えていると、急に扉が開いて、誰かが店に飛び込んできた。こんな雨の中、一体誰が来たんだろう?と思ってそっちを見ると、そこにいたのはスイさんだった。髪がびっくりするほど濡れていて、毛先から雫が落ちていた。その腕には、何か書類を抱えていた。い、一体何が!?でも、とりあえず、タオルか何かを持ってこないと。そうじゃないと、風邪ひいちゃいそう。私はそこら辺にからタオルを引っ張りだして、スイさんの所に戻った。ルイはルイで、スイさんから話を聞いている。私はスイさんの髪をわしゃわしゃと拭いた。そこそこ髪が乾いたところで私はスイさんに聞いた。

「…それで、どうしてスイさんはここに?アケビさんは一緒じゃないんですか?」

「実は、そこまで大したことはないのですが、師匠が今日、突然風邪をひいてしまって…。なので、私が師匠の名代で、外での仕事をしていたんです。そしたら、急に大雨が降ってきちゃって。ちょうど近くにあったのがここだったので、入らせて頂きました。ご迷惑をおかけして、すみません…」

スイさんがしょんぼりとそう言った。というか、名代って…。よくそんな言葉知ってるね…。どこで覚えたんだろう、その言葉?そのことにちょっと驚いたけど、状況は理解できた。アケビさん、大丈夫かな?昨日のお昼にあったときは、いつも通りすごく元気そうだったけど…。けど、確かに最近寒いし、風邪にかかりやすそうな季節だよね…。もしこれでスイさんも風邪になっちゃったらどうしよう?すごく服が濡れてしまっている。少し雨宿りしていった方が良さそうな気がする。なので私はスイさんに言った。

「少しここで休んでいきません?どうせ、この雨ですし、お客さんは誰も来ないと思うので。ね、ルイ?その方が絶対にいいよね!」

私の言葉が微妙に強制的な感じがしたのか、ルイは少し怖そうな表情をされたが、うなずいてくれた。…そんなに怖かったかな?そこまで強くは言ってないと思うんだけど…。それに、表情も怖くなかったと思うよ?…まあいいか。細かいところは気にしないことにする。一方、スイさんはちょっと申し訳なさそうな表情をしていたけど、結局ここにしばらくいることにしたみたいだった。どうやら、上に羽織っていた服だけが濡れてしまったらしく、それを乾かしたいらしい。私たちはのんびりおしゃべりしていたが、一時間ほどすると雨はやみ、スイさんの服も大体乾いたので、スイさんは何度も何度もお礼を言いながら植物屋へと帰って行った。それを見送りつつ、ルイが言った。

「アケビが風邪ひくなんて珍しいな…。早く治るといいんだけどな…」

「そうだね…。もし、ずっと治らないみたいだったらお見舞いに行こうかな?どこにあるか分からないからスイさんに聞かないといけないけど、もしも聞けたら時間がある時に行ってみようかな…」

そんな話をしながら私たちはお店の中へ戻った。


午後になると、再び本降りの雨になった。風があるせいか、道路だけでなく、窓にも雨が打ちつけていた。雲の流れも速い。いつ止むんだろう?と思いつつ、私はお店にお客さんがいないのをいいことに、とある本を読んでいた。屋根裏部屋で見つけた、日本語で書いてある本。本の中を見てみたら日本語だったので、一瞬目を疑った。どうして日本語なのかも、どうしてそこにあったのかもよく分からない。でも、日本語で書いてある本自体が久しぶりだったので、気になったのだ。タイトルは、特にない。なので、どんなことが書いてあるのか楽しみ。すると、すごく暇そうに窓の外を見つめていたルイが、私が本を持っているのを見て尋ねてきた。

「それ、何の本なんだ?見たことないけど、どこにあったやつ?」

「屋根裏部屋だよ。いくつかある箱のうちの一つに入ってたんだー。タイトルがないからジャンルは分からないけど。これから読んでみるつもり」

と、ルイが私の隣に来てその本を私から取ると、ぱらぱらとページをめくった。しかし、文字が日本語のせいで何が書いてあるか分からないらしく、すぐに私に返してきた。そして、さっきみたいな感じで再び窓の外を見始めた。何だったんだろう…??ちょっと気になったけど、とりあえず私はその本を読むことにした。一番最初のページに『暦』とだけ書いてある。…暦?そう言われても、何の暦なのかがさっぱり分からない。私はページをめくり、その本を読み始めた。


私が本を読み終えたのは、夕方になるか、ならないかの微妙な時間だった。短かったのと、難しいところを飛ばしまくったおかげで、意外と早く読み終えることができた。ちなみに、私が本を読んでいる間は、誰もお客さんが来ていない。たぶん、それも早く読み終えることができた理由の一つ。やっぱり、雨がひどいせいかな?すると、私が本を読み終えたことに気付いたルイが言った。

「読了したんだな。で、何について書いてあったんだ?」

「一言で言うと、この世界と、私が元いた世界の時の流れの違いについて書いてあったよ。難しいところは何言ってるか全然分からなかったけど、とりあえず、世界が違うと、時間が進むスピードも違うってことが分かったよ。けっこう面白かった。それに、これのおかげで不思議に思ってたことが少し解決したから良かった」

ルイは、自分から聞いてきたのに、あまり興味がなさそうだった…。もしかしたら、予想していたものと違っていたのかもしれない。けど、私はその本の内容にかなり驚いていたので、あまり気にしていなかった。さっきも言った通り、ここと元の世界では時間の経つスピードが違う。全然そういうのを感じたことはないけど、どうやらそうみたい。実際にこの本の著者の人が実験してみたらしく、ご丁寧にその結果まで載っていた。…私にはよく分からなかったけど。

結論から言うと、どうやらこっちの世界の方が時間の流れが遅いらしい。つまり、もしこっちで一年が経ったとすると、元の世界では一年半近く経っているみたい。それを読んで、何だか浦島太郎の話みたいだな…、と思ってしまった。海から地上に戻って来たら、数百年も時間が経っていた、っていう話だよね。昔読んだことがある。ちょっと懐かしい。…ただ、そのせいで、元の世界とこちらの世界では色々とずれが起きてくるらしい。そこで私は、ある可能性を見つけた。時間の流れが違う、ってことは、これ、植物の育つスピードも変わってくるのかな?と思ったのだ。もしかしたら、向こうの暦では花が咲くまでに半年くらいかかる植物も、こっちの暦だったら四か月くらいで育つのかな?…でも、植物が育つのって色々な環境によるものだし、あまり関係ないのかな?本当にそうなのかは分からないけど、もし早さが違うならロディル卿の賭けもどうにかなりそうな気がしなくもない。でも、三か月ってやっぱりぎりぎりだよね…。これから寒くなってくるのに…、大丈夫かな?ちょっと不安に思う。

窓の外を見たけれど、雨はまだ止んでいない。何となく、夜も降り続けるような気がした。

ロディル卿の言っていた花を咲かせる期限についてですが、二か月→三か月に変更しました。急に変えてしまい、すみません…。ですが、ほとんど話には影響しないと思います。

読んで下さり、ありがとうございました。

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